王家の茶会。その1
「三人共に出席することは先に話した通り」
王家から茶会の招待状が届いたのは、レシー国へ向かう前のこと。子どもたちを集めて招待状を見せながら伝える。イオノの両親である前伯爵夫妻は領地に帰ったが、欠席するつもりだったので最初は招待状のことも伝えるつもりはなかった。
併し両親と話し合い、確かに参加しておく方が今後社交界の繋ぎになるので、出席するために改めて話した。
本来ならこのためにルナベルとロミエルのドレスやリオルノのジレとトラウザーズを新しく誂えるのが当然だが、元は欠席するつもりだったことと、今からオーダー(受注品)にしても間に合わないので、レディー(既製品)の物を商人に持ってきてもらうことになる。三人と母であるアイノは忙しくなる。
「ひいお祖父様が病気になられて去年お亡くなりになられたから、私たちは初めての茶会ですよね」
リオルノが確認する。
決して物覚えが悪いわけではないが、色々有りすぎて話を聞いたことを忘れかけていた。
「そうだ。私のお祖父様が亡くなられたのが去年。王家主催の茶会に出席しても問題は無かっただろうが、実はアイノを迎えるにあたり、父上とお祖父様のお二方で侯爵家に話をしてくれてな。侯爵家ではその時伯爵だった父上と前伯爵であるお祖父様が頭を下げて頼んできたことで、そこまで言うのなら、とアイノを知らなくても受け入れてくれた。
父上はもちろん、お祖父様にも感謝している。だからお前たちを欠席させてもお祖父様の喪に服したかったのだ」
子どもたちは祖父母である前伯爵夫妻以上に、曾祖父にあたるその人のことはあまり覚えていない。それでもそんな話を聞けば、ひいお祖父様が居たから母が父と結婚出来たのだ、と知ることが出来たのだろう。なるほど、と頷くだけだった。
「何か粗相があると困ります。してはならないこと、など教えてください」
リオルノの言葉に、イオノとアイノが丁寧に対応を話す。茶会では先ず主催者に挨拶するのは当然。今回は王妃殿下主催だろうから、王妃殿下にまず挨拶をして、その後は第一王子・第二王子・第三王子に挨拶をする、とイオノから説明される。
アイノが挨拶がきちんと出来るのか、マナーの見返しをしましょう、とも補足された。
「それから目立つことは避けた方がいい、と考えて三人だけで居ることは止めておく方が良いわ」
続けてアイノがそんなことを言うが、三人だけで茶会の時間を過ごすことの何がいけないのか、三人は分からずに首を傾げた。
「茶会は王子殿下たちの友人の座或いは婚約者の座を狙う子息子女ばかりでしょう。そうなると、常に殿下たちの周りに侍る者が出来ます。そうしなさい、と言うのではなくて。殿下たちからすれば、周りを囲んでくる子息子女たちに慣れているでしょう。
だから上手く相手をする。でも侍ることのない子息子女が居たら、逆に目を引きます。なぜあの子たちはこちらに近づいてこないのか、と。そうして殿下たちの興味を惹かせる戦略か、と考える可能性もあります。つまり、侍らないことで殿下たちに注視される、ということ。それは意味を為さない」
確かに常に子息子女が周りに居て、でも離れたところに自分たちに全く興味のない子息子女を見かけたら。それは王子たちが、どうして自分たちに近寄ってこないのか、と気にしてしまう可能性がある、と言われてしまえば興味が無いという態度は良くないこと、と思われた。
だからといって殿下たちの周りにいる子息子女を真似して、殿下たちの周りに侍ることは、三人共気が進まない。どうするべきだろうか。
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