大切な者編
実習先にやって来たセオリ、子供達に気に入られ楽しく遊んでいる。
「スィア様、ティル様、アリク様どこに居られるのですか!もう隠れて一時間ですよ、制限時間は三十分では無かったのですか?」
僕は今、実習先のお嬢様達とかくれんぼをしているのだが・・・屋敷が広すぎる全く見つからない!
「セオリさん、どうしました?」
シルドさんだ、助かった
「今お嬢様方とかくれんぼをしているのですが、一時間探しても見つからなくて・・・」
「そう言う事でしたか、こう言う時は大体ここに居るんですよ」
そう言って、シルドさんは次々と子供たちを見つけていった
「すごい!」
「お嬢様が生まれた時からお使えしておりますので」
やっぱり長く勤めるとその家のことがわかっていくものなんだな
「セオリ!もう一回やろう。シルド使うの禁止ね!」
子供達がキラキラした顔で言ってきた・・・もう一回・・・
「セオリ君には仕事を任せましたので、私と遊びましょう。セオリ君、夕食の配膳をお願いします」
「分かりました」
執事も大変だな、料理、掃除、子守り、僕は執事になる事はできるのやら・・・夕食の準備も終わった事だし時間まで部屋に戻ってレポートを書くとするか・・・
「アミコス、ただいま」
「セオリ〜もう散々だよ!クッションは取られるし、尻尾を掴まれて振り回されるわ大変だったんだ」
「クッションは、返して貰ったんだろ。良かったじゃないか」
「後一週間だ我慢しろ、帰ったらシュークリームあげるから」
「セオリ君!」
扉をノックして、シルドさんが呼びにきた。
「セオリ君に、お客様が来られています」
お客様?
「分かりました、行きます」
階段を降り、お客様のところに行くと、そこにはウィルセスが・・・
「ウィルセス!どうしてここに」
「お迎えにあがりました」
「何言ってんだ?」
「叔父様から、今すぐお迎えにあがるように。とのことでしたので」
「今、お前は僕の執事だろ、じゃあ僕の言うことを聞け」
「なんでしょうか?」
「今は実習中だ!それが終わるまで放っておけ」
「それは出来ません。帰れないと言うのであれば、残りの実習期間、私もこのお屋敷に勤めるとしましょう」
「何を言っているか分からんが、まぁそれでいい」
という事で、ウィルセスも一緒に勤める事に・・・
「お前授業はいいのか?」
「全て任せてきましたので、ご心配なく」
「そうか、僕の執事なのは隠しておけよ」
「お任せください」
週末に、お嬢様達とお出かけする事になっているから準備をしておかないと。学校で勉強するよりよっぽど実習の方が楽しいな。
「それで、なんの用事で来たんだ?」
「旦那様に、セオリ様が実習に行かれることを伝えたところ・・・今すぐそばに戻れ、とのご指示がありましたので参ったのです」
「何か、学校で変わった事でもあったのか?」
「あの場所がみつかりました」
「本当か!わかった、実習が終わったら急ぎで調べよう」
「あと、申し忘れていた事があったのですが・・・実習期間が校長によってセオリ様だけ一週間のところ二週間との記載を」
「一週間!と言う事は明日で終わりだと・・・」
「私が、実習先には説明しておきます」
なんで校長がそんな事を・・・その一週間に来られたくない事でもあるのか?
「セオリ!その人誰?」
アクリ様が、小走りで話しかけてきた。
「この人?今日からここで働くらしい。気にしなくて良いですからね、すぐに連れて帰りますから・・・あはあはは・・・」ウィルセスを引っ張り、軽快に連れ去って行く。
「アクリ様、明日の準備は終わられましたか?」
「まだだよ、一緒にやってくれる?」
「お任せ下さい」
「やった〜!セオリは優しいんだね。学校卒業したら家の執事になってよ、そしたら毎日楽しいだろうに・・・」
「それは嬉しいことを」
「明日は早いです。お休みになられて下さい」
アクリ様を寝かしつけ、旦那様をお迎えし、寂しく学校に戻る準備を始める。
「ウィルセス」
「セオリ様どうされましたか?」
「明日、夕方に学校に戻る。戻り次第連れて行け」
「かしこまりました」
「アミコスも連れていく」
「それは、やめておいた方が宜しいかと・・・」
「アミコスがいないと力が使えない。何か気になる事があるなら、アミコスに着いていれば良いだろう」
「・・・」
何も気になる事はない、言われた事を淡々とこなすだけだ・・・今日は、実習最終日朝からピクニックでアミコスがお嬢様達と楽しそうに遊んでいる。可愛いな・・・その後、皆に挨拶をし、実習先を出た。急ぎで学校に戻ろう。
「馬車を用意しました、戻りましょう」
「あぁ」
馬車を走らせ、学校に戻ってきた。
「ウィルセス!案内しろ」
「かしこまりました」
「あんなに必死に探していたのに、案外あっさり見つけたな」
「カフィアン君から、蛇の抜け殻の等価交換として聞き出しました」
「先輩変わり者だもんな」
ウィルセスに案内され、叔父様の言っていた部屋にたどり着いた。
「ここは!」
あの、叔母様の部屋で見た景色が広がっている・・・そこにロイの姿が!
「ロイ!どうしてここに!」
ロイは白衣を着て動物達を切り刻み、繋ぎ合わせ実験していた・・・
「やめろ!」
あんなに仲良くしてくれたのに・・・手紙を見たとき、全てがわかっていたと言うのに・・・
「ロイ、どうして」
「お前には分からないよ。そのサルだって、会った時に殺しても良かったんだ・・・僕が一緒に行きたいと言った時、セオリにバレていると思った。隠し通せないと思った」
「なのに、言ってくれなかったのか?」
「ごめん、でもアミコスを殺すまでは死ねない!」
「何を言っている」
アミコスが殺気だっている。アミコスの胸の印、薄々気がついていた・・・アミコスはお父様からではなく、叔母様が渡したのだと、ここはきっと、叔母様の動物保護施設だろう。叔母様は、動物保護施設をたくさん経営していると聞いている。それがこんな物だったとは・・・表にある施設は皆平和だ。隠していたのか、何かに使うために・・・アミコスを取るため、殺すためにロイと同室にしたんだ。ロイはきっと僕がここに来る事を知っていた、そこを狙おうと思ったのだろう。
「セオリ、血をよこせ」
「アミコス、何する気だ!」
「僕が仕留める」
アミコスはロイを殺すつもりだ・・・ロイも、あの時を過ごしたロイでは無いのかもしれない。その時アミコスが僕の腕を噛み、血を飲みロイの所に向かった。
「やめろアミコス!殺されるぞ!」
アミコスが刺され倒れた。ロイ、いやあいつはもう生かしてはいけない・・・
「どんな形で出会ったて、どんな関係性だって、僕とっては大切なんだ・・・失いたくない。アミコスを傷つける者は容赦無く排除する!最後に何か言い残した事はないか?」
長いナイフを向け、体を足で踏みつける。
「君を、守りたかった・・・」
「うわあああああああ!」
・・・口からナイフを刺したその瞬間!周りに血が飛び散った。
「僕が殺したんだ、僕が!」
ここに監禁されていた動物は、逃げ出してもう居なかった。
「アミコスどこだ!」
刺されたアミコスが動かない・・・
「アミコス返事しろよ、おい!」
僕がこんなところに連れて来てしまったから・・・アミコスの傷を治すため、自分の内臓を取り出し、入れる・・・それから数日。
「起きたか?もう終わったよ。ごめんな、僕は守る事ができなかった・・・」
「ウキッ」
アミコスは元気に返事をした。
「良かった、これからも一生離さない!君を苦しめている者を、きっと見つけてみせるから、守ってみせるから。どこにも行かないでくれ。アミコス・・・」
「ウキキキ」
「あぁ、シュークリーム・・・好きなだけ食べな」