三年後。その7
「では、婚約破棄を撤回して巻き戻し現象とやらが終わったのであれば、この後は時間が巻き戻るという人智を超えた出来事は起こらない、と?」
国王の確認にノクティスもアイノも頷く。
……まぁおそらく、としか言えないが、あのような異音がしていたからには、巻き戻し現象は起こらない可能性が高いだろう。
あとでレシー国から何らかの連絡が来れば確定と言えようが、現時点では、多分おそらく、だ。
「では、荒唐無稽な話ではあるが、その話が真実だとして受け入れることにする。では、ノクティス、改めて問おう。バゼル伯爵令嬢との婚約破棄を撤回したのだから、そのまま婚約続行でなくて良いのか。先程、改めて婚約解消だと言っていたが」
国王に問われるだろう、と予測していたノクティスは落ち着いて答えた。
「母とバゼル伯爵夫人がこの婚約について話し合ったときに伺ったそうですが、抑々、巻き戻る前も今も、ルナベル嬢とロミエル嬢のどちらかが、バゼル伯爵夫人の実家であるレシー国の公爵家の跡取りに迎えられることになっているそうです。
前回は、陛下による王命にて婚約の打診があった上、どちらをレシー国の公爵家の跡取りにするのか決まっていなかったために、私とルナベル嬢との婚約が締結されたとのこと。
今回は、王命を出される前からレシー国に足を運び、どちらかが跡取りとして迎えられるよう、どちらにも公爵家の跡取り教育が施され始めている、と母から聞かされました。
国内であれば、陛下の王命は覆せない絶対的なものですが、どちらが跡取りになるか分からない現状では、陛下の王命も他国の跡取り候補、という観点から断ることが出来る。故に、王命でも無い婚約でしたから、私との婚約続行よりも解消の方がルナベル嬢に有益なのです」
国王は、ふむ、と少し考えてから。
「バゼル伯爵夫人、尋ねる。そなたの実家であるレシー国のノジ公爵家の跡取りは二人の令嬢のどちらか、であって決まっていないのだな?」
「左様にございます」
「では、例えばロミエル嬢を据えて、ルナベル嬢をノクティスと添わせるということも有りではないのか」
そう提案して来るだろう、とは思っていたが、本当に提案されて、アイノは顔を歪めそうになるのをなんとか抑えながら、断った。
「陛下、先程お話致しましたように、抑々ノクティス殿下はルナベルを蔑ろにしました。ルナベル自身にその記憶が無くても、それが現在ではなく、巻き戻る前のことだったとしても、親として、娘を蔑ろにするような殿方の妻にしたい、とは思いません。反省したから、もうそのようなことはしない、と仰られたとしても、その保証がどこにも無いわけでございます。もちろん、陛下からすれば、反省したのだから蔑ろになどしない、と仰りたいでしょう。ですが、バゼル伯爵である夫も私も信じられないのでございます」
巻き戻し現象のことでアイノが話を進めていたためにアイノが答えたが、イオノも口に出さずとも、同じ気持ちであった。
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