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なにか違う……?その2

「ああ、配置換えした侍女はどんな理由があったのか、と思っていたが。そういった理由か」


 ニルギスはノクティスの侍女が変更された理由に納得した、と頷く。そんなことすら第一王子として把握しているのか、と異母兄を恐ろしく思ったが、今のノクティスの優先はそこでは無い。


「ガイ。話せ」


 ジンに取り押さえられている以上、言い逃れをしても無意味か、とガイは溜め息をついた。その落ち着き払った動きを見て、ニルギスがジンに立たせるよう命じる。


「あなたを王族籍から除籍することが、側妃様の願いでした」


 床に押し付けられた身体を立たされたガイは、埃をサッと払うと同時に核心をつく。


「母上の願い、だと?」


「ええ。第一王子殿下と第三王子殿下。不敬を問いますか」


 ノクティスの質問に短く答えてガイは尋ねる。ニルギスが問わない、と答えアイヴィスも渋々頷けば、ガイが話を続ける。


「側妃様は元々侯爵家のご出身。家格は侯爵位の中でも高くない家ですが、高位貴族でしたから婚約者がおられました。ですが、陛下と正妃殿下の間にお子が恵まれず。側妃選定が行われてしまい、側妃様が決定してしまいました。側妃選定はあると分かっていましたが、側妃様のご実家では、まさか婚約者の居る令嬢を召し上げるとは思っていなかったのです」


 そこでガイは話を切った。

 王子三人は、話の展開がなんとなく読めた。


「母上は自分が選ばれることはない、と思っていたのに選ばれてしまったということか」


「左様にございます。王家の側妃として召し上げられるような家格の合う令嬢は、軒並みご結婚されてしまい、側妃様だけでした。不幸なことに、側妃様の婚約者様は他国に留学中でした。外交官の家柄でしたから語学留学をしていたのです。その隙に側妃に決定。側妃様もご実家も逆らえるはずがなく」


 召し上げられた。

 側妃として召し上げられたのに、結婚式もなく、素早く部屋を与えられ、陛下の夜伽に応じることに。

 何度か夜伽に応じて身籠ることが出来た。その矢先に正妃様もお子を身籠った、と発表が合った。


「ようやく正妃様が身籠ったことで城も国王陛下も民も歓喜に湧いた。でもその裏で同じく陛下の子を身籠った側妃様のことは、あまり喜ばれなかった。王位争いの懸念が浮かんだからでしょう。どちらかが王女ならば良いとまで城の大臣たちや文官たちに願われていた、とご存知でしたか。特にそれが側妃様の子ならば尚のこと良い、とまで」


 ノクティスは呆然として話を聞いていた。

 母は婚約を解消させられてまで召し上げられたのに、そして子を成せと周囲に期待されて、期待通りになったら、母も子である自分も疎ましい存在になっていた、と言われて呆然としない方がおかしい。


「さすがにその辺りのことは知らない」


 ニルギスは苦い顔をし、アイヴィスはノクティスと同じ呆然とした表情。


「そうでしょうね。そういった不都合なことは耳に入らないようにするのが、殿下方に近い者たちの仕事ですから。結局、生まれたのはお二方とも王子だった。正妃様が先に第一王子殿下をお産みになられ、側妃様も第二王子殿下をお産みになった。普通はめでたいことですが、周囲からは落胆されました。ノクティス様が男児であったことに。国王陛下はそのことを当時、ご存知だったのか、それとも、未だにご存知ないのか分かりませんが。最悪なタイミングで国王陛下は側妃様に直接、仰いました。本当に余の子どもなのか。そのように」


 背景を聞いてしまった今、それを夫であるはずの人に言われてしまった母の気持ちを考えると、ノクティスは辛くなった。


「それは……父であっても、夫であっても言ってはならない言葉ではないのか」


 ニルギスも唖然としたように、口にする。アイヴィスはずっと呆然としている状態だ。


「左様にございます。側妃様のお髪と目の色だからといって、お疑いになられる発言をされた陛下に、側妃様は失望なさいました。陛下は直ぐに、自分に似たノクティス様のお顔を見て失言だったと仰いましたが、側妃様は、周囲どころか陛下にさえも望まれていない我が子を不憫に思われて。ノクティス様が王子ではなく、一貴族家の子として生きていけるように、王族籍から除籍されることをお考えになられました。

私やノクティス様の侍女として雇用されていたミクが、殿下方との交流を排除したのも、そのお考えがあったからこそでした。まさか、ノクティス様が陛下に願われて交流したい、などと仰るとは思ってもみなかったものですから、側妃様はお悩みになられて、今回の茶会を潰すことも先延ばしにすることも出来ないまま、本日に至ります」


 信じていた侍従に裏切られたと思ったノクティスだったが、それが母の願いによる、と聞いてしまうと、裏切られたわけでもないことが分かり、何とも言えない気持ちになった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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