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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第10章:幻惑
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第129話 密林の遺跡群

 宮殿エリアのボス、身長3メートルほどもある大型のリビングアーマーは他の奴らとは比べ物にならない腕前と装甲を誇ったが……装備を整えた、俺達の前にあえなく敗れ去った。

「何というか、数は力ね」

「ああ、これなら正直、最初に遭遇した三人組の方が手ごわかったよ」

 やや拍子抜けしたように言う委員長の台詞に、俺も同意する。

 多少大きいとはいえ、相手はボス一人だけ。対して、こっちは全員がボスへ集中できる。これまでで最も強い戦闘能力を持つだろう相手だったが、結果はほぼ完封だった。

「すまない、双葉さん。君に一番、負担をかけてしまった」

「ううん、盾があるから平気だよ。それより、蒼真君の光の剣があるから、こんなに楽に倒せたと思うな」

 笑顔で応える双葉さん。

 トドメは俺の『光の聖剣クロスカリバー』からの『刹那一閃ネロ・ライトニング』だったのは確かだ。しかし、それはあくまで真正面から双葉さんがボスを抑えてくれていたからこそ、クリティカルヒットさせることができたに過ぎない。

 多少、慣れてきたとはいえ、『光の聖剣クロスカリバー』を解放すると、その激流のように迸る魔力に振り回されてしまい、完全に制御するには程遠い。ダンジョンでの戦いを重ねて、俺自身も強くなっているはずなのだが、その成長に従って『光の聖剣クロスカリバー』の威力もさらに増大していっているように感じる。

 きっと、ただ自分が強くなるだけでは、この光の剣を完璧に操ることはできない。剣術と同じように、さらなる鍛錬を重ねるか……あるいは、全く別の何かが必要なのだと思う。

 ともかく、そんな不完全ながらも俺の持つ最大威力の攻撃を当てるには、仲間のアシストが必要不可欠なのだ。今回はその役目を、ほぼ双葉さん一人に任せきりになってしまった感じである。

 鮮やかな勝利に、浮かれている場合じゃない。反省すべき点は、いくらでもあるだろう。

「ほらほら、反省会は後回し。今はさっさと、転移してしまいましょう」

 手をパンパンと叩いて、委員長が実に委員長らしく場を仕切る。すでに回収したボスのコアを掲げて、俺達は宮殿エリアを脱するのだった。

「――今度はジャングルか」

 次に俺達が飛ばされてきたエリアは、密林としか言いようのない場所であった。

「屋外で開放的なのはいいですが……少し、暑いですね」

「ねぇねぇ、外に出てるってことは、ダンジョンの奥から離れてるってことなんじゃないの?」

「それはどうかしら。私達が今まで進んできたダンジョンとは繋がっていない、全く別のエリアが、この先にあると考えれば辻褄は合うわ」

「この魔法のコンパスとやらを信じれば、だがな」

「うーん、小鳥はこのコンパスあってると思うよ。だから、委員長の言う通りだと思うな!」

 この異世界に来てから、初めて太陽の登る青空が広がる外へと出たことで、色々と憶測が飛び交う。もしかしてあらぬ方向に出てしまったのでは、という夏川さんの疑惑ももっともだが……俺としては、ごく普通に青い空と緑の大自然が広がっている光景が確認できて、それだけで一安心だった。

「とりあえず、例の『天送門』がダメでも、このジャングルからそのまま歩いて脱出することもできそうで良かったよ」

「そうね。外が極寒の雪山とか灼熱の砂漠だとか、あるいは、もっと酷い環境っていう可能性もあったから」

 こういうジャングルならばサバイバルしつつ進んで行くことはできそうだと、委員長も同意してくれた。

 この異世界には、少なくともアストリア王国という人間の国家が存在していることは聞かされていたが、実際に外がどうなっているかは分からなかった。実はこの世界で人が生きていける空気と水と適度な温度が保証されているのは、ダンジョンの中だけで、外はエイリアンのような魔物が跳梁跋扈する荒廃した環境……なんて、SF的な状態も想像してたりした。

「ああ、ちょっと希望が見え――」

 その時、けたたましい咆哮が響きわたる。ビリビリと腹の底から震えがあるような、圧倒的な気配を持つ巨大な鳴き声。

 なんだ、と思った次の瞬間、俺達の頭上を、途轍もなく大きな影が飛び去って行った。

「今のは……まさか、ドラゴン?」

 見えたのは、本当に一瞬だったが、そうとしか思えない姿だった。鋭い角の生えたトカゲのような頭部に、細長い首。そして何より、大空に広がる巨大な翼。

 太陽の光を浴びて、キラキラ輝く鱗は鮮やかな赤色だった。レッドドラゴンとか火竜とか、そんな名前が相応しい、ファンタジーで思い描くイメージ通りのドラゴンであった。

「あんなのが沢山、空を飛んでいるっていうなら、外を行くのはダンジョンを進むより危険かもね」

「そうだな、やっぱり、外に脱出は最後の手段と考えておこう」

 そんな情けないことを委員長と話す一方、

「……ドラゴンのお肉って、美味しいのかな」

 なんて、空を見上げてポツリとこぼす双葉さんは、どこまでも肝が据わっていた。




 巨大なドラゴンさえ空を飛ぶ、危険なジャングルエリアの探索を始める。

「キキーっ!」

 と、奇声を上げながら、真っ先に襲いかかって来た魔物は、鋭い爪を持つ猿だった。かなり数が多く、ピョンピョンと木の上を飛び交いながら、頭上からも同時に襲い掛かって来るが……今更、その程度の攻撃で、どうこうなる俺達ではない。

 俺も明日那も夏川さんも、飛びかかってくる順に切り伏せればそれで済む。双葉さんなんて盾で飛び込んでくる猿を弾き飛ばしていた。彼女のシールドバッシュを喰らった猿は、大型トラックにでも激突されたように酷い有様だ。

 慎重に木の上で隙を窺ってる奴らには、桜が光の矢を放って、眩しいフラッシュを炸裂させれば、それだけで目がくらんでバタバタと落ちてくる。

 瞬く間に群れが半分ほど壊滅し、いくらなんでも敵わないと悟ったのだろう。猿は撤退していった。

「このお猿さん、ゴーマと同じくらいのレベルの魔物だから、コアは全然とれないよ」

「それでは、解体の手間は省いて、先に進んだ方が良さそうですね」

 小鳥遊さんの『魔力解析』は、それなりの魔物や魔法を見てきたことで成長しているらしく、今ではコアの有無も、一目で分かるという。魔物の強さは、頑強な肉体もさることながら、魔力の影響も大きい。だから、魔力の高い奴は、まず間違いなく強い。

 もっとも、魔力がみなぎるほどの魔物だったら、俺達も直感だけで、ヤバいと判断がつくけれど。

「ねぇ、あそこの木になってるの、バナナじゃないかな」

「そうかもしれないけど、食べない方がいいわよ、双葉さん。毒があるかもしれないし」

「小太郎くんがいたら、食べられるかどうか分かったのになー」

 双葉さんは、猿の死体には目もくれず、木の上になってる大きなバナナのような果実が気になって仕方がない模様。ややサイズは大きいものの、確かにバナナそっくりで、食べられるような気がするが、委員長の言う通り、食べるべきではないだろう。

「変なモノを食べるリスクは冒せないわ。お腹を壊しても、治癒魔法で治せるかどうかは分からないから」

「んー、バナナ……」

 物凄く名残惜しそうにバナナを見つめる双葉さんには悪いけれど、ここは手出しをせずに、先に進もう。

 それからは、猿と同じ程度か、ちょっと強いか、といったほどの魔物としか遭遇しなかった。赤犬の亜種のような、緑の野犬をはじめとした獣型。ラプターやゴアといった恐竜型。たまに、大きなアシダカグモのような昆虫型の魔物とも、遭遇した。基本的には群れで行動し、魔法など特殊な攻撃をする個体はいなかったので、どれも問題なく返り討ちにできた。小鳥遊さんの『魔力解析』で、コアが出そうな奴だけ解体しつつ、俺達はジャングルをさらに進む――すると、鬱蒼と生い茂る深緑の景色に、変化が訪れた。

「なるほど、確かにこのジャングルも、ダンジョンの遺跡の一部みたいだな」

 不意に開けた場所に出ると、そこには幾つもの遺跡が。崩れかけの石造りの建物は、ほとんど木々や植物の緑に侵蝕されていて、時間の経過というのを感じさせられる。

「なんだか、カンボジアの遺跡のようですね」

「えっ、アンコールワットってこんなんだっけ?」

「カンボジアの遺跡は、アンコールワット以外にも沢山あるのよ。こういう風に、ジャングルに覆われた遺跡の風景は独特で、有名なの」

「へぇー」

 と、委員長の講釈に、呑気に応える夏川さんを見ていると、ちょっとだけ学校生活を思い出す。なんだかんだで、強くなったお蔭で、少しずつでも心の余裕が取り戻せているのだろうか。

「この辺は、ずっと遺跡が広がっているようだな。小鳥、何かありそうか?」

「んー、薄らと魔力の気配は感じるから、ダンジョンの中みたいに、魔法の仕掛けが動いてるところが、まだある、かも」

 明日那の問いかけに、小鳥遊さんは「うーん」とテレパシーでも発しているかのように唸りながら、やや曖昧な返答をしている。

 最初に発見した場所から歩き出しても、そこかしこに遺跡の建築物が見えた。特に目立つ、三階建てくらいの大きなところには、一応、探索も兼ねて調べてみたが、特にこれといって気になるものはなかった。宝箱もトラップもなければ、人が訪れた痕跡も見当たらない。桃川も、他のクラスメイトも、この密林遺跡のエリアは通っていないのだろう。

「妖精広場もなさそうですね」

「ここの遺跡は、ただの廃墟のようなものかもしれないわね」

「むむっ、そんなこともなさそうだよ、涼子ちゃん! 私の盗賊の勘が、アソコに何かあると訴えている!」

 夏川さんが自信満々に指を差した先には、なるほど、他の箱形の建物とは趣の違う、円筒形の塔の様な遺跡が建っている。

 そして、その塔の裏側から、のっそりと大きな魔物が、姿を現した。

「……確かに、何かはあったわね」

「あわわ、あの魔物、結構強そうだよ」

 頭に大きな一本角が生える、サイのような大型獣の魔物だ。ずんぐりした巨躯は分厚い毛皮に覆われていてる。確か、ケブカサイ、という毛皮を持つ大きなサイが絶滅した動物でいたはずだ。マンモスと並んで、氷河期を代表する動物らしいが……コイツはどう見ても、地球の絶滅種とは全く別の、狂暴な魔物である。

「ブルルッ!」

 鼻息荒く、こちらを睨みつける大サイの魔物は、今にも突進を始めそうな気配。元から気性が荒いのか、それとも繁殖期だったり巣を守ってたりするのか、どちらにせよ、このまま大人しく引き下がったとしても、突っ込んでくるのは止めてくれそうもない。

「明日那、アイツが突っ込んで来たら、左右に避けて足を切って止めるぞ」

「分かった、任せておけ。小鳥達は下がっていろ」

「それじゃあ、私が突進を止めるね」

「えっ」

 俺と明日那が肩を並べて前へ出たら、盾を構えた双葉さんがさらに前へと進み出た。

「双葉さん、アイツの突進を正面から止めるのは危な――」

「ブルルルォオオアアアアアアアッ!」

 俺の説得の言葉が届くよりも前に、大サイが突進を始めた。見上げるほどの巨躯だが、信じられない速度だ。まるで、アクセル全開で突っ込んでくるダンプカーのような迫力。

 いくら双葉さんが『狂戦士』で力強くても、あまりに両者のサイズが違いすぎる。

「フンっ!」

 だが、止まった。

 双葉さんの気合いの入った声と同時に、ガン! というけたたましい衝突音が響く。彼女が構えた『ダークタワーシールド』は、見事に巨大な魔物の突進を真正面から受け止めてみせたのだ。

「フウッ、ハァアアア……」

 完全に足の止まった大サイに対し、双葉さんは右手に握った漆黒のハルバードを大きく振りかぶった。やけにゆっくりとした動作。しかし、その腕には凄まじい力が集中していくのを感じる。

 それは、今ではすっかりなじみ深い感覚。魔法とは別に、超常的な威力を発揮する技。そう、武技である。

「――『撃震』っ!」

 爆発的な勢いで振るわれる、黒鉄の斧刃。轟々と唸りをあげて、双葉さんのハルバードが漆黒の一閃と化して、大サイの側頭部に叩きこまれた。

 ドっという鈍い音が響くと共に、バキリ、と耳に残る嫌な音がやけに大きく聞こえた。

「ブルッ、ルォオアアア……」

 途端に大人しくなる、大サイ。それも当然だ。なぜなら、アイツの頭の中は、超震動の一撃によって、頭蓋骨ごと脳みそを粉砕されただろうから。


『撃震』:撃ち震える刃、敵を崩す。


 リビングデッドのボス戦を終えて、双葉さんが習得した武技の一つだ。

 はっきりと効果が分からない説明文だったが、実際に試し切りをして、小鳥の目で分析すれば、どうやら刃を超震動させて、威力を高めると共に強力な衝撃波を発生させている、ということが判明した。

 試し切りでは、そこそこの大きさの岩を、あっけなく木端微塵にしてみせた。あんなのが頭に直撃すれば、無事で済むはずがない。

「あれ、もしかして、倒しちゃった?」

 バッタリと横向きに倒れ込んでは、もうピクリとも動かなくなった大サイに対して、双葉さんが拍子抜けしたように言った。

「ふぅ、良かったね。この魔物、大きいだけであんまり強くなかったよ」

 果たして、本当にただの見かけ倒しの魔物だったのか。あるいは、『狂戦士』の力というものが、俺が思っている以上に……

「そうだね、すぐに倒せて良かったよ。ありがとう、双葉さん」

 俺は、女の子らしい笑顔を浮かべる双葉さんに、とりあえず同意しておくことにした。

 参ったな。俺、もっと頑張って、強くならないと……




 大サイの魔物が双葉さんによって瞬殺されたことで、夏川さんが示した塔の探索は、つつがなく開始された。

 内部は灯台のような造りで、幾つかある部屋はただの伽藍堂。やはり、何もない。強いて言えば、最上階の部屋には、転移魔法陣を小さくしたような、円形の魔法陣が刻まれた石の台座があった。

 触っても叩いても乗っかっても、何の反応も示さなかった。

「小鳥遊さん、これが何か分かるかな?」

「うーん、これはねぇ……」

 とりあえず、何か分かりそうなのは『賢者』の小鳥遊さんだけ。彼女が見て分からなければ、この台座は単なるオブジェに過ぎないのだが……

「あっ、これ、この辺のことが、何となく分かるよ!」

 とは言うものの、俺達には何も分からなかった。

 どうやら、魔法陣に何かしら反応できる者だけが、触れるとそこに秘められている情報を見ることができるらしい。

 確かに、小鳥遊さんが台座の魔法陣に触れると、かすかに白く発光して、稼働しているような雰囲気。俺を含めて、他のメンバーでは誰も魔法陣は反応を示さなかった。

「それで、どうなのですか、小鳥?」

「んー、えっとねぇ……ここから真っ直ぐ進んだところに、大きなお城? お寺? みたいなのがあって……そこに、転移魔法陣があるよ」

「凄いな、転移魔法陣がある場所が分かるのか」

「この台座は、私達のノートのコンパスよりも、ずっと性能がいいみたいね」

 なるほど、委員長の言う通り、ノートに書いた魔法陣のコンパス機能を、地図とセットで教えてくれる高性能なモノということか。もしかしたら、今まで進んできたダンジョンの中にも、これと同じものが設置されていたかもしれない。

「小鳥、他には、何か分かるのか?」

「うーんと……うわっ、こ、これは……お城のところ、ゴーマが沢山、住んでるみたいだよぉ」

 小鳥遊さんが、マップ機能付き台座から得られた情報は、以上であった。

 唯一、この台座を使える彼女の言葉によれば、これで見えるのは、本物の地図のように正確な絵や図ではなく、その場所のイメージが直接、伝わるらしい。夢の中で、見たことない景色を眺めているような、そんな感じだとか。

 そうして見えた景色の位置関係は、何となく直感的に分かり、結果的に近辺のおおまかな地理が分かるという。

 それから、マップの範囲内に生息する魔物も、ある程度まで感知できる。一体ずつの動きは分からないが、特に強力な個体、または、大きな群れを形成する魔物は、その存在と、大まかな場所が分かるらしい。

 小鳥遊さんが感知できたのは、たまたまこの辺の空を飛んでいたらしいドラゴンが一体と、俺達が歩いてきた方向にある、猿の魔物の群れ。

 そして、これから向かう先である、転移魔法陣があるらしい城。そこを根城にしている、ゴーマの軍団だ。

 このゴーマの軍団の規模は、猿の群れとはけた違いに大きいらしい。正確な数は分からないが、少なくとも、百や二百では済まないだろう。

 正直、ゴーマが陣取る城なんて、近づきたくはないのだが……俺達には、進むより他はない。他の道を探すにしても、まずは様子を見るくらいはしなくては。

 そうして、緑に飲まれた遺跡が点々と転がるジャングルを再出発すると――

「ブゲラッ! グバ、ガドォーバッ!」

 案の定、ゴーマの集団に遭遇した。

 今更、ゴーマと鉢合わせても驚くこともなく対処できるのだが、コイツらが城に住んでる軍団の一部なのかと思うと、また感じ方も変わってくる。

「ただのゴーマにしては、良い装備をしていますね」

「きっと、このジャングルの遺跡から装備品を漁っているんだわ」

 塔を過ぎてから、調べた遺跡の中にチラホラと宝箱を発見することがあった。ほとんどは、新品の鉄の剣や槍、斧、それから頑丈な造りの弓矢などの武器で、今の俺達に役立つモノはなかった。しかし、原始人レベルのゴーマからすると、綺麗な鉄の武器というのは正にお宝。

「ドゥバ! グル、ゼガァアアーッ!」

 そして、三度目に遭遇したゴーマ部隊は、全員が『ゴーヴ』と呼ばれる大柄な筋肉質の戦士階級のゴーマで構成された、エリートであった。

 ゴーヴの持つ武器は、これまで出会ってきたどのゴーマよりも品質の良いもので、さらには、魔法のアイテムまで装備していた。

「くっ、『氷矢アイズ・サギタ』が防がれるなんて」

 俺達も持っている『ガード・リング』と似たような、防御用のアクセサリーだ。今回のゴーヴは全員これを装備しているらしく、下級攻撃魔法や、夏川さんのナイフ投げ程度の威力なら、完全に防ぐだけの防御力を発揮していた。

「ハァアアアア――『破断』っ!」

 しかし、双葉さんの武技を防ぐには、まるで足りなかったようだ。


『破断』:破り断つ刃、敵を斬る。


 リビングアーマーのボスを倒して習得した、武技の二つ目がこれだ。例によって試し切りと、小鳥遊さんの分析によって、どうやらこの『破断』は、俺や明日那が使う『一閃』と同じように、単純に斬撃力を向上させる技だと判明した。

 打撃の『撃震』と斬撃の『破断』。

 早くも、この二種類の武技を使いこなし始める双葉さんにとって、エリートゴーヴ部隊など、ちょうどよい試し切りの相手にしかならなかったようだ。

 彼女が『破断』を繰りだせば、マジックアイテムの防御ごとゴーヴを三体まとめて両断し、『撃震』を振り下ろせば、三体が吹っ飛んで行き、最後の方では、普通のハルバードの一撃で、三体斬り殺していた。

「戦士といっても、ゴーマだから全然強くないね」

 もしかして、このまま双葉さん一人でゴーマの城を落とせるんじゃないのか。割と本気でそんなことを思ってしまった俺は、情けない。

 しっかりしろよ、俺が、双葉さんも守るんだ!

 今のところ、何の役にも立てていないが……ボス戦の時は、気合いを入れて頑張ろうと思う。

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