王家の茶会。その4
王城の庭園の一部を開放し茶会の予定だったのだが、この荒天。急遽夜会で使用されるホールを開放して茶会が開催されることに。
尚、王城の馬車停まりは大きな屋根があるので、濡れることなくこのホールまで到着していた。
四人掛けのテーブルと椅子が配置されたそこには、手前に男爵家の子息子女が座っていき、奥に行くほど爵位は上がる。一番奥が当然公爵家と侯爵家の子息子女が座る。
この時点で付き添いの親たちは、茶会用に開かれたホールよりやや小ぶりの控え室に案内されている。
招待されたのはザッと数えて四・五十人ほどの子息子女。単純に男爵・子爵の子息子女が多いのはそちらの爵位が多いからである。バゼル伯爵位は中間だが席としては真ん中より奥側へ王城の使用人が案内する。同じ伯爵位の子でも家名を聞けば、納得する妥当な位置だった。
公爵・侯爵家の子息子女が席に着いて少ししたところで、三人の王子殿下が揃った。
国王陛下と同じキラキラと眩い金髪に空色の目をした王子殿下が二人。片方の王子殿下は、落ち着いた大人びた雰囲気を醸し出している。それから白茶色の髪と夜空色の目の王子殿下が一人。ニルギス・ノクティス・アイヴィスの三人。
三人共穏やかに微笑んでいるが、彼らの席へ案内されるに辺り近づいて来るにつれ、微笑みが口元に淡く乗せられているだけの、儀礼的なものだと気づいたのは、果たして何人だろうか。
リオルノ・ルナベル・ロミエルの三人兄妹は、注意深く王子殿下たちを見ていた。この茶会で誰かが前の記憶を保持しているのかどうか見極めたいが、あちらから接触してこない限り、こちらから関わっていく気はない。挨拶程度で終わらせられるのならそれが良いのだから。
それにあの儀礼的な微笑みは、王子殿下三人共に、ここに招待した者たちを見定めているようにしか見えない。警戒しながら見ているせいか、あちらの三人もよくこちらを観察しているように見えて、精神がガリガリ削られていく。
そんな状況下で茶会は始まり、王子殿下三人の挨拶があって、招かれた子息子女の挨拶が開始された。公爵家の子息子女から順当に、殿下たちの前へ歩み出て挨拶をしていく。伯爵家の順が回ってきて、リオルノたち三人兄妹も殿下たちの前に立ち、三人揃って挨拶をする。
王子殿下たちに返答をもらい、それで下がる。特に何事も無く挨拶を済ませられてリオルノは内心で安堵した。だが油断はならない。
王城の侍女たちが注いだ香り高い紅茶がサーブされ、アフターヌーンティーのケーキスタンド・スリーティアーズの一段目に乗った、小さなケーキが目を楽しませる。
フルーツたっぷりのパイ生地でカスタードクリームのフルーツパイや、クリームをふんだんに使った生クリームのイチゴケーキ。ベリーソースのレアチーズケーキなど。
二段目のスコーン。割ったその上にたっぷりとしたクロテッドクリームとイチゴのジャムを乗せる想像をしてしまう。
三段目のサンドウィッチはキュウリのサンドウィッチ。子どもの茶会だからか小ぶりなサンドウィッチが作られている。
侍女たちに気になったケーキをサーブしてもらいつつ、和やかな雰囲気で茶会は進む。外の天気とは裏腹に。
王子殿下たちはゆっくりとそれぞれのテーブルを周り、子息子女たちとの会話を楽しんでいるらしい。だが、リオルノたち三人兄妹にとって、王子殿下たちが各テーブルを回っているのは生きた心地がしなかった。
お読みいただきまして、ありがとうございました。




