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明かされる望み。その4

 その二日後のこと。

 レシー国へ出立予定を翌日に控えたその日。朝食時にアイノ宛に手紙が届いた。封蝋はつい二日前にも見た王家の紋章と封筒に記された側妃の名前。受け取りたくない、とは思ったものの顔色を真っ青にしているダスティンを見て仕方なく朝食後に読みますから、と言えば、夫妻に忠実な執事が珍しく首を左右に振った。


「手紙を届けに参られた使者殿が返事をお待ちになられておりまして」


 淑女としてはあるまじきだが、アイノは淑女の仮面を取っ払って思い切り溜め息を吐き、シルバートレイの上の手紙を受け取り、ダスティンから差し出されたペーパーナイフを受け取って開封した。


 ーー先日は失礼な思いをさせました。お詫びします。陛下に除籍願いを出しました。騒がせました。


 二日前にも見た筆跡が今度はそのように字を踊らせていた。

 なるほど。

 アイノは少し考えてダスティンへ言伝を頼む。


「使者殿にお伝えするように。成功をお祈りします、と」


 手紙の内容は使者もダスティンも分からないことは知っている。だからこそ、それで伝わると言われても怪訝になってしまうのは仕方ないのだろう。それも一瞬のことで、ダスティンはサッと身を翻してエントランスで待っている使者の元へ足を向けた。


 アイノは、心配そうな表情の夫と子どもたちににこやかな笑みを浮かべて、朝食を終えましょう、と声をかける。その声音に子どもたちは安心したように朝食を最後まで食べ終えて、明日早くから出立することを知っているので、おとなしく勉強をする、と自室へ下がった。

 イオノにはゲルデ子爵夫人との茶会の様子を伝えておいてあったため、手元にある側妃の手紙を渡す。サッと目を通したイオノは考えるように顎に指を当てた。


「アイノ、時間は取れるか」


「ええ。準備は既に終えてますもの」


 侍女に執務室へ食後の茶を運ぶように伝え、ダスティンが戻ってきたら執務室に来るようにも伝えて、イオノはアイノをエスコートして執務室へ足を向けた。


「側妃殿下は、除籍したいと望む理由はなんだろう」


「それは、あれではありませんか? ノクティス殿下を不要な王子だと陰口を叩かれているという」


 イオノの疑問にアイノが、あなたこそ何を言い出したの、という目で返答する。


「いや、それこそ今さらだと思うのだ。ノクティス殿下がお生まれになられて既に八年。お生まれになられて二年くらいでそのように考えるのなら兎も角」


「それはそうだけれど」


「中枢の考えが変わらない、と切り捨てるには早過ぎる。ノクティス殿下がニルギス殿下よりも優秀ということも有り得るかもしれない、と考える者がいないとは限らない。そうだとしたらまだ何年か見極めてもらえる、と側妃殿下が判断しても良いはず」


 イオノの言っていることは正しい。


「例えば、側妃殿下に前の記憶がある、としたのならどうかしら。そして側妃殿下はレシー国との繋がりを求めていないとしたら」


「その可能性はあるが、レシー国との繋がりを求めていないのなら、アイノにレシー国を介して除籍の後押しを頼んでくることがおかしいとは思わないか」


「それは、そう、ね。ノクティス殿下とルナベルとの婚約を今度は結ばせない、と考えての除籍なら、レシー国を頼ってくるのは違うわ」


 もし、前の記憶を保持していて、今度は婚約を結ばせないと考えているのなら、レシー国を介して除籍の後押しをしてきた側妃の考えは矛盾している。

 一体何を考えているのだろう。

 無言になったところでダスティンが戻り、使者が戻ったことを報告してきた。言伝については頷いただけとのことで、それ以上のことは無かったという。


「考えていても仕方ないですわね。帰国してからまた考えましょう」


 アイノの発言にイオノも了承し、一家は再びレシー国へと向かう。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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