03.彼は、私の事を心配しれくれる、とっても優しい人です。
優一さんは私に、両親にこの家に印鑑を持って来るよう連絡しろと言った。
そして、待っている間、しばらく静寂が流れた。
すると、彼は驚くべき事を言い出した。
「やっぱ辞めるわ。結婚」
「え?どうしてですか」
優一さんは不機嫌そうな顔で言った。
「いや~、だってさ、俺のようなおっさんがさ、君のような未来ある可愛い子の未来を奪うなんて可哀そうで。やっぱりさ、金目当ての結婚なんて駄目だよ。結婚ってのはさ、お互い心と心が通じ合って、愛があってするもんじゃない?だからさ、辞めよう。こんな結婚」
「え、じゃぁ……」
結婚せずにお金をくれるんですか?と私が言う前に、彼は話を続ける。
「大丈夫大丈夫。きっとなんとかなるって」
彼は笑って言った。
お金を払う気など無いのだ。
でも、お金が無いと妹が死んでしまう。
だから、私が言うべきことは決まっている。
「お願いです!結婚してください!!」
「え~、でも、君俺の事嫌いでしょ」
「そんな事ありません!ずっと前から、初めてあなたを離れて見た時から、ずっと好きでした!一目ぼれです!!」
本当は、初めて見た時、見た目からして気持ち悪いと思っていたけど。
「え~、でも君俺に話しかけてくれなかったじゃん。俺を見る時ゴミを見るような目をしていたし」
「勘違いです!好きすぎて緊張して、話しかけられなかっただけです!目線だって、他の人に私の気持血を気付かれたくなくて、そうなっていただけです!!」
本当は、彼の言う通りゴミ同然に思っていたけど。
「でもね~。やっぱり年の差ってのが。世間の目も有るし」
「世間の目なんて私は気にしません!愛があれば、年の差も、世間の目も気になりません!あなたが気になるのなら、気にならなくなるくらい私があなたを幸せにして見せます!」
本当は世間の目はすごく気になる。
でも、妹の為なら頑張れる。
「そんな事言ってさ。所詮金目当てなんで……」
「違います!確かに妹の為にお金は必要ですが、私は妹の為に結婚なんてしません!私は、ずっと前から、あなたの事を愛して、結婚したい!そう思っていたんです!!」
本当は、お金しかないけど。
私の言葉に、彼はにんまりと笑って言った。
「そうかそうか。そこまで言うなら仕方ないな。僕としては結婚しなくてもいいんだけど……」
「お願いします。私と結婚してください。私は、心から愛するあなたと結婚したんです!もう一度言います。ずっと前からあなたの事が好きでした!愛してます!結婚して下さい!」
「その言葉が聞ければいいんだ。そうか、君がそこまで言うなら、君の気持ちを汲み取るのもやぶさかではない。結婚しよう」
そう言って優一さんは笑うのだった。
ただし、その顔は優しい顔ではない。
人の心を弄ぶ、下卑た笑いだった。