喪ニタリング前
結論から言うと、死んだ。つい、凍死してしまった。
真冬のすすきので飲み過ぎて泥酔し、終電を逃した。閉店後の居酒屋を追い出されたあとは、自宅までのタクシーが見つからず、スマホの充電もゼロ。極寒の屋外をウロウロしているとベンチがあったので、とりあえず座った。座るとついウトウトしてしまい、寝た。寝て起きたら、死んでいた。
なぜそのことに気付いたかというと、目が覚めた場所が3月の札幌とは到底思えないぐらい暖かく、辺り一面、嘘くさいほど綺麗な色とりどりのポピー畑だったからだ。泥酔からの爆睡、にも関わらず寝落ちした時の状況を脳が恐ろしいほど鮮明に記憶している。そして今の私は、黒字の明朝体で大きく『死後』と書かれた白い半袖のTシャツを着て、下には高校の時のジャージを履いていた。さすがに確定演出の死である。
ポピーの花を見たのは20年ぶりぐらいだった。小さい頃、江別のばあちゃんちの近くにあった公園に咲いていたから知っている。ふと懐かしくなった。しかし、もうばあちゃんに会うことはできない。死んだからである。ばあちゃんより先に。あーあ。お茶目。
花畑というシチュエーションは割とノスタルジックなのに、身につける小道具の設定が雑。
私の『死』の自覚と第一印象は、ざっくりこんな感じだった。