41 本来の日常
今回短めです、すいません。
次回は視点が椿になるので、分かりやすく回を分けることにしました。
次の日から私たちは日常の学校生活に戻ることになったのだが――。どうしてか、初めは制服を着替えるのもどこかぎこちなくて、私はネクタイを、椿はリボンを、当たり前のように取り上げた。
「あっ、桜。あたしたち、違うよ」
「え?!」
椿に言われて、はっとする。私はちょうどネクタイを結んでいたところで、きゅっと締めてしまえば、“いつもの私”の完成だと思っていた。
「あ、そっか。あたしはリボンなんだ」
無言で椿と交換して、それをつけ直す。それが私たちの本来の制服。それなのにこの違和感は、どこからきているのだろうか。
「椿。あたし、そろそろ行くね」
「え? あ、そうだったね。桜が先なんだ」
「そうよ。椿ったら、ボケないで」
「ひっど〜い!! ボケてなんかないもん。あたしはまだ……」
“まだ、日常に慣れていない”
私も椿も、入れ替わったことで、あまりに多くの習慣をつくり過ぎてしまった。これからは、本来の日常に慣れていかなければならないなんて。そんなことになるなんて、思いもしなかった。
「椿。じゃあ、あたし行くから」
「あ、うん」
言わなくても分かっていた。
私たちはきっと、お互い、同じことを思っている。
――椿。お互い、頑張ろうね。
私たちはきっと、お互い、心の中で健闘を祈っていた。
これからずっと続いていく、好きな人のいない学校生活を、いつか、当たり前だと思えるように。




