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桜サク夏  作者: 綾瀬タカ
41/52

41 本来の日常

今回短めです、すいません。

次回は視点が椿になるので、分かりやすく回を分けることにしました。

 次の日から私たちは日常の学校生活に戻ることになったのだが――。どうしてか、初めは制服を着替えるのもどこかぎこちなくて、私はネクタイを、椿はリボンを、当たり前のように取り上げた。

「あっ、桜。あたしたち、違うよ」

「え?!」

 椿に言われて、はっとする。私はちょうどネクタイを結んでいたところで、きゅっと締めてしまえば、“いつもの私”の完成だと思っていた。

「あ、そっか。あたしはリボンなんだ」

 無言で椿と交換して、それをつけ直す。それが私たちの本来の制服。それなのにこの違和感は、どこからきているのだろうか。

「椿。あたし、そろそろ行くね」

「え? あ、そうだったね。桜が先なんだ」

「そうよ。椿ったら、ボケないで」

「ひっど〜い!! ボケてなんかないもん。あたしはまだ……」

 

“まだ、日常に慣れていない”


 私も椿も、入れ替わったことで、あまりに多くの習慣をつくり過ぎてしまった。これからは、本来の日常に慣れていかなければならないなんて。そんなことになるなんて、思いもしなかった。

「椿。じゃあ、あたし行くから」

「あ、うん」

 言わなくても分かっていた。

 私たちはきっと、お互い、同じことを思っている。


 ――椿。お互い、頑張ろうね。


 私たちはきっと、お互い、心の中で健闘を祈っていた。

 これからずっと続いていく、好きな人のいない学校生活を、いつか、当たり前だと思えるように。





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