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詩集  作者: 北夏文
1/1

吐瀉物

 どうして人が生きていられるのか、わからない。

 ぐらぐらと頭が揺れる。私は今、群衆の中に立ち尽くしている。

 立っているだけで、精一杯。

 二本の足で、自分の存在全てを支えるという行為をするだけで、

 私はひどく集中する必要があった。


 気を抜けば、倒れてしまうだろう。

 それは、意識を失うこととは少し違う。

 木彫の人形が、その腕にも、足にも操られるための糸をつけていないのに、

 鉛のように重い体を起こしているのが、今の状態なのだ。


 倒れていることのほうが、私にとって自然なことのように思われた。


 けれど行き交う人達は、

 そんな苦しみをまるで感じていないかのように、

 動き、活動し、生命を謳歌している。

 

 苦しくて、倒れてしまいそう。

 いいや、倒れていることが、私にとって正常なことのようにしか思えない。

 

 けれど私はそうすることで、

 自分の異常性を周囲の全ての存在に、提示してしまうのだろう。



 「おかしいのは、あなたたちのほうだ」



 そう、声を大にして叫びたい。

 叫んでしまったなら、私は狂人だ。

 だから、違和感を喉の奥に詰め込んだまま、

 嘔吐するにできない苦しみを抱えたまま、ぐらぐらと、立ち尽くしている。


 どうして、どうして。

 どうしてと、尋ねないのですか。


 この喉に詰まった異物を通して、

 私は発声し、「私も人間です」と主張するために、

 声を出し、何かに溶け込む。


 頭が痛い。

 支え合わないと生きていけないのに

 そうすることさえ、苦痛だなんて。


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