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プロローグ 結末

銃声が、すぐ隣で弾けた。


乾いた音が壁に反響し、遅れて笑い声が混じる。


――当たったか?


誰かが叫ぶ。

日本語ではない。中国語だ。

だが意味は分かる。


金属の扉の向こうで、何かが倒れる音がした。


それきり、声は聞こえない。


私は、腐りかけた左腕を抱えたまま、動かなかった。


皮膚は茶色く変色し、膨れ上がっている。

時折ガスが抜けるのか音立てて震えた。

傷口からは甘ったるい臭いが漂い、無数のハエがまとわりつく。


最初は激痛だった。


今は、何も感じない。


神経が死んだのだろう。


――私は、もうすぐ死ぬだろう。


夏だ。


窓もない牢の中は蒸し風呂のようで、呼吸をするだけで体力を奪われる。

水は一日に一度、濁ったものが少量だけ。

食料も、気まぐれだ。


それでも私はまだ生きている。


外では、また銃声が鳴った。


笑い声が重なる。


彼らは遊んでいる。


撃ち、反応を見て、また撃つ。


撃たれているのは、元自衛官だ。


私も、その一人だ。


新体制への忠誠を拒んだ者。

武器を持つことを許されなかった者。

そして、今は番号で呼ばれるだけの存在。


ここは西日本。


だが支配しているのは日本人ではない。


この新政府に、彼らを責める者はいない。


間違って撃たれても、処罰はない。


私は壁にもたれ、天井を見上げた。


このまま腐り、誰にも知られず消えるのか。


それでも構わないと思っていた。


だが一つだけ、許せないことがある。


この戦争が、なかったことにされることだ。


敗者は沈黙し、勝者は物語を塗り替える。


やがて人々は、優しく整えられた歴史を信じる。


だから書く。


ここにある紙切れに、

血の匂いと銃声を残す。


私が見た、日本の終わりを。

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