表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜サク夏  作者: 綾瀬タカ
PR
2/52

2 昨日の彼

 学校から帰ったら椿はまだいなくて、どうしたのかなと思いつつ、私は夕食の準備をしていた。

 父はサラリーマン。大企業の結構高い地位にいて、生活に苦労したことはない。出張が多くて、今は確か1ヶ月ほど、ニューヨークに行っている。仕事ばかりだけど、家族を大切に想ってくれる、優しい人。

 母はホームヘルパーの会社を経営していて、父同様、仕事人間。でも家にはちゃんと帰ってくるし、家事だってしてくれる。私が食事の支度をするのは、どうしても母が遅くなってしまう日だけ。「あんたたちはまだ学生なんだから、学校生活を楽しめばいいのよ」と言ってくれる、厳しいけれど、愛情のある人。

「ただいま〜!!」

「おかえり、椿」

 椿は制服のままリビングに入ってきて、キッチンへと踏み込んでくる。

「今日は桜が作ってるの?」

「お母さん、今日は月一恒例の反省会だから」

「あぁ、そっかぁ」

 椿は冷蔵庫を開けると、定位置にあるミネラルウォーターを取り出した。学校から帰った椿のいつもの行動だ。

「あ、ねぇ。そういえば昨日、言ってたじゃない?」

 制服を着替えた椿は、ソファに座って、テレビをつけた。椿はその日にあったニュースをチェックするのが日課で、いつもテレビに向かって何やらぶつぶつ言っている。

「椿、あたしに言ってる?」

「うん。昨日、あたしの友達に会ったって言ってたじゃない。あれ、分かったわ」

 椿はそう言って、同じクラスの男子だった、と続けた。

「あ、やっぱり」

入来夏いりきなつっていうの。クラスの盛り上げ役っていうか、まとめ役っていうか。普段はバカみたいに騒ぐのが好きな、筋肉バカなだけなんだけど」

「椿、『バカ』って言いすぎ」

 すると椿は、カウンター越しにキッチンに立つ私のほうを振り向いて、言った。

「そいつがね、『お前って歳の近い姉か妹いたっけ』って、言ってきたの」

「え?」

「あたしはてっきり、『お前昨日会ったよな』とか言われるんだと思ってたんだけど、びっくりしちゃった。まぁ、昨日会ったのはあたしってことにしといたけど」

 椿は「入来夏」のことを、どう思っていたのだろうか。感心したように頬杖をついて、「あいつってバカなくせに意外と見る目あるのかも」と、言った。

「へぇ……すごいね。今まで誰もそんなこと言ってこなかったのに」

「でしょ?! それでひとつ、面白いこと思いついちゃったんだけど!!」

 そう言って椿は、とうとうテレビに背を向けて、私に言った。

「あたしたち、入れ替わってみない?!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ