先に進むには。その4
婚約の話は一旦置いておくとして、イオノは両親からお茶会には参加させた方がいい、と助言をされる。
「どちらかはあちらの跡取りとはいえ、どちらかはこちらの国で嫁入りするのなら全く社交に出ないわけにはいかない。リオルノも嫁を迎えるのだから同じ。お茶会を断れないと言いながらも、この時期に三人を連れてあちらに行った辺り、あまり気が進まないのだろう?」
父の鋭い視点に、イオノは溜め息を吐いて肯定とした。
「あれか、アイノさんの出生に気づかれるかもしれないことを懸念しているのか」
前とはいえ伯爵家の当主を務めた父を誤魔化せない、とイオノはそれにも肯定する。
「そういうことね。それで急にあちらへ行くと言い出したの。確かにルナベルかロミエルが跡取りとして、ということは分かっているけれど、それにしても慌ただしく思ったのよ。王家にアイノさんの出生が分かって取り込まれることを懸念したのね。
それなら三人をお茶会に参加させて、以降はリオルノとルナベル。リオルノとロミエルと二人ずつで参加させることにすればいいのではないかしら。先に王家にもどちらかが跡取りとして養女に行くことを伝えておく」
母の意見にイオノは首を振る。
「それでは、どちらかを嫁入りさせようと王命を出して来る可能性があるでしょう。レシー国は大国。繋がりが欲しいと思われます」
「あら、それを逆手に取るのよ。ルナベルが跡取りとして決まったとしましょう。ロミエルを王命で王子妃に、と出される前に、ノジ公爵家の意向で、あちらが了承しない婚約は結べない、と言えばいいの。ぜひあちらに確認をして下さいって言ってしまえばいいのよ。王命を出されたら、レシー国に亡命の可能性も示唆すれば、迂闊なことは言えないわ」
母の考えに、イオノは唖然とする。聡明な人だとは理解していたが、ここまでのことを見据えてくるとは思っていなかった。
「お義母様の意見は一理ありますわ。あちらに亡命をすると言えば、あちらでは我が国に浸けいる隙が出来た、と思うようなものだもの」
アイノがその考えは無かったとその声に熱を帯びさせる。
「それならばリオルノと、こちらでどこかの家に嫁入りするルナベルかロミエルの嫁ぎ先も王家が口出しすることはあるまい」
父が王家に取り込まれたくないのだろう。王子妃として嫁げなくても、口出しする可能性はあるぞ、と示唆してくる。王家が相手を決めてくるのでは確かに取り込まれることと同義。イオノは父として当主として決断する。
「分かりました。陛下にお時間を取ってもらい、どちらかが跡取りとして向こうに養女へ行くこと。あちらの意向無く婚約が決められないことを報告して参ります。リオルノ、ルナベル、ロミエル。三人は今度の茶会に参加して顔繋ぎをしておこう。大人になってから社交場に出たら、家同士の繋がりは必須になる。
今のうちに親しくならなくても、交流をしておけば将来的に良い繋がりになる相手も出て来るかもしれない。三人は友人を作るつもりで参加してみるといい」
だが、それはそれとして、これからはノジ公爵家へ行く回数を増やしていく方が良いと、引き続きあちらに向かうことも告げた。
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