第190話 学級会(6)
「やれやれ、ちょっと捕まったくらいで貞操の危機とか、自意識過剰なんじゃない?」
「そんなワケがないでしょう!」
いや君ら絶対、自分のこと美少女だと思ってるよね。実際、その通りだから女子クラスカーストの頂点に君臨できているんだけど。
ともかく、桜の否定の叫びは自意識過剰の部分ではなく、彼らに全く強姦する気はなかった、という部分である。
「でも、小鳥遊さんには指一本触れてないでしょ?」
「それはただの結果論です。あのまま小鳥が彼らに捕まったなら、どんなおぞましい目に遭わされるか、容易に想像がつきます」
「いやそれ想像じゃん」
「くだらない揚げ足ばかり! 彼らの邪な気持ちなど、明らかでしょう!」
うん、困ったことに、全くもってその通りだから、僕もこんな無茶な屁理屈で戦わなきゃいけないことになってるんだよねぇ……でも、もうちょっと頑張ってみよう。
「とりあえず、三人の釈明くらいは聞いてあげてよ。本当に、小鳥遊さんを性的に襲うつもりだったの?」
「ち、違う! 俺らは、そう、桃川の言う通りコアが欲しかったんだべ!」
「そうだ、蒼真達なら沢山持ってるだろうと思ってよ!」
「俺らは三人で脱出するつもりだったんだよぉ!」
流石は上中下トリオ、僕の完全に即興なアドリブに、見事に乗っかってくれた。まさかこの話の流れで「いや、ムラムラしてやりました」とは言い出さないだろうけど。
「三人とも、当時は生き残るのに必死だったんだよ。クラスメイトを襲ったこと自体は非があるけれど、強姦容疑をかけるのは一方的に過ぎると僕は思う」
「そんな口から出まかせの嘘が、まかり通ると思っているのですか」
「実際、小鳥遊さんには何もしてないんだから、強姦の意思を証明するのは無理でしょ?」
「自らの罪さえ認めようとしないなど、どこまで性根が腐っているのですか……」
「そっちこそ一方的に余計な濡れ衣を着せようとするなんて、人を信じようとしない醜い心根だと思わないの?」
間違いなく、今この瞬間、僕と桜の視線の間でバッチバチに火花が散っているに違いない。
「……言い分は分かったわ。この件に関しては保留にしましょう。どの道、ここで裁きを下せるわけではないのだから」
「涼子! こんなあからさまな言い逃れを認めるのですか」
「どうあがいても議論は平行線よ。これ以上、話し合っても時間の無駄どころか、争い事にまでエスカレートしかねない」
折角、レイナ殺しをはじめ、色々と水に流す、もとい、棚上げして協力体制を築こうとしている最中なのに、上中下トリオの出来心な強姦未遂なんてネタで台無しにされたくはないからね。僕は勿論、ここまでの議論でさらに胃袋にダメージ蓄積させてそうな委員長もそうだろう。
「桜、この件も一時的に棚上げにするしかないのよ。理解してちょうだい」
「分かりました……ですが、こういうことに関しては厳しく取り締まらせてもらいます」
「そうね、恋愛禁止のルールもそうだけれど、このテの揉め事が起きないよう他にも色々と決める必要があるわ」
「その辺のことはまた後でね」
まだ他にも、今の内に明らかにしておきたい罪状はあるからね。
ひとまず、この件に関しての処分がうやむやになってくれたお蔭で、トリオの三人はあからさまにホっとしたような気の抜けた表情で早くもダラけていた。君ら、油断すんの早すぎだろ。僕にだって庇える限界はあるんだよ。
また桜がギャーギャー言い出しても面倒なので、次の告発に移るとしよう。
「さぁ、他に罪を告白したい人はいる? または、コイツ許せないと、告発するのも今しかないよ」
問うものの、誰も何の反応も見せないのは、そろそろ本当にネタが尽きてきたからだろう。そもそも、今までのダンジョンではクラスメイトのグループがかち合うこと自体が稀だから、何かが起きる機会も乏しい。
そう考えると、実は僕が一番、クラスメイトとの出会いを経験しているのかもしれない。
ともかく、もう誰も何もないと言うなら、あとは僕が言わせてもらおう。さっきから、僕しか言ってないけど。
「姫野さんは、何も言わなくていいの?」
「えっ!」
急に話をふられたせいか、姫野愛莉はかなりキョドった感じで反応した。
まさか、あてられるとは思わなかったのか。それでいて、突っ込まれると困るようなネタも抱えているからこその反応だろう。
「僕は前に、下川君達三人と山田君と一緒にいたからね。姫野さんが抜けた事情は聞いてるんだよね、ヤマジュンから」
「あっ、そ、そうなんだ……」
あからさまに目が泳いでいる姫野さん。そりゃそうだよね、これほどの大勢を前に、男に体を売って姫プレイしていました、なんて暴露されたくないよね。
このダンジョンにおいて、大して強力な天職を得られなかった女子としては、合理的な身の振り方であったとしても、誰もがそれを素直に認められるワケがない。男子からも女子からも、印象としては殺しまくりの僕に次いで最低となるだろう。
「自分を見捨てたんだって、告発してもいいんだよ?」
「私は、その、別に……今はそんなに気にしてない、から」
姫野さん、それなりに損得勘定はできそうかな。ここでトリオと山田に、好き勝手にヤリまくったくせにこの私を捨てるとはどういう了見だコラぁ! と感情的に糾弾しないということは、ちゃんと今後の自分の立場ってのを考えているからだ。
ここで下手に騒ぎ立てるよりも、蒼真君や天道君に取り入るなら、何もない真っ新な印象の方がマシだろうからね。それに、他の女子からも余計な事を言われたりもしないし。
「そっか、それなら良かった。姫野さんとはぐれてから、みんなも心配していたし、見つけられなかったことをとても悔やんでいたからね」
ほら、穏便に過去のいざこざは解決しましたアピールするなら今だぞ。
「そ、そうだべ、俺らも姫野のことはずっと心配してたんだ!」
「あの時は悪かった、姫野を助けられなくて」
「反省してる。もうあんなことにはならねぇようにするよ」
トリオは空気を読んで、すらすらと心にもない謝罪をしている。でも、少しでも良い印象を見せるなら、そのスタンスは正解。
「山田君も、何か言うことはないの」
「あ、ああ……悪かったよ」
あまり釈然としない顔をしているが、山田君、細かいことを気にしてもいいことなんてないんだよ。
「ごめんなさい、私もあの時は凄く混乱していて……でも、今はこうして無事でいるし、またみんなと会えたから、良かったと思ってる」
そうそう、姫野さん。ここは内心は別としても、和解ムードを演出することがお互いにとって最善だよね。姫野さんは以前の関係を暴露されたくないし、トリオと山田もただれた関係のことは明らかになって欲しくないし。
このまま当事者同士だけで、事情を知らない蒼真君達は「一体、何の話をしてるんだ?」状態のまま、解決したってことになるのが一番だ。
「安心してよ姫野さん。綾瀬さんはいないから、もう理不尽に追い出されるようなことはないよ」
「……そ、そうね、ありがとう、桃川君」
そのありがとうって、レイナぶっ殺してくれてありがとうって意味で捉えていいのかな?
「おい、それはどういう意味だ、桃川」
案の定、レイナの名前を出せば、蒼真君が食いついてくれた。そもそも、レイナが以前にどんなパーティ構成だったかも、彼は知らないからね。この辺の事情は初めて聞かせることになる。
「僕が合流する前には、姫野さんと下川君達と綾瀬さんは一緒にいたんだけど、姫野さんのことが邪魔だから追い出したんだよ」
「嘘だ、レイナがそんなことをするはずが――」
「よく言うでしょ、いじめっ子はいじめたつもりはない、ってさ」
レイナが悪意を持って、姫野さんをパーティから追放した。
これは、半分正解で、半分嘘ということになるだろう。
けれど、今回に限っていえば、レイナの悪意100%ということにした方が、他でもない、僕にとって都合がいいんだよね。
「まぁ、僕も姫野さんが追い出された時のことはヤマジュンから聞いただけで、当事者ではないからあんまり詳しいことは知らないよ。だから、姫野さんが綾瀬さんにどんな酷い嫌がらせを受けたのかは、本人から聞いてよね」
「蒼真君、私の話を、聞いてくれるの!?」
おっ、これは姫野さん、ノリノリでレイナを悪役に自分を悲劇のヒロインとして嘘八百を語る気満々だぞ。いいぞ、その調子だ、もっとやれ。
「……いや、やめておく。これ以上、レイナのことを悪く言われたら、俺は怒りを抑えられる自信がない」
「蒼真君にとって綾瀬さんは可愛い幼馴染だったかもしれないけど、他の人にとってはそうじゃないってこと、よく覚えておいてよね。彼女は純真無垢な天使なんかじゃない、ただの人間だよ。だから、良いところもあるし、悪いことだってあるんだよ」
「黙れ、お前にだけは言われたくない。レイナを殺した、お前には」
「その気になったら、いつでも聞いてよ。僕も姫野さんも、綾瀬さんには死ぬほど苦労させられたからね」
別に、蒼真君を挑発したくてレイナの話を持ち出したワケじゃない。
ただ、僕の他にもレイナを恨む人間がいるってことを、しっかり周知させておきたかったんだ。
僕一人の主張では、都合良くレイナを悪者にしているだけと切り捨てられてもおかしくない。だが、他に関係のない人がもう一人、声をあげればどうか。
もしかして、レイナも悪いところあったのでは、そう思える余地が生まれる。それこそ、蒼真君、君にもね。
レイナを殺した僕を、全否定することは簡単だけれど、特に何の関係性もなかった姫野さんに対しては、僕と同じようには扱えない。彼にとって姫野愛莉は、守るべきクラスメイトの一人だから。
ともかく、僕のレイナ殺しの罪にちょっとでも情状酌量の余地が生まれてくれるなら、利用しない手はないっていうこと。上手くノってくれた姫野さんには感謝しかない。うんうん、君も立派なレイナ・A・綾瀬の被害者だよ。被害者の会でも作ろうか?
「それじゃあ、姫野さんのことは当事者同士での和解が成立したということで」
「なんだか、胡散臭い仲直りだったけれど……まぁ、いいわ」
委員長じゃなくても、白々しい和解だったと思うよね。でもいいさ、この場で『解決済み』と決まったのなら、それで十分なのだから。
「さて、そろそろ本当にネタも尽きてきたと思うけれど……最後に一つだけ、告発したいことがあるんだよね」
今度は誰がターゲットになるんだ、とちょっとザワつく面々。
僕もみんなの事情を全て知っているワケではない。だから、まだまだ隠していることの一つや二つ、あるとは思う。けど、そのどれもが殺人に比べれば些細なことだろう。
だから、僕の最後の告発は、忘れるわけにはいかない、最後の殺人疑惑である。
「天道君、この『召喚術士』って、誰?」
取り出したるは、栄えある『愚者の杖』と化した第一号の頭蓋骨こと、『召喚術士の髑髏』である。
これを僕に託してくれた天道君には感謝の気持ちしかないけれど、それとこれとは話は別。前々から気にはなっていたんだよね。
そして何より、蒼真悠斗、お前の親友もまた、僕と同じようにすでにその手が血で汚れていると知るべきだ。
「ああ、ソイツは東だ」
天道君は、拍子抜けするほどアッサリと答えた。
「龍一……本当に、お前が……」
「悠斗、何を驚いていやがる。売られた喧嘩は買うのが俺の主義だ。で、ここで売られた喧嘩となっちゃあ、街のヤンキー共と殴り合うのとはワケが違う」
ああ、本当に全く以ってその通りだよ天道君。このダンジョンで、そして何より、天職という名の力を、人を簡単に殺すに足る力を得た以上、その争いはシンプルな殴り合いで済むはずがない。
どちから一方がその気になった時点で、殺し合いは避けられないんだよ。
「『召喚術士』の東君って、強かったの?」
「まぁな、火を噴くデカい竜をけしかられた。アレはかなりヤバかったな」
「えっ、あのサラマンダーって東君のだったんだ!?」
「アイツは運が良かったんだろう。見たところ、あの竜は年老いて死ぬ寸前って感じだったからな」
なるほど、だから天職を授かったばかりの頃でも、使役することに成功したと。
それにしたって、いくら老齢とはいえサラマンダーである。それを一発で使い魔にできるとか……その辺のスズメしか支配できない僕とは、能力に差がありすぎませんかね?
やはり『召喚術士』もチート級天職だったか。
「龍一、お前なら殺さずに済ませることだって、できたんじゃないのか! 人殺しなんて、取り返しのつかないことを」
「おいおい、無茶言うなよ。こっちは火に巻かれまくって焼け死ぬ寸前だったんだ」
蒼真君の真剣な叫びに、天道君はうんざりしたような表情で応える。
「それでお前は、何も感じちゃいないのか。少しも悔いてはいないと!」
「悠斗、お前もそろそろ認めろよ。俺達は力を持っちまった。そして、その力を止めてくれる奴は誰もここにはいねぇんだ。力の使い方は、自分で決めるしかねぇ。そんな奴らに、そんな状況になっちまってるんだ――殺し、殺されるのは、当たり前のことだろうが」
「認められるか、そんなこと! 俺達は――」
「はっ、キレて桃川を殺そうとした奴が言う台詞かよ」
「それは……そうだ、その通りだが……」
「つまるところ、強い方が生き残った。そんだけの話だろうが」
「けどっ!」
「――けど、それだけじゃないから、僕らはこうしてここにいる」
弱肉強食が全ての野生動物でも、魔物でもない。僕らは人間だから。
「もうこれ以上、殺し合いをする必要はない。これからは、みんなで話し合って、一致団結してやって行こうよ」
「まぁ、精々がんばりな。邪魔はしないでやる」
その代り、率先して協力する気はなさそうな天道君である。でも、これが彼なりの誠意というか、譲歩なんだろう。
多分、男子委員長だった東君は、ここで無理して天道君に「協力しろ!」とか言ったから、殺し合う羽目になったんじゃないかなと、勝手に思ってる。
「桃川、それを言う資格がお前にあると思っているのか」
「当然! 僕はこれまで何人も殺した。だからこそ、誰よりもこれ以上は殺し合いなんて馬鹿げたことは御免だと思っているのさ」
「俺はお前のことは信じられないし、許すこともできない。だが……もうこれ以上、誰かを死なせるつもりはない。桃川、お前も含めて、一人もだ」
「ありがとう、蒼真君がそう思ってくれる限り、僕らは安泰だよ」
さて、これで炎上不可避の案件は全て出し終えたはずだ。
姫野さんの一件を除き、全てが全て処分保留に過ぎないけれど、ダンジョン脱出までは解決済みとして無視できる。
つまり、これでようやく僕ら全員は、何の遺恨もなく共同戦線を張れるというわけだ。あくまで、表向きはね。
「これ以上、他に意見がなければ打ち切るわよ。これまでに話した罪は、ダンジョンを脱出するまでは一切、持ち出さないこと。完全に遺恨を断つことはできないけれど、これから協力するにあたって、争いの種は潰さなければいけないから」
改めて委員長がそう全員に言い聞かせる。その上でも、ついに誰も声を上げる者はいなくなった。
「それじゃあ、えーと、クラスメイトが死んだ話も色々としたことだし、一旦、誰が生き残っていて、誰が死んでしまったのか、まとめてみたいんだけど」
「そうね、まずはそこをはっきりさせておきましょうか」
というワケで、委員長が作ってくれました、クラス名簿。
1 東真一 『召喚術士』 死亡
2 伊藤誠二 『盗賊』・死亡
3 上田洋平 『剣士』
4 大山大輔 『炎魔術士』 行方不明
5 高坂宏樹 『騎士』死亡
6 斉藤勝 『戦士』 死亡
7 桜井遠矢 『射手』 死亡
8 佐藤裕也 不明
9 下川淳之介 『水魔術士』
10 杉野貴志 『重戦士』 死亡
11 蒼真悠斗 『勇者』
12 高島雄大 死亡
13 天道龍一 『王』
14 中井将太 『戦士』
15 中嶋陽真 『魔法剣士』
16 葉山理月 不明
17 樋口恭弥 『盗賊』 死亡
18 平野浩平 『剣士』 死亡
19 桃川小太郎 『呪術師』
20 山川純一郎 『治癒術士』 死亡
21 山田元気 『重戦士』
22 横道一 『食人鬼』 逃亡中
31 レイナ・アーデルハイド・綾瀬 『精霊術士』 死亡
32 飯島麻由美 不明
33 北大路瑠璃華 不明
34 木崎茜 不明
35 如月涼子 『氷魔術士』
36 剣崎明日那 『双剣士』
37 佐藤彩 『射手』 死亡
38 篠原恵美 不明
39 蒼真桜 『聖女』
40 小鳥遊小鳥 『賢者』
41 長江有希子 『氷魔術士』 死亡
42 夏川美波 『盗賊』
43 西山稔 『風魔術士』 死亡
44 野々宮純愛 『騎士』
45 雛菊早矢 『呪術師』 死亡
46 姫野愛莉 『治癒術士』
47 双葉芽衣子 『狂戦士』
48 芳崎博愛 『戦士』
49 蘭堂杏子 『土魔術士』
以上、二年七組41名中、死亡が確認されたのが15名、誰も目撃していない行方不明が6名、生存確認したがここにはいない者が1名、頼むから死んでて欲しい化け物が1匹、そして残った18名がここに集った生存者である。
「改めてみると、凄い数の死者がでているわね」
「行方不明も含めれば、もう半分以上、死んでることになるからね」
恐らく、行方不明者はみんな死んでいると思う。
これほどの人数が一度に集まったのは、きっとただの偶然なんかじゃない。だから、この場にいない時点で、そういうことなのだと僕は思っている。
「もう、これから合流してくる人はいないと?」
「可能性は低いと思うよ。ああ、でも、横道だけは生き残ってそうだから、もし現れたら確実に殺そう」
『食人鬼』横道一については、クラス名簿の作成中にみんなに話しておいた。
まさか、僕がアラクネに攫われた直後に現れたとは思わなかったよ。天道君、どうしてその時に殺しておかなかった……
アイツは最早、人間ではない。殺人に対する躊躇があるとかないとか、それ以前に人間を食料と認識している時点で、奴は対話不能なモンスターである。
流石の蒼真君も、実際に桜達が襲われているので、アレの討伐に否やはない。流石にこれだけの面子が揃っていれば、横道が襲撃してきても安心できる。
しかしながら、目下最大の問題は例のヤマタノオロチである。
「それじゃあ、これからみんなでヤマタノオロチを見に行こうか」
「え、今から? 学級会はどうするのよ、まだ決めるべきことは沢山あるわよ」
「今の最優先目標は、ヤマタノオロチを倒すこと。僕らの今後の行動は、その攻略法によって変わるから」
ヤマタノオロチを18人で一斉に襲えば簡単に倒せる相手だとは思っていない。けれど、多少、みんながレベルアップすればどうにかなる程度なのか、それともかなり大がかりな準備が必要か、あるいは、思わぬハメ技であっさり倒せそうなのか――最低限、ヤマタノオロチ攻略に向けた方針を固めておきたい。
それによって、各々の役割も決められるし、僕らがこの場所でどの程度の期間、生活しなければいけないかも定まる。
何より、僕はまだその噂の最強ボス、ヤマタノオロチをこの目で見ていないから、早いところ確認しておきたいというのが本音でもある。
「確かに、そうかもしれないわね。分かったわ、行きましょう」
委員長の許可も下りたことだし、いざ、ヤマタノオロチの面を拝みに行こうじゃあないか。




