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桜サク夏  作者: 綾瀬タカ
33/52

33 嘘つきの真実

「椿。俺はお前が好きだった」


 最後に、夏はそう言った。



 *  *  *



「椿……が、ついた、嘘?」

 身に覚えがないのは、きっと、私が椿になる前のことだから。つまり椿が、夏に、嘘をついたということだ。

「いや、嘘って言わないか。でも、俺が知らなかったら騙されてたんだから、同じことだよな」

「どういうこと?」

 本当に分からないという顔をすると、夏は、私がそのことをすっかり忘れていると思ったのか、怒りと呆れを含んだきつい口調で、言った。

「お前にとってはその程度のことだったんだよな」

 強い風が吹いた。ビュウっと一筋、ものすごい勢いで私の体を突き抜けて、ちょうど同時に振りかかってきた夏の言葉だけを、心の中に置き去りにしていった。

「去年の夏だった。夏休み直前の日の昼休み。部活のミーティングが終わって、椿を呼び出そうとして向かった教室で、椿は、みんなに囲まれてた」

 聞いているだけしかできないと思っていた、私の知らない椿と夏の過去。だけど頭の中で、前にも同じような情景を思い浮かべたことがあると、気づく。


 去年の夏の、昼休み。教室で、椿は友達みんなと――。


「廊下から、ちょうど匡基の声が聞こえてきたんだ。盛り上がる輪の中心にいたのは、椿だった」


 夏のいない輪。突然の匡基の声。それは、確か――。



 *  *  *



「は〜い、負けは椿〜。罰ゲーム決定!!」


「ええっ、マジ?! 罰ゲームって何なの?」


「発表しま〜す!! みんなで考えました〜。罰ゲームは……夏に告ってきてください〜!!」


「よし!! じゃあ早速行ってくるね!!」


「おぉ〜。椿めっちゃやる気じゃん!!」


「サクッと告ってサクッと恋人になってくるから!!」



 *  *  *



「罰ゲームの、告白……?」

「思い出したのか。そう、俺はあれを、廊下で聞いてたんだ」

「え……」

 夏が知っていた。椿から告白されることを。その告白は、罰ゲームだったのだと。

 だけど、夏は知らなかった。罰ゲームは単なるきっかけ。椿は本気で夏を好きだったのだということを。

「高校に入ってすぐに仲良くなったのが、椿だったよな。お前になら何でも話せたし、一番、居心地が良かった。そんな椿から、まさか、俺を騙すために告白するなんてこと、聞くとは思わなかったよ」

 みんなに冗談と思わせるために、わざと明るく振舞った椿。その、サクッと告ってサクッと恋人になってくるという言葉が、夏の疑心をさらに強くさせてしまった。

「……本当はあのとき、俺も椿を呼び出すつもりだったんだ。夏休みになる前に、言っておこうと思ってた」

「え?」

「椿。俺はお前が好きだった。本気で、告白しようと思ってた」







中途半端ですが、次回に続きます。

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