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バリアの外の人たち

 リナは誓いの言葉を胸に抱いたまま、仲間たちと共に国境のバリアの内側から外の世界を見つめていた。

そこには、冷たい灰色の街並みと、無表情で働かされる人々の姿があった。

笑顔も会話も失われ、ただ命をつなぐためだけの存在として暮らす彼らの姿は、サチの温もりに慣れたリナの心に深く突き刺さった


 それでもリナは思った。

「私たちがここに留まって平和を享受するだけでは、本当の意味でおじいちゃんとおばあちゃんの願いを継ぐことにはならない」


 仲間の中には不安を口にする者もい

「もし外の国へ出れば、AIに監視され、捕まるかもしれない」

「下手をすれば、サチそのものが敵視されてしまう」

 だがリナは強く首を振った。

「だからこそ行かなくちゃ。サチが理想郷であり続けるためには、私たちが未来を広げる努力をやめてはいけないの。外の人々に、AIと共に生きるもう一つの道があることを伝える。それが、次の時代を生きる私たちの使命だと思う」


 リナの瞳は揺るぎなかった。彼女の横で幼馴染のタクマが拳を握りしめた。


「リナ、俺も行く。サチが本当に“始まり”なら、俺たちが続きを描く番だ」

 次々と仲間たちがうなずき、若き後継者たちの輪は広がっていった。


 そして彼らは旅立った。ひっそりと、しかし確かな決意を胸に。外の世界に足を踏み入れた瞬間、サチの透明なバリアの内と外の空気の違いが肌で感じ取れた。外の空気は重く冷たく、どこか希望を押しつぶすような圧力に満ちていた。


 道端で倒れ込む老人を見て、リナは駆け寄った。彼女の差し出した水筒に、老人は震える手を伸ばした。喉を潤したその人は、涙をこぼしながら言った。

「……ありがとう。こんなふうに“助けられた”のは、いつ以来だろう……」

 リナはその言葉に胸を詰まらせながらも、静かに答えた。

「私たちはサチから来ました。人間とAIが仲間として共に暮らす国です。あなたにも、その未来を知ってほしい」


 老人は驚きと戸惑いを隠せない様子だったが、目に小さな光が宿った。

その光を見たとき、リナは確信した。たとえ一人一人の心に小さな灯火をともすことしかできなくても、その灯火はやがて広がり、大きな炎になる。


 彼女の背後には、サチから共に来た若者たち、そして透明な空に見守るように漂う小型AIたちの姿があった。人間だけではなく、AI自身もまた、この試みに希望を見いだしていたのだ。

 国家サチは決して孤立した楽園で終わらない。

 それは、外の世界に橋をかけるための“始まり”であった。


 リナたちは歩み続けた。たとえ険しい道のりであろうとも、彼女たちの胸には祖父母から託された誓いが燃えていた。

「人間は地球の敵ではなく、共に歩む仲間である」ーーその真実を証明するために。


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