第327話 最後の学級会(2)
「さて、脱出枠の話がまとまったところで、次の議題に移ろうか」
「まだ何かあるのか?」
「えっ、何もないと思ってるの?」
蒼真君さぁ、僕は君のそういう思慮浅いところは早く何とかして欲しいと思っているんだよね。もっとも、君くらいのハイスペックイケメン様となれば、常に出たとこ勝負で常勝不敗だったろうけど。
「ねぇ、蒼真君。これから僕らは、再び二年七組のクラス一丸となって、セントラルタワーという最後のダンジョン攻略に挑もうとしているんだ。そこまではいいよね」
「ああ、勿論だ。これ以上、誰も失いたくないし、失わせるわけにはいかない」
「うんうん、いい覚悟だ」
相変わらず、覚悟だけはいいよね。
皮肉100%だけじゃないよ。ここまで自分に不利な状況になっても、それでも誰も死なせないよう頑張って戦い抜く、と言い切れる君はやっぱり『勇者』だ。
普通はこんなに嫌なことばっかり続けば、全てどうでもよくなって自棄になるだけだし。
「それで、ここから中に入っても、ゴールの天送門まで直通、とはならないと思うんだよね」
「天送門はタワーの一番下にあるそうだ。間違いなく、そこに至るまでには強力なボスが立ちはだかるだろう」
それも、超強いラスボス一体だけとも限らない。一階層ごとに強力なボスモンスターが配置されているような、ゲームのエンドコンテンツみたいな鬼畜仕様になっている可能性すらあるのだ。ボスラッシュという伝統もあるし。
「大変な攻略になるだろう、という認識は共有できているワケだ」
「ここまでやって来て、最後は楽に行けると思う奴はいないだろう」
小鳥遊以外はね。
でも、そこが重要なのだ。
「そんな場所に、今までと同じようにみんなで挑んで攻略していくつもりなのかい?」
「……どういう意味だ。それ以外に、何か良い方法があるとでも言うのか、桃川」
「君はこの期に及んでも、まだ致命的に状況認識が足りていないね」
「何が言いたい」
「いいかい、小鳥遊が黒幕なんだ。この忌々しいダンジョンサバイバルを仕切っているクソ女神が送り込んだ手先。神のシナリオ通りにコントロールするための、ゲームマスターなんだよ」
そんな小鳥遊は、いまだにメソメソしているだけで、特にこれといった動きはない。つまり、奴はこのまま話が決まって、みんなでセントラルタワー攻略が始まっても問題ないと思っているのだ。
それは恐らく、ここが奴の意志が及ぶ領域だから。
タワーに待ち構えるボスを操るなり、罠を作動させるなり、うまい具合に僕らを殲滅できる算段はまだ十分にあるのだろう————という推測なんて、蒼真君は全くしていないのだ。
「大切なのは、これを事実として君が認めるかどうかじゃあない。事実かもしれないと想定して動くことなんだよ」
小鳥遊と剣崎は、晴れて追放が決定した。
蒼真君自身は、小鳥遊の黒幕疑惑を認めたワケではないが、その疑惑を晴らすことは不可能だという点において、追放案に頷いたのだ。
「小鳥遊が黒幕じゃない、僕に言いがかりの濡れ衣着せられているだけの哀れな少女だ、と心から信じ切っているのは、今や君ら三人だけなんだよ」
「確かに、その通りではある……だが……」
「だが、なに? 学級会なんだから、言いたいことはちゃんと言わなきゃ」
「……いや、いい。みんなの疑惑を晴らせない以上は、それを認めた前提で行動を決めなければならない。そういうことだろう、桃川」
「蒼真君、正解。いやぁ、分かってくれたようで、僕は嬉しいよ」
いやホントに嬉しいね。君が自力でそれに気づいて、認めてくれたのだから。
お陰で、ネチネチと理詰めしていくための理論武装が無駄になっちゃったよ。
「そう、だから小鳥遊は黒幕で、蒼真君以外の全員をこのダンジョンで排除するつもりでいる、という前提でこれからの攻略を考えていかなきゃいけないワケだよ。桜ちゃんもオーケー?」
「濡れ衣を着せておいて、なんたる言い草……そんな屁理屈、私は認めませんよ!」
「お兄ちゃん、説得よろ」
「桜、諦めるんだ。この状況で桃川と言い争って勝てるはずがない」
「そ、そんな、兄さん……そんな言い方……」
「そうだよ、そんな言い方酷いよ! もっとちゃんと説得して! 役目でしょ!」
ほら、そんなウンザリしたような顔してないでさぁ。
やっぱり蒼真君だって妹を言い聞かせるの、キツい、聞かない、キレそう、の3K労働だと思ってるんでしょ。
「いいか、桜。俺は桃川の言い分を認めると決めた。認めるしかないのは、これが自分の行動の結果だからだ。何もできなかった、誰も助けられなかった、俺自身の責任なんだ————だから桜、もしお前だけでも桃川の言い分を認められないというのなら、自分で反論するんだ」
おおう、思ったよりもガチめの説得が来たよ。
桜ちゃん、顔面蒼白で完全に顔が強張っている。まさか本気で、こんなに不利な状況下でも自分のワガママに賛成してくれると思っていたのかな。
「学級会だ、言いたいことは、今この場で言え。俺はもうこれ以上、桃川に反論はできない。小鳥遊さんの濡れ衣を晴らすこともできないし、明日那の信頼を取り戻す説得もできない。でも桜がそれを出来るというのなら、やってくれ。桃川を、クラスのみんなを、説得してみせてくれ」
「あ、あぁ……兄さん、そんな……わ、私は……」
これまでにないほど、強く突き放したような言い方をした蒼真君。
効果は抜群だ。桜ちゃんの目に、キラリと涙が光った。
「私は、ただ兄さんのために……正しいことを……う、ううぅ……」
とうとう本格的に泣き出す桜ちゃん。
そのクラスで断トツトップの綺麗なお顔を歪ませて、正に絶望の表情でさめざめと涙を流して嗚咽を漏らす。桜ちゃんのそんな顔、初めて見たよ。
そんな彼女を見て、ドキっとするこの胸の高まりは、はっ、まさかこれが、この気持ちが————愉悦?
「あーあ、泣かしちゃった」
「そうだな……桜は、昔からちょっと強く言いすぎると、泣いてしまうんだ。こうなると、しばらく後を引くから、あまりこういう言い方をしたくはなかったんだが」
「なるほどね。だからといって、今まで少し甘やかしすぎたんじゃあないの」
「そうかもしれないな」
僕の言葉に逆上するでもなく、どこまでも憂いを帯びた悲しい瞳で、泣き崩れた桜ちゃんを蒼真君は眺めていた。
普通だったら、泣いている妹を見れば何を置いても飛んできては駆け付けるはずだけれど、自分の言葉で泣かせた以上は、その震える肩を優しく抱くようなこともしない。
「桜はもう、落ち着いて話ができる状態にはない。気にせず、話を進めてくれ」
お兄ちゃんに見捨てられてガチ泣きしている桜ちゃんは、ここで小鳥遊と明日那のメソメソ組に合流だ。
あの三人が揃って泣いている光景は……ああ、なんだろうこの満足感と充足感。なんて素晴らしい、こんなに良い景色、僕は見たことがないよ。
動画で撮っておきたいくらいだ。辛い時、苦しい時、挫けそうな時、そんな時にこの光景を見れば、きっと元気を取り戻せると思うんだ。
「話を進めてくれ、桃川」
「しょうがないなぁ」
僕の邪な気配を察したか、やや視線を鋭くした蒼真君に促されて、三人娘号泣シーンの撮影は断念することにした。
「それで、邪悪な小鳥遊はいまだに僕らの排除を諦めていない。いつ裏切るか、どんな行動で僕らを陥れるのか、予想がつかない。さぁて、そんな最悪の裏切り者を抱えたまま、セントラルタワーをどう攻略すべきだと、蒼真君は思う?」
「厳しい監視をするより他はないと思うが」
まぁ、監視は基本というか、絶対条件だよね。『賢者』の能力を考えれば、ちょっと目を離した隙に何をやらかすか分かったもんじゃあない。
呪文一つで僕らを一網打尽にするヤバい魔法トラップとか発動しそうだし。
「それで完璧に裏切りを防げるかな」
「なんだ、これ以上は手錠でもかけて拘束でもするっていうのか。小鳥遊さんへの疑惑は認めるが、だからといって犯人扱いであまりにも手荒な真似をするのは————」
「足りないよ。蒼真君の危機感も、小鳥遊の扱いも」
手錠の一つでガタガタ文句なんてつけないでよ。枷の一つや二つつけたところで、物理職じゃない小鳥遊にはさほどの意味も持たない。
「手錠もつける。足枷もつける。目隠しと耳栓をつけて完全に視覚と聴覚も遮断する。詠唱されたら困るから、猿轡も必要だ。服も所持品も全て取り上げ、囚人服を着用させる。そして、いざという時のために、コア爆弾付きの首輪もつけてもらおうか」
「なっ、なんだそれは!?」
絶句する蒼真君。犯人扱いどころか、処刑した方が早いだろってレベルの重罪人ぶりだからね。
でも、そういう認識が甘いと言っているんだ。
僕が言ったのは、とりあえず思いつく限りの拘束方法を語ったに過ぎない。これを実行しても、まだまだ安全安心とは程遠い。
そもそも、特別な力を持ってクラス全員の殺害を目論んだ裏切り者を、殺さずに生かしておいてやろうというのだ。死なないだけ、ありがたいと思うべきじゃないのかな。
命さえあればいい、というなら手枷足枷なんかつけずに、四肢を切り落としているし、コイツの意識があるだけで危険なので、致死量ギリギリで睡眠薬なりを喰らわせて眠らせ続けるか、そもそも正気を失うようゴーマの麻薬ガンギマリにさせてやりたいところなのだ。
小鳥遊を生かす、というだけで僕らは全滅のリスクを負っている。そこを大幅に譲歩して、ただ生かしておくのみならず、傷もつけずに拘束だけで済ませてやろうと言っているんだ。
「小鳥遊の命は、僕ら全員の命の上に立っているんだよ。この裏切り者を快適に過ごさせることと、クラス全員の命を天秤にかけて、どういう扱いが最適か、よく考えるんだ」
「くっ、だが、こんな扱いはあまりにも……」
「君の甘さが僕らを殺す。君のワガママが、クラス全員の命を危険に晒す。今まで自分の力だけで何人救えたか、もう一度思い出すといいよ」
甘っちょろい理想論だけで全員を救えていたのなら、僕はこんなこと言っちゃいない。
蒼真君、君は凄い男だ。『勇者』に相応しい、勇気と正義の両方を兼ね揃えている。
けれど足りない。この小鳥遊が操るダンジョンサバイバルで、クラス全員を助けてハッピーエンドに導くには、君の力は全く足りてない。
これだけ失って来たんだ。まだ分からないのか。
「頼む、桃川、せめてもう少しマシな……そうだ、俺が、俺が責任をもって監視をする! だから、これ以上酷いことは————」
「自分にそこまでの信頼があると、本気で思っているのかい」
ギュっと強く、蒼真君は拳を握りしめた。
けれど、その握った力のままに、僕へと拳を振り下ろすことはなかった。
「くそぉ! どうして俺は! こんなことになるまで、何もできなかった……何も成せず、誰も救えなかったんだ……」
ああ、そうだよ。君はみんなを助けられなかった。志だけは立派だけれど、犠牲ばかりが積み重なって————今やこのクラスに、君の言葉を心から信じられるのは、きっと桜ちゃんと剣崎の二人だけだろう。
信頼を失っているのは、黒幕の小鳥遊とやらかしの剣崎だけじゃあない。君もまた同様に、当初と比べて遥かに信頼を失っているんだよ。
「小鳥遊には思いつく限りの厳重な拘束を施す。蒼真君の協力に免じて、傷をつけることだけは避けるけれど、それ以外なら何でもやる。クラス全員の、命が賭かっているからね」
「くっ……いいだろう、桃川、それも認める……」
改めてクラスでの信頼を失ったことを実感して、すっかり意気消沈で項垂れている蒼真君だけど、今からそんなに落ち込まれちゃあ困るんだよね。
「元気を出してよ蒼真君。タワー攻略の中心は君なんだから」
「分かっているさ、そんなことは」
「ホントに分かってるの? 最悪、攻略は蒼真君一人でやることになるんだよ?」
「……なんだって?」
おっ、これが鈍感系主人公にのみ許された専用スキル『難聴』というやつかい。流石、蒼真君くらいのイケメンになると、当たり前に持っているんだね。
でも、僕は別に告白とかしたワケじゃないから、聞こえなかったなら何度でも言ってあげる。
聞こえるように、大きな声でハッキリと。何故そうなのかを詳しい解説をしてもいいよ。
「タワー攻略は基本的に蒼真君一人で、つまりソロ攻略をしてもらう」
「それが俺への断罪だとでも言うのか」
「罪悪感を抱くのは勝手だけれど、僕は別に蒼真君に痛い目に遭って欲しいワケじゃないよ」
「そうでもなきゃ、こんな仕打ちはないだろうが!」
「小鳥遊の目的が何か、僕はちゃんと話したよね? よく思い出してよ」
「それは、俺の『勇者』の力を目覚めさせて、最後は二人だけでここを脱出……まさか!」
「気づいた? 小鳥遊の目的は蒼真君自身だ。つまり、君だけが命が賭かっていない、女神エリシオンに安全が保証された唯一無二の存在なんだよ」
だから、どんな強力なボスモンスターに無謀な凸しても、死なないよね?
死ぬはずがない。神がそれを許さないのだから。
「死なないゲームなんて、ヌルゲーだよね」
今まで本人だけが命賭けで戦ってきたつもりだったけれど、実はゲームシステムによって死亡判定がない、と分かれば世界の見え方は変わる。
クラスメイトの半分以上もの命を奪ってきた、モンスターが跳梁跋扈する恐ろしい未知のダンジョンが、途端にただの箱庭に思えてくるだろう。
「君だけが特別なんだ。少なくとも、クソ女神が今回の勇者はもういいや、と見切りをつけるまでは、絶対的な命の保証がある。それを存分に、攻略に利用させてもおうじゃないか」
このユニットは絶対に死なない、と分かっていれば、最前線に立たせて突き進ませるに決まっているじゃない。奇襲、不意打ち、初見殺しの理不尽攻撃、即死トラップなどなど、最も恐れるべき仕掛けは大体、不死設定の勇者様で何とかなる。
勇者としての使い道を期待されている限り、その前に立ち塞がるのは必ず乗り越えられる試練なのだ。
神様は必ず乗り越えられる試練しか与えない、ってどっかで聞いたことあるな。お前それヤマジュンの前でも同じこと言えんの? ってレベルの下らない偽善発言だけど、まさか本当に難易度調整した試練を寄越す神様が存在しているなんてね。僕は絶対ルインヒルデ様から改宗する気はないけど。
「勿論、これは君の安全保障だけに頼った攻略法じゃない。もっと重要なのは、僕らクラスメイトの安全を最大限に図ること。今まで通り、強力なボスモンスターに全員で挑んだら、ちょっとしたアクシデントで簡単に死んでしまう。例えば、小鳥遊が『拒絶の言葉』を一言唱えるだけで、避けられたはずの攻撃も直撃してしまうからね」
「それは……そうかもしれないが……だが、ヤマタノオロチ級の大ボスが相手となれば、幾らなんでも俺一人じゃどうしようもないぞ」
「そうだよね、今の蒼真君じゃあ、ザガンもソロ討伐はできないだろう。クソ女神が望んでいるような、『勇者』の力とやらが覚醒でもしない限り、大幅なパワーアップも望めない」
そして、僕は誰かを犠牲にして覚醒イベントを発生させるつもりは勿論ない。
小鳥遊と剣崎が順番に犠牲になって覚醒して強くなってくれたら一番いいんだけど。なんか事故ってそんな感じにならないかなぁ。
「俺の力が覚醒することを、期待してのことなのか?」
「まさか、そんなご都合主義を勘定にいれてたら、シミュレーションゲームのベリーハードはクリアできないからね」
こっちの命中90%は外れるけど、敵の命中40%はほぼほぼ必中みたいなゲームバランスだよ。確率の神と乱数の女神にお祈りするのは、人事を尽くした後なのだ。
「蒼真君にとっては、これまでとは比べ物にならないほど過酷な戦いになるだろう。勿論、協力も支援もする。けれど命を賭けて一緒には戦えない。クラスメイト全員の安全を確保できるこの条件下で、僕は天送門まで辿り着くつもりだよ————ただし」
と、続くのは当たり前のことだろう。
ダンジョンサバイバルの最終局面で、最強エースの『勇者』蒼真悠斗とはいえ、突然のソロ攻略を押し付けられるのだ。とんでもないことである。
でもさ、そもそも何でこんなことしなきゃいけないのかと言えば、元凶はいつも一つ。
「ただし、今この場で小鳥遊を処刑できたなら、今まで通り全員一緒に戦えるよ」
「ふ、ふざけるな! そんな条件、呑めるはずがないだろう!」
「勘違いしないでよ。これは別に脅しでも何でもない。ただの選択肢の提示。君が自分の意思で、どちらが良いか決めていいことなんだよ」
僕はどちらも、押し付けるつもりはない。一方的に嫌なことを押し付けたりしたら、遺恨が残るからねぇ? その辺のことは、僕は経験豊富だから、詳しいんだよ。
「小鳥遊の命を守るために、一人で戦うか。小鳥遊の命を諦めて、みんなで戦うか。さぁ、どっちがいいか、決めるのは君自身だ」
「分かった、俺が一人で戦う。それでいいんだろう」
ヒュー、さっすが蒼真君、即断でソロ攻略を選んだか。勿論、君がこの程度の条件で小鳥遊を切るとは思っちゃいなかったけれど。
でも、無理だと思ったらいつでも小鳥遊を切ってもいいんだよ。ソロ攻略に行き詰まって、ムシャクシャしてカっとなって切り捨てても、僕は君を咎めたりはしないから。
仲間がいれば、あと一人いれば————そんな人手が足りなくて攻略を断念した、悔しい思い出は僕もあるからね。レイド攻略はまず面子を集めるところがスタートだし。
「安心してよ。一人とは言ったけれど、ちゃんと分身の僕とレムは一緒に戦えるから」
あと召喚獣と屍人形もいるよ。
替えの効く捨て駒ユニットはどんどん使って行こう。すでにゴーマ王国は滅ぼした。今やこの最下層エリアの支配者は僕らだ。エリア全土を狩場として独占できる。獲物の供給量は安泰である。
「ふふふ、これからは僕が蒼真君の相棒だよ。よろしくね?」
「わ、私も……」
僕がにこやかな笑顔で蒼真君に握手を差し出したところで、桜ちゃんが泣き顔を上げた。
「私も、戦い————」
「————俺も戦うぜ! 桃川!!」
「や、山田君……」
えっ、今ちょっと桜ちゃんが何か言ってなかった?
山田の堂々たる参戦宣言で、桜ちゃんのボソボソ泣き声が完全にかき消されたけれど、まぁいいや。