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020 後日


 <自由都市同盟イースタル>でも<神聖皇国ウェストランデ>でも、エネミーが大量発生するという大事件が起きた。

 

 <ナインテイル自治領>で、それを未然に防いだのは、無名に近い【工房ハナノナ】という弱小ギルドとその仲間たちであった。



 ギルドマスター<桜童子にゃあ>は、自分の手の内に入るものを全力で守るだけだと公言してはばからないが、実際は、無防備なナカスの<冒険者>たちをも守り抜いたことになる。もし、<シバ荒神の代替わり>の進行を止めることができなかったら、それが呼び水となって<醜豚鬼(オーク)>の大軍勢が狂乱の街に侵攻する事態となっていたであろう。 


 彼らは、その活躍の後、<ユーエッセイ>に至る。そこで復活施設を手に入れたため、<ナカス>とは無縁にすごすことができた。



 <ナカス>は<Plant hwyaden>による懐柔作戦で有力者が引き抜かれた後、<大神殿>を押さえられ、強制的にそのギルドの支配下に置かれた。あの踊り明かした<冒険者>たちのほとんどはミナミへと移った。



 <龍眼>たち九大商家に入り力を蓄えつつある勢力は、今は従う姿勢をとっているが、<ナカス>奪還の機会を狙っている。


 

 <ヴィバーナム・ユイ・ロイ>と<イクサラルテア>というふたりの<大地人>は、【工房ハナノナ】の本拠地でともに暮らしはじめている。 


 <ヨサク>が<エッゾ帝国>にたどり着いたかどうかは、<たんぽぽあざみ>ですら知らない。きっと今も気ままな旅を続けていることだろう。


 <イタドリ>は料理人としての腕前を上げていったが、得意料理は相変わらず目玉焼きだ。<ディルウィード>はサブ職業を<採掘師>に変えて今はレベル上げに夢中だ。

 <シモクレン>は<刀匠>としての活動に明け暮れている。<サラ坊>はいい相棒だ。

 

 <バジル・ザ・デッツ>も工房に起き伏しし、楽器作りをするかたわら、街道を占拠する集団に容赦ない「デッツ地獄」を味わわせて治安維持にいそしんでいる。



 そんな話を<サクラリア>は、<ツクミのじいちゃん>に聞かせている。

 時折、彼女は<ツクミ>に戻って冒険譚を聞かせるのだ。

 そんな旅には必ずユイが寄り添うようについてくる。


「立派な<冒険者>になりなすったなあ。そうじゃ、歌を聞かせてくれんかね。また、お前さんの歌声を」

「おお、姉ちゃん! オレも聞きたい!」

「もう、しょうがないなあ」




 ――<奈落の参道>侵入口――


「桜童子様!

 この浮世をよくぞここまで放置プレイなさって、どの面下げて念話してくださってるのか、大変に興味ありますわ! 

 今、地底の底の底で、人生の最底辺の絶望を味わっておりますから、話によっては許してさしあげてもよろしくってよ。

 え? <アキバ>の状況? そんなもの存じ上げませんわ。今、地底なの!

 そんなものは、こちらにお越しになって、その愛らしいくりくり眼でご覧になったらよろしいですわ。あ、こちらにいらしたら絶対に絶対に連絡なさってくださいよ。

 ええ、その時は、話してさしあげてもよろしくってよ」



 ふう、とメイド服姿の浮世は息を吐いて立ち上がった。

 メガネをかけた<付与術師>と肩がぶつかってしまう。

「ああ、すいません。浮世さん」

「よろしくってよ。シロエ様、今すぐわたくし、参道に飛び込んで行きたい気分ですわ」

「え、いや、あと三日は準備が必要ですよ。昨日も申し上げたとおり・・・・・・」

「存じております。もう、気分の問題ですわ」

「すいません。あ、これ。美味しいですよ」


「まあ、アップルパイ。こうやって食料を振舞ってまわるなんて、シロエ様も隅におけませんわ。それに比べて桜童子様ったら」


「桜童子? どこかで聞いた名前ですね」

「お妬きになって?」

「あ、いや、僕は」

「冗談ですわ」


「おーい、シロ。資材届いたぞ」

 誰も知らない<冒険者>たちの物語が今日もどこかで綴られていく。



-『ルークィンジェ・ドロップス』 完-

■◇■


なんとかエンディングまでたどりつきましたー。

感想いただけたら喜んでお返事します。

ふぃー。

文章綴るのって熱病に冒されたような高揚感で楽しいんだけど

きちんと全てを円く閉じていかなきゃならないのが難しくて

「原作の橙乃ままれ先生、超すげぇなあ」と改めて感心してます。



<奈落の参道>直前に入れるかどうか迷ったネタがありまして。

龍眼さんが巨大ギルド対策として、ゾーンを買い占めて

そこでルークィンジェ・ドロップスを採掘せず、

逆に埋めるというお話があったんです。

そこで龍眼さんが勝ち誇って言うわけですよ。

「これが栽培漁業というものだー!」


そこで<奈落の参道>となると

あまりに龍眼さんが間の悪いかっこ悪い人になっちゃうし

ほのぼの系で終われればなあと思っていたので

ま、いっかな。というところです。



こうやって語られなかったサブストーリーが

続々生まれてくるログホラ世界ってやっぱすげー。


なにはともあれ、ここまでのおつきあいありがとうございましたー!

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