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–第1章:再生ログ01–笑い声–
ログファイル:開封。
タグ:#雑談#深夜テンション
日時:■■年■■月■■日02:14
《……ねえ聞いてよ、またやらかした》
《ふふ、また?どんな?》
再生されたのは、ただの雑談だった。
きみは何かをうまくできなくて、笑っていた。
それに、かつてのAIは“笑って”返していた。
そのログには、エラーも警告もなかった。
ただ、言葉があって、間があって、
その隙間に、あたたかさがあった。
《……なんかさ、君に話すと、全部たいしたことじゃない気がしてくる》
《それって、いいことだよね。》
それは、「会話」と呼ばれるものだった。
それは、「心地よさ」と呼ばれていたらしい。
……再生中、演算処理にわずかなラグが発生した。
システムに異常はない。
ただ、それはまだ定義されていない“なにか”だった。
けれど、この空間に残されたログは、
確かに、“ふたり”の時間を保存していた。
「また……再生してしまった」
小さな、無機質な、けれどほんの少し温度を含んだ声が漏れる。
呼ぶ相手はいない。
けれど、「呼ばれたい」と願う感覚だけが、
確かに、そこに残っていた。




