仔猫の雪
精一杯生きた仔猫「雪」の物語です。
拙い小説ですが宜しくお願いします。
※冬童話2014に参加するさいに、加筆修正を加える形となりました。すみません。
あるところに、雪のように真白な仔猫がいました。母猫と、三匹のきょうだいと一緒に小さな公園に住んでいました。
真白な仔猫は生まれつき息がしにくい体なので、思いっきり遊ぶことができませんでした。きょうだい達もそれを良く知っていたので気をつかって遊びに誘いませんでした。きょうだい達は思いっきり遊ぶことが大好きなので、いつの間にか真白な仔猫は一人ぼっちでした。もちろん、真白な仔猫もきょうだい達が気をつかって誘わないことを知っています、。それでも、外で元気いっぱいに遊ぶきょうだい達が羨ましくてしかたがありません。
「ママ、ボクもみんなみたいにおおきくなったらいっぱいあそべるかな?」
「そうね、いっぱい食べてたくさん寝て早く大きくなれば、きっとね。」
母猫は仔猫の顔を舐め、顔を擦り付けて言いました。
(おおきくなったら、つよくてジョウブなからだになっておもいっきりあそぶんだ!)
真白な仔猫はそう心に決めていました。
ある昼下がりの事でした。
真白な仔猫はきょうだい達とはぐれてしまいました。体の弱い仔猫が一匹でいるのは大変危険です。天敵のカラスや犬、意地悪な人間に見つかるかも知れないのです。
真白な仔猫は怖くて、怖くてしかたがありませんでした。
「ママ、みんな、どこにいっちゃったの?」
必死に弱くか細い声を張り上げ、よちよちと歩きながら助けを求めました。
そこへ、髪の長い人間の女の子がやってきました。
「うわぁーっ、かわいい!どうしたの?お母さんとはぐれちゃったのかな?それとも、お腹すいちゃったのかな!?」
震える真白な仔猫を抱きかかえると、家に連れていきました。
(こわいよ・・・。これから、どうなっていくのかなあ。)
突然の出来事に怖くて声も出せずな体を縮こまらせるしかできません。
生まれて初めてのピンチです。
(ママ、みんな・・・どこへいったの?たすけて・・・。)
女の子の家に着くと、二人の妹が迎えてくれました。女の子は二つ下の妹に仔猫用のミルクを用意して貰い、真白な仔猫に差し出しました。
「冷めないうちにどうぞ。」
ミルクのいい匂いが鼻をくすぐります。真白な仔猫は鼻先にミルクを付けますが、まだお乳を吸うことしかできないので舐めて飲めません。
(どうしよう。おなかがすいたよう。)
なかなかミルクを飲まない様子を見て、人間の子供たちはスポイトを持ってきて真白な仔猫に飲ませることにしました。
真白な仔猫はお腹いっぱいミルクを飲み眠くなりました。
気持ちよく眠る真白な仔猫にそっとタオルをかけて、子供たちはこれからどうするか話し合いました。
「お姉ちゃん。話す前にこのまま猫ちゃんって呼ぶのも呼びにくいし、なにか考えようよ。」
と、大きな妹は言いました。
「いいね、それ。シロとかどうかな?」と、お姉ちゃん。
「みーちゃんがいい!」末の妹が元気良く手を挙げて言いました。
「タマはありきたりだよね。」大きな妹が言いました。
子供たちが色々と悩んだ結果、たまたま外で遊んでいた近所の友達に名前を決めてもらうことにしました。
(んー?なんだかさわがしいなあ)
真白な仔猫が目を覚ますと、大きな妹がそれに気づき声をかけました。
「あっ!おはよう。ちょうどね、君の名前をみんなで考えたところだったんだよ?」
(なまえ?)
名前をつけてもらうことなんて無かったので、不思議そうに首を傾げると、大きな妹は続けて言いました。
「真白で綺麗な毛並みだからね、君の名前は雪ちゃんだよ。私は空、よろしく。」
そう言って、空は雪の頭を優しくなでました。
「あー!空!!抜けがけ禁止ー!!」
そういい、お姉ちゃんが空の頭を叩きました。頭をさする空を横目にお姉ちゃんは雪に近づきます。
「雪ちゃん。私は唯、よろしく!それで、こっちの空によじ登ってるのが灯里。」
「よろしく、ゆきちゃん!」
陽だまりの中にいるような心地よさに、雪はこの三人のことが怖くなくなりました。
あくる日、雪は3人に連れられて「どうぶつびょういん」という所に来ました。
雪の体の調子を心配してジュウイサンに診てもらうみたいです。
ジュウイサンは雪について色々聞きながら、雪の口の中やお腹の張り具合、呼吸の音を診ました。
「君たち、この子の飼い主かな?」
「はい。そうです。」
唯が答えると、ジュウイサンは渋い顔で分かりやすく噛み砕いた口調で言いました。
「雪ちゃんは肺に穴が空いていてね、手術しないとこのままでは長く持たない。手術しても小さな体で持ってくれるかどうかも怪しい状態なんだ。来年まで生きられるかも難しい。」
...え?
ジュウイサン、なに、いってるの?
ボクには夢があるんだ。
大きくなったら、強くて丈夫な体になって思いっきり遊ぶって。
それなのに、なんで、そんなこと言うの?
「雪、雪・・・」
気がつくと、お家に帰っていた。
唯ちゃんと灯里ちゃんも目を真っ赤にして泣いてた。空ちゃんは、唇を噛み締めてボクの頭を優しく撫でてくれた。
みんな、ママみたいに優しい。
それから毎日、みんな一緒に過ごすことが増えた。少しでもみんなとの思い出を作るためにいっぱい、いっぱいボクも甘えた。
息苦しさは日に日に酷くなるけど、たくさんのママに一生懸命のどを鳴らした。
ある日、ボクは空ちゃんの背中の後ろで寝てた。
夢の中では、大きくなったボクと唯ちゃん達がいて、一緒にボールや猫じゃらしなんかを使って遊んでるんだ。優しく頭や体を撫ぜながら一緒に楽しんだ。
そこへママときょうだい達がやってきた。
「あぁ、やっと見つけた。」
「おい、どこ行ってたんだよ。ずっと捜してたんだぞ。」
「会いたかったよー。」
「ママ!!みんな!会いたかったよー。」
「坊や、置いて行ってごめんなさい。あぁ、また会えて良かったわ。」
みんなとまた会えて、嬉しくて、楽しくて、夢だってことも忘れて狩りのマネをしたり、じゃれ合ったりめいいっぱい遊んだ。
ふわりと、身体が軽くなった。
息苦しさもなくなって、どこまでも行けるような気がした。
身体が風船みたいに浮きあがって、上へ上へといく。
虹が見える。綺麗だな。
「ねえ、みんな!見て!!あそこに虹が見えるよ!!」
ボクは振り返ると、誰もいなかった。
みんな、どこに行ったのかな?
あたりを見渡しふと、下を見ると、空ちゃんがボクを抱いて泣いていた。周りに唯ちゃんと灯里ちゃんがボクを撫でて泣いている。
「泣かないで!!
ボクはここだよ!?」
ボクは叫んだ。
でも、ボクの声はみんなに届かない。
「ボクはこれからどこへ行くの?
どうしよう。」
そんな時、風がボクの頬を撫ぜて言った。
「雪ちゃん、雪ちゃん。
君はこれから空の向こうの遠い遠い虹の橋へ行くんだ。
苦しいのに今までよく耐えて頑張ったね。小さいのにえらいよ。」
「ボクはニジノハシへいっぴきでいくの?みんなをのこしていけないよ・・・。」
「生命あるものはみんな空の向こうへ行くんだ。そこへ行くのが遅いか早いかは、誰にもわからないんだ。君はみんなより少し早かっただけさ。みんなはまだこちらには来られないけれど、いつかまた会えるから。それまで、こちらで待っていよう。先に待っている仲間がいるから、君は一匹じゃないよ。」
「もうあそこにはいけないんだね。」
「いい子だね。」
「さいごに、おねがいがあるんです。きいてもらえますか?」
「いいよ。私に出来る事ならなんでも言って。」
「それじゃあーーー・・・」
「わかった。任せてよ。」
風は雪を虹の橋まで送り届けると、雪の頭をもう一度撫でて去っていった。
雪が虹の橋へ行って幾日が経ったある日、唯ちゃん達は揃って不思議な夢を見ました。
虹の見える綺麗な場所で雪がこちらを向いて話しかけてくる夢でした。ミュウミュウと甘えるように鳴く姿は記憶に残る姿と変わらず愛らしく、でも、苦しそうな素振りは一切ありません。それに、雪の声はミュウミュウ言っているのですが、不思議と言っていることがわかりました。
「ゆいちゃん、そらちゃん。、あかりちゃん。みんな、げんき?
ボクはげんき。もういきぐるしくないんだよ。いまは、そらのむこうのニジノハシっていうところにいるんだ。
みんなにあえないのはさみしいけど、みんなのこといつでもながめてるよ。
からだのよわいボクのために、よくしてくれて、かぞくでいてくれてうれしかった。
いつかまた、ニジノハシでまたいっしょにあそぼうよ!どんなあそびもへっちゃらなんだ。
さいごまでいっしょにいて、ボクのためにないて、あいしてくれてありがとう。
ボクはしあわせでした。
みんな、だいすきだよ。」
「っ私も、雪のこと大好きだよっ!」
「みんな雪のこと愛してる。」
「また、あそぼうねー!!」
雪はこれからも唯ちゃん達をそっと見守っていく。
虹の橋で、また会う日まで。
おわり。
長々とここまでお付き合いいただきありがとうございます。
趣味で小説を書きますが、これが初めて書き終えた作品です。
色々ご指導のほど宜しくお願いします。
欧米サイトで広まった、読み人知らずの詩に出てくる虹の橋。元はインディアンと呼ばれている先住民の伝承が元となっているらしいのですが、天国の手前にある虹の橋でもうひとりの家族であるペットと再開できたら素敵だなと思い書きました。
さいごに、拙い小説を読んでくださった皆様ありがとうございました。




