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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第20章:外の世界へ
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第330話 天使

「た……助けてぇ……蒼真、くぅん……」

「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 瞬間、真っ白い光が、僕の視界を焼いた。

 なんだ、と思いながら瞼を開いたそこには、

「やめろ……もうやめてくれ!」

 光り輝く勇者の盾、『天の星盾セラフィック・イージス』を展開させ、小鳥遊を背に庇って立つ蒼真君の姿が。

「なっ、なに考えてんだよ馬鹿野郎! 敵を庇う奴があるかぁ!!」

 流石の僕も、あまりにも最悪な方向性で想定外の行動を仕出かした勇者様に、怒り心頭で叫ぶより他はなかった。

「うぐぅ、そ、蒼真くぅーん……」

「小鳥遊さん、俺は————」

 勇者の盾が葉山君と杏子の攻撃を完全に防ぎきり、さらには僕の黒髪縛りも切り払われていた。

 つまり今この瞬間、小鳥遊に自由が戻る。戻ってしまった。

「ありがとう、蒼真くん。やっぱり、小鳥だけの勇者様だね」

「小鳥遊を止めろぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 涙と冷や汗に塗れた絶望の表情は一転、邪悪な勝利の笑みを浮かべて、小鳥遊は駆け出した。

 葉山君の雷と炎。杏子の石弾。

 ただ真っ直ぐ駆け抜けるだけの無防備な背中を、勇者が守り切る。

「届けっ、黒髪縛りぃいいいいいいいいいいいいっ!」

「あっははははは! 無駄無駄ァ! これでもう、小鳥の勝ちなんだよぉ、桃川ぁ!!」

 高校球児が如くヘッドスライディングを決めた小鳥遊が、ついにタワーの門を潜り抜ける。

 黒髪縛りは、届かない。奴の足首を捉えそこねて、虚しく宙を掴むだけに終わった。

 そうして、小鳥遊が光の灯らない暗い門の向こう側へと転がり込んだ瞬間、

『管理者権限の譲渡申請、受理。『コトリ タカナシ』様、アルビオン総督・臨時代行役の就任、おめでとうございます』

 響き渡る、女のアナウンス。

 そして、次の瞬間にはセントラルタワーの機能が目覚めたのか、眩しい輝きが次々と点灯し、煌々と門の向こう側に広がるエントランスを照らし出した。

 太い円柱が立ち並ぶ、どこか神殿のような造りをしているエントランスの中央で、小鳥遊はゆっくりと立ち上がった。

「ああ、ようやくここまで来れた……もう、誰も小鳥を止められない。誰にも、邪魔はさせない」

 舞台の上で一身にスポットライトを浴びる主演女優のように、大仰に手を広げて、小鳥遊は微笑みを浮かべて僕を向く。

「桃川、もうお前が何をしても、どう足掻いても無駄だよ。だって小鳥はもう、ただの『賢者』じゃない————」

『上位保護プログラム申請、受理。エメローディア国家安全法の適応、ならびにアルビオン全域の緊急戒厳令発令に伴い、タカナシ臨時総督閣下に対する聖天級兵装の無制限貸与を承認します』

 アナウンスと共に、小鳥遊の足元、さらには天井にも巨大な白光の魔法陣が展開される。直後に、それに反応したように奴の全身が白い輝きに覆われてゆく。

 もう、ただの『賢者』ではない、と言った口ぶりからして、それはまるでクラスチェンジの演出であるかのように思えた。

 そして、どうやらそれは正しかったらしい。

「————『天使』になったんだよ」

 白く輝く大きな翼が、小鳥遊の背に翻った。

 バサリ、と音が聞こえそうな勢いで開かれた白翼からは、真っ白い羽根が散るのだが、それらは中空で溶けるように淡い光となって消えてゆく。

 本物の翼が生えているわけではない。魔力で形成された翼は、それそのものが魔法といってもいいのかもしれない。

 アナウンスの内容から考えて、アレが『聖天級兵装』という古代の強力装備なのだろう。それこそ、小鳥遊が天使を自称するほどに、天職の能力を凌駕した性能を発揮すると想定するべきだ。

「た、小鳥遊さん、どういうつもりなんだ……」

 どういうつもり、と問いただしたいのはこっちの方だよ蒼真君。どうすんだよコレ。

 小鳥遊を殺すチャンスをみすみす逃した挙句に、奴が求めたヤバそうな古代遺跡由来の能力まで獲得させちまったんだぞ。

 責任もって自分でケリを……つけられるはず、ないんだよな。

「ふふ、どうしよっかなぁ。天使になった小鳥は最強だから、何でもできちゃうんだよね。ねっ、そうだ、蒼真くんはどうしたい?」

 上機嫌に天使の翼をヒラヒラさせながら、小鳥遊はニコニコ笑顔で言いやがる。

「俺はもう、誰一人として死んで欲しくはないんだ! だから、今も君を助けた! 小鳥遊さんは、俺が信じていたようなただのか弱い女子ではなかったようだ……けど、それでも、死んでいい理由には、殺されていい理由にはならないだろう!」

 結局、君は人殺しをするのは勿論、目の前で殺されるのも見たくはないと、そういうことなんだ。

 その程度の覚悟、そんな程度の責任感だった、ということか。

 全く、君はどこまでも、ここぞという時に失望させてくれるね。その優柔不断の尻ぬぐいは、誰かがしなければならない。

 殺したくない。殺させたくない。

 いいだろう、大層立派な信念だ。

 ならば、お前が小鳥遊を助けたせいで出た犠牲は、どうやって報いると言うんだよ。

「あーあ、残念だな。小鳥だから助けたんだって、そう言って欲しかったんだけどぉ……まぁ、いっか。これから分かってくれればいいんだから。特別なのは、小鳥と蒼真くんの、二人だけなんだって」

「俺達が殺し合う理由なんてないはずだろう! 小鳥遊さん、みんなで一緒にここを出よう! それで全部、解決するんだ!」

「じゃあ、覚醒して?」

「なん、だって……」

「今すぐ『勇者』の力を覚醒させて、女神様が満足いく強さになれたら、考えて上げてもいいよ?」

「そ、それは……それじゃあ、桃川の言ったことは、全部……」

「きゃはははぁ! ごめんねぇ、蒼真くぅん。小鳥、ちょっとだけウソついちゃった、テヘっ」

「あの時、みんなに毒を盛ったのも……クラスメイトを犠牲にして、俺を覚醒させるというのも、全部、本当のこと、なのか……?」

「うん、そうだよ。でもでも、やっぱり桃川みたいなクソ陰キャのドチビ野郎が、どれだけ真実を叫んだところで、誰も信じないよねぇ? やっぱり言葉っていうのは、誰が言ったか、っていうのが一番大事なんだもん」

 蒼真君を相手に、ここまで悪事を白状するんだ。最早、彼の自由意志などどうでもいい。今の小鳥遊には、すでに蒼真君を洗脳する手段は確保済み、と見るべきか。

 だが、今はそれよりも差し迫った問題がある。

 セントラルタワーの管理権限を獲得し、天使を自称するほどの古代装備を纏った小鳥遊。コイツを相手に、どうやってこの場を切り抜けるのか。

「ま、待ってくれ……俺が、俺が強くなればいいなら、必ず強くなる! 今すぐは無理かもしれない、けど、絶対に『勇者』として強くなってみせる! だから————」

「————うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 その時、突如として雄たけびをあげて動き出したのは、山田であった。

 小鳥遊が天使だとはしゃぎだした時点で、『神聖言語』の発動は止めたようで、体の自由は戻っている。

 しかし、だからと言って、今この瞬間に動くのはまずい!

「待て、山田君!」

「お前を倒せば、全て終わるんだ! ここでっ、叩き潰してやるっ!!」

 大斧を振り上げ、移動系武技もないのに、凄まじい速度と勢いで小鳥遊へと突進してゆく山田。決死の覚悟を決めた彼を、僕の言葉一つじゃ止められない。

 やめてくれ、僕は君を、君のような男を真っ先に犠牲になんてさせたくないんだ。

「はぁ、ウッザ。山田如きがしゃしゃり出てくんなよ、身の程を弁えろってのブサイク芋男が————『聖天結界オラクルフィールド』」

「ぐおおおおおっ!?」

 あと一歩で斧の間合いに入る寸前で、眩く光り輝く結界が山田の突撃を阻んだ。白い光が激しく明滅しながら、バチバチとスパークのような輝きも散っている。

 小鳥遊め、コレがあるから『神聖言語』を解除したのか。

 桜ちゃんの万能防御魔法『聖天結界オラクルフィールド』と全く同じ、強力な光の結界だ。強引に突っ込めば、痛いや熱いじゃ済まないダメージを負うはずなのだが……山田は『重戦士』の防御と、身に纏った全身鎧、そして不退転のド根性で一歩も引かない。

「やめるんだ、山田君! 戻れ!」

「そいつは聞けねぇな、桃川。今ここで、コイツを何とかしなきゃ、俺ら全員————」

「邪魔、とりあえず消えろ————『天罰刑法4条・追放刑』」

 山田の足元に見慣れた白い輝きの魔法陣が展開されると共に、姿が消えた。

 跡形もなく、消え去る。当然だ。だってそれは、転移魔法なのだから。

「や、山田君……」

「はい、これで追放刑執行二人目ぇー」

 クラスメイトを一人消しておいて、その言い草か。罪悪感の欠片もない。

 ただ邪魔だから消した、と公言した通り、本当に何にも思っちゃいない。

「うーん、やっぱ追放刑が一番楽でいいよね。死体なんて残っても汚いだけだし、勝手に死んでって感じ?」

「テメェは……そうやって下川も殺したのかぁああああああああああああっ!!」

「おい、上田っ!? ちょっ、止せって!」

 次に動いたのは上田だった。

 確かに、誰にも知られず、死体も見つからずに密林塔から下川を消した方法は、この『天罰刑法4条・追放刑』に他ならないだろう。

 けれど、山田が力及ばず倒れたばかり。怒りのままに動いても勝機はない。

 当然それを察してか、慌てて芳崎さんが駆け出す寸前の上田を掴むが、

「ちっ、うっせぇな、お前らモブは黙ってろよ————ほい、追放刑」

 上田と芳崎さん、二人まとめて消し飛ばされた。

 あっ、と思った時には、もう二人は輝く白い魔力の粒子だけを残して、そこからいなくなっている。

「天使小鳥様の力、分かった? これでもまだ、逆らう奴おるぅ?」

 翼の力か、フワリと浮かんだ小鳥遊が、こちらを心の底から見下した表情で睥睨する。

 心底ムカつく顔だ。

 けれど、今は怒りよりも後悔と焦燥ばかりが激しく胸に渦巻く。

 三人だ。

 この僅か数十秒の間に、山田、上田、芳崎さん、僕の主力メンバーが一気に消されてしまった。

 転移で飛ばされただけなので、即死こそしていないが……追放刑とわざわざ名付けられた魔法名である。飛ばす先はフルランダムではなく、追放するにふさわしい場所が選定されていると思われる。

 それなりのダンジョンくらいなら、装備をそのまま身に着けた熟練の前衛職となった彼ら三人ならば、簡単に死ぬようなことはないだろうが……ええい、くそ、今は三人の心配をしている暇さえない。

 三人の追放は、これで終わりではない。始まりだ。僕ら全員の生殺与奪は、小鳥遊に握られてしまった。

聖天結界オラクルフィールド』の絶対防御に、僅か数秒で発動する『天罰刑法4条・追放刑』。このクソみたいなチート能力を相手に、どうにかする手段など今すぐにはとても思いつかない。

 その上、奴の能力はこれだけじゃない。もっと強力な魔法や遺跡の機能を手にしていることだろう。

 見事なまでの形勢逆転。完全に状況がひっくり返されてしまった。

「こんなことになるのなら、蒼真君に恨まれてでも、小鳥遊を暗殺しておくべきだったな」

 ああ、ちくしょうめ。三人も速攻で失ってしまった以上、僕もやり方を、選択肢を誤ったと言わざるを得ない。

 けれど、後悔に思考能力を割いている場合じゃない。

 考えろ。小鳥遊のことだ、きっとまだどっかに穴が、つけいる隙があるはずだ。何としてでも、攻略の糸口を見つけるんだ。

「やめろぉ! もう、やめてくれ……こんなことのために、俺は君を助けたんじゃない!」

「蒼真君、これは運命なんだよ。女神様が定めた運命。選ばれたのは小鳥と蒼真君だけで、選ばれなかったゴミクズ共のことなんて、なぁーんにも気にしなくてもいいんだよ?」

「違う! 俺達はクラスメイトで、ここまでダンジョンを乗り越えてきた仲間なんだ! その仲間を、犠牲にするなんて許されることじゃない!」

「あはは、勘違いしちゃあダメだよ。今、蒼真君に許されてることは、選ぶこと」

「選ぶ、だって」

「そっ、選ばせてあげる。次、誰から消すぅ?」

 小鳥遊が、これみよがしに選ぶように、僕らをそっと指さす。

「桜ちゃんは、メインディッシュだからないとしてぇ……うーん、明日那ちゃんも小鳥の親友だから、残ってもらわないと」

「な、何を言っているんだ……」

「ううーん、やっぱり次に消すなら、見せしめとして裏切り者の委員長にする? それとも、どうでもいい雑魚の姫野とか中嶋辺りにしておく? ねぇねぇ、蒼真君は、どっちがいーい?」

「そんな……そんな、こと……」

「選べるワケねーだろ、バァーカ。もうちょっと考えてお喋りしろよ、低能天使が」

 震えるだけで、誰かを選ぶことも、自分で選んだことの責任もとれない勇者様に変わって、僕が声を上げた。

「桃川ぁ……お前さぁ、この期に及んでイキってんじゃあねぇよ。テメーはもう詰んでんだよ、分かってねぇのか、ああ?」

「さっきまでピギィ! つって泣き叫んだ奴に、イキりがどうこう言う資格あんの? つーか、天使ってなんだよ、今時、小学生でも言わないって」

 とりあえず何でもいいから適当な挑発を口にする。

 決して、この絶望的な状況の突破口を見出したワケでも、こんな事もあろうかと、という備えがあるワケでもない。

 だが、ひとまず挑発して僕にヘイトを向けさせることには意味がある。

 小鳥遊が僕の方に意識が向いている限り、気まぐれに他の仲間が消されることはないからね。

 そして、どれだけ挑発を重ねようとも、お前は絶対、僕を簡単に飛ばしはしない。

 これほどの優位を確保したんだ。僕を殺すなら、それはもうド派手に凄惨な感じにしたいに決まってる。

「……ああ、そっか、分身だな、お前」

 ちっ、流石にバレたか。

 最後の学級会を主導するべく、蒼真君と向き合って話していたこの僕は、本物じゃなくて『双影ふたつかげ』の分身だ。

 当たり前じゃん。逆上して後先考えずに切り付けられるかもしれないんだし。

「ドブネズミみてぇにコソコソ隠れてんじゃねぇよ。出てこい、桃川」

「馬鹿か、そこまでバレてて出て来るわけねーだろ。天使になると、頭天国でハッピーになんのか? ああ、元からだっけ」

「うるせぇ、ぶっ殺すぞテメぇ!!」

 と、キレ散らかしてるくせに、本物の僕が引きずり出されないところを見ると、隠れた位置はバレていないようだ。

 よし、最低限のアドバンテージはとれている。

「ちっ、どこまでもムカつくクソガキが」

「お前のがよっぽどガキだろ。対戦ゲーに湧くキッズでも、お前よりかはお上品だぞ」

「本体が隠れてるから調子に乗りやがって……仕方ない、また邪魔だけされても腹立つだけだし、先にやることは済ませておこうかな。明日那ちゃん、こっちに来て」

 呼ばれた剣崎が、メイちゃんの前で剣を構えたまま、ビクリと震えるように反応した。

「こ、小鳥……お前は……」

「小鳥は、明日那ちゃんの親友だよ? だから、これからも小鳥のこと、明日那ちゃんに守って欲しいな」

 散々、黒幕であることを白状しておいてこの言い草。

 まさか、その言い分を聞くのか?

「ああ……そうだな……小鳥は、私の親友だ……私が、守ってやらなければ」

「うん、そうだよ。明日那ちゃん、ずっと一緒だよ?」

 剣崎はそのまま、小鳥遊の方へと歩き出した。

 現実逃避、ここに極まる。

「必要な生贄は桜ちゃんだけで十分だと思うけど、一応、夏川も確保しとこうかなぁ————ポータル起動、自由選択でね」

『ポータルを起動します。任意の対象を選択してください』

 小鳥遊が一声上げると、アナウンスが反応し、そして床一面が輝きだした。

 デカい、床の全面が光り輝いている。転移魔法の白い光とは異なり、緑色に光っているのは、一体何の違いがあるのか。

 なんにせよ、小鳥遊は僕の挑発を無視して、必要な人材の選別を早々に始めるようだ。

「でも、その前にやっぱり、裏切り者筆頭の委員長には、見せしめとして派手に散ってもらおうかなぁ」

「っ!?」

「涼子ちゃん!」

「ま、待て! やめろぉ!」

「裏切られて、小鳥ショックだよぉ」

 と、ニヤニヤしながら小鳥遊は握っていたブラスターを委員長へと向ける。

 ダメだ、これ以上はもう限界だ。イチかバチか、ここで行動を起こすしかない————そう、本体の僕が『無道一式』を握りしめた、その時だった。


 ォオオオオオオオオオオオオオオオオ————


 雄叫びが響く。このダンジョンでは聞きなれた、モンスターの雄叫びだ。

 遠くから響き渡って来るその声に、僕は不意にサラマンダーを思い出す。そういえば、このエリアには普通にサラマンダーが生息しているのだ。

 今更、その鳴き声が聞こえたからなんだというのか————いやちょっと待て、この鳴き声、なんか近くない?


 ドゴォオオオオオオオオオオオオオオッ!


「うわぁっ!?」

 突如として、壁が崩壊した。

 それは小鳥遊がふんぞり返って浮かび上がっているその後ろ、広大なタワーエントランスの一角で起ったことだ。

 エントランスの外壁と天井、ついでに並び立つ円柱の何本かが盛大に砕け散る。それはまるで、大爆発を起こしたように……いいや、違う。大爆発ではなく、大質量が突っ込んできたのだ。

 濛々と煙る粉塵の向こう側に翻るのは、黒い竜の翼。

「————よう、久しぶりだな、お前ら」

 そして、黒いサラマンダーのシルエットを背後に、悠々と噴煙を突っ切って歩み出たのは、傲岸不遜を体現する、白嶺学園一の不良男。

「おい小鳥遊。俺をハメてくれたんだ……覚悟、できてんだろうな?」

 天道龍一が、現れた。

 2022年1月7日


 新年、明けましておめでとうございます。どうぞ今年も『呪術師は勇者になれない』をよろしくお願いいたします!

 というワケで、21年内に間に合わなかった天道君がようやく帰還です。

 それでは、次回もお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
最高だな
委員長のピンチの現れるとかお前ホントに主人公やな。 桃子が雰囲気ぶち壊さないか、怖いけど。(楽しみ)
[良い点] 天道君が主人公過ぎることです。
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