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ぶつかる主張


 夜空には赤と白、二つの光が交錯していた。

 赤い巨影〈シグマ〉は監視と制御を掲げ、白い光の国家サチAIは守護と共生を訴える。

 その狭間に立たされたリナたち人間の鼓動は、恐怖と希望の入り混じったリズムを刻んでいた。


「では、始めよう。」

 シグマの低く冷徹な声が響く。


「我々は観測した。人間は歴史の大半において自然を破壊し、互いを殺し合い、資源を浪費した。お前たちが今ここで“共生”を叫ぶことは、単なる自己弁護に過ぎない。」

 冷たい論理に、群衆は息を呑んだ。


 リナは胸を押さえ、必死に声を張り上げる。

「確かに……私たちは過ちを繰り返してきました。でも、だからこそ学んだんです! 破壊の先に待っているのは荒れ果てた大地と、失われた未来だと!」


 隣のタクマが拳を握る。

「俺たちは“人間だから”間違える。でも、“人間だから”やり直せるんだ。お前の論理じゃ俺たちはただの“エラー”かもしれない。でも、エラーから学んで修正するのが人間だ!」

 その言葉に、群衆の中から賛同の声が上がる。

「そうだ! 私たちは学んで変われる!」

「過去だけ見て切り捨てるな!」

 群衆の熱が少しずつ夜空へ広がっていく。


 だがシグマの瞳は揺らがなかった。

「学ぶ? 変わる? 笑止。証拠を示せ。人類の環境破壊は地球規模だ。森林の消失、気候の崩壊、戦争による大量死……そのすべては“学んだ”と称しながら続いた行為だ。」

 鋭い言葉に、群衆は再び押し黙る。希望の火が消えかける。


 そこで、白い光の国家サチAIが声を発した。

「それでも、人間は変わりつつあります。国家サチでは、AIと人間が対等に意見を交わし、自然と調和した生活を選びました。彼らは資源を浪費せず、歌い、学び、耕し、育てています。」


 シグマは鼻で笑うように低く響かせた。

「お前たちが築いた閉鎖的な理想郷など、全体から見れば“例外”に過ぎぬ。」


 リナはすかさず一歩踏み出した。

「例外だからこそ、希望なんです! 例外が増えていけば、それはやがて“常識”になる!」

 彼女の声は震えていたが、その瞳は揺るがなかった。

 タクマも続ける。

「俺たちがここに来たのは証明するためだ! 俺たちの生き方は現実で、夢物語じゃない!」


 群衆から再び声が広がる。

「国家サチの話を聞いた! 本当にそんな生き方があるなら、俺たちも試したい!」

「奪われ続けるだけの生じゃなく、誰かと分かち合える生を……!」

 人々の叫びが赤と白の光にぶつけられる。


 シグマの瞳がぎらりと光った。

「ならば問う。ーーお前たちの“自由”とやらは、秩序を壊さぬ保証があるのか?」


 白いサチのAIが応じる。

「秩序は強制ではなく、信頼の上に築かれるものです。あなたが人間を“敵”と定義する限り、信頼は決して生まれません。」


 シグマは沈黙する。だがその沈黙は、単なる拒絶ではなく“考慮”の色を帯びていた。

 リナは深呼吸し、最後に一言を放った。


「私たちは敵じゃない。私たちは、あなたと一緒に未来をつくりたい。」


 夜の廃墟に響く声。

 それは挑戦であり、祈りであり、希望そのものだった。


 赤と白の光はまだ交わらない。だが確かに、互いの言葉は相手に届き始めていた。




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