正妃と側妃と国王陛下。その3
「聞き取りをすればするほど、ノクティスが生まれたことを喜んでいない者が多いという報告をされた。余はそなたを蔑むつもりは無かったが、正妃を重んじるのは当然であったと思っていた」
それについて側妃も当然だと思っている。
「それは陛下が正しいか、と。ただ。私が陛下と距離を置き、殿下とも距離を置いていたことは確かとはいえ、現状を報告出来るだけの時間ももらえなかったことは……言葉にし難い気持ちでした。陛下にお話を、と願い出たときに宰相や大臣がいるところで話を聞こう、と言われても切り出せません」
側妃は今さらだ、と自分でも思いながら口にする。もっと早くこのように話し合いをすれば良かった、というのは側妃の後悔だが、意地を張っていたのも確かだからあまり国王も正妃も責められるものではない。
「そういえば、そうだったな。珍しくそなたから話がしたい、と言われたときに人払いもしなかったのは余だ。珍しい、と分かっていたのだから、余程のことを話したいと思っていたのだろう、と気を配れなかったのだから、そなたを重んじてない結果になってしまっていたな」
正妃は夫のその対応の不味さにちょっと信じられない、という顔をする。
「それは確かに陛下がお悪いですわね。まぁ私もあなたを気遣えなかったので人のことは言えません。あなたも陛下を夫として頼りにする、ということをしなかったことは確かですが。抑々あなたは妃という位に着くことを前提として教育を受けていたわけじゃなく、急遽妃にされてしまったのだもの。私と陛下があなたを気遣う必要があったのよね」
正妃は人の機微に疎い国王を残念な人、という目を向けつつ、側妃の悪いところは指摘しても自分たちの悪かった部分も反省する。
「もう、終わることですから。三年後に私が除籍されることは変わらないですし、私もそれを望んでおります。ただ、お二方には知っていてもらいたかったのです。子を産むために結婚したはずなのに、誰にも求められていない子を産んでしまった私の悲しさと、求められていない子になってしまったノクティスの悲しさを」
側妃自身、国王にも正妃にも頼る気が無かったのは確かで、距離を置いていたのだから、それなりの扱いをされてしまうのは仕方ないと分かっている。分かっていても、自分は国王の子を産むために娶られたはずなのに、いざ子を身籠ったら正妃も同時期に身籠り、掌を返された挙げ句、子を産んだら腫れ物扱いをされるなんて、自分も息子もなんなのだ、と思っても仕方ない。
「分かっております。こうして聞き取り調査をして考えました。私が逆の立場であったなら、と。あなたと同じ立場に立たされたとき、自分から距離を置いているとはいえ、それでも腫れ物扱いされる筋合いなど無いのではないか、と怒りと悔しさと悲しみと虚しさが去来しました。あなたが全く同じだとは分かりませんが、私もこんな息苦しいところから出たい、と思ったことでしょう。子が残ると言っても、連れて出て行ったに違いない。あなたはノクティス殿の気持ちを尊重すると決めた。それはとても苦しい決断だったのではないか、と考えに至りました」
正妃は側妃の立場に立って考える、ということを今回初めて行った。もっと早くそうする方が良かったのでは、とも思うが、全て今さら。ただ、今回このように考えた分、子を置いて除籍してもらおう、と決意した側妃の気持ちに思いを馳せると重い決断だったのだろう、と考えられた。
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