第264話 横道討伐戦(3)
さて、とうとう双影による囮役が散ってしまった。これ以上、外で横道に消耗を強いることはできない。
「いよいよ、正面対決か」
即興で作り上げた横道迎撃用の教会前広場を眺める。
見た目としては、何もない。ただ、しっかりと直径10メートル、深さ5メートルの落とし穴は掘られている。
穴の中には、急いで書き上げた『果てる底無き』と手持ちの供物になりそうなモノを配置。ヤマタノオロチ戦では外殻突破のために使ったけど、今回は横道の巨体を攻撃するのに使う。単純に落とした相手を溶かすという点では正しい『腐り沼』の使い方である。
「準備が出来なさ過ぎて、めちゃくちゃ不安だ……」
今の僕に用意できた策は、この落とし穴一つきり。これで仕留められなければ、後はもう何もない。
一応、ヤマタノオロチ戦でトドメ用のバックアップとして用意していた虎の子のコア爆弾はあるのだが……コイツをここで爆破したら、僕らが無事では済まない。横道を一撃で吹き飛ばせる火力は期待できるが、使うのはちょっと危険すぎる。できれば使いたくはない。
だから、穴に落として皆で総攻撃、という原始人のマンモス狩りみたいなシンプルプランなのである。
「不安だが、後はもう、穴にかけることだけ考えよう」
僕は新たに作り出した分身を落とし穴の真上に配置した後は、ただ横道の到来を待つことにした。
外の天気は、吹雪ではないが、雪は降っている。またいつ荒れてもおかしくない、そんな空模様。
けれど今だけは、しんしんと雪が降るだけの、不気味なほどの静寂に包まれる。僕ら全員、ただ息を潜めて待つ。
そうして、5分か、10分か。その静謐は突如として破れられた。
「ぶははははぁ! ここだぁ、ここだなぁ、小太郎きゅんのいるとこはぁ!」
ちょうど広間の真正面から、横道は姿を現した。
通りのど真ん中を、あの気持ちの悪い巨大芋虫の体で駆け抜けてくる。
「僕はもう、逃げも隠れもしないぞ。さぁ、正々堂々かかってこい、横道!」
「とか言っちゃってぇ、それ言ってるの分身の方だよねぇ? でも食いつかずにはいられない、悔しぃいいいいいいいいいい!」
とか絶叫しながら、そのまま飛び掛かる勢いで、分身の僕へと大口を開けて横道が突っ込んできた。
ドドドドォオオオオッ!
そうして、落とし穴は無事に発動した。
まぁ、これだけ後先考えない猪突猛進ぶりで、かからないワケがないんだが。
「ぬぁああああ! なんだぁ、コレぁああああああああ!?」
落ちた横道が驚きの叫び声を上げるが、それは直後に絶叫へと変わる。
「うがぁああああああああああああっ、と、溶けるぅ! これなんか溶けてるぞぃ!?」
ぞいってなんだよ……じゃなくて、無事に『腐り沼』の毒は通用しているようだ。もしかすれば、毒耐性、腐食耐性、なんかでノーダメージってことも考えられたけど、通っているなら問題ない。
もっとも、あのデカい芋虫の体を溶かし切るには相当の時間がかかるだろうが。
「今だ、かかれっ!」
ここが最初で最後のチャンスだ。
僕と杏子、レムと屍人形、そしてキナコとベニヲも加えた、今戦える全員が教会から飛び出し、横道へと総攻撃をかける。
「今度こそブチ抜けぇ————『破岩長槍』っ!」
真っ先に飛んで来たのは、杏子の一撃。
彼女は教会の二階に陣取り、広場を狙い撃ちできるスナイパーポジションについている。
穴に落ちた横道も、上から撃ちかければ射線は通る。放たれた岩の長槍は、落とし穴の底で毒沼にもがく横道へと直撃した。
「ぬぅがぁああああ! 痛ってぇ、蘭堂ぉテメぇええええええええええ!」
ちっ、ヘッドショットは外したか。
だが、岩槍は横道の腹、ちょうど芋虫ボディへと変化している境目辺りを貫いていた。
横道はモンスター部位が切り落とされても痛がる素振りはなかったが、やはり元の人間の体の部分に喰らうと、直でダメージを受けるのだろう。
「人体部分を狙え! どんどん攻撃しろ!」
叫ぶものの、僕は直接攻撃には参加しない。
『腐り沼』から『赤髪括り』をありったけ出して、横道を拘束するのが役目である。
毒沼でバシャバシャともがく芋虫の体を縛り上げ、さらに横道本体の方へと触手を伸ばす。奴のパワーからすれば、僕が全力で拘束してもこれを破るのはそう難しいことではないが、毒沼のダメージと総攻撃に晒されるこの状況なら十分に絡めとっていられる。
「プグァアアアアア!」
「ワンワン、ボァアアアアアアアアアアアアッ!」
ご主人様の仇とばかりに、キナコとベニヲも奮戦している。
実は投石攻撃ができると聞いていたので、キナコにはグレネードと即席の投げ槍を託した。
やはり僕の言うことはちゃんと理解できているようで、穴に向かってグレネードをきちんと放り込んでいる。
そしてベニヲの方は、ひたすら火炎放射だ。それほど長い射程距離ではないが、穴の上から吐きかけるには十分すぎる炎の帯が伸びる。
横道は高い炎熱耐性があるが、それも耐性を誇るモンスター部位があればこそ。それがない部分を焼けるだけでもいいダメージを稼げる。
「ゴォオアアアアアアアアアアアアアッ!」
そして、二体の屍グリムゴアも、その身を動かす魔力が尽きても構わないというほどに、砂のブレスを全力でぶっ放す。
だが、本命の攻撃は杏子の土魔法と、黒角弓を引く黒騎士レムだ。
「うぉおお危ねぇーっ! 今の脳天直撃コースだったじゃねぇか!?」
ちいっ、レムの一射が完全にヘッドショット決まるところだったのに、野郎、両腕を亀の甲羅みたいなもので覆って盾を作りやがった。
頭と体を覆うようにして、両腕の甲羅盾をかざす横道だが、万全な防御態勢とは言えない。急場凌ぎと言ったところだ。
「このまま押し切れ!」
「さぁせぇるぅ、かよぉおおおおおおっ!」
縛っていた赤髪がブチリブチリと千切れ飛ぶ。芋虫ボディの内側から、新たな腕が二本、いや、四本も生えてきている。
猿みたいな毛むくじゃらの腕。爪の生えた犬みたいな腕。水掻きのついたカエルみたいな腕。蜘蛛のような鋭い脚。
それぞれ一本ずつを生やした腕は、どれも穴の底から上まで届くほどに長い。
拘束を破った異形の四本腕は、がっちりと穴の淵を掴みとり、ズブズブと横道の巨体を上へと押し上げていく。
「レムは右側、キナコは左側の腕を狙え! 蜘蛛足は硬いから無視。杏子、猿腕の親指を吹き飛ばして!」
腕を生やして穴を登るだろう、ってのは想定されている。
その時に腕の排除に動くのは、前衛戦士を張るレムとキナコだ。杏子には最初の一発だけアシストするよう頼んである。
横道はその能力も相まってかなりタフだ。落とし穴作戦だけで削り切るには、こういう動きにも対応できなければいけない。
「そこだ、当たれぇーっ!」
杏子の一撃は、僕の指示通り、猿の手の親指を撃ち抜いてくれた。
何故ここだけかというと、この腕が一番、穴を登るにあたって踏ん張りが効きそうだったからだ。
まずはこの猿腕を排除したい。
その意図をレムは正確に汲み取って、黒角弓から大剣へと持ち替え、猿腕へと斬りかかっていた。
そうだ、腕を斬りつけるんじゃなくて、指を切り飛ばせればそれでいい。
まず親指を撃ち抜かれて地面を掴む力が弱まり、続けて四本の指を切り飛ばされ、猿腕は完全に体を引き上げるだけのグリップ力を失った。あとはもう、手のひらで地面でも引っ掻いてろよ。
「プグググゥ、プガァ!」
キナコの方は犬の腕を攻撃している。
こっちは鋭い爪が地面に食い込むので、支える力が強そうだ。だが、指のように簡単に切り飛ばせる形状でもないので、キナコには頑張って集中攻撃してもらうしかない。グリムゴアも一体、応援に回そう。
カエルっぽい腕の方は、ヌルヌルの粘液に包まれているので、手のひらの大きさに対して、そんなに地面を掴む力はなさそうだ。それに、毛皮も甲殻もないツルツルした肌なので、レムの大剣で切り刻むのも早いだろう。
伸ばされた四本の腕の内、三本でも無力化できれば、もう這いあがるだけのパワーが得られない。
硬い外殻に覆われた蜘蛛足は、そのまま虚しく地面に突き刺さったまま、放っておけば問題ない。
「ぐうっ、く、クソォ、雑魚共がぁ……」
脱出用の腕をあっさり封殺されて、横道は苛立つような声を上げている。
さぁ、どうする。次は何をする、横道。お前の腹の中には、まだ解放していない能力が幾つもあるんだろう……頼むから、僕らで対処できるレベルであってくれ。
「仕方ねぇ、ちょっくら本気、出してみっかぁ————フンッ! ヌハァアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!」
随分と気合の入った雄叫びを上げた横道は、その体に大きな変化が起きる。
メキメキと体から生えてきたのは、角、なのだろうか。淡い黄色の鋭い角のような棘のようなものが、横道の背中側から生えてゆく。それは本体も、芋虫の方にもだ。
「ビッ、ビッ、ビィビィ……」
横道が奇妙な声を漏らし始めると、黄色の角の列はバチバチと甲高い音を上げる。それは見間違いようもなく、帯電していた。
「ブレスだっ!」
まずい、横道は雷ブレスを吐ける。僕を狙ったアホなゴーヴを始末する時に使っていた。
あの時はそのまま吐いていたが、この角を生やして使えば威力は上がるのだ。正に、本気でぶっ放すつもりだ。
「杏子、逃げろ!」
射線が開けているのは、教会二階に陣取る杏子だ。そして、横道に致命傷を与えうる最も危険な攻撃力を持っているのも彼女である。
「えっ、ちょっ、なんか超ヤバっ————」
「————ビッガッ、ヂェエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
眩い閃光が天を貫く。
それは、つい最近にも見た輝きだ。
マジかよ、この雷ブレスは、ヤマタノオロチ級だぞ……
「————ハッ!? 杏子はっ! どこ!」
失明せんばかりの輝きが過ぎ去り、僕は顔を上げる。
最初に目に入ったのは、綺麗に吹き飛ばされた教会の屋根。二階以上の部分が完全に消滅していた。
そ、そんな、まさか跡形もなく消し飛ばされたのか……最悪の想像が過ったのと同時に、ドスッ、と重い音が耳に届いた。
「杏子っ!」
慌てて駆けよれば、雪の上に倒れ伏す杏子の姿があった。
「良かった、直撃は避けたか……」
寸前で退避はしたのだろう。けれど、二階から飛び出た後は屋根の上を転がって、受け身も取れずに落っこちたようだ。
「息はある……けど、完全に気絶しているな」
ひとまず杏子が無事で本当に良かった。けれど、今すぐ目を覚ますような感じではない。
杏子はこれ以上、もう戦えない。
「ブフゥー、一発ぶっ放して、ちょっとはスッキリできたなぁ」
そして、横道はまだ健在だ。
奴は大袈裟な息を吐きながら、のっそりと地上へと上がってきた。
すでに横道は、落とし穴を脱していた。
「んんー、なになに、そんなに驚き? 別に、こんな穴なんて出ようと思えばすぐ出れたんだよね。でも、こんだけ切り離すのは俺もちょっと勇気がいるっていうかぁ?」
穴から這い出た横道は、元の人間形態となっていた。
見なくても分かる。穴の中には、まだ僕の『赤髪括り』に囚われた芋虫の巨体が丸ごと残っている。
あれだけデカくても、その気になればパージできるのか。
芋虫の体に、そこから生えた四本腕もそのままに、横道本体だけが穴から上がってきた。奴の内包するモンスター部位を削る、という意味ではかなり削れはしただろうが……くそ、ここで倒し切るはずだったのに。
どうする、行けるか……今の横道に、あとどれだけ能力が残っている。
こっちの戦力は一気に半分以下にまで落ち込んだ。杏子が気絶し、さらには大きい体が災いして、グリムゴアも二体とも倒れた。それぞれ右半身、左半身がブレスに巻き込まれたか、赤熱化した断面を晒して大きく抉れていた。
それでも、横道の余力が前に戦った時と同じくらいにまで落ちたならば、何とかなるだろう。
「それにしても、スゲーよ小太郎きゅんは。半身形態で余裕って思ってたけど、まさかここまで激しい攻めをされるとは、参ったぜぇ……小太郎きゅんは受けになってくれないと困るんだよねぇ」
僕を真正面に捉えながら、横道はニタニタとキモい顔で笑っている。
右には黒騎士レム、左にはキナコ、後ろにベニヲが回り込み、一応は包囲がされているのに、この余裕ぶり。
コイツ、まだ力を隠し持っているな。残った面子を雑魚扱いで一蹴できるほど、強力な力を。
「んんぅー、いい顔、そそる表情だよぉ、小太郎きゅん。その血はそれだけでとろけるような美味さだけど、やっぱり生命力っていうの? そういうさぁ、生きる力、生存本能が漲っている方が、獲物ってのは美味くなるんだよなぁ!」
僕が今、どんな顔してるのかなんて自分でも分からないけど、ああ、そうさ、僕はまだ諦めちゃいない。
当たり前だ。こんなところで、お前なんかに食い殺されるデッドエンドを迎えるために、今まで死に物狂いで生き残ってきたワケじゃない。
「だぁかぁらぁ、俺も全力でっ、小太郎きゅんを食うぜぇ! 喰らい尽くす、今ここで、俺と一つにっ、なるんだよぁああああああああああああああああああっ!」
牙と鋏角の大口を展開させて、横道の声、だけじゃない、数多のモンスターの鳴き声のような音も混じった咆哮が轟く。
「撃てっ!」
のんびり眺めているワケにはいかない。
僕は『愚者の杖』で『毒』を放ち、レムは弓を撃ち、キナコは槍を投げ、ベニヲは火を噴いた。
四方から浴びせた僕らの攻撃は叫ぶ横道に直撃————その瞬間、赤い蒸気のようなものが一気に吹き上がる。
なんだコレ、僕らの攻撃でこんな派手なエフェクトは出るはずもない。となると、これは横道が自ら噴射したものであって……
「フゥウウ……ブフゥウウ……」
赤く煙る蒸気の向こうで、巨大な影が揺らめく。
荒い息を吐きながらのっそりと僕の前に姿を現したそれは、豚の化け物だった。
丸々と膨れ上がった胴体は、その薄汚い白濁したブヨブヨの皮膚に覆われ、さっきの芋虫ボディと似ている。
だが、そこから生える足は太く短い四本脚。分厚い脂肪の垂れ重なった野太い脚の先には、爪や牙が乱雑に生えている歪な蹄が大地を踏みしめている。
四足で立ち上がったその体は、あのスパイクマンモスさえも上回る巨大さだ。
そんな巨獣の頭は、巨大な豚……に見えるのは特徴的な大きな鼻があるからこそで、顔の造形はどっちかというとゴグマのような、人と獣の中間みたいな造形だ。血走った白目に黄色く濁った瞳が浮かび、ギョロギョロと動く不気味な目が、蜘蛛の如く八つもくっつていた。
「ブフッ、ブハハハハッ! これが本気出した俺の真の力ぁ————『完全変態』だぁあ!!」
叫ぶ横道の顔は、八つ目の豚面、その牙の並んだ巨大な口の中、赤黒く蠢く舌の先から生えていた。
『完全変態』と名乗ったこの姿は、これまで見た中で最もおぞましく、そして、最も強力なものに違いない。この魔力の気配は、ヤマタノオロチの頭と同等、いや、それ以上のプレッシャーみたいなのを感じさせてならない。
「くっ……」
くそ、ダメだ。強すぎる。横道は僕の想定を遥かに上回る強さを持っていた。
今の面子で、異形の巨獣と化した横道はもう止められない。
逃げるしかない。逃げられるかどうかも怪しいが、ここはもう全てを捨て去ってでも逃げに徹するしかない。
「突撃だロイロプス! レム、ありったけコアを使って分身を出せ!」
「ぐぅへへへぇ……今度はもう逃がさないよ、マァイ、スウィートハニェエエエエエッ!!」
僕が指示を飛ばすと同時に、横道が飛び出てくる。
そう、奴の本体が収まっているだろう舌が、そのまま僕に向かって伸びてきたのだ。ガチガチと大顎を鳴らす舌先がすっ飛んでくるのを見て、エイリアンの口にぶち抜かれる人ってこんな気持ちだったのか、なんて能天気な感想しか浮かばなかった。
つまり、それはもう、僕の反応速度を超えた攻撃で————
「させるかよぉ————ウラァっ!」
その時、熱く、それでいて鋭い風が僕の眼前を過って行った。
「ンギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
気が付けば、横道付きの舌が地面の上をのたくっていた。
巨大な舌からは鮮血が滴り、さらにはチラチラと炎が散っている。
誰がこれをやったのか。考えるまでもなく、それは一人しかいない。けれど、それはありえない一人でもある。
信じがたいことに、そこにいたのは、ナイトマンティスの鎌から作った剣『烈風カマキリ丸』を左手に握りしめた、葉山君だった。
「葉山君!? 何やってんだ、早く逃げて!」
「うるせー、桃川……俺にも、ちったぁ活躍させろよな……」
立っているだけでも辛いはずだ。右腕を失い、僕の拙い応急処置しか施されていない重症者である。
葉山君の顔色は血の気が失せて真っ青になっていて、とても戦えるコンディションじゃないのは一目瞭然だ。
けれど、彼は再び握った剣を振り上げる。
そのカマキリ鎌の刃に渦巻くのは、淡い緑に輝く風と、薄っすら灯る赤い炎。左腕に嵌めた『火風輪』が効果を発揮し、僕が施した以上の威力を与えているのだろう。
だが、それでも、怪物横道を止めるには、あまりにも儚い火力だ。
「はっ、はぁ、葉山ぁああああっ! やりやがったなぁテメぇ!」
「さっさと行けよ桃川ぁ! 蘭堂連れて逃げろぉーっ!」
「こんのぉ、アホみたいなDQNネームの中途半端なキョロ充ヤローがよぉ……まず先にテメーから死ねやぁあああああああああああああああ!」
まさかの横槍が入り、激高した横道はいよいよ巨獣の体も動かし、葉山君へと突撃を開始した。
カマキリ剣の一撃で、止められるはずがない。走り出した横道は暴走する10トントラックも同然の大質量と超重量。
僕はその絶望的な衝突の瞬間を、ただ見ていることしかできなかった————




