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呪術師は勇者になれない  作者: 菱影代理
第8章:王の力
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第98話 地底湖に潜むモノ

 今日は、芳崎さんを護衛に連れて、引き続き蘭堂さんのレベリングを行っている。

 天道君に待っててもらうよう許可を得た僕だけれど、野々宮さんと芳崎さんの二人にも、護衛役として協力してもらう以上、彼女達にも労力に見合った対価を提供することにした。それが、天道君と二人きりで過ごす、素敵なアプローチタイムである。

 二人とも本気で天道君が好き。当然、もっとお近づきになりたいワケだ。でも、常にパーティメンバーとして、蘭堂さんと僕、そして、一応は協力関係だが、野々宮さんと芳崎さんはお互いに目下最大のライバルである。そんな状況が続く中、天道君と二人きりになるチャンスというのは、喉から手が出るほど欲しいに決まっている。

 というワケで、僕は天道君を勝手に餌にして、順番に護衛役に協力してもらうという建前で、二人になる時間を作ってあげることにしたのだ。

 だから、昨日は野々宮さんで、今日は芳崎さんが、護衛役なのである。

「おおぉー、凄ぇ、マジで凄いじゃん、杏子!」

「へへっ、ウチのこと、もうお荷物とは呼ばせないし!」

「うんうん、めっちゃ頼りにするわ! 今までごめんね、杏子ぉーっ!」

「いいってことよ」

 大口径のライフル弾なみの威力を誇る『石矢テラ・サギタ』でゾンビをぶち抜いて見せれば、芳崎さんも蘭堂さんのことをすぐに認めた。

 これで、蘭堂さんとジュリマリの、仲良しギャル三人組は完全復活である。

「今日はジーラも狙ってみよう」

「オッケー」

「今の杏子なら、あんな魚野郎、楽勝だわ」

 油断するのはよくない、とは思うものの、芳崎さんの言う通りだった。

 水辺でまったりしているジーラを見つけ、蘭堂さんがスナイパーよろしく『石矢テラ・サギタ』をぶっ放せば、あの気持ち悪い魚面が見事に吹っ飛んだ。ジーラの体は腐ったゾンビよりかは、鱗も筋肉もあるし固いとは思ったが、そんなものはお構いなしに、石の弾丸が情け容赦なくその身を穿った。

「よし、次は群れも狙ってみよう」

 調子に乗った僕らは、さらに水辺をウロつくジーラを襲った。数は十体。結構な数だ。

 けれど、遠距離からの射撃で頭数を削り、こちらに気づいて接近してくるジーラをさらに狙い撃ち――念のためにと用意しておいた土壁と岩槍の簡易防壁まで辿り着いた時には、その数は四体にまで減っていた。

 戦士として申し分ない実力を持つ芳崎さんと、いよいよ本物の天職持ちに近い戦闘力を発揮するようになったレム、そして、僕の触手による妨害があれば、たった四体のジーラなど、一方的に倒せる雑魚でしかない。

「いやー、マジで杏子スゲーわ。ちょっとくらい数いても、こんなの楽勝じゃん」

「でも、やっぱ近づかれると怖いんだけどぉ」

「大丈夫だって、そういう時こそ、アタシらの出番っしょ」

 蘭堂さんには万が一にも誤射がないよう、前衛組みが戦い始めたら、『石矢テラ・サギタ』の発射は禁止と言いつけてある。危ない! と思っても、今の芳崎さんの実力なら、自分でどうにかできる。

 そもそも、戦いにおいてはド素人の蘭堂さんが見ても、本当にピンチなのかどうか、瞬時に判断は下せまい。僕が見たところ、芳崎さんも野々宮さんも、すでにフェイントや、わざと相手に攻撃させて後の先をとる、などといった高度な駆け引きもしているように思えた。素人判断で援護射撃したら、かえって危険。

 その代り、蘭堂さんには後方警戒をしてもらっているが、今のところ、思わぬ方向からの奇襲や増援が現れたことはない。ジーラも所詮、ゴーマと同程度の知能しかないようだ。

「でも、ゴーマよりは、コアのドロップ率は高いかな」

 僕は汚れ仕事であるコアの摘出を、完全にレムに丸投げするという徹底した怠惰ぶり。いや、だって、僕がやってもあんまり上手く取れないし、下手にザクザクやってると、無駄に刃の切れ味を消耗させるだけだったりもする。適材適所ということで。

 レムがメイちゃんのように、手際よくジーラの胴体からコアを取り出し、回収してくれる。それと、質の良さそうな武器も回収して、使うかどうか僕に確認してくれたり。本当に、細かい気遣いというか、戦闘以外の仕事もこなせるようになってきて、レムの成長度合いは著しい。

「おお、この槍は結構、いい感じだよ」

 よし、これは蘭堂さんにプレゼントしよう。何だかんだで、魔術士といえども槍の一本くらいは持っていた方がいい。お守りみたいなものだ。本当は、魔法の杖がいいんだろうけど、宝箱が見つからないから、期待はできない。

 お目当ての杖を手に入れるまで、僕も蘭堂さんも、とりあえず最低限の防備として槍を持つしかなさそう。というワケで、彼女にジーラの槍を進呈しよう。

「あっ、桃川!」

「え、なに、どうしたの?」

 急に振りかえって、真剣な表情の蘭堂さん。もしかして、ジーラが使ってた槍なんて、ベタベタしてそうでイヤとか、そういうアレだろうか。

「新しい魔法、覚えた!」

「おお、やった!」

 蘭堂さんは、驚くほど、順調に成長している。本当に、羨ましくなるほどに。




 蘭堂さんの新魔法の試し撃ちもほどほどに終えて、僕らは妖精広場へと帰還した。

「桃川、蘭堂は強くなったのか?」

 一日たって、いよいよ焦れて来たのか、天道君は開口一番、僕にそう聞いた。

「うん。お蔭様で、蘭堂さんはもう、魔術士として立派な戦力になったよ」

「そうか……じゃあ、お前らが少し休憩したら、出発だ」

「分かったよ」

 僅か一日、だが、それでも結果を思えば、貴重な一日であった。蘭堂さんは、すでにして僕を遥かに超える火力を誇る、土魔術士だ。当初の予想を上回る、凄まじい成長。

 これから再開するダンジョン攻略に、さらなる希望の光が灯ったような気がする。

「行くぞ、お前ら」

 一時間ほどの休息を終え、僕も改めて出発の準備を整え、いよいよ、沼地の妖精広場を出発した。

 すでに一度、偵察済みだからか、先頭を行く天道君の歩みに迷いはない。僕らも丸一日、沼地を駆けまわったから、それなりに地形も理解している。ここを抜けて先に進む、最短ルートを進んでいるのだと分かる。

 林を抜けて、エリアの最奥にあたる大きな沼にまで、僕らは一度の戦闘もなくやってきた。そこで、どうしてすんなりここまで来れたのか、その理由を知った。

「うわっ、ジーラの大群! まさか、待ち伏せしてたのかっ!?」

 沼には、百近いジーラが群れていた。勿論、全員武器を手に、かなり殺気立った様子。このまま林を抜けて、堂々と奴らの前に姿を晒せば、濁った魚の目を血走らせて、猛然と襲い掛かって来るに違いない。

「ちょっと、この数はヤバくなーい?」

「うん、絶対ヤバい」

「えーと、ウチ、とりあえず撃とうか?」

「馬鹿! やめろ、杏子!」

「あんなのチマチマ撃ってもしょうがないって!」

 僕が止めるまでもなく、ジュリマリの見事な連携で浅はかな蘭堂さんを制止。いやぁ、仲直りしておいて、本当に良かった。

 しかし、どうするか。先に進むには、どうしてもここを通らなければ、エリアを抜ける通路には辿り着けない。かといって、これだけの数のジーラが相手なら、天道君が一人で戦っても、全員叩き潰すには時間がかかるだろう。奴らの半分でも、一気に僕らへ襲い掛かって来られたら……まずい。

「天道君、ここは一旦引いて、作戦を――ってぇ、ちょっと待って!」

 僕の言葉などまるでおかまいなしに、天道君は一人でずんずんと進んで行った。

「ギョアっ!」

「ギョギョエエエェエエ!」

 案の定、ジーラ軍団がのこのこ姿を現した天道君に気づいた。もうダメだ、戦いは避けられない!

 僕が決死の覚悟を決めた、その時である。

「――邪魔くせぇ」

 うんざりしたような天道君のつぶやきが、耳に届いたかと思った次の瞬間、大爆発が轟いた。

 ジーラが群れている沼の浅瀬が、盛大な水柱と、そして、それ以上に巨大な紅蓮が迸る。とんでもない爆発。当然、爆心地にいたジーラが、無事でいられるはずがない。派手に飛び散る水飛沫に入り混じって、青い手足の欠片や肉片が散る。

「こ、これは……炎の魔法……」

 見れば、天道君の手元には、轟々と燃え盛る大きな火球が浮いていた。バスケットボールよりも、さらに大きなサイズ。軽く手をかざすと、矢のような速さで火球は飛んでゆき、赤い光の尾を引いて――さらに、大爆発。

 圧倒的な破壊力と、紅蓮の蹂躙劇を前に、僕はそれが、ただ爆発する炎魔法ではなく……思わず、ドラゴンブレスという言葉を連想してしまった。そう、あのレムの胸元に煌めく真紅の竜燐の持ち主こそ、この絶大な威力の火球を放ったに違いない。

「ギョオァアアア!」

「アァアアア!」

 二度の大爆発によって、ジーラは一網打尽。群れごと吹き飛ばされ、生き残っているのは、もう数十体もいない。

 いくらゴーマ並みの知能でも、流石に敵わない危険な相手だと悟ったのだろう。沼をザバザバと必死で泳いで、遠くへと逃げ去っていく。

「お前らも、魚共の相手は飽きてただろう。さっさと、次に行くぞ」

 一度だけ振り返って、そう言い放った天道君は、何事もなかったかのように、歩き出した。

「やっぱ、天道君、超カッコいいわぁ」

「うん、マジ最強」

 愛しい彼の雄姿に、さらに胸を打たれたジュリマリコンビは、嬉しそうに天道君の背中を追いかけた。

「……ねぇ、桃川」

「なに、蘭堂さん」

「もしかして、ウチの魔法ってさ、地味?」

「そんなことないよ」

 成長したことで、少なからず自信のようなモノを持ったのだろうか。そんなことを神妙な顔で言う蘭堂さんに、僕は諭すように言った。

 天道君と張り合おうとするだけ、無駄だよって。

 だって、彼はあの『勇者』蒼真悠斗と対をなす、我らが二年七組の英雄だから。いまだ謎の天職である天道龍一、その実力の底は、全く知れない。




 それから、ややしばらく下水道風の通路を進み、小さな沼地エリアを越えていくと……いつしか、僕らが進む通路は、洞窟風の水路へと変わっていた。水路というか、洞窟の中にただ小川が流れているだけというか。粗削りの岩や土肌が剥き出しの壁は、虫の洞窟を思い出させる。

「ふぅー、ようやく到着か。無駄に歩かせやがって」

 そんな天道君の言葉と共に、僕らの視界が急に開ける。ついに長い洞窟を抜け、目的地、つまり、このエリアのボス部屋へと到着したのだ。

「うわっ、凄い……これは、地底湖なのか」

 全体の作りとしては、ルーク・スパイダーが出現した場所と同じ、巨大な縦穴である。しかし、その大きさは桁違い。そして何よりも目立つのは、水龍でも住んでいそうな、円形の大きな湖がど真ん中に広がっていることだ。

 僕らが歩いてきた洞窟の川も、湖へ繋がっているし、他にも、似たような支道から水が流れ、中には、遥か数十メートルの高さから湖へと注ぐ、滝になっているのも何本か見えた。

 人工的な造形なのか、それとも大自然の奇跡か。どちらともいえない、異様ながらも壮大な、地底湖の景色に、僕らは息を呑んだ。

「さっさと行くぞ」

 天道君は何の感動も示さず、ついでに注意を払うこともなく、ズンズンと魔法陣のコンパスが指し示す地底湖へと向かって歩き出す。

「ねぇ、桃川、あの真ん中にあるちっこい島、魔法陣っぽくない?」

「うん、僕もアレがそうだと思う」

 蘭堂さんが示す先には、地底湖のちょうど真ん中に、円形の島がある。ここからでははっきり確認できないが、それでも、その地面に転移の魔法陣が描かれる石版になっているだろうことは容易に推測できる。そういえば、大カエルを倒した湖のエリアも、そんな風になっていた。

「なんか、灯台みたいのも建ってない?」

「うん、建ってる」

 島の真ん中には、小さな塔が建っていた。どう考えても、このダンジョンの遺跡の一部であろう。

もしかして、魔法陣はこの塔にあるのかもしれない。まぁ、ボス部屋の魔法陣は隠してあるわけではないし、調べればすぐに分かることだ。

 地底湖の周囲は、大きな岩がゴロゴロしていて、迂回しながら進んでいたせいで、湖にまで辿り着くのに五分以上もかかってしまった。

 湖には、やはり中島へ向かうための橋がかかっていた。崩れかけの石橋だが、僕らが渡る分には問題ない。そうして、これといった苦労もなく、島まで到着すると――

「お出ましだな」

 ザボーン! と、けたたましい水音と、水柱をたてて、湖面から巨大な影が飛び出してくる。

 塔を背後に島へと降り立ったのは、巨大なワニ……いや、二足で立ってるし、微妙に人型っぽい姿だから、リザードマンとでも呼ぶべき種族なのかもしれない。

 ワニベースのリザードマンは、ずんぐりむっくりした巨躯で、手足は短いが、大木のような太さを持つ。手と足の指の股には、ジーラと同じような水かきもついている。水中に適応した姿であるのは明らかだ。実際、湖の中から出て来たし。

「うわっ、なにコイツ、超デカっ!?」

「こ、これはちょっと……」

「アタシらでも、無理かも」

 彼女達のリアクションから分かるように、現れたワニ型リザードマンのボスは、途轍もない大きさだ。あの鎧熊をさらに倍するほどのデカさ。最早、魔物というより怪獣である。

 そして、体がデカい分、その身を覆う鱗も大きく、分厚い。ギラギラと金属質の光沢を宿す藍色の鱗は、正直、僕の『腐り沼』で溶かせる気もしないし、蘭堂さんの『石矢テラ・サギタ』でもヒビが入るかどうかといったところ。

「お前らじゃあ、無理だ。邪魔んなんねぇよう、隅っこでじっとしてろ」

「よろしくお願いします!」

 天道君の戦力外通告を二つ返事で引き受ける。ここはどう考えても、僕らの出る幕じゃあない。下手にちょっかいをかければ、天道君の足を引っ張るだけだろうし、最悪、無駄にタゲにとられて即死しかねない。

 見ろよ、奴のバカデカい口を。あんなのに噛み付かれたら、それだけで即死だよ。

「久しぶりの大物だ……楽しませてくれよ、ワニ公」

 そう言って、天道君はあの赤い大剣を手に、一気にボスへと突進。凄まじい速さだ。ただ真っ直ぐ走っているだけなのに、一瞬、その姿を見失ってしまった。


 ゴァアアアアアアアアアアアアアアアっ!


 腹の底から震えるような重低音の咆哮を響かせて、ボスは迫りくる天道君を迎え撃ち――

「うわっ!?」

 衝突の瞬間、爆発が巻き起こる。ゼロ距離であの炎の魔法を炸裂させたのだろうか。無茶なことをする。いや、自分は火炎ダメージ無効とか、そういう能力持ってるのかも。

 吹き抜ける爆風に一瞬だけ顔をそむけて、再び視線を戻すと、そこにはすでに、両者の姿はない。

 代わりに、ボスが登場した時と同じような、水飛沫が上がった。

「ウソっ、天道君、落ちた!?」

「ちょっ、それは流石にヤバくない!?」

 うん、いくら天道君が強かろうと、水中に引きずり込まれれば勝機はない。人間は水の中で自由自在に動けるようにはできてないんだから。大剣なんて持っても、ただの錘でしかない。

「天道君!」

 流石に僕も心配して、思わず落ちた方向の水面を見るが――

「やっぱお前、水の中じゃねぇと本気は出せねぇか」

 湖面に、天道君が堂々と立っていた。

 マジかよ。水の上に立つとか、どういうスキルだよ。

「いいぜ、付き合ってやるよ」

 そして、次の瞬間には自ら湖面を蹴り飛ばし、水の中へとダイブ。湖には、巨体をユラユラとくねらせて不気味に水中を泳ぐ、ボスの巨大な影だけが見えた。

「あー、とりあえず、ボスの相手は天道君に任せておこうか」

 自ら進んで、ボスのホームで戦おうとしているのだ。きっと、彼の能力を持ってすれば、水中戦でも勝てると踏んでの判断だろう。

 心配して損した、とここまで思ったことはない。

「うん、賛成ぇー」

「私、天道君のこと信じてたし!」

「そうそう、天道君があんなデカいだけのワニに負けるワケないし!」

 湖の底では、今正に天道君とボスの激闘が繰り広げられているのだろう。ドォン、ドォン、と水底から鈍い爆音が響き、静かな湖面に波紋を広げていた。

 やはり、ここは天道君に任せよう。全員の意見が一致したところで、僕らは彼の言う通り、隅っこの方で大人しく待っていよう。

 そうして、そそくさと移動しようとした、その時である。


 ギョッ、ギョッ、ギョォアアアっ!


 聞き覚えのある、というか、最近ではすっかり耳に馴染んだ鳴き声が響き渡った。

「ジーラっ!?」

 見れば、いや、見るまでもない。湖の畔に、次々と青い魚人達が姿を現した。

 奴らは湖全体を包囲するかのように、四方八方から岩場を乗り越え続々と集まってきている。その数は、天道君が吹き飛ばした群れよりも、さらに多い。二百、三百、正直、パっと見では分からない。

「くそっ、まだこんな大群が残っていたなんて……」

「ちょ、ちょっ、桃川、どうすんの!? これヤバくない、っていうか、絶対ヤバいよ!」

 言われるまでもなく、ヤバいに決まってる。

 まるで、ボスを助けに駆けつけたような感じだが、奴らが現れた理由など考えても意味はない。完全に僕らをターゲットとして認識しているジーラの大軍団が、すぐ目と鼻の先にいる。今、必要なのは、それに対する現実的な打開策である。

「ちょっと、この数は無理! さっきよりも多いじゃん!」

「桃川! マジでどうするのさ!」

 どうする、たって……天道君がボスを倒すまで、どれだけかかるか分からない。瞬殺してすぐに戻ってくる可能性もあるけれど、あの中二病ではなくガチの戦闘狂っぽい台詞からして、ボスとの水中戦を心行くまで楽しんでから、戻ってくる方がありえそう。

 水中にいる天道君には、恐らく、地上で僕らがジーラ軍団に完全包囲されてピンチ、なんて状況には気づかないだろう。今すぐ、彼が助けに戻ってくるなんて期待はもてない。

 つまり、しばらくの間、僕らだけでジーラ軍団の総攻撃を耐えなければならない。

「あの塔に逃げて! 天道君が戻ってくるまでの間、あそこで何とか耐えるんだ!」

 いよいよ湖へと飛び込み進軍を開始したジーラ軍団から逃れるように、僕らは全速力で目の前の塔へと駆けこんだ。

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