三年後。その1
ノクティス・ルナベル共に十三歳。
ノクティスの母の側妃とルナベルの母・アイノの間で交わされた五年の節目である。
本日はノクティスの誕生日。誕生日だが王城で行われる生誕祭は別の日に行った。既に行われている。
その生誕祭を以て、側妃は十年余りの側妃という立場を終えた。王籍除籍をこのパーティーで国王から発表されたのである。
理由は王位継承争いを起こさないために、つまり後ろ盾にならないために、というもので、ノクティスは後々臣下に降ることも併せて発表された。
これにより第一王子・ニルギスが王太子位に最有力だろうことは貴族たちにも分かった。一方で、側妃が王籍から除籍することも無く臣下に降ることも出来るのでは、というさざめきがあったが、それには国王自らが宣う。
「側妃は余と正妃の間に長年子が出来なかったゆえに娶られた者である。だが、側妃の懐妊と正妃の出産が同時期であり、二人共に王子であったことから、長年自分の子が王位継承争いに巻き込まれることを懸念していた。側妃はノクティスを出産したときから、子を国王にしたいとは望んでおらず、また政略結婚で余の元に来たわけでも無いことから、何れはノクティスを臣下に、と望んでいた。
とはいえ、余の子である。国王の子の行く末を母として望んでも簡単に決断出来ることではなく、余と正妃と話し合い、ノクティスがある程度の年齢になるまでは側妃として王族の務めを果たしつつ、親の手が離れても大丈夫だと思えたら、除籍を、と願っておった。
余の子を産むという側妃としての務めを果たしたからというのが理由である。皆も理解していようが、愛妾では子は産めず、公妾では余の子にはなり得ない。故に側妃として娶りノクティスを産んだ。
そしてその務めを果たし、ノクティスも親の手が離れても問題無い年齢を迎えたことから、側妃の願い通り王籍除籍という形を取る事になった。彼女は、側妃になりたくてなったわけでは無い。こちらの都合でしか無かった。国の未来のため、王家の未来のために側妃の地位に着いたが、元々妃として育てられたわけでは無いことから、体調にも影響をしたようである。
それもあって王籍除籍願いを受け入れた。また、側妃は除籍後は静養も兼ねて南の大国・レシー国との国境付近にある教会へ入ることも決まっている」
三年前、国王と正妃と三人での話し合いにて、宰相たちがやらかしたことの調査結果やそれに伴う処罰についての話し合い、それからノクティスは残しても側妃は王籍から除籍という気持ちが変わらないことを確認したときに、正妃から問われた除籍後の側妃の行き先は、結局変わらなかった。
国王から令嬢たちのマナー講師はどうなのか、という打診に対して考えます、と答えた側妃だったが、そのつもりは無い、と改めて国王と正妃に答えたのは、この発表をするひと月前のこと。
「愛した婚約者と手紙一つで別れを告げ、時折王族の夜会席などからひっそりと彼を見て満足していました。今はもう、あの方のことは懐かしい思い出に変わっておりますが、かと言ってどこかの家に後妻に入るほどに彼を忘れられたわけではない。夫となる方に不実でしょう。
他家の令嬢にマナーを教える話も有り難いものでしたが、やはり静かに暮らしたい気持ちが勝ってしまい、とても出来そうには無く。当初の予定通り教会に参ろうと思います。場所もレシー国に接する国境付近の教会にさせていただきたく」
そう聞かされた国王と正妃は、側妃が婚約者と別れを惜しむ時間すら与えられなかったか、と言葉を失くす。
それには側妃自身が「会ったら、陛下の側妃になることの覚悟が揺らいでしまったでしょうから、会わないという選択をしただけです」と否定したが。
だが、本当に彼女の人生を狂わせたことを、国王も正妃も生涯忘れてはならない、と改めて思った。
そして、このパーティーでの発表である。
貴族たちは教会に入りシスターとなる側妃に騒めいたものの、彼女に大きな失態があったとは思えず、側妃として正妃を立て、大人しく穏やかに過ごしていたことを思い出し、体調不良による静養を兼ねて、という話も嘘では無いだろう、とやがて側妃にお疲れ様という意味を込めて拍手を誰からともなく送り出した。
側妃は頭を下げ「ありがとうございました」という挨拶と共に、見送り不要であることから、城を出る日は敢えて伝えないとも皆に述べた。
そして、息子の生誕祭を共に楽しんでほしい、と述べてそこから先はノクティスの誕生を皆が祝ったのである。中には、ノクティスの誕生に対して王位継承争いに発展する懸念などもあった者たちも居たために、その後ろめたさから余計に祝ったらしい。
何はともあれ、ノクティスの生誕祭から数日。
本日はノクティスの誕生日。
数日前のパーティーから一転、ノクティスとルナベルと国王夫妻とルナベルの両親であるバゼル伯爵夫妻が、側妃の代わりにノクティスの誕生日を祝う場に居た。
ノクティス自身からこの場に居て欲しい、あまり時間は取らせないから、と懇願されたからであった。
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