第273話 割れる議論(2)
「おい、下川、貴様いい加減にしろよ。小鳥を襲った性犯罪者のくせに」
明らかに憤った態度で、明日那はそう言い放った。
瞬間、学級会は凍り付く。
当然だ。なぜなら、その言葉はクラスをまとめるためのルールに違反するものだから。
「お、おいおい、剣崎さん、それは言ったらダメなやつじゃねぇの」
「そうだ、今のは言い過ぎだぞ」
思わず、といったように硬直した下川に変わり、即座に反論したのは友人である上田と中井の二人である。
だが、吐いた唾は飲み込めない。明日那としても、引き下がる気はなかった。
「黙れ、貴様らも同じだろうが。よく恥ずかし気もなく、平気で口をきけるものだな」
「明日那、やめて。もうそれ以上、言ってはいけないわよ」
「いいや、涼子、言わせてもらう。こんな奴らに小鳥が泣かされて、私は黙って見ているだけなんて、情けない真似はできない!」
「うぅ、ふぇえ……明日那ちゃーん……」
決然と言い放つ明日那に、感極まったように涙を浮かべて、彼女へ抱き着く小鳥である。
凛々しい美少女とか弱い美少女が寄り添う姿は、それはもう大層な麗しさであるが……重大な掟破りであることに変わりはなかった。
「……なぁ、委員長、流石に今の発言を認めたりはしねぇよな? それを認めちまったら」
「分かっているわよ、下川君。お願いよ、明日那、落ち着いてちょうだい」
「私は、何一つ間違ったことはしていない!」
「いいえ、間違っているわ。それはクラスで決めたルール違反なのよ。過去の遺恨を持ち出すのは、絶対にしてはいけない」
小太郎のレイナ殺しをはじめ、様々な遺恨が絡み合った末に、学園塔に集結したクラスメイト18名。
彼らが曲がりなりにも一丸となり、ヤマタノオロチ討伐を成し遂げたのは、最初に学級会でルールが定められたからだ。その中でも特に大きな意味を持つのが、これまでのダンジョン攻略中に犯した罪を、全て保留にすること。
クラスの誰もが持つ罪という名の明確な非を、追及するのを全面的に禁止にしたからこそ、多少の諍いが起こっても、取り返しのつかない事態に悪化することは避けられた。
明日那が下川を「性犯罪者」と呼んだことは、長らく守られたこのルールを、真っ向から破る発言である。
「頭を冷やしなさい。これ以上は、本当に取り返しのつかないことになるわ」
「だからといって、小鳥が責められるのは見過ごせない!」
「これはルールなのよ。クラスがまとまるための、大切な————」
「————いいえ、涼子、そんなものは、もうルールとは呼べませんよ」
そう言って口を挟んだのは、桜であった。
ギョっとした表情を涼子が浮かべたのは、桜が明日那の味方をすると瞬時に察したからだろう。
いいや、それはただ明日那の擁護だけに留まらない。桜は、曲がりなりにもまとまっているこのクラスのルールを、秩序を、破壊するつもりだ。
「そもそも、罪を不問にするなどというふざけたルールを設けたのは、桃川です。あの男が裏切った今ならば、分かるでしょう。あれはクラスをまとめるためのルールなんかではない。ただ、自分が有利に立ち回るためだけの、小賢しい策に過ぎません」
事実、このルールで最も恩恵を受けたのは小太郎である。
誰よりも人を殺し、レイナに至っては悠斗達の目の前で殺された。
その弁護しようもない重罪を、極刑どころか一切の有罪判決を跳ねのけ、実質の無罪を勝ち取ったトンデモ理論であるとも言える。
「そうだとしても、今更、昔の罪を持ち出して、非難していい理由にはならないわ!」
「その罪は清算されたワケではないでしょう。犯した罪を償うのは当然のこと……その三人は、そんな当たり前のことも忘れて、よくも小鳥を責められたものですね」
「な、なんだよ、それ……俺は……」
「そうだ、桜の言う通りだ。お前らはもう少し、分を弁えろ!」
掟破りの禁じ手による猛攻に遭い、流石に下川も咄嗟には言い返せなかった。委員長も、ここまで桜が開き直るとは想定外であったろう。
桜と明日那によって、勢いで下川が非難される流れとなるが、
「おい、ちょっと待てよ」
「アンタらさ、好き勝手言い過ぎじゃねぇの?」
そこで声を挙げたのは、意外にも、ジュリマリコンビであった。
「野々宮さん、芳崎さん、彼らの肩を持とうとするのは、感心しませんね」
「上中下トリオが性犯罪者で発言権がないって言うならさぁ、私が言わせてもらうわ。ぶっちゃけ、小鳥遊、怪しすぎ」
「剣崎に泣きついてねーで、自分で何とか言ったらどうなんだよ、この情報後出し女が」
「なっ!?」
思わぬ相手から、思わぬ反論を喰らったと、桜と明日那も面食らう。
しかし、野々宮純愛と芳崎博愛は決して、蒼真派閥ではない。天道龍一に思いを寄せるだけの、恋する女子である。
そう、この二人は蘭堂杏子と同じく、龍一とずっと一緒にいたが故に、自らが手を汚すようなことは一度もなかった。地底湖で横道が襲ってきた時ですら、実際に相手をしたのは龍一だけである。
つまり、この二人はクラスメイトの誰も手にかけていないし、傷もつけていない、最もクリーンな人物でもあった。
「二人とも、どういうつもりですか」
「まさか、お前らも桃川に寝返る気か! 正気じゃないぞ、あんな裏切り者に」
「ふん、アンタらこそ、ホントは小鳥遊と共謀してんじゃねぇのか?」
「自分らがメチャクチャ言ってるって自覚あんのかよ。剣崎、アンタの方がよっぽど正気じゃねぇだろ」
「何故、どうして小鳥を疑うのですか! 桃川の裏切りは明白です、あんな男の醜い言い逃れに耳を貸してはいけません!」
「必死すぎて逆に怪しいぞ蒼真。そういやぁ、桃川が証拠だって言ったガラケーを速攻でぶっ壊したのはお前だよなぁ?」
「馬鹿め、そんなものアイツの罠に決まっているだろう! 桜はそれを見抜いて、すぐに破壊したのだ。感謝こそすれ、非難される謂れなどない!」
「そんなもん聞いてからでも遅くねぇだろが。あそこで勝手に証拠壊しやがって、話し合いで解決できるチャンス潰したのはお前の責任だぞ蒼真!」
「違います、私は————」
「うるせぇ、事実だろが、言い逃れすんじゃあ————」
「————やめなさいっ!」
ヒートアップする女子同士の言い争いは、委員長の怒声によって止められた。
再び、水を打ったように静まり返った場で、涼子はさらに続けて叫ぶ。
「こんな……こんなことで言い争って、一体なにになるって言うのよ! 感情的な発言はやめなさい、殺し合いになるってのが、まだ分からないのっ!?」
どっちが感情的なのか、などと茶化せる者はいなかった。
涼子は荒い息を吐きながら、眼鏡の奥で鋭い眼光を輝かせてクラスメイト達を見渡した。
「りょ、涼子ちゃん……」
「大丈夫よ、美波、私は落ち着いているわ」
思わず、といったように声をかけた美波に対して、涼子はかすかに苦笑いを浮かべて言った。
これ以上、怒りに任せて怒鳴ったところで、どうなるものでもないということは本人も分かっているのだろう。
「悠斗君、桜と明日那には、貴方からよく言い聞かせておいて」
「けど、委員長————」
「まさか、貴方まで二人に賛成するだなんて言わないわよね?」
「……いや、分かってる。桜、明日那、少し席を外そう」
「兄さん、そんな」
「待ってくれ、蒼真、私は————」
「いいから、二人とも一緒に来るんだ。今は距離を置くべきだ」
そう悠斗は二人を説得するが、それでも尚、ごねる二人の手を握って、半ば強引にその場から連れて退室していく。
「そ、蒼真くん」
「小鳥、貴女はここに残りなさい」
さりげなく悠斗達についていこうとしていた小鳥を、涼子は鋭い声で呼び止める。問題の渦中にある人物を、まだ退席させるわけにはいかない。
「ううっ、でもぉ……」
「私は委員長として、クラスメイトの意見は平等に聞くわ。いい、小鳥、私は貴女を過剰に庇うこともしないけれど、不当に扱うこともしない。みんなからの疑惑を晴らしたいなら、自分で言いなさい」
容赦のない涼子の言葉を受けて、小鳥は涙目でコクコクと頷くことしかできなかった。
「下川君、ごめんなさいね。桜と明日那は、売り言葉に買い言葉、二人とも感情的になってしまったせいなの。本意ではない、と許してくれるかしら」
「はぁ……今のを許せるかどうかは、二人の態度次第だろ」
「先にルール違反な発言をしたことは、後できちんと謝罪させるわ。けれど、それ以上は求めないでちょうだい」
「分かってるって。別に、俺らだって揉め事を起こしたいワケじゃねぇからな」
この件で桜と明日那の非を追求したところで、良いことなど一つもない。あの二人がますます臍を曲げてしまえば、恐らくは取り返しのつかないレベルでクラスに亀裂を入れることとなる。
すでにクラスの和は乱れてしまっているが、それでもまだ、全員の結束を諦めるわけにはいかない。
「野々宮さんと芳崎さんも、ごめんなさい。桜が証拠の携帯を壊したことについては、デリケートな問題だから、これ以上は言わないでおいて欲しいわ」
「それは委員長が謝ることじゃねぇだろ」
「まぁ、ひとまずは保留ってことでもいいけどさぁ、いつか白黒つけなきゃいけない時も来るかもね」
二人と激しい言い争いを演じたジュリマリだが、ひとまずは矛を収めてくれるようではあった。
「参考までに聞かせて欲しいのだけれど、二人は、今は桃川君の言い分を信じているのかしら」
「桃川を信じるっつうか……ほら、杏子はアイツにくっついて行ったじゃん」
「だから、杏子が桃川と一緒に戻ってきた時は、ちゃんと受け入れてあげたいワケ」
どうやら二人は陰謀云々よりも、純粋に別れてしまった友人の身を案じる気持ちの方が強いらしい。
確かに、いざ小太郎と杏子の二人が戻ってきた時、できれば再び争うような真似は避けたい。
毒を盛ったのが、小太郎か小鳥か、あるいは全く別の第三者によるものか……いずれにしても、正面切っての殺し合いだけは避けたいところだ。
「うぅ、そこまで蘭堂さんのことを思っているなんて、凄い友情だよぉ」
「そうね、美波」
素直に美波が感動すると、流石に二人も恥ずかしそうに顔を逸らした。女の友情は儚いというが、ギャルの友情は思いのほか厚かったらしい。
「さて、今は三人退席してもらったけれど、議論は続けましょう」
結局のところ、議論はふりだしに戻ったまま。
現状を打破するには、タワーへ到達するしかない。
ここから外への脱出を行おうとしても、最下層は封鎖状態にあるため、抜け道は存在しないと小鳥は断言している。
「なぁ委員長、先に言っておくけど、この状況は小鳥遊さんの疑いを強めることになるってのは、分かってくれてるか?」
「ええ、勿論よ」
下川の指摘に、涼子はやや渋い顔で頷く。
二人とも、小太郎が叫んだ暴露話の内容をしっかりと覚えている。その上で、小鳥が黒幕であった場合、今の逃げ道がなくタワーへ挑むしかない、と言う状況は小鳥にとって都合が良いものとなる。
「『勇者』のために俺らを犠牲にするってんなら、ダンジョンで戦いが起こらなきゃならねぇワケだ」
「ゴーマ王国を突破してタワーへ至る、というのはそれを狙うのに相応しいシチュエーションだわ」
「なんなら、あのタワーにもラスボスとかがいて、死人がでるレベルに強ぇんだろうよ」
そうして、仲間を犠牲に進み、ついに天送門に辿り着いた時————生き残っているのが蒼真悠斗と小鳥遊小鳥の二人だけであるならば、見事に陰謀は成功したということになる。
「違うもん……小鳥は何にも、悪いことしてないもん……」
「うー、わ、分かったから、もう泣くのはやめてほしいかな、小鳥遊さーん」
メソメソする小鳥をあやす者が誰もいなくなったので、仕方なく美波がやることになってしまった。物凄い苦笑いを浮かべて、グズる小鳥を慰める過酷なお仕事である。
「けれど、本当にここから出る方法がなければ、無理をしてでもタワーに行くしか方法はないわ」
「それはしょうがねぇべ。流石にここで一生暮らすなんてのは御免だからな」
「ここはタワー攻略と最下層脱出、その中間案として、どちらの可能性も探ることにしましょう」
最終的に、涼子が出した結論である。
タワーへ入るための偵察と手段を模索しつつ、同時並行で他のエリアへ飛べる妖精広場や転移魔法陣のある設備、通路の探索を行う。
両方の作業を同時並行となるので、効率は落ちるが……それでも、生き残るための可能性を少しでも上げるためには、現状でとれるベストな選択である。
「分かった、それしかねぇべ。脱出路の探索は俺らがやる。タワーの方は、蒼真達に頼む」
「無理に一緒にやるよりも、その方がいいでしょうね」
「けど、夏川は貸してくれよ。こっちも見てくれなきゃ、隠し通路とか見つけられねぇからな」
「ええ、こういうことは美波が一番得意だから。働いてもらうわよ」
「ええぇー!? 私だけ大変なのはイヤぁ!!」
そうして、最後の最後に夏川美波が割を食うという結末となって、ひとまずの行動方針が決まったのだった。
クラスの和に大きな亀裂が入ることになった今回の学級会だが、最終的なこの方針には桜と明日那も了解を示し、どうにかクラスの団結は保たれ、涼子は委員長として安堵するのだが……
その日の晩のことである。
「……うーん」
下川はやけに寝つきが悪かった。
学級会で色々と言い合ったせいで、気持ちが高ぶったか。それとも学園塔のベッドより、このサバイバル用の寝袋の寝心地が劣るせいか。
眠れないせいで、頭の中にはグルグルととりとめのない思考ばかりが回り、解決策の出ない不安感が募るばかり。
安らぎへ誘う眠気は遠ざかり、眼が冴えて仕方がない。
「はぁ……くそ、全然寝れね————っ!?」
諦めの境地と共に、とうとう瞼を開いた時だ。
この部屋は、万が一の時はすぐに動き出せるよう、微かに灯るカンテラの光に照らされ、最低限の視界は確保してある。だから、見えた。はっきりと、見間違えようもなく。
目を開けた下川の前に、ソイツはいた。
「————小鳥遊っ!」
と、叫ぼうとしたが、声が出なかった。
喉がつかえたように。あるいは、樋口と上田と中井とカラオケで徹夜した終盤に、声が枯れ果てたように。
声が、一言たりとも出てこなかった。
口から洩れるのは、ヒューヒューという情けない吐息だけで、言葉どころか、呼吸の仕方すらも忘れてしまったかのようで————そこで、自分の体も動かないことに、ようやく気付いた。
息苦しく、鉛のように重い体は、指先をピクリとも動かせない。
「ああ、下川君、起きてたんだ?」
何故、ここにいるのか。どうして、こんな金縛り状態なのか。混乱の極致にある下川の心中などまるでお構いなく、小鳥遊小鳥はいつもの調子で話しかけてきた。
小鳥の愛らしい、単純な好みでいえばストライクど真ん中の幼い美貌が、寝転がっている自分の顔を間近で覗き込んでいる————だが、この高鳴る心臓の鼓動は、純粋な恐怖によってのみ動かされていた。
「小鳥遊、お前は————」
「————うん、そうだよ。犯人は、私」
声は出ない。だが、何故か小鳥には自分の思ったことが届いていると、下川は察する。
けれど、それ以上のことは考えられなかった。テレパシー能力でも持っているのだとか、分析するどころではない。
怪しいとは思っていた。学級会で正直に疑惑を打ち明け、追及した。
けれど、まさか……まさか、本当に犯人であることを、こうもあっさりと告白するとは。
「だから、私がこれから何するか、分かるよね?」
にっこりと、誰もが見惚れる純真な笑顔。とても恐ろしくて直視できない。
下川は必死に声を絞り出そうとしながら、助けを求めて唯一動く目だけをギョロギョロさせた。
視界の端には、寝息を立てる上田と中井の姿。ここはもう学園塔ではないから、寝るときは個室ではなく、広い部屋での雑魚寝だ。
こんなすぐ傍にいるというのに、眠りに落ちた二人が目覚める様子は欠片もない。友が、仲間が、どれほど近くにいようとも、この一言も発せられない状況下では、孤立無援も同然であった。
「小鳥ね、さっきの学級会、すっごい困ったんだよ。お前が余計なことを言い出すから」
「や、やめてくれ……助けてくれ……」
「なにあれ、桃川の真似? 馬鹿じゃないの、水芸するしか能のないクソザコ魔術師が、よくも小鳥の邪魔してくれたよねー?」
微笑みながら、普段の小鳥からは想像のできない罵倒が飛んでくる。間違いなく、これが本性。
「やめろっ、俺を殺したら、お前が犯人だって絶対にバレるぞ!」
「うん、だから、どうやって消そうかなーって悩んでいたんだけどぉ……」
声には出ないが、思いは伝わる。下川は必死に、小鳥へ向けて叫ぶ。短絡的な真似はよせと。自分が真犯人だとは、蒼真悠斗をはじめ、まだクラス全員には伏せておきたいはずだ。
けれど、それを堂々と白状した。
下川は頭脳明晰とまでは言えないが、十分に察する頭のキレはある。だから、本当はもう、自分でも分かっていた。
小鳥にはもう、自分を始末するための算段がついていることを。
「えへへ、やっぱりこの世界で頼れるのは、神様だよね。小鳥、新しいスキルを授かったんだ。ついさっき、ね————下川、お前に試してやるよ」
冷酷な薄ら笑いと共に、小鳥はゆっくりと、見せつけるように下川へと手をかざす。
「い、いやだ、やめろぉ! 助けて、助けてくれぇーっ!」
無様に泣き叫ぶことさえ、下川には許されなかった。
カっと目を見開き、体中から冷や汗を垂れ流しながら、ただ、処刑鎌も同然の小鳥の小さな手のひらを見つめることしかできない。
「頼む、助けてくれっ、上田ぁ! 中井ぃ! 死にたくねぇよ、こんなところで————」
「このクソッタレ性犯罪者野郎が、地獄で野垂れ死んで来い」
そして、ついに小鳥の新たな魔法が効果を表す。
描き出される魔法陣は、寝ころぶ下川の真下に現れる。そして、そこから淡く輝く白い燐光が、瞬く間に下川の全身を包み込んでゆき、
「じゃあね、下川君、バイバーイ」
小鳥が笑顔で手を振ると、もうそこには、下川淳之介という男子生徒の姿は、影も形もなく消え去っていた。
『天罰刑法4条・追放刑』:それは天の裁き。何人も逃れることは許され————天罰の執行は、主に天使が担い————追放地の選定は、二度と戻らぬことがないよう、死が確約された魔の————よって、以上の者を天罰刑法4条に従い、追放刑に処す。




