第287話 小鳥遊の目
「ねぇ、レム、メイちゃんは」
フルフルとレムは小さく首を振った。
「うーん、やっぱダメか……でも、同じ階層にいるのは間違いないと分かっただけで十分かな」
残念な報告だが、焦るべきじゃない。そう自分に言い聞かせながら、僕は錬成陣に魔力を流し、作業に集中する。
「————なんだよ桃川、まだ起きてたのか」
「葉山君の方こそ」
「俺はトイレに起きただけだし」
夜中まで錬成陣と向き合っていると、葉山君に声をかけられた。
現在の仮拠点とした地下鉄ホーム(仮称)では、みんながハンモックに揺られて寝静まっている。起きているのは僕と、見張りを頼んでいるレムだけだ。
コンクリート剥き出し風の冷たい広間に、僕らの声だけが僅かに響いていく。
「なぁ、桃川」
「おいでよ。僕もちょうど、気分転換に話し相手が欲しかったところなんだ」
僕の隣、座布団代わりに敷いた毛皮に誘う。ついでに、すっかり味に慣れてしまったハーブティーモドキも淹れてあげよう。
湯気の立つカップに一口つけてから、葉山君は言った。
「なんか、ホントに人が死んでんだって、今更、思っちまったよ」
出会った時には、もうとっくにクラスメイトは何人も死んでいると伝えている。
彼自身、この異世界に落とされてから、何度も死ぬほどの目に遭って来たし、右腕を失う重傷だって負った。
人が死んでどうこう思うなんて、本当に今更……なんて、とてもじゃないが言えないよね。
「ついこの間、横道は死んだじゃん」
「いや、アイツもう完全にモンスターだったじゃねーか……」
人間として扱うのは無理筋だよね。多分、この異世界でもアイツほど人間離れ(物理)した奴はいないんじゃないかと思うくらいの化け物ぶりだった。
「そんでアイツらの話聞いててさ、マジでウチのクラスで殺し合いみたいなことに、なっちまったんだって」
「そうだね。でも、これ以上の殺し合いを許すつもりはないよ」
「だから、小鳥遊を……殺すんだろ?」
「うん、僕が殺す。安心してよ、葉山君に人殺しをさせるつもりはないからさ」
「馬鹿野郎! こんな状況だぞ、俺だってやろうと思えば————」
「————いいんだよ、人なんて、無理に殺すようなものじゃない」
そんな震えた手じゃあ、手元も狂っちゃうよ?
そっと、葉山君の震える左手に触れてみれば、今頃気づいたように、手を引っ込めた。
そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。
本当にクラスメイト同士で殺し合っている実感っていうのを、追い詰められた5人の姿を見て葉山君は心の底から抱けたんだ。人を殺すのも、殺されるのも、どっちも怖いし、恐ろしいことだから。
「けど、お前は……」
「そうだよ。僕は人を殺している。もう、何人もね」
今更もう一人くらい、小鳥遊という邪悪な裏切り者を始末するのに、何の躊躇いもない。
慣れた、っていうのとは少し違う。きっと、自分の中で人を殺すことに対する折り合いをつけられているのだろう。
僕は『呪術師』だからね。人を呪い殺すことだってあるのさ。
「葉山君、僕が怖い?」
平気で人殺しのできるサイコパスだと、そう思うかい。それとも、こんな極限環境じゃ仕方のない経験だったと割り切れる?
でも、君と出会った時に僕が人を殺しているなんて全く言わなかったのは、故意のことだからね。騙されたと、そう感じてしまうのも仕方がないとは思うよ。
「見くびんなよ、桃川。お前は俺の、命の恩人だ」
「それはお互い様でしょ。葉山君がいなかったら、ここまで来れなかった」
「俺が一人だけだったら、結局、キナコとベニヲも道連れにしてどっかで野垂れ死んでただけだからよ」
それはどうだろうね。僕と出会わなければ、君は君で今もみんな仲良く森を旅していたと思う。
より危険な戦いへ、君達を巻き込んだ自覚はあるんだ。
「それに、俺だけじゃねぇ。見てて思ったよ、アイツらの世話も、お前が焼いてきたんだろうってな」
「大したことはしてないよ。仲間だから協力し合う、当たり前のことをしてきただけさ」
「俺ら全員、クラスじゃお前とロクに話したこともねぇ奴らばっかだぜ。そんなのがこんだけ集まって、今は桃川を中心にして纏まってる……凄ぇよ、お前は。凄ぇ奴なんだって、俺はマジでそう思える。ここまで一緒にやってきて、自分でそう決めたんだ。だから俺は、お前を信じるぜ」
「……もう、そういうこと面と向かって言われると、照れるじゃないか」
割とマジで。なんだろう、このメイちゃんとも杏子とも違う、真っ直ぐな気持ちってヤツ? 本当に照れ臭いね。僕言ったじゃん、褒められなれてないんだって。
「なんだよ、マジで照れてんのか。可愛いとこあるじゃねぇか」
言いながら、葉山君が僕の頭を撫でてくる。
むっ、この絶妙な撫で加減! 流石、常日頃からキナコとベニヲを侍らせてモフモフしているだけあるな……
「でも、ホントにありがとね。信じている、とそう言われるのが、僕は一番嬉しいよ」
「そりゃ、クラス全員から濡れ衣着せられたらなぁ」
「まったくだよ」
この落とし前はきっちりつけるからな。呪術師としての責任をもって、小鳥遊には地獄の苦しみを味合わせて呪い殺さないとね。
「それで、実際のとこどうすんだよ? ゴーマは王国だし、小鳥遊と一緒にいる連中は、お前のこと敵視しているワケだろ?」
「葉山君は、どうしたらいいと思う?」
「えっ」
「具体的に言えば、この状況下で、明日からまず何をするべきか」
質問返しをしてみれば、葉山君は割と真剣に「うーん」と悩み始めてしまった。
でも、たまにはいいと思うんだよね。唯々諾々と指示に従うだけじゃなくて、自分で最善手を考えるってのも。
こういうところ、地味に下川が優れていたんだけど……いや、だからこそ、真っ先に小鳥遊に消されてしまったのだろう。
「うーん……やっぱ5人も食い扶持が増えちまったから、狩りに行かなきゃいけないんじゃねぇかな」
「確かに、それは必要なことだよね」
腹が減っては戦がってやつ。けれど、ロイロプスには大量の保存食を搭載しているから、今日明日、食料が底をつくようなことはないのだ。
まして、ここは無人島エリアとよく似た植生のジャングル。狩りの獲物も採取できる植物も豊富にあることが確定している。そうそう焦って食料確保に動く必要性はない。
ないんだけど、じゃあなんであの5人はこんなに飢えていたんだろう。全く、世話の焼けるクラスメイトだよね。
「じゃあ結局、何からやるつもりなんだよ」
「そんなに大それたことじゃないけどね————情報収集だよ」
特に、今回のようなシチュエーションでは、尚更ね。
最大の目的は、間違いなくこの最下層エリアのどこかに潜んでいる小鳥遊と、一緒にいる蒼真ハーレム、彼らの捕捉。5人の証言から、メイちゃんは例の遺跡に一緒に入っているというので、今でも彼女は蒼真パーティに同行している。
そしてもう一つ、ゴーマ王国というかつてない巨大な敵勢力が跳梁跋扈しているエリアだということ。奴らの繰り出す追撃部隊は勿論、セントラルタワー潜入に向けて王国内の情報収集も必要だ。
ゴーマ共に見つからずに忍び込めれば一番楽で良いのだけれど、警備が厳重過ぎて不可能な場合は、大規模な戦闘を吹っ掛ける必要もあるかもしれない。
そうなった場合の作戦立案のためにも、ありとあらゆる情報が必要なのだ。
「それじゃあ、いつもみたいに鳥を飛ばして偵察か?」
「基本的にはそれがメインだけど、ここにはまとまった情報を一気に入手できそうな場所があるみたいだからね」
「そんな都合のいい場所なんてあったっけ?」
「小鳥遊がアクセスした塔だよ」
というワケで、翌日、早速やって来ました。
いやぁ、流石はレム鳥の空中偵察能力。早々に例の塔と思しき場所を発見してくれた。
塔まで向かうメンバーは5人。アルファに変身したレム本体と、それに乗った僕。グリリンに乗った杏子。それから、上田と芳崎さん。
この二人は騎乗にそれほど慣れてるわけじゃないけれど、そもそも前衛戦士職として素で足が速いから、騎馬が必要ないスピードを誇る。万が一、ゴーマ部隊や予期せぬ強力なモンスターと遭遇した場合、素早い逃走ができる面子で固めた。
「間違いねぇ、ここが俺らのいた塔だぜ」
「この有様を見るに、そうみたいだね」
エントランスに入れば、激しい戦闘の跡と、渇いてはいるものの、夥しい血痕がそこかしこに残っている。ここ数日の内に、この場所で戦いがあったことを何よりも雄弁に物語っていた。
「マリ、大丈夫?」
「……杏子、アンタが一緒にいてくれなかったら、ちょっとヤバかったかも」
ここは野々宮さんが致命傷を負った場所でもある。
芳崎さんの顔色はあまり優れていない。そんな彼女の隣に立って、杏子が手を握っていた。
「上田君、僕らも手ぇ繋ぐ?」
「お前なぁ、俺だって吹っ切れたワケじゃねぇんだぞ」
純粋に心配してあげてるんじゃないか。
中井もまた、この場でザガンによって殺された。上下真っ二つの即死だったそうだけど……すでに熟練の『戦士』となっていた中井が即死するとは、やはりザガンというのは格の違う相手のようだ。
さて、エントランスで感傷に耽っていても仕方がない。
いつトラブルが発生するか分かったものじゃないし、さっさと用事は済ませよう。
「やった、ツイてるね。君らの荷物、丸ごと残ってるじゃないか」
上田に当時の状況を聞きながら塔を探索していると、荷物置き場としていた部屋には、そのまま数々の荷物が残されているのを発見した。
「おお、俺のスマホ!?」
「アタシのスマホもある!」
荷物を見て真っ先にスマホの確認とは、この現代っ子め。
でも数日放置だったので、当然、バッテリーはゼロ。充電器は小鳥遊所持だったから、二度と起動することはない……はずだったけど、こっちには『精霊術士』がいるからね。雷属性の精霊さん、お願いします。
「やった、ウチのスマホも残ってるじゃん!」
ああ、杏子は離脱したけど、ちゃんと持ってきてくれたんだね。野々宮さんの荷物の中に、杏子のスマホがあり、友人の心遣いに感激だ。
それじゃあ、もしかして僕のガラケーも!?
あっ、僕のは桜ちゃんにぶっ壊されたんだ。まだ許してねーからな、忘れるんじゃねぇぞ桜。
「荷物が残ってるのはラッキーだけど……」
ゴーマに全く漁られていないのは、ちょっと違和感が。
いや、そうでもないか。恐らく、逃亡したみんなを夢中で追いかけたからだろう。やっぱバカだなアイツら、敵の荷物なんていう情報の塊を放置していくなんて。
けど、それもそうか。基本的なゴーマの知能は石器を作って喜んでる原始人レベルだ。オーマやザガンという例外もいるが、たとえどんなに頭の良いリーダーがいようが、率いられるゴーマの知能が上がるわけじゃない。
つまり、人間の軍隊並みにゴーマ集団が戦術的に機能するのは、知能の高いリーダーの指示が届く範囲となる。リーダー以外には頭脳を必要とする仕事を割り振れる存在がいない。
だから、敵の拠点に奇襲をかけた後、敵の荷物を漁って情報分析しようとか、そういうことを考えられる奴が一匹もいないのだ。
「とりあえず、荷物は全部グリリンに積んでおこうか」
こういう時、グリムゴアみたいな大型車があると便利だよね。いくらパワーとスピードに優れる前衛戦士職とはいえ、大荷物を背負って走れとは頼みにくい。
予定外の収穫をしてから、さらに塔の探索を再開。
周囲に放っているレム鳥達からは、異常の報告はない。まだ多少の調べる猶予はあるだろう。
「ここだな。そこの台座みてーなとこで、小鳥遊が何か調べるつって、弄ってたぞ」
「お馴染みの石板コンソールだね」
僕に山越えショートカットを決意させてくれた、塔にあった祭壇と全く同じモノがそこにはあった。
小鳥遊がコイツを弄ったのは、フリではなく、本当にこれにアクセスして情報収集ができたのだろう。だとすれば、コイツはまだ生きているし、それなら僕でも多少は情報を引き出せるはずだ。
「さぁ、僕にも素敵な情報を寄越せよ————」
まずは、前と同じホラグラムマップが展開される。
「おお!?」
「なにコレ、初めてみた」
ああ、そういえば、小鳥遊は情報漏れを防ぐために、石板弄る時は他人の目には見えないようホロ表示をオフにしているんだったな。
お前、これ他に古代語解読できる人がいてホロ表示させたら、手ぇ抜いてたの速攻バレるじゃねぇかよ。ヤマジュンとか、多分普通に起動できるぞ。
「————なるほど、ここに天送門があるのか」
投影されたホログラムマップには、このエリアの広大な全体象が表示されている。その時点で、中央に突き立つセントラルタワーが見えている。エリアを構成する平面と、その中心を貫くタワーとで、独楽のような形状となっている。
そう、タワーは上だけでなく、下にも伸びているのだ。
そして、その一番下の階層に、特別な反応を示すアイコンが点灯していた。
「やっぱり、タワーは登るんじゃなくて、下がるのが正解みたいだ」
しかし最下層エリアとは言うものの、天送門のあるタワー深層部には、その周囲にある程度の空間がある。
タワーから半径1キロほどの範囲は、円筒形の空間となって真下に広がっているのだ。
ということは、タワーを中心に広がるゴーマ王国は、ちょうど天井部分に築かれたということか。落とせれば楽に一掃できるんだけど、古代の構造物を破壊する手段などないので、不可能な作戦だろう。
「ゴーマ王国の表示がないのは……元々あった構造物じゃないからかな」
マップデータの更新は遥か古代で止まっているようだ。
ホログラムマップをよく見てみれば、このエリア全体は元々かなり広大な都市だったことが窺える。その大半はジャングルに飲み込まれ、建築物さえも残らず土に帰ってしまった状態のようだが、5人が襲われていた遺跡街のように、当時の面影を残す場所もチラホラとあるようだった。
「おお、僕らの地下トンネルも分かるぞ」
拡大してみれば、最下層エリアの地下を走る、蜘蛛の巣のように張り巡らされた地下トンネルも表示されていた。
これだけ複雑に入り組んでいれば、ゴーマもウロつかないか。
でも複雑すぎて、見ただけじゃ覚えきれないな。ノートに写すにしても限度ってもんがあるよ。
「ねぇ、杏子のスマホはバッテリー残ってない?」
「ウチのは電源切ってたから、まだちょっとだけ残ってるわ」
「じゃあ、それでこのマップ撮影してくれない?」
「オッケー、任せなよ、ウチそういうの得意なんだよねぇ————イェーイ!」
「いや自撮りじゃなくて、マップだけ撮影して」
キメ顔の自分を映さなくていいよ。芳崎さんも一緒に映ろうとしないでよ。
これでバッテリー切れたら、充電してからまた撮影に戻らないといけないじゃん!
「……まぁ、こんなもんでいいかな」
結局、スマホ借りて自分で撮ったよ。その方が早いし、正確だった。
ひとまず、これで全体マップ、タワー周辺、エリアの東西南北、そして地下トンネルまでマップ情報は手元に置いておける。
レムの偵察情報とすり合わせて行けば、より正確なエリアの地形と状況が把握できるだろう。
「おい桃川、俺らが見捨てられた遺跡ってどこか分かるか?」
「確か、この辺の洞窟から入って行ったんだよね?」
現在位置の塔から、当時の彼らが逃げ込んだであろう洞窟の場所はすぐに割り出せた。
確かに、その洞窟は割と深く、他のトンネルだか洞窟だかとも合流したりしているが……
「それらしい施設は映ってないな」
「他の場所なんじゃねぇのか?」
「いや、これは多分……施設の位置情報が秘匿されているんだ」
恐らく、この石板コンソールで閲覧できる情報というのは、かつて人がここで生活していた頃、一般人が自由にアクセスできるものだったと推測される。
だが、全ての情報が一般人如きに開示されるはずもない。漏れたら困る施設の情報は、当然だが古代でもあったことだろう。
例えば、軍事施設だとか。
「小鳥遊の潜伏先が軍事施設だとすれば、古代兵器とか持ち出してきたりするかも……」
どうしよう、巨大人型ロボットとか出して来たら。そんなSF兵器が登場したら、僕悔しくて憤死しちゃうかも。僕も欲しい。専用機とか欲しい。
「そんじゃあ、現地にいって確認してみっか? お前なら、あのゲートも開けられるんじゃねぇのかよ」
「ええー、軍事施設の入り口なんて、絶対防衛用の兵器あるじゃん。勝手に動いた、とかでビーム撃たれて殺されそうだからイヤだよ」
小鳥遊が選んで逃げ込んだ場所なら、ゴーマ如きでは絶対に落とせない安全性が保障されるだろう。施設周辺も監視できそうだし、僕らの姿なんか見つけ次第、排除にかかりそう————
「待てよ、監視って……」
僕は一旦、ホロマップを閉じた。
石板には魔法陣のようなものが目まぐるしくスクロールされてゆき、マップの代わりにホログラムのモニターが投影される。
そこに描き出されるのは、僕では半分も解読できない文字の羅列。この石板にあるマップ表示以外の様々な機能などが選択できるようになっているとは思うのだが、僕の古代語解読レベルではほとんど分からない。
分からないけれど……僕は気づいた。
この石板コンソールは、現在ほとんど全ての機能がオフになっている。マップ情報だけは僕らが利用したらか、アクティブとなっている。
古代人も地球人類と似たような感性をしているのか、アクティブになっている機能は緑に光る文字で表示される。
一方で、赤で表示されるのはオフになっているものだと推測される。
マップの他にも、幾つか緑で点灯されている謎の機能がオンになっているようだが……
「————小鳥遊、お前、見ているな」
返事はない。だが、僕は確信をもってそう言った。
オンとなっている緑文字の中にある、かろうじて僕が読み取れる単語には、『見る』、『瞳』、『場所』、『送る』、『秘密』、などが並んでいる。
これらから連想されるものは、監視だ。
恐らく、この古代遺跡全体には各所に監視カメラのようなものが設置されている。監視魔法かもしれないが、そんなのはどっちでもいい。
ともかく、遠くから他の場所の様子を見ることのできる機能が利用できるのだ。
小鳥遊は潜伏先の施設で、その監視映像を見てゴーマの動向などを探っているはず。そして、この塔にのこのこ顔を出した僕らのことも、奴はバッチリと見えているだろう。
ちぇっ、僕がこのエリアに到着して、追放された5人と合流できたことを、小鳥遊側に知られていないのは大事な情報アドバンテージだったけれど……バレてしまったのなら仕方がない。
「どうした、顔くらい出せよ引き籠り女め。んん、なんだよビビってんのか賢者様? なら、精々お前が崇めるクソビッチの女神に祈ってろよ。これからお前を追い詰めてやる。絶対に逃がさない。言っただろう、僕は必ず、お前を呪い殺してやるからな」
とまぁ、メッセージはこんなもんでいいだろう。
さて、小鳥遊に存在がバレちゃったし、下手にちょっかいかけられない内に、さっさとズラかるとしよう。




