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2話 疑念

8月15日1000 勤務隊舎



中隊の勤務隊舎に帰ると

待機命令と準備命令がでていた。



準備自体は2時間ほどですぐに終わった。


即応できるように普段から必要物資の

準備はしているし、


足りなければ駐屯地内の売店で

大体揃う。



基本、妻帯者は基本、勤務時間外は

駐屯地外に住んでいる。


それは、私も同じだ。



待機命令の際は家に帰れる訳ではなく

駐屯地内で過ごすことになる。


妻に電話をして、事情を説明する。

詳しく説明する訳にもいかないので

仕事だからと手短に。


帰省は中止だと伝えると楽しみにしていた

娘から電話越しから私を非難する声が聞こえた。


何々さん家のご家族は軽井沢の別荘に行くのにと

軽く嫌味を言われる。


気楽なものだと思う。

恐らく私の家族は私の気持ちなど一生理解する事は

ないのだろう。


もっとも、家族に同じような気持ちにはなって欲しくは

ないのだが・・・・・・


8月15日2000 第1小隊室



小隊長の紀伊3尉から小隊を

集めての指示があった。


小隊には勤務隊舎に

部屋を一部屋与えられている。


中はロッカーと机と椅子があるだけの

簡素なものだ。


各隊員にロッカーが割り振られており

そこに私物や制服など官品を入れている。


小隊は15名程

ベテランの筑摩曹長

同期の霞2曹、夕張3曹

あとは陸士だ。


紀伊小隊長の年は24とまだ若い。


私は陸曹なので作戦や調整を

するような役職ではないが


紀伊3尉は違う、

部隊運用や他の小隊まで含めて

調整を行わなければならない。


疲れているのだろう、疲労の色が濃いが

そういった素振りを見せない様に

隠そうとしているのが見え見えだった。



「岡山に中国軍の強襲上陸部隊が

確認された」


紀伊3尉の一言に

皆に緊張が走る。



「心配するな、散発的なもので

目撃されているのは100名程度だ」



「まあ、やることは想定されていた通りだ。

いつもの演習通り我々は岡山の津山まで

機動防御の後、陣地防御だ。」



「じゃあ、メモをとって

明朝0500起床、0700までには

車両に積載を済ませ、0730に津山に向けて出発」


「持っていく装備は乙一種だ」


「乗る車両の番号については

勤務隊舎に貼ってあるから各人把握しておく事」



「以上、何か質問は?」


「今回の弾薬については実弾ですか?」


私が紀伊小隊長に質問する。

自衛隊が使用する弾薬は通常空砲だ。


「実弾です。空薬きょうについては・・・・」


「馬鹿か!!!おめぇはっっっっ!!!!!!

敵が実際に来てんだぞ!!

薬莢なんかの事を考えてたら全員死ぬぞ!!!!

いつまで演習ごっこだと思ってんだ!!!!!」


凄まじい怒号だった。

小隊が震え上がる。


筑摩曹長だった。

禿げ上がった頭に血管をむきだしにし

耳まで真っ赤になって怒鳴り散らしている。


背が高く筋骨隆々、格闘教官でもあり

今年で48だが体力では若い隊員に引けを取らない。


威圧感は半端ではなく体育会系を地で行く人である。

気に入らなければ上官でも反発する。


「筑摩曹長、落ち着いていて下さい。

再三注意している通り、その態度はパワハラになりますよ?」


「何がパワハラだ!!

したければすればいい!!」


「言っておくがな、お前の指揮で小隊の人間が一人でも死んでみろ

俺がお前を殺すからなぁ!!!」


「筑摩曹長。陸士もいるんですよ、落ち着いてください。

これは良くない。落ち着いたあとで話をしましょう」


紀伊3尉が毅然として言い放つ。

普通の若い幹部なら縮み上がっている所だ。

ここら辺は流石だなと思う。


「紀伊、お前はおかしいとは思わないのか?」


「なにがです?」


「決定が早すぎるんだ」


「それは緊急時だからでしょう?」


「緊急時でもだ。

311や災害派遣の際。

いつだって上は決断が遅かった。」


「311の時は出動準備は1時間で終わった。

実際に出動したのは5日後だ」


「それは……

今回は敵が来ているからでしょう」



「俺には何か不気味に思えてならない」


「……仮に違和感を覚えていても

我々にはどうしようもないでしょう」


「……そうだな」


それで筑摩曹長は黙ってしまった。


必要以上に責めても仕方がないと思ったのだろう。


瞬間湯沸かし器の様な性格だが

これで一応、部下思いで優しいのだ。


筑摩曹長と紀伊3尉は演習でも何度か衝突しているが

紀伊3尉がその度上手く収めている。


筑摩曹長が座り、手をヒラヒラと左右に動かす。


さっさと解散しようという意味だ。


意図を受け取った紀伊3尉が続ける。


「とにかく、今回は自衛隊で初めて実戦です。

今までの訓練の成果を見せてやりましょう」



こうして小隊のミーティングは終わった。

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