第244話 裏切り者(3)
「レムぅうううううううううううううううううううううう!」
小鳥遊、もしも本気で僕を殺すつもりなら、お前は多少の疑惑を向けられるリスクを負ってでも、僕をこの密会部屋に幽閉して餓死を狙うべきだった。
そうすれば、僕は本当に手も足も出ずに閉じ込められっぱなしだったさ。
でも、お前はよっぽど僕がクラスメイトにつるし上げられて、処刑されるという惨めな末路を見たかったんだろう。
そのくだらない恨みとゲスな根性が、お前の敗因だ。
「――おい、いたぞ!」
「待てよ、桃川ぁ!」
密会部屋を飛び出した僕は、一目散に一階エントランスを目指して階段を駆け下りているのだが、早くも動き出したクラスメイトに捕捉されたようだ。
この声は上田と中井か。
「桃川君が一階から逃げる! みんな早く追って!」
ついでとばかりに、姫野の叫びも聞こえてきた。
クラスメイトは小鳥遊の言葉を信じて、僕本体が学園塔のどこかに隠れ潜んでいると踏んで、みんなで探し始めていたようだ。
けど、こうして僕が速攻で飛び出してきたから、すぐにみんなも集まって来るだろう。
「待って、桃川君、貴方は――」
悪いね、委員長、今はゆっくり釈明する暇もなさそうなんでね。
ちょうど二階の妖精広場から顔を覗かせた委員長を尻目に、僕は全力疾走の一段飛ばしで階段を駆け下りる。
うん、マジックアイテムつぎ込んで強化された学ランのお蔭で、僕の走力もちょっとしたもんだ。
クラスメイトの誰にも捕まることなく、僕は正面入り口が開け放たれた一階エントランスまで無事に辿り着くことができた。
「――やはり来たな、桃川」
そして、この学園塔唯一の出入り口である正面入り口には、すでに愛剣を手にした蒼真君が仁王立ちして待ち構えていた。
「卑劣で姑息な桃川のことです。必ず、真っ先に逃げ出してくると思っていました」
「やはり、私の勘は間違っていなかった。桃川、お前は邪悪な呪術師だったな」
「も、もう逃げられないんだから、桃川君!」
エントランスには、弓を手にした桜と、すでに抜刀した明日那。
そして真犯人の黒幕裏切り野郎、小鳥遊小鳥が涙目の被害者面全開で僕を睨んでいた。
「おい、桃川ぁ!」
「ちくしょう桃川、お前なんで裏切ったんだべ、信じてたのによぉ!」
逃げ場を塞がれた僕が立ち止まったことで、すぐにクラスメイト達も階段から落ちて一階まで集まって来た。
先頭切って現れたのは、蘭堂さんと下川だった。
ああ、蒼真君や桜ならまだしも、君らにそういう目で見られるのは、流石に僕も苦しいよ。
「おい、何やってんだ、早く捕まえろ!」
「相手は桃川君だよ、放っといたら何するかわからない」
みんなよりも先んじて、エントランスのど真ん中で止まっている僕へ襲い掛かろうとしたのは、山田と中嶋だった。
二人とも素手だが、僕如き捕まえるには十分すぎるほどの実力者だ。強化学ラン着ててもロクに抵抗できずに、あっさり取り押さえられるだろう。
そうなると、勢いのまま処刑コースまっしぐらだから、まだ捕まるワケにはいかないんだよね。
「グガァアアアアアアアアアアアアアッ!」
そこで、ようやく僕のレムが現れた。
黒騎士を筆頭に、アラクネ、アルファ、ミノタウルス、とヤマタノオロチ討伐を戦い抜いた主力であり最精鋭のレム全機が、僕を守るように四方を囲んだ。
小鳥遊はレムを最初から排除すれば、僕が勘づくと思ったのだろう。全機無事ではあったが、僕が密会部屋で目覚めた時点では、一階も封鎖されて閉じ込められた状態だった。
「ちいっ、無駄な抵抗を」
「もう諦めろよ桃川ぁ!」
そう言うなよ、ジュリマリコンビンよ。
自分らに毒殺を図った上に天道君まで陥れたと思っているのだから、二人の視線はなかなかの怒気に満ちている。
けれどそんな二人も、他のクラスメイトも、すでに武装を完了させたレム達を前に、そのまま飛び掛かるのを躊躇はしてくれたようだ。
そりゃあ、みんなレムの強さは知っているし、ちゃんと武装してるのは先に一階に来ていた蒼真ハーレムだけだからね。みんなも素手でレムに挑みたくはないだろう。
さて、ざっと見たところ、メイちゃんだけを除いてクラスメイト全員がエントランスに集結したことになる。
レムを盾にしての膠着状態も、そう長くは続かないだろう。
言いたいことを言うのは、今しかない。
「僕は裏切っていない。裏切り者は、小鳥遊小鳥だ」
「命乞いの言葉でも出るかと思えば……言うに事欠いて、他人のせいにするとはな、桃川!」
「どこまで腐っているのですか!」
蒼真兄妹の叫びを無視して、僕は語り続ける。
「『賢者』は特別な天職だ。女神エルシオンに選ばれて、僕らがダンジョン攻略するのを、神のシナリオ通りに進むために監視している、ゲームマスターだ」
言い合いはしない。一方的に話して、情報を叩きつける。
今は信じなくてもいい。
けれど、いつか、真実に気が付いてくれる時が来るかもしれないから。
「神の目的は、蒼真君、『勇者』を育てることだ。僕らはそのための引き立て役。ボス戦とか適当なところで、悲劇的に死んで、蒼真君に勇者の力の覚醒を促す。そのための生贄だ」
「ふざけるなっ! そんな戯言を、信じると思っているのか!」
「ヤマタノオロチは、僕らに確実に犠牲を強いるために用意された特別なボスだ。でも、僕の作戦で誰も死なずに倒されたから、小鳥遊は焦った。神の望み通りに進めるためには、どうしても僕が邪魔。だから、こんな手段に打って出た。打たざるを得なかった」
「そ、蒼真君! 違うよ、小鳥、なんにも知らないよぉ!」
「ああ、分かっているさ、小鳥遊さん」
「僕はさっきまで密会部屋で小鳥遊に監禁されていた。広場にいた分身は、小鳥遊が僕の『双影』を奪ったモノだ。操っていたのは僕じゃなくて小鳥遊で、毒を盛ったのも小鳥遊だ。自分だけ解毒薬も持ってるよ」
「桃川、もうよせ、聞くに堪えない」
強制的にでも、僕の言い訳を遮ろうと言うのか、蒼真君が剣を構えた。
「証拠がある」
自信満々に言い切った僕の台詞に、蒼真君の動きが止まる。
頭から信じたワケではない。その視線は、少しでも怪しい動きをしないか、鋭い警戒心に満ちている。
それでも、彼は確かに僕が提示する証拠に、興味を持った。
「今の話は、ついさっき小鳥遊から聞いた。その時の会話を録音してある」
「ウソだよそんなのっ!」
小鳥遊の叫びだけが響く中で、僕は学ランのポケットから、物的証拠を取り出した。
「僕と委員長だけは、学園塔内でも携帯を持ってるんだよね」
そう、目安箱の相談を受け付けるために、委員長である僕と如月涼子の二人だけは、携帯電話の所持を許可されている。
だから当然、僕も持っていた。肌身離さず、ついさっきもね。
「ポケットの中で動画撮影したから真っ暗だけど……ギリギリ、会話が聞こえる程度にはとれていると思うんだよね」
やっぱり小鳥遊は『賢者』の能力を貰っただけで、アイツ本人はそこまで賢くないな。
お前が分身の僕を悪役演技させている最中に、僕がポケット漁ってたのにも気づかなかっただろ。
僕のガラケーって、上の部分を捩じってカメラモードに変形できるんだけど、その状態でスイッチを押すと動画撮影に切り替えることもできるんだよ。スマホみたいに画面を見ていなくても、動画撮影モードを起動できる優れもの……まぁ、初めて使ったんだけどね。
でも、ポケットの中チラ見して、バッチリ録画中になっているのは確認したから、証拠音声がここに収まっているのは紛れもない真実だ。
「……」
「蒼真君!?」
僕が掲げた物的証拠である黒いガラケーに、蒼真君の、いや、クラスメイト全員の視線が集中するのが分かった。
今この瞬間、裏切り者が僕ではなく、小鳥遊かもしれない――そんな疑念が、僅かながら、けれど確かに発生した。
そう、重要なのは可能性。
必ずしも0じゃない、ありうるかもしれない、そういう思いが生まれるからこそ、付け入る隙が見つかる。
状況的には圧倒的に僕は不利だろう。
けれど、それでも一度、ちゃんとした釈明の場、いいや、交渉の席につくことができれば――
バキィイン!
と、僕の手にあったガラケーは木端微塵に砕けた。
光り輝く、一本の矢によって。
「兄さん、この期に及んで、アイツの言葉なんかに耳を貸してはいけません。きっとあの携帯は罠です」
桜、お前まさか小鳥遊の『イデアコード』で操られ……てないな。
コイツ、素で撃ちやがった。
真実を明らかにできる貴重な物的証拠を、非常に個人的かつ感情的な決めつけで破壊したぞ。まさかここまで短絡的な行動に出るとはね、流石の僕も予想しきれなかったし、地味に超人的な弓の腕前のせいでレムの護衛もすり抜けてピンポイントで撃ち抜きやがって。
「証拠を壊したってことは、それだけ後ろめたいことがあるんだろう!」
「ふん、どんな呪いを仕掛けていたかは知りませんが、その手には乗りませんよ。騙されないでください、兄さん」
「……ああ、そうだな。お前はいつも、そうやって自分のペースに引き込むからな」
ちいっ、流石に証拠動画という手札を失ってしまっては、交渉も説得も不可能だ。現状では、僕は保身のために突拍子もない嘘を言って誤魔化そうとしている、としか思われない。
「僕を信じてくれないのか。誰も、僕を信じないのか」
後ろを向いて、クラスメイト達を眺める。
彼らの表情は、怒りであったり、恐れであったり、まるで未知のモンスターでも見るかのような顔だ。
けれど、僕は今、どんな顔をしているだろう。
「ヤマタノオロチを倒しただろう。僕はみんなのために、あれだけ頑張った。最後は自分の命だって賭けて、コアを破壊した」
自分で自分の顔色も分からない。
僕はこの最悪のピンチを脱するために、自分では冷静に思考を回して最適解を導き出し、それを実行しているつもりだけれど……心の中は、色んな感情が渦巻いて混沌と化している。
今すぐ泣き出したい気もするし、怒りに任せて怒鳴り散らしたい気もする。
「みんなで脱出する計画だって、本気で考えたし、必ず成功させると神に誓った」
小鳥遊の罠にはまり、まんまと濡れ衣を着せられ、一瞬で全員からの信頼を失った。
普通に考えて、絶望するには十分すぎる。
命を預けられる仲間だと思った。ヤマタノオロチ討伐を経て、そう思えるほどになった。
「僕は裏切っていない。本当の裏切り者は小鳥遊小鳥だ! 僕を信じてくれ!」
「――もうやめろ、桃川。お前はもう、みんなの信頼を裏切った。誰もお前を、信じたりはしない」
冷たい蒼真君の声だけが、エントランスに響き渡った。
そして、それが答え。二年七組の総意。
誰も、誰一人として、僕を信じると声を上げる者はいない――
「待ってよ、桃川! ウチは信じる!」
「……蘭堂さん」
「桃川が裏切るワケねーだろ! お前ら、あんだけ桃川に頼ったくせに、なにあっさり見限ってんだよふざけんなぁ!」
そのストレートな怒声に、クラスのみんなが、いいや、きっと僕が一番驚いた。
この状況下だ。自分で言うのもなんだけど、どこに僕の言い分を信じる要素があるよ。
「ウチは桃川を信じるぞ! 小鳥遊の方が怪しい!」
蘭堂さん、ちょっと馬鹿なところあるよなぁと思ってはいたけれど、まさかここまで馬鹿だったとは。
ありがとう、蘭堂さん、愛してる。
「حدد إحداثيات البداية――転移魔法陣起動」
僕がそう呟くと、いつものように、エントランスの転移魔法陣が起動し、白い輝きを発した。
発音はかなり怪しいが、それでも魔法陣はちゃんと音声認識してくれる。ちなみに、『起動』『座標』『選択』、という三つの単語を続けただけの簡単な言葉だ。
全部、ヤマジュンが教えてくれたよ。
「ッ!?」
「驚いたか、小鳥遊? 僕も使えるんだよ、この転移魔法陣をね」
古代語で呪文を唱えて起動した瞬間、小鳥遊の顔色が一瞬変化したのを僕は見逃さなかった。
どうしてお前が、とでも言いたげ顔してたな。
そりゃあそうだ。僕には古代文字の解読ができないと思っていたから、このエントランスまで逃げ込んできても余裕こいていられたんだろ?
お前は嘘の演技で分身に「天道君を転移で追放した」と言っていたけど、それは半分正解だ。
天道君を騙し撃ちで飛ばしたのは小鳥遊だけど、やろうと思えば僕だって同じことができる。
小鳥遊、お前はずっと黙って隠し続けていたけれど、この転移魔法陣にはまだまだ、色んな機能があるよなぁ?
「蘭堂さん、もし僕を本当に信じてくれるなら、一緒に来て欲しい」
すでに覚悟は決まっているとばかりに、蘭堂さんはすぐさま一歩を踏み出した。
「おい、杏子!」
「ちょっと、待てって!」
慌てて制止の言葉を上げたのは、やはり友人であるジュリマリコンビだった。
「止めんなよ、ジュリ、マリ。ウチは桃川と一緒に行く」
「こんな時にバカ言うなよ!」
「そうだぞ。アタシら、さっき死にそうになったばっかだろ!」
「ウチは桃川がやったとは思わないし、今言ったことも信じる。だから、犯人の小鳥遊と一緒にいる方がイヤだし」
「落ち着けよ、杏子、お前自分で何言ってるかわかってる?」
「これでホントに桃川犯人だったらどうすんだよ!」
「そん時はしょーがないよ。それに、そういうのはアンタ達も同じでしょ? 小鳥遊が犯人だったら、絶対またみんなの命を狙うってことだよ。二人とも、マジで気ぃつけろよ?」
逆に説得の言葉を口走る蘭堂さんに、ジュリマリの二人も困惑したような、諦めた様な表情になる。
これはアレか、杏子は意外と頑固なところがあるからな的な、友達同士だから通じ合う感じなのだろか。
それ以上、何も言い合うことなく、蘭堂さんは僕の隣までやって来た。
「蘭堂さんの他に、僕と一緒に行きたい人はいる? できれば、今すぐメイちゃんも連れてきて欲しいんだけど」
「ふざけるな、お前の思い通りになどさせるか!」
蒼真君がいよいよ剣を構えて、僕の逃亡を許さんとばかりに気炎を上げる。
「絶対にアイツを逃がすな! ここで逃がせば、必ず復讐しに戻って来るぞ!」
憎悪たっぷりな明日那の叫びに、クラスメイト達もざわめく。
「た、確かに、ヤバそうだな」
「やっぱ捕まえた方がいいんじゃね?」
「そうだべ、もし桃川が犯人だったら、俺ら絶対後で呪い殺されるべや」
おい上中下トリオ、そんなに僕がわざわざ復讐しに戻って来そうな性格だと思っていたのかよ!
あんな雑魚放っておけ、くらいの余裕を見せろよな。
まぁ、あれだけ盛大に毒殺仕掛けた犯人だと思えば、危機感も持つのはしょうがない。
それに、元より口先だけで足止めできるとも思わなかったさ。
「行け、レム!」
「ブルゥウァアアアアアア!」
「キシャアアアアアアアアア!」
雄たけびを上げて、僕を転移魔法陣から引きずり出そうと動き始めたクラスメイトに向かって、ミノタウルスが立ちはだかる。
同時に、アラクネが蜘蛛糸フルバーストで、全力で足止めを仕掛ける。
小鳥遊以外のクラスメイトは殺すわけにはいかないので、ミノタウルスには盾しか持たせていない。
アラクネも蜘蛛糸ぶっ放すのがここでは一番効果的なので、武器は持たせていない。変わりに、色々と荷物は運んできてもらったけど。
「桃川君、お願いよ、抵抗はやめて戻ってきて! まだ話し合いで、解決できるはずよ!」
レムとクラスメイトが揉み合っている中で、委員長が声を張り上げて叫んでいる。
ごめんね、委員長。先にみんなの方を止めてくれない限りは、僕も交渉の席につくこともできないんだよね。
それに、携帯の証拠動画を失った今、僕の言い分を証明するには分が悪すぎる。
そもそも、小鳥遊は本気でクラスメイトの大半を毒殺しようとした最悪の裏切り者だ。話し合いで解決できる段階は、とうに過ぎている。
ケリの付け方は、もう僕が死ぬか、奴が死ぬかしかありえない。呪術師と賢者の殺し合いだよ。
「はぁああああ!」
鋭い掛け声と共に、黒騎士レムの首、もとい、兜が飛んだ。
やはり剣を持っている蒼真君を止めるのは厳しいな。
黒騎士の方は大剣に大盾と完全武装させてあるけれど、数十秒ほど蒼真君達を足止めするのもギリギリといったところか。
けど、レムはリビングアーマーの特性を生かして、首が飛ばされても変わらず守備を貫いてくれた。
よし、そろそろ時間だ。
「みんな、気を付けた方がいいよ。僕も、今発動させた魔法陣がどこに転移するか分からないからね。下手に巻き込まれて分断されたくはないでしょ?」
いよいよ転移発動寸前、とばかりに輝きを増していく転移魔法陣。
蒼真君をはじめ、他のクラスメイトもレムの守りを強引に突破しようとするのが、流石に躊躇し始めた。
「逃がしませんよ、桃川! なんとしても、ここで――」
「アルファ!」
殺す気で桜に飛び掛かれ。
ああ、真っ赤なボスラプターを素材にしたアルファは思い出深い機体だけれど、この窮地を脱するためなら致し方ない。
「くっ、このぉ!」
獰猛な雄たけびを上げて飛び掛かってくるアルファに対し、流石に桜も弓の狙いを僕から目の前の敵へと切り替える。
隣では明日那も蒼真君も、素早くアルファに向かって剣を振りかぶっている。
次の瞬間にアルファは斬り捨てられるだろうが――十分に時間は稼いでくれた。
「くそっ、待て、桃川!」
完全に転移が発動状態に移行したことを示す、眩しい輝きがエントランスに満ちていく。
すでにアルファに一撃加えて捌き切った蒼真君は、強い怒りの感情を目に浮かべて僕を睨みつけているけれど、僕は彼のことは見ていない。
僕が睨む先にいるのは、全てを知った上で神の手先に成り下がった、愚かなる『賢者』小鳥遊小鳥。
「僕は必ず戻ってくる。メイちゃんも、みんなのことも、絶対に助けに戻ってくる」
「……」
眩い輝きの向こうで、小鳥遊もまた僕を睨んでいた。
その円らな瞳に浮かぶのは、蒼真君のような純粋な怒りなどではない。
馬鹿みたいに調子こいたせいで、毒殺は失敗し、僕を取り逃がすことになったのだ。
確かに、みんなは僕を信じなかったけれど、かといってお前を全面的に信頼するヤツは、果たして何人いるだろうな?
バカなお前が、みんなに「もしかして……」と疑われる中で、これからも今までみたいに上手に化けの皮を被っていられるか。
小鳥遊、お前にはもう二度と安息の日は来ない。
そして、恐れ、慄け、僕が戻ってくるその日まで。
「――小鳥遊小鳥、お前は必ず、僕が呪い殺す」




