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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第9章:魅了
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第126話 姫野愛莉と中嶋陽真と

 晴れて童貞を卒業した中嶋陽真は、男としての覚悟が決まったかのように、ダンジョン攻略に奮闘した。

 これまでは魔物との戦闘も可能な限りは避けてきたが、今では新たな力を求めるかのように、果敢に挑んで行く。たまに、多勢に無勢で慌てて逃げることもあるが、陽真の戦闘能力は少しずつだが確実に磨かれていった。

 今日は初めてとなるボス戦。これまで相手にしてきた魔物とは一線を画す巨躯を誇る、大きなカエルの魔物がボスであった。

 麻痺毒を持つ長い舌を振り回すのは厄介だったが、遠距離でひたすら『火矢イグニス・サギタ』を撃ち続け、動きが鈍ったところを剣でトドメを刺して、無事に勝利を収めた。

「陽真くーん、今日もお疲れ様!」

 そして、辿り着いた妖精広場で、姫野愛莉と体を重ねるのも、当たり前のことになっていた。

 正直なところ、今でも愛莉はブスな方だと思うし、心の底から愛しているとは言い難いし、長江有希子に対する未練もある。

 けれど、男としての本能が目の前にいる女を求めてやまない。そして、一度手を出してしまった以上、もう我慢することもできない。

 歪な関係、と感じつつも、それを止めることも出来ず、陽真はダンジョン攻略を続けるより他はなかった。

 だが、それもすぐに限界が訪れる。

「陽真くん、危ないっ!」

「――くっ!?」

 頭上から降ってくる巨大な鉄塊を、陽真は間一髪で回避する。

 石畳の床が粉みじんに破砕され、陥没する様を見て、その破壊力に戦慄。あんなのを一発でも喰らえば、即死である。ひとまず追撃されないよう『疾駆ハイウォーク』の速度を生かして間合いから離脱した。

「つ、強い……」

 今、陽真の前に立ちはだかるのは、大カエルに続く二回目のボス。姿は見慣れたスケルトンと何の変りもないが、そのサイズは倍以上に大きい。そして、手にする武器も巨大なモノで、普通の人間では持ち上げることすらできないほどの、大きなハンマーだ。そんな巨大武器を振り回されれば、そう簡単に近づけない。

 かといって、遠距離から『火矢イグニス・サギタ』を当てても、大した効果はなかった。体育館ほどの広さのボス部屋という閉じた環境も、一方的に遠距離攻撃を続けるのを難しくさせている。

 太く頑強な巨大スケルトンの骨を壊すには、『一閃スラッシュ』をクリティカルでヒットさせなければいけない。だが、その一撃を放てるだけの隙を見出すことが難しい。

 このボスを倒すには、命を賭けて、必殺の間合いにまで踏み込んで行かなければいけないだろう。しかし、それだけの覚悟はまだ、陽真には持てなかった。

「もういい、もういいよ、陽真くん! 逃げよう!」

「……分かった、そうするよ」

 幸い、ここのボス部屋は一度入れば入り口が閉じる様な構造はしておらず、いつでも撤退することが可能。ボススケルトンも、部屋から出れば追いかけては来ないし、そもそも、通れるサイズではない。

 すでに、ボススケルトンの撃破を諦め、撤退したのは三度目になる。

「――はぁ、もう陽真くんだけじゃ限界かなー」

 ボスから逃げた悔しさをぶつけるような激しい行為の後、ぐっすりと寝入った陽真を、愛莉は冷めた目で見下ろしていた。

 愛莉との関係のお蔭で、陽真のヤル気と向上心は確かに上昇したが、それはあくまで気持ちの問題である。戦いにおいて精神論というのは重要ではあるが、絶対ではない。気持ちだけで、強い力は手に入るはずもなく、ボスを相手に苦戦を強いられるのは当然の結果ともいえる。

 しかし、愛莉にとって重要なのは、頑張って戦い続ける努力の過程ではなく、ボスを倒すという結果。引いては、ダンジョン攻略を進めることそのものである。

 ボスを相手に三度も退き、いまだこれといった突破口を見いだせない陽真の評価は下がる一方。

「あーあ、あんなデカいだけのスケルトンなんて、蒼真君とか天道君とかだったら、楽勝なんだろうなー」

 くだらない妄想でしかない無為なことをつぶやきながらも、都合よく助けなど来るはずもない現状に、結局のところ、愛莉自身も陽真に頑張り続けてもらうしかない。

 最悪の場合、どうしても陽真一人でボススケルトンの撃破が不可能なら、自分も『光矢ルクス・サギタ』を撃って援護するしかないだろう。

「はぁー、ヤだなー、絶対戦うとかムリー」

 ボスの攻略は、陽真の努力が実るか、愛莉の覚悟が決まるか。このどちらかによってのみ、突破される――かに、思われた。

「おっ、マジかよ、誰かいるじゃん!」

「中嶋と、えーっと、姫野だったか?」

「クラスの奴に会ったの、ちょっと久しぶりだべ」

 四度目の挑戦が案の定失敗し、最寄りの妖精広場へと引き返してきた時のことだ。その中には先客、いや、先にこのエリアに到達していたのは二人なので、後続組というべきか。

 ともかく、三人の男子がそこにいた。

「えっ、どうして――」

「ああーっ! 上田君と中井君と下川君!? 良かったぁ、無事だったんだねーっ!」

 上中下トリオと呼ばれるさして仲良くもない男子生徒三人組の登場に、正直なところ陽真は喜ぶよりも困惑の感情が先に立ったが、愛莉は素直に彼らの無事を祝うように、喜び勇んで駆けて行った。

 まるで彼らとは最初から親しい友人同士であったかのような愛莉のリアクションだが、陽真の知る限り、三人と愛莉にクラス内での交流は皆無だったはず。そして、それは事実でもある。姫野愛莉は間違いなく、上中下トリオの誰とも、これまで一度も口をきいたことさえない、知人未満の関係であった。

「お、おう、姫野も無事で良かったな」

「つーか姫野ってこんなキャラだっけ?」

「まぁまぁ、いいんじゃね、素直に合流を喜んでもよー」

 話したこともない上に、しかも容姿に優れたワケでもないクラスメイトの女子に、キャーキャーとテンション高めに来られれば、困惑もするだろう。しかし、多少ブスでも女子に素直な好意を向けられれば、悪い気がしないのも男という生き物である。

 愛莉のノリに引きずられるように、三人はすぐに笑顔を浮かべて彼女の接近を許した。

「クラスのみんなのこと、私、ずっと心配してたの。三人だけでも無事だって分かって、本当に良かったよぉ!」

「まぁ、そこそこ苦労はしたけどな」

「俺らも天職の力はあるし」

「三人もいれば大体なんとかなるべ」

「ええっ、もしかして三人とも、凄く強いの!? わぁっ、すごーい、私なんて、全然ダメでぇ」

 気が付けば、三人と愛莉の話は大きく盛り上がり始めていた。そして、陽真は完全に蚊帳の外に置かれている。

 その日、陽真は実に久しぶりに、高ぶった性欲を抑えながらの苦しい眠りについた。愛莉は三人と話に満開の花を咲かせていて、陽真の相手どころではない。

 何だか、嫌な予感がする。

 叫ぶ男の本能と共に、陽真は不安も不満も抑えて、とにかく眠りにつこうと硬く瞼を閉じることしかできなかった。

「それじゃあ、今日こそボスの突破を目指して、頑張ろーっ!」

 と、わざとらしいほどに張り切った愛莉の声が妖精広場に響き渡る。

 陽真が目覚めた時、すでに話はついていた。

「良かったね、陽真くん。三人がボスを倒すのに協力してれるって! 心強い味方ができたよ、やったね!」

 この三人を仲間にするのか。陽真は反射的に彼らと行動を共にすることを「嫌だな」と思ったが、実際にボスでつまずいていること、天職を持つ男子三人という戦力、理性的に考えれば、彼らと協力する以外の選択肢はありえない。

 しかし、新しい仲間を受け入れるにあたって、きちんと話し合いの場が設けられなかった、少なくとも陽真が寝ている間に、愛莉と三人が勝手に話を進めて決まったことに、不満を覚えるのも当然のこと。どうして愛莉は、自分に何も聞いてくれないのか……

 彼女に対する不満と不信が湧くものの、結局のところ、愛莉と三人の話の輪に入っていけなかった自分の消極性が情けないだけでもある。

「あ、うん、そうだね……三人もいれば、ボスも倒せるかもね」

 これで、ボスを倒せなければいいのに、なんて思ってしまった陽真であった。

 そして、三人そろっても彼らが自分よりも弱い、などという都合の良い力関係になど、なるはずもなく――

「オラァっ! 『一閃スラッシュ』っ!」

「ウラァ! 『一打スマッシュ』ぅ!」

 天職『剣士』の上田と『戦士』の中井、二人は巨大スケルトンのボスを相手にしても、全く怯むことなく果敢に攻撃を仕掛けている。その勢いは、まるで自らがアクションゲームのプレイヤーキャラクターとなっているかのように躊躇がない。

 だが、その戦い方は単に天職という力を得たことで調子に乗っている、というだけではなかった。

「おい、危ねーぞ! 『水流鞭アクア・バインド』!」

 直撃すれば致命傷は免れない、ボススケルトンの巨大ハンマーによる一撃が、接近戦を挑む上田と中井を叩き潰そうと振り上げられるが――天職『水魔術士』の下川が放った『水流鞭アクア・バインド』がスケルトンの腕を絡め取り、動きを封じる。

 大蛇のようにうねる水の鞭は、スケルトンのパワーによって次の瞬間には破られるが、そのワンテンポだけ攻撃が遅れた猶予を生かし、上田と中井は素早く間合いの外に脱していた。

「へへっ、遅ぇ、ハズレだぜ!」

「大振りの攻撃だけだ、チョロイぜコイツは!」

「俺がサポートしてるから安全に避けられるんだべや!」

 案の定、ボススケルトンの一撃が外れたところで、再び上田と中井が間合いを詰めて斬りかかる。そして、攻撃動作や、二人の立ち位置がマズい時などを、的確に下川の水魔法が援護に入り、危機を乗り越える。

 三人はいつものクラスで見かけるような、ちょっとやかましいほどに声を上げて盛り上がっている。そう、それは油断ではなく、確かな経験からくる自信。

 それぞれの実力は突出したほどではないが、彼らには『チームワーク』という確かな武器があった。今までの学生生活を通して培ってきた友情の力が、このダンジョンにおいて素晴らしい連携力となって開花したのだった。

「よっしゃーっ!」

「ボス撃破ぁっ!」

「ふぅー、大したことないボスだべ」

 三人の連携攻撃を前に、ついにボススケルトンが倒れる。幾度も膝に剣士と戦士の武技が炸裂したことで、ついに関節部が砕け散る。二足歩行である以上、片方でも膝が砕かれれば、倒れざるを得ない。

 そして、一度でも地に屈してしまえば、高い位置で届かなかった弱点、すなわち頭部を集中狙いでカチ割られ、ロクに反撃も許されずに敗北するより他はない。

 ボスを征した証ともいえる、大きなコアを砕いた髑髏の中から取り出し、三人は勝利の雄たけびをあげながら、赤く輝くコアを掲げた。

「キャアァーっ! すっごーい! ボスを倒しちゃった、やったぁーっ!」

 そこで、わざとらしいほど黄色い歓声をあげて、姫野愛莉は喜ぶ三人の輪に加わって、彼らの戦いを褒め称える。自分は見ているだけだったが、自らも彼らと共にボス撃破という偉業を成し遂げたかのように、涙を流して感激。その姿は、まるで甲子園優勝校をただ応援していただけで、一緒に泣いて喜ぶ全校応援の女子生徒のよう……だが、この感動的で喜ばしいシーンにおいて、その姿勢にケチをつける者は一人もいない。

「凄い、凄いよ三人とも、こんなに簡単にボスを倒しちゃうなんて、強すぎだよ! 私、もしかしたら、もうここでダメなんじゃないかと思って……でも、三人が来てくれたお蔭で……うぅ!」

「ははっ、おいおい、泣くことねーだろ」

「まぁ、そんだけ追い詰められてたんだろ、姫野ちゃんも」

「これからは俺らがついてるから安心だべ」

 感動にむせび泣く愛莉へと、三人は温かい言葉をかけていく。どうやら、ボス撃破を讃えられて彼らとしても満更ではないらしい。まして、褒めて泣いて喜んでくれるのが女の子とあれば、男としての自尊心もより一層にくすぐられる。

「ありがとう、本当にありがとう!」

 涙ながらに感謝の言葉を叫んで、三人に抱き着いていく愛莉を、陽真は黙って眺めていることしかできなかった。




 ボススケルトンを撃破した、愛莉の五人パーティは順調にダンジョン攻略を進めていく。上中下トリオの三人がいれば、陽真一人だったら避けていたような魔物の群れが道を塞いでいても、難なく突破することができる。逃げることも、迂回することも減り、進む速度は以前の比ではない。

「っしゃあっ! 今日は俺の剣が冴えてたぜ!」

「ちくしょー、ゴーマ共が逃げ回らなければ俺の方が倒せたんだけどよー」

「俺ももっと攻撃力のある魔法があれば楽勝なのに……早く新魔法習得できねーべか」

 森林ドームで遭遇したゴーマの群れを蹴散らした三人。一応、陽真も戦ったが、やはり連携して戦える三人に比べ、その戦果は芳しくない。

 十体以上もその剣でもって切り伏せた剣士・上田が、パーティで一番の活躍を笑って誇る。ここまで素直に喜べるのは、単なる自己満足だけが理由ではない。彼が、いや、彼らが競うように魔物と戦うのは、そこにご褒美があるからだ。

「それじゃあ、今日のMVPは上田君だね!」

「おうよ! いやー、今日はマジで調子良かったからな。っつーか、剣士として一回り成長した、的な?」

 ははは、と調子のいい笑い声をあげる上田に、愛莉は「うんうん」と見事な笑顔で相槌を打っている。

 そうして、妖精広場の噴水に腰掛けて談笑する二人を残して、他の面子はそそくさと退散。

「愛莉……」

 出て行く直前に振り返った陽真の目には、噴水の向こうで、上田が愛莉の肩を抱き寄せて、強引に唇を重ねている姿――

「おい、何やってんだよ中嶋、さっさと行こうぜ」

「へへっ、覗き見なんて趣味が悪いべや」

「そ、そんなんじゃないって……今、行くよ」

 下品なニヤケ顔を浮かべる中井と下川の後に、陽真は大人しくついていった。

 一体、いつからこんな事になったのだろうか――なんて、無意味だと分かっていても、陽真は考えてしまう。

 いつから、と問われれば、すぐに、と言うのが正解だろう。ボススケルトンを倒した後、戦いで頼りになる上中下トリオの三人に、愛莉はベッタリになっていった。

 そして、次に妖精広場に辿り着いたその日の夜、愛莉が上田の寝床に潜りこんで行く姿を目撃した。次の日は中井の下へ、その次の日は下川――それ以降、一日の戦いで一番戦果を挙げた者が、愛莉と一緒に寝る、というルールが出来上がっていた。

 誰かが言いだしたワケではない、だが、自然とそうなっていった。つまるところ、陽真は何も言えなかったのだ。

「愛莉は俺の女だ!」

 三人と敵対することを覚悟してでも、そう言い切って宣言することはできなかった。

 陽真は、愛莉と付き合っているつもりはない。ただ、何となく、彼女が許してくれるから、受け入れてくれるから、これでいいんだと割り切って、甘えていただけ。

 それはきっと、心地よかったし、気持ちよかった。こんなダンジョン生活でも、頑張って進んで行けるほど、心の活力であり、癒しであった。

 だがしかし、その快楽を享受するのが、自分一人ではなくなった時、果たして人は正気でいられるのかどうか……

「くそー、明日は絶対俺の番だぜ」

「いや、相手次第じゃあ俺の圧勝だし」

 前を歩く二人は、今の『ルール』を当然のものとして受け入れている。一人の女を複数の男で使い回す、そんな乱れた関係性の中で、彼らが平然としていられるのは、きっとそこに愛などないから――でも、陽真にだって、愛なんてなかったはず。

「なぁ、そういえば中嶋ってよぉ、俺らが来てから愛莉とヤってないんじゃね?」

「えっ」

 急に中井から話をふられて、陽真は間抜けな声を上げてしまった。

「あーあー、別に隠さなくたっていいべ? お前らが二人だけだった時、毎日ヤリまくりだったってのは知ってるし」

 下品な笑い声を漏らしながら、下川は気安く中嶋の肩をバンバンと叩く。

「お前らが付き合ってるワケじゃなくて、マジで良かったぜ。流石にカノジョだったら、罪悪感ってのもな?」

「あるある! あるけど、我慢はできねーべ?」

「うん、ああ、そう……」

 陽真は、二人のノリについていけない。適当な相槌を挟むだけで精一杯だった。

「まぁよ、こういう状況だから仕方ないっつーか、なぁ?」

「安心しろよ中嶋、その内、お前にもちゃんと順番回してやるからさ」

「いや、僕は別に、そういうのは……」

「ぶはは、今まで散々愛莉とヤっておいて、それはねーだろ!」

「我慢は体に毒だべ、中嶋。俺らも愛莉ちゃんと出会うまではそうだったから、気持ちはよーく分かる」

 彼らの下世話な言葉を拒絶しようにも、一言一句その通りなのだから始末に負えない。

「お前からすれば、好きにヤレた女をとられたみてーで不満かもしれねーけどよ、そこはちょっと俺らにも分けてくれねーと」

「そうそう、順番に愛莉ちゃんに相手してもらって、俺らも仲良くやっていかねーとな」

 二人の言い分は、悔しいけれど正しい。少なくとも、この状況下では最も合理的な選択といえよう。一人の女を巡って醜い男同士の争いを起こさず、それでいて性欲も満たせる、最善の対応。

「うん、そう、だよね……」

 彼らの意見が正しいことも分かる。

 そして、愛莉がより強い男を頼っていくのも分かる。

 誰も、間違ってなどいない。誰も、恨むべきではない。

 全部、分かっている……はずなのに、もう陽真には今の環境には耐えられなかった。

 愛莉のことが好きなのか嫌いなのか。彼女は自分のことが好きなのか嫌いなのか。どうしたいのか、どうなりたいのか、ヤリたいだけなのか。

 最早、自分の気持ちさえ分からない。そして、愛莉が他の男とセックスしている事実を目前にされれば、心の中はグチャグチャで何もかも割り切ることさえできはしない……




 翌日、中嶋陽真の姿は妖精広場のどこにもなかった。

 一人で行方をくらませた彼を、愛莉も、三人も、探すことも追いかけることもなく、ただ、予定通りに、四人でダンジョンの先へと進んで行くだけだった。

「あーあ、陽真くん逃げ出しちゃったのかぁ。ちょっと残念だけど……アレが小さいと器も小さいのかな、意気地なしの女々しい奴。でも、強くなって帰ってきてくれたら、また相手してあげる」

 弱い男には何の未練もなく、『淫魔』はただ、逃げた陽真を嘲笑った。

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最初の女だから毒が効きすぎたのか?再登場に期待。
[気になる点] ボスを倒すのに協力してれるって!
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