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あの国の二年後。その1

「ラーラ、その、河の氾濫防止のための工事の采配を労おう。なにか褒美はあるか」


 レシー国の国王・ナハリは、正妃に二年も前に終わった氾濫防止対策として行なわれた工事の采配について労う言葉を投げかける。


「今さらな上に何をいきなり仰るのでしょう。それも元々はメルトが請け負った事業を私が引き継いだだけです。労うならメルトでしょうに」


 冷たい眼差しかつ疎ましい男、と目が口の代わりに物語っている。どこかの国では「目は口ほどにモノを言い」という言葉があるらしいが、ラーラの場合は目が口ほどに、では無く。口以上に目がモノを言っている。その冷たい視線にナハリは口籠る。

 確かになにを今さら二年も前に終わった工事について言い出したのだ、とナハリも自分を客観視すれば考えることだから、ラーラの今さら何を、という言い分にはぐぅの音も出ない。

 だが、今さらというわけでは無い。

 二年前からきちんと労う気はあった。

 労う前に、目覚めたメルトとラーラから語られた自分のやらかした過去話を、その場で直ぐに処理しきれずにいたため、さまざまなことに支障が出た。

 急ぎの書類もインクを溢して読めなくしてしまうことは両手の指の本数以上に行い、宰相や側近たちに迷惑どころか白けた目を何度向けられたことか。もちろん、ダメにした書類は最初から作成し直すわけで、側近どころか補佐やその下の普通の文官ですら何日も泊まり掛けで作成し、という日々を暫く送った。

 正妃のラーラと第三側妃・メルトや第四側妃・第五側妃が手分けしてフォローしたから、何とかなったことも数回ではない。ちなみに第一と第二側妃は、自分たちに割り当てられた公務でいっぱいいっぱいなので手伝いなど出来ない。外に出て民に愛想を振り撒くことは出来ても執務は苦手で、故に二人の執務の割り当ては少ない。そんな二人がフォローなど出来るわけがないので、戦力には入れていない。

 さらにはナハリより前に繰り返しの人生の話を聞いてしまい、それ以降第一側妃・イドネも第二側妃も大人しくなってしまっていた。繰り返されてきた人生の中で自分たちの企みが露呈していることが分かったので、今回も同じことをする前に、大人しくせざるを得ない状況に陥っていた。

 企んでいたことを行えば間違いなく自分たちの仕業だと分かってしまう状況で、進んで茨の道を歩みたいとは思わない。だから二人は自分たちが行う妃の仕事以外は極力大人しく過ごすことにした。それもあって二人にはナハリのフォローなどさせる気は無かった。


 そんな日々を二ヶ月過ごして、ラーラからいい加減にしろ、と叱られたことでナハリは何とか持ち直したが、そこから数々の失態によって一時期離れかけた臣下の気持ちを戻すためにも、さらに働かなくてはならず。結果として、ようやく今頃になって河の氾濫防止工事の中心的役割を担った妻を労おうという気持ちになったわけだが。


 ラーラからすれば今さらだし、元々はメルトが中心的役割を担っていたというのに、何故自分だけが労われることになるのか、という話である。

 ついでに言えば、巻き戻ってきた過去の話を全てぶちまけたことで心の重しは取れた上、ようやくナハリに対して冷め切った気持ちを堂々と見せられる解放感で、正妃の役割は果たすが、ラーラ自身のことは放っておいて欲しいとしか思っていなかった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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