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両親への注告。その2

「母上、もしリオルノが伯爵家ではなく、自分が公爵家を継ぎたいと言い出したら、どうなさいますか」


 訊ねながらイオノ自身、その可能性があっても良いのかもしれないと考える。それであればルナベルかロミエルを婿取りに。

 いや、この場合はルナベルを婿取りをしてもらうなら、ルナベルは王子妃にならずとも済む。

 その際のロミエルの嫁ぎ先も考える必要があるが、王家と婚約しないように、相手を探しておく方がいいだろう。


「リオルノがあちらに?」


 その可能性を全く考えていなかったのか、勢いよく顔を上げる母にイオノは頷く。


「それは、だって、リオルノは伯爵家の跡取りで」


「ですが、あちらはアイノの子であるならば、誰でも良いわけです。私はリオルノが生まれた時からこの子が伯爵家の跡取りで、同時に生まれたルナベルを公爵家に養女として出すつもりでした。

その後、ロミエルに恵まれてルナベルかロミエルを養女に、と考えていましたが、これらの話は全く子どもたちにしていませんでした。ですが、ロミエルに淑女教育を施すことを決めたので、そろそろ話をするべきか、と考え話をしたわけです。

それで兎に角あちらに行ってみないことには、何も始まらないからと話し合ってレシー国を訪れた。私は伯爵の仕事があるから一足先に帰国した。それが現状」


 イオノは、母の気持ちを考え、今、巻き戻り現象の話をしても混乱を呼び起こすことになりかねない、と話すことを止める。

 後々話す機会があれば伝えるが、今は様子見ということに。

 それに、とイオノは一つの仮定が思い浮かんだ。


 国王陛下は、いつ、アイノの素性を知ったのか。


 という疑問に関する仮定だ。

 想像でしか無いのは確かだが、母が誰かを経由して国王陛下の耳に入れた。いや、母にそのつもりは無かったが、結果的にそうなったのではないか、と。


 抑々。

 十年前、イオノがアイノとの結婚を願い出たとき。

 イオノもアイノもレシー国の公爵令嬢として、陛下に結婚を願い出た。出生は王女でも、生まれて直ぐに公爵家に養女に出されたアイノは、自分が王女という自覚は無い、と言い切ったことから、隠すというより話さなくても構わないだろう、という判断で伝えなかった。今でも話すつもりは無い。

 だから他国の公爵令嬢では何かと口性無い(くちさがない)者たちに、目を付けられても厄介だから、少しでもそういった相手の目が柔らかくなることを期待して、我が国のどこかしらの家へ養女に迎えてもらい、その家からミゼット家へ嫁入りさせたい、と願い出た。


 国王陛下も王妃殿下もそれを了承し、イオノは父の母、つまり祖母の姉が嫁いで行った侯爵家に打診してその家の養女として、アイノは嫁入りしてくれたのである。当然、その侯爵家にもアイノが王女という生まれは話してない。

 そう考えると、陛下がアイノの何を疑問視して、素性を調べた結果、アイノが王女であることを知ったのか、という疑問が持ち上がる。

 それよりは、母が誰かにアイノの出生を話した結果、その誰かが陛下の耳に入れ……巡り巡ってルナベルとノクティス第二王子殿下との婚約が決まった、と考える方が流れとしては分かる。


 尤も、その可能性であり、予測であって、今では当たっているかも分からないことだ。


 だが、ここで母のコンプレックスを含んだ気持ちを知っておくことで、ルナベルとノクティス第二王子殿下との婚約の可能性が低くなるのであれば。

 イオノにとって少しでも可能性は消したいので、話し合いをしておくことに異存はない。


「そう。そうなのね。……リオルノが公爵家の跡取りを選ぶなんて、考えてもみなかったけれど。あの子がそれを望むなら、後押しする方がいいのでしょう。でも出来れば、リオルノには伯爵家を継いでもらいたいわ。あなたはどう思いますか」


 母が冷静に答えてきたことで、落ち着いたことを理解したイオノ。前伯爵である父の意見も確かに聞いておく方が良さそうだ、とそちらを見る。


「リオルノには伯爵家を継いでもらいたい。どの子も可愛い孫だが、やはり男の子というものは心情として違うものがある。

だがそれ以上に、我が国では女児は継げない。婿取りをしてその婿に爵位や仕事を任せることになる。

元から女児しか居なかったのなら割り切れたが、男児であるリオルノが居るのに関わらず、血の繋がらない婿に爵位も領地も仕事も引き継ぐのは、私としては嫌ではあるな。レシー国は女児でも跡取りになれ、婿取りをしても、婿に任せることは無いようだから、リオルノが望んだとしても、それは一蹴してルナベルかロミエルを養子に出すことにする」


 父の考えを否定する気はない。

 確かに代々継いできたものを、男が居ないならば兎も角として、男であるリオルノが居るのに、ルナベルかロミエルに婿を取って、その婿に後を任せるのは、なんだか言葉に出来ない感情を、イオノも持つだろう。


「ならば、当初の予定通り、ルナベルかロミエルをノジ公爵家の跡取りにする、ということで。母上はこの際ですから思っていることを全部言ったらどうです」


 改めて跡取り問題について話し合いをし、ルナベルかロミエルを養女に出すことに決めた。

 イオノは更に母へ、この際だから思っていることを伝えてくれ、と促したが、母は首を振った。


「アイノさんは良いお嫁さんだと思っているのよ。私が卑屈になっていただけ」


 先程は思い詰めたような顔だったが、今は何かスッキリした表情を浮かべていて、この話し合いが上手くいったことをイオノも理解した。父が母を励ますように肩に手を置いたことで、父も母の気持ちを理解したように見えた。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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