第301話 巨人殺し(3)
「ギッ、ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
あらかじめ狙っていなければ、巨人となるための変身時間は短すぎる。僕らの前で、バズズの体は輝く赤い光と共に、瞬く間に膨れ上がって行く。
巨人化したバズズは、赤い毛皮を纏った半獣人のような姿であった。
ゴーマ特有の脂ぎったゴキブリ的な皮膚から、ゴワゴワした赤い毛が胸元や手足、背中などに生えている。頭からは山羊のような捻じれた大角が生え、口からは鋭い牙が覗く。
そんなバズズの武器は、両腕を覆う金属製のガントレットだ。肘から拳にかけて、しっかりと鋼鉄に守られ、随所に鋲も打たれている。
奴の武器はそれだけ。ボンのように巨大な棍棒ではなく、リーチの短い、自分の拳だけを頼りにするような装備は、明らかなスピードファイターであることを示す。
しかしながら、巨人となった時点でドラゴン並みのパワーも発揮することとなる。一撃喰らえばアウトになる僕らにとっては、より素早く、より手数が増すだろうバズズは、ボンよりも相性が悪い。
だが嘆いても始まらない。もう目の前に巨人と化してヤル気満々で突っ込んで来るんだから、全力で抗うしかない。
そう、こっちも最初から全力だ。
「行けぇっ! キナコ! ベニヲ!」
「プゥガァアアアアアアアアアアアアアッ!」
「ウォオオオオオオオオオオオオオオオン!」
葉山君の叫びと共に、こちらも巨人化に対抗するような魔力と輝きを放ち、僕らの最終兵器、霊獣キナコ&ベニヲが出撃。
相手は10メートル級の巨人。こちらもドラゴン並みの大型モンスター。横道戦以来の怪獣決戦である。
「ンドラァッ!」
「プンガァッ!」
まずはキナコとバズズが真正面から拳を繰り出した。獣のガントレットと本物の獣の腕が交差し、お互いの毛深い胴を打ち付ける。
流石にこの巨大サイズ同士の戦いになると、ただ思いきりぶん殴るだけでもこっちに衝撃が伝わってくる。地面もちょっと揺れてる。
いやぁ、参った。巨大化されると、こっちも決死の覚悟で戦うより他はない。
この巨大化はオーマによる強化魔法による効果ではないかと推測できるのだが……だからといって、『赤き熱病』による無効化は通用しない。
ザガン大暴れの時に、試しておいたから間違いない。奴は呪術を喰らっていたことにも気づかなかったことだろう。我を忘れてキレ散らかしている時に、微熱になっただけじゃあ気にも留めない。
恐らく、ギラ・ゴグマの巨大化は横道の『完全変態』と似たような強化魔法というか、変身魔法と言うべきものなのだろう。自分の肉体そのものが変化するようなタイプは、『赤き熱病』の無効化対象にはならないのだ。なので、霊獣化にも通用しない。
まぁ、流石にこの系統の魔法も無効化できたらチートすぎるからね。普通のステータスアップ系の強化魔法を問答無用でかき消せるだけで、十分に破格の効果だと思っている。
でも今は全く役に立たないのは事実。
「おい桃川! どうすんだよ、流石にあれに手出しはできそうもねぇぞ!?」
「今はバズズの相手はキナコとベニヲだけに任せる。幸い、実力は拮抗しているようだから、あの二人だけでも十分にもつ」
すでにバズズは、僕らのことなど眼中になく、まずは自分と対等以上に戦える大型モンスターである霊獣キナコとベニヲだけに集中している。
キナコはパワーもスピードも巨人バズズに劣らないが、大きく勝るほどでもない。完全変態横道を殴り飛ばしたキナコも、バズズでは少々よろめかせるくらいが精々だ。
ベニヲも奴に喰らいついていける力こそあるものの、バズズ自身が火属性に適性があるようなので、炎が通じないのが厄介だ。
今は正面からキナコが殴り合いをし、後ろからベニヲが牙や爪を活かして攻撃することで、バズズ相手に優勢を保てている。けれどそれが精一杯で、決め手に欠ける。
バズズも二人を相手に押され気味ながらも、特に焦った様子は見られない。恐らく、こちらにも時間制限が、それも奴の巨人化よりも短いと勘付いているのだろう。
威勢よく戦いを挑んできたくせに、実戦ではしっかりと相手を分析できる感じか。ヒャッハァとか言ってたくせに、厄介な奴だよ。
「でも、急いで僕らを追いかけてきたのか、単独で現れたのはツイてる。今ここでアイツをみんなで倒す」
急いでバズズが現れた森の方向にレム鳥を集めて偵察に向かわせたが、少なくともこの近辺には奴が率いる部隊の面々は確認できていない。やはりバズズだけがあの炎を纏った高速移動で僕らを追ってきたはずだ。余計な邪魔が入らないのは本当に運がいい。
功を焦ったなバズズ。お前は巨人になれる自分の力を過信して、単身で乗り込んで来た。付き従ってるゴーマ兵など雑魚の賑やかし、くらいにしか思っていないのだろう。
その突出しすぎた実力が仇となるんだ。部隊全員で来られれば、恐らく僕らに勝ち目はなかった。でも、どんなに強くてもお前一体だけならつけ入る隙はある。
なぜなら、僕らの強みはチームでの連携。戦いは数だよ。そして、今この場にはお前を仕留めきれる条件も揃っている。
「霊獣化が続く内は二人に任せて、こっちは掩護に徹する」
下手に接近すると邪魔にしかならないからね。前衛の誰かがうっかりキナコに踏みつぶされて死んだら、葉山君立ち直れなくなっちゃうし。
「上田君と芳崎さんは右側から、山田君と中嶋君は左側から、バズズに回り込んで奴の顔に目くらまし」
切り札である霊獣を戦線に投入すると、前衛は勿論、後衛も下手に魔法で援護できないということは分かり切っていた。なにせ、あの巨体で素早く動くからね。霊獣と巨人が目まぐるしく立ち位置を変えながら激しく戦っていれば、遠距離攻撃も誤射のリスクが出てくる。
その上で、僕らに何が出来るかと言えば、最悪誤射ってもダメージにはならない目くらましがいいかなと。
ボン戦でも前衛三人が引き際にそれぞれ投げたように、投擲攻撃の練習も重ねている。中でも、上田君は地味に『スロウダガー』のスキルを習得したので、投げナイフ上手いんだよね。
巨人となっても、基本的に奴らは人間同様、視覚を頼りに認識している。だから視界を奪う目くらましは有効だ。
「ナイフと玉はハイゾンビに持たせるから、それを使って。タイミングは任せる。君達四人なら、上手くバズズだけに当てられる」
「よし、分かったぜ。行くぞ、芳崎!」
「近づきすぎて踏みつぶされんなよ、上田」
「俺らも行くか、中嶋」
「そうだね」
自分の役割を理解し、即座に四人は駆け出しキナコとベニヲの掩護に向かった。
「杏子はあそこの屋上に登って、『土星砲』の準備」
「あんな目立つとっからでいいの?」
「今回は『土星砲』は囮だ。強力な魔法で狙われている、とバズズが意識するだけでいい」
杏子の必殺技『土星砲』は巨人にもダメージを与えうる威力が一番の魅力だけれど、大砲っていうのは、そこにあるだけで心理的な効果も発揮する。
これからバズズは、チクチクと前衛組からウザい目くらましを喰らい続け、さらには隠すことなく強力な魔力の気配を溜めている杏子にも気づくことになる。見晴らしの良い屋上で3メートル超の大岩から狙われていれば、必ず奴はこっちも気にする。
そうなれば、もう目の前のキナコだけに集中できない。意識を分散させるだけでも、真正面から殴り合うキナコの負担は軽減されるだろう。
それにバズズは自分の戦いには気の回る奴だ。ボンは何も気にせず目の前の敵だけに集中しそうだけど、勘のいいアイツは絶対に気にする。たとえ、こっちに『土星砲』を当てる気なんかなくてもね。
「勿論、当てられるチャンスあったら当ててもいいよ。でも絶対、キナコには当てないように、そこだけ注意して」
「大丈夫だって、任せとけ!」
「葉山君は杏子について、もし撃つ時はキナコとベニヲに伝えて。それから、あとどれくらい持ちそうか随時、僕に教えて」
「お、おう……残り三分の二って感じだぜ」
早くも魔力三分の一は消費してしまったか。激しく戦えば、それだけ消耗も激しくなりそうだし、あまり時間はかけられない。
「僕はバズズを仕留めきるための準備をする。葉山君は、なるべく霊獣で時間を稼げるよう頑張って欲しい」
「へっ、さっきはただの置物だったからな……ここで頑張らないと、男が廃るってやつだろ」
土壇場でこそ頼れる葉山君は、立派な男だよ。
こういう不測の事態ってのがあるから、さっきの戦いで下手に魔力使わせなくて良かったよ。
「レムと姫野さんは僕についてきて」
「はい、あるじ」
「ええぇ、なんか嫌な予感しかしないんだけどぉ……」
「僕の本体は準備を、前線指揮は分身がするから。それじゃあみんな、行動開始だ!」
「プゥウガァアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「————へっ、なかなかやるじゃねぇか、よぉ!」
実に殴りごたえのある巨大な熊のモンスターに、嬉々として拳を撃ち込む。
こういうデカくて強い奴との真っ向勝負こそ、戦いの醍醐味だとバズズは思っている。『巨大化』というあまりにも強すぎる力を得た今となっては、自分と対等に戦える相手を探すだけでも一苦労である。
元より、ゴーマは好戦的な種族だ。中でもバズズは随一の戦闘狂だと自負している。軟弱な卵生まれではなく、その身一つで誕生した『祝福の子』として、図抜けた力を発揮してきた。
その激しい闘争本能と鋭い直感によって、バズズは物心ついた頃から己が戦うべき敵を探し、挑み、そして勝利し続けてきた。俺こそが最強。いつか必ず最強に至る存在だと、まだゴーヴだった頃から思い続けてきたのだ。
それを証明するように、数々のモンスターを倒し、時には同族と決闘し、最強への頂を一息に駆けあがるように成り上がって来た————そして、オーマによって大戦士と認められたその日に、人生で初めての敗北を味わった。
ザガン。王国の誇る大戦士長。オーマが最も信頼する、最強の戦士。
同格の大戦士となったことでついに挑戦権を得たのだが、手も足も出なかったとは、正にこのこと。
しかし、一度の敗北でその闘争心が消えることはない。むしろ勝利への渇望でますます激しく燃え上がる。それはきっと、必要な敗北だったのだ。バズズが戦士として、更なる高みへ登るための。
「コイツは竜並みに強ぇモンスターだ……けどなぁ、所詮は獣だぜぇ!」
バズズは鋭い呼気と共に、目にも留まらぬ二連打を熊に叩き込んでたたらを踏ませる。次いで、間髪入れずに振り上げた拳を追撃————ではなく、大きく後ろを薙ぎ払うように裏拳を放った。
「グゥウウ、ギャン!」
「はっはぁ! 鼻っ面に直撃だなぁ、犬っころ!」
バズズの真後ろから飛び掛かって来た、これも巨大な狼のモンスターを迎撃した。
同格の巨躯を誇るモンスターと二対一。それでいて、モンスター同士はしっかりと協力できている。
厄介なことこの上ない。恐らく、ボン辺りではいいように翻弄されて負けてもおかしくないだろう。
だが、自分は負けない。最強の戦士へとなる、このバズズ様は。
「これが技ってんだ、覚えときな」
ザガンに屈辱的な惨敗を喫した後、バズズは技を磨き始めた。
元より優れた身体能力と炎の魔力。そして最強の強化魔法『巨大化』。しかしザガンにこの拳を届かせるためには、技が必要だった。より効率的に、効果的に、洗練された戦いの技術。
戦い方を教える師などという存在はいないゴーマ文化の中で、ザガンのように長い実戦に身を置き、自ら編み出し、鍛え上げ、磨き抜いた、戦いの技は正しく『武』そのもの。
勝つためには、最強になるにはソレが必要だと知ったバズズは、貪欲にそれを追求してきたのだ。
「だが、俺の技はまだまだこんなもんじゃあねぇぜ。見せてやる、この俺の編み出した必殺技をぉおう!?」
パァン、と突如として目元で弾けた眩しい光に、これから繰り出そうとした必殺技の構えを解除した。
突然の目くらまし。しかし、その瞬間の攻撃を警戒し、反射的にステップとガードの体勢をとっていたのは、バズズの鍛錬の賜物でもあった。
「ちいっ、このニンゲン共がぁ、戦士の戦いを邪魔しやがってぇ!」
楽しい勝負につまらない横槍を入れてきた存在を、バズズはすぐに認識した。
この巨大な肉体を持つ者同士の神聖とも言える戦いに、全くついていけないだろうとニンゲン共は放っておいた。実際、戦い始めてから奴らは手出しをしなかった。
だが、気が付けばニンゲンは二体一組となって、左右へと展開。そして、熊と狼の攻撃の合間を縫うようにして、自分の目を潰すように光や炎が弾けるモノを投げつけてくる。
「クソが、やっぱりまずはテメーらからぶっ潰してやるぁ!」
「プガァアアアアアアアアアアアアアッ!」
「オオォオオオオオオオオン!」
しかし、ニンゲンを狙おうとすれば、すかさず熊と狼が体を張って止めに来る。
どうやっているのか、これほど強力なモンスターをニンゲンは味方として行使しているようだ。熊と狼は絶対にニンゲンには手出しをさせない、という強い意思を感じさせる動きを見せる。
「がぁああああ、っぜぇ! マジでウッゼぇなクソニンゲンがぁ!」
弾ける光に片目をつぶりながら、腕を上げてガードの体勢。
「プンガァアアアアアッ!」
しかし、半端なガードを突き破るように、強烈な熊の一撃がバズズを襲う。
「ギャンギャン! グゥオオオオオオ!」
「ぐうっ、退けよぉオラァ!」
崩れた体勢のところに躍りかかって来た狼に噛まれ、引っかかれ、強靭な巨人の体から血飛沫が上がるが、深手となるよりも前に力任せに引っぺがし、そのままぶん投げた。
「ふぅ……この俺が、ここまで押されるとはなぁ……」
バズズの全身には、すでに幾つもの傷跡が刻み込まれている。
どれも致命傷には遠いが、熊の剛腕と狼の爪牙は確実にダメージを与えている。対するバズズの方は、二体の攻撃を跳ね除ける程度で、有効打はまだ与えられていない。
劣勢は明らかだ。そして、この状況に陥っているのは間違いなく、要所で飛んでくるニンゲンの妨害。これのせいで、ここぞという時に攻めきれない。のみならず、攻撃チャンスで逆に相手の反撃を受けることとなっていた。
さらには遺跡の上から、強力な土魔法がこちらをずっと狙っているのも注意を逸らされる原因だ。恐らく、あの巨大な岩を発射してボンを殺したのだろう.
あのサイズの岩なら、巨人の体で受けても相当なダメージは免れない。まして、変身前の生身で喰らえば即死である。
もしもアレの直撃を許せば、ただでさえ劣勢なところが、もう取り返しがつかない危機的状況にまで陥ってしまうだろう。
かといって、このまま戦い続けても、いつかは体力が限界を迎える。
「けど、いつまでも続かねぇんだよなぁ?」
そして、ついにその時がやって来る。
「プガガ!」
「クウゥーン……」
輝く光と共に、みるみる体が縮んでいく熊と狼。
最初から分かっていた。この二体は『巨大化』と同じような破格の強化魔法によって大きくなっているのだと。
だが、そこから感じる魔力の気配から察して、その術の完成度はオーマが長年かけて編み出した『巨大化』には劣る。あるいは、二体を大きくしたニンゲンの術者本人がまだまだ未熟だからか。
どちらにせよ、二体の巨大化がそう長くもたないことは分かり切っていた。
「できれば、デカい内にぶっ倒したかったけどなぁ」
ザガンによる敗北から、バズズが学んだことはもう一つある。戦いで勝つには、時には耐え忍ぶ必要もある、ということ。
故に、バズズは耐えられた。二体の変身が解除され、絶対的な優位が自分に回ってくるまで。焦ることなく、逸ることなく、耐えたのだ。
「おい熊公と犬ころ、お前らは最後に食ってやる。いい戦いぶりだったからぁ」
言葉など通じていないが、それでも戦士としてそう告げた。もっとも、たとえ人の言葉を介したとしても、魔力が尽きてその場で倒れている二体に、声は届かないだろうが。
「まずは戦いを散々邪魔してくれたクソ共を始末しねぇと……っと、その前に」
傷だらけの全身血濡れとなった自分の体を眺めてから、バズズは大きく腕を広げた。
足元では、ニンゲン共がギャアギャアやかましく騒いでいる。奴らの汚らしい言葉など理解できるはずもないが、泣きわめいて逃げ出そうとしない以上、まだ勝てる、と思っているのだろう。
ニンゲン如きが、どこまでも舐めやがって。
だから、まずは奴らに絶対的な絶望を与えてやることにした。二体のモンスターの奮戦で、相手は瀕死、もう少し押せば勝てる、なんていう甘すぎる希望をぶっ潰す。
「————ふんっ! 燃えろっ『肉体活性』っ!」
愚かなニンゲン共に見せつけるように、大きく両腕を掲げた逞しいポーズをとる。と同時に、バズズの全身が燃え上がる。
薄っすらとした赤い輝きを纏ったその魔力の炎に包まれ、バズズの全身の筋肉が脈動する。力を込めて膨れ上がった筋肉が波打つように蠢くと……そこに刻まれた傷が塞がれていく。
すでに流れた血を綺麗に拭い去ることはないが、数秒の内に大小様々なバズズの傷跡は全てが治っていった。
「見たか、ニンゲン。俺は回復も使えるんだ」
ざわめく奴らの気配が分かる。
邪悪なニンゲンには、哀れに死にゆくことへの慈悲も、巨人を相手に果敢に戦った健闘も、必要ない。奴らはただ、無残に死ね。残酷に死ね。この世に生まれてきたことを後悔しながら死ね。
なぜならニンゲンとは、邪神の作り上げた生まれながらの純粋悪。偉大なるゴーマを滅ぼそうとする、最低最悪の天敵なのだから。
「戦士の誇りの欠片もない、卑怯なだけのクソ共が! 絶望して死にやがれぇ!」
ゴミ虫のように足元に蠢くニンゲンを踏みつぶしてやろうと勇んで叫んだ、その時。
バズズの鋭い直感に、ゾっとするような悪寒が走る。
それは、ただ強力な魔力の気配というわけではない。悪だ、邪悪だ、とニンゲンに対して散々叫んで来たが、バズズは初めて感じた気がする。
きっと、これが、このおぞましい魔力の気配こそが、本当の邪悪だと。
「な、なんだ……なんなんだぁ、テメぇは!?」
吐き気を催すような邪悪の気配の持ち主を、バズズは見た。
そこにいたのは、道の真ん中に立つ、ニンゲン。小さい子供のようなニンゲンだ。
だが、その子供ニンゲンは背骨と魔物の頭骨を組み合わせた異形の杖を掲げて、不気味な笑顔で声を上げた。
「ヨォーゴォーミィーヂィイイイ(喰らいつけ、『無道一式』)」
2021年6月18日
前々から『巨大化』は『赤き熱病』で無効化できるのでは、と言われていましたが、それができるとチートすぎるので出来ません。
これまであえて、無効化できない、と説明する機会がなかったので伏せるような形になってしまいましたが、別にここぞという時に「ふっ、『巨大化』は『赤き熱病』で無効化できるのさ!」と小太郎がドヤる展開はないので、今回、それはできませんという説明を入れました。




