第三話
「冒険者ギルドの事務員が何でこんなとこにいるんだ?」
彼らはギルドの直ぐそばに寮があるし、冒険者のように旅をすることも殆どないので、昼間に安宿兼酒場がほとんどの第二商業区には来ることはほとんどない。
ときどきサボりをいれて昼間っから飲んだくれている輩もいるにはいるが。
「ハァ…ハァ…、申し訳ない、ロルフ殿に取り次ぎ願えますか?」
息を切らせながらオカマにそう言うギルドの事務員はロルフさんに用事があるようだ。
結構イケメンだな、『ピー』ねばいいのに。
「彼なら少し前にでかけたわよん? なにかあったのかしら?」
体をくねらせながら答えるオカマ。実にキm…「ア゛?」何でもないや。
「そうですか……どこに出掛けられたのか分かりますか?」
「あらあら、そう言われてもねぇ」
オカマには心当たりはないらしい。
チラリとこちらを見てくるが、俺だってついさっき帰ってきたばかりだ。
軽く首をふって心当たりはないとつたえる。
「そうねぇ、何か用事があるなら代わりに伝えるわよん?」
そう言われた事務員は、ロルフさんに会ったらすぐにギルドまで来てほしいと伝えて欲しいと言ってかえっていった。一体何の用事だったんだろう?
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特に予定もなく、先日の依頼で懐が久しぶりに氷河期を脱して間氷期にはいっていた俺は、何をするでもなくそのあと夕方まで惰眠をむさぼり、早めに夕飯を食ったあとは部屋で武器や道具の手入れをしていた。
特に思い入れがあるというわけでなく、少しでも同じ武器や道具を長く使って節約しなければならない。いつまたロルフさんに奢らされて財布がぺったんこになるかわからない以上、無駄遣いは極力へらさなくては。
そう考えながら念入りに点検を行う。
そしてそれから数時間、手入れも終わって一階の酒場に降りるとちょうどロルフさんが外から帰ってきたところだったが、オカマと何か話したあとすぐにまた出掛けていった。
多分冒険者ギルドだろう。
ロルフさんは結構栄えているこのオイゲン子爵領でもなかなかいない星付きの冒険者だ。
冒険者のランクは下は8から始まり、5で一人前、3から各騎士団や自警団のスカウト候補の端っこにひっかかり、1はもう堂々と一流をなのれる。
ちなみに仕事中に死ぬ奴の八割以上がランク6までのやつだ。
自分の手に負えないような仕事に手をだすやつとそうでないやつとで大概生き残れるか別れるとこの前酔っぱらったトム爺がいってた。
そしてそのランク1のさらに上、みんなから星付きと呼ばれるようになるためには、実力は当然のことながら素行もそれなりでないといけない。
最も、大抵の冒険者がランク2辺りで引退するか、星付きまで来る前に生活の安定する騎士団か自警団にスカウトされるか入団試験を受けて冒険者を辞めるので、星付きの連中は基本変人か変態か変わり者しかいない。
なので素行がそれなりと言ってもせいぜい犯罪はしないとかいう低レベルなものだ。
星付きのランクは星一から星五だ、ちなみにロルフさんは今星二つである。
星付きは皆竜種とガチンコできるバケモノばかりだが、そんな彼に急ぎの用事なんて面倒事の匂いしかしない。
竜でもあらわれたか、災害級のモンスターがでたか、どこぞで貴族サマが誘拐されたか、どちらにせよ俺には一生関係はない。
俺は早く強くなって自警団か町の警備隊辺りにはいって平穏に暮らしたいのだ。
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……主人公の名前も