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住居-2

急募!安全な場所。


地底蠕虫(ワーム)」はヤバい。地中深くに住み、その巨大さで移動するだけで地震を起こすという巨躯の魔物。そんな魔物の近くに住んでいたら俺は間違いなくすぐ死ぬだろう。現に血魔狼(ブラッドワーグ)をいとも簡単に捕食していた。


西側に拠点を構えるのは辞めだ。少なくとも東側に住まないと…


そうだ…天井がいい。俺の浮遊能力があれば天井近くの方が安全だ。


突然、体が引っ張られるような感覚を感じる。

…これは風!?


体が後ろに…谷に引っ張られるような。

俺は慌てて後ろを向く。

そこには遠くで大口を開けて空気を吸い込んでいる地底蠕虫(ワーム)の姿が。


ひえええぇ。


俺に声帯があったら絶叫していただろう。

ワームの数万本も生えている鋭い牙にはところどころ血や魔物のカスがこびりついている。

歯磨きはしたほうがいいですよ。


谷の付近にいた霧鼠(フォグマウス)や空中を飛んでいる大蝙蝠(オオコウモリ)が口へ吸い込まれていく。


彼らの抵抗虚しく、岩のように巨大な歯に引っかかってミンチになった。


てかやばい!俺も吸い込まれる!

身体中の魔力を動かして抵抗しているが全く前へ進まない。それどころか一歩ずつ確実に「地底蠕虫(ワーム)」の口へ吸い込まれていく。


次にミンチになるのは俺の番かと思った時、大風が止んだ。


助かった…のか!?あいつとの距離があって助かった…


と、突然今度は逆方向に突風が来る。


それは巨大な吹き戻し。俺はさっきまで前進しようとしていたこともあり、とてつもない速度で前へ吹き飛ばされる。


痛!!!鈍い音を立て、窪地のへりにぶつかった。

体が不定形だったので衝撃を受け流せたが、火の玉のままならどうなっていたことか。


やがて風は止み、世界は落ち着きを取り戻す。何事もなかったかのように静かな空間がそこには広がっていた。


とりあえず、俺は一時東側に避難している。西側は俺が行っていいレベルじゃないことは確かだ。


命がいくつあっても足りないな。さすがは世界最恐のアロワナ洞窟。未踏破区域が多いのも頷ける。


西側が危険だとわかると定住する場所は限られてくる。地中の大河より手前の北側か、今いる東側だ。東側は血魔狼(ブラッドワーグ)に襲われた経験があるので多少忌避感はある。


となると北側か。


俺は暗がりの奥に見える巨大な水の塊とでこぼこした天井を見つめる。

俺は少しばかり考え、北の天井付近を見に行った。黒い岩盤で覆われた岩にドームはところどころ鍾乳石のような石柱が突き出ている。


俺は大木よりも太い石柱を見つけ、徐に近づく。体内に魔力を込め、体に亀裂を走らせる。今までで一番大きな亀裂だ。やがてそこを境に体がバックリ割れ…大きな口が出現した。


その大きな口で石柱の一部を削り取ろうと噛みつく。

「それでは…いただきまーす。って痛ッ!」

俺の口は空間を削り取るように岩の塊を飲み込む…ことはなくむしろ硬い岩に弾き返された。


上顎も下顎も鈍痛が襲いかかった。硬いものを噛んだら歯が傷つく。この世の中の摂理だ。忘れてたわけじゃないぞ。


ただ、(ソウル)になってから、自分の体の大きさに見合わない量の物を取り込んできて感覚が鈍っただけだ。自身の限界を知れてよかった。


さてそれではどうするか。どうやって天井に住み着こう。


俺は5分ほど悩んで、水場へ行った。水場といっても、北の大河ではなく東の小川だ。くすんだ灰色の小さな川を見る。流れが遅いのか淀みがあり決して綺麗とは言い難い。少し離れた場所には子連れの霧鼠(フォグマウス)が淀んだ水を啜っていた。


「ケヒッ」


独特な鳴き声と共に彼らはどさくさと闇に消える。ちなみに霧鼠(フォグマウス)の毛皮を使用した高品質のローブは、魔力を込めると霧が発生し闇夜に溶け込める。その性質から盗賊(シーフ)密偵(エージェント)に好まれる装備だそうで毛皮は高く売れる。


解体技師を長いことやっていたからか、この洞窟に映るすべてのものが宝の山に見えてくる。その分リスクも凄いのだが。


話が脱線したな。


俺は意を決して、死んでいる水を大量に取り込んだ。身体が見る見る重くなる。今は《魔力感知》の精度を落としているため視界が少しぼやける。

なんで精度を落としたかって?


水が臭すぎるからだ。


俺は身体の中で水を圧縮させようとする。だが上手くいかない。空気とは違って水は圧縮する際の抵抗が大きいようだ。仕方がないのでそのまま、天井へ戻ってくる。たっぷりと水を含んだ俺の体は今は3倍ぐらいに膨らんでいる。


さてと、上手く行くかな?


俺は《魔力操作》を使って自分の体に極小の穴を開ける。

自身の体を変化させる時に毎回思うのだが、不定形の体は便利すぎる。

極小の穴を開けたが、水は出てこない。表面張力でその体積を保っている。ただ水の逃げ道は確保できた。


俺は神経を研ぎ澄まして《魔力操作》で身体を圧縮する。それも一瞬でだ。空気を圧縮して打ち出す《噴射》の要領で水も圧縮させる。

同時に極小の穴を一回り大きくする。するとどうだろう。


俺の射出口からとてつもない速度で、大量の水が飛び出した。

解体技師をやっていた時、非常に硬い鉱石を削り取る時に使う最強の道具。水の刃「ウォーターカッター」の再現だ。


ビームのように射出された水は、岩を少しずつ削り取る。

やがて、俺の内部の水が全て尽きる頃、少しだけ岩にくぼみが現れた。


よし、効果はあるな。あとはこれを繰り返していくだけだ。



数百回繰り返した頃だろうか。何日経ったかもわからない。


大木のように巨大な石柱は、ちょうど真ん中部分が削り取られ広々…とは言えないが俺が動き回れるだけのスペースができた。


俺は天井からぶら下がるマイハウスを手に入れたわけだ。

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