表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/50

挿話6 ようやく兄の許へ辿り着く妹ソフィア

「あの、イーナカ村へ行きたいのですが」

「イーナカ村? あそこは土砂崩れで馬車が通れなくなっているはずだ。行くなら、トオーク村まで馬車で行って、そこから徒歩になるが、構わんかね?」

「はいっ! 意外に思われるかもしれませんが、こう見えて体力はありますので」

「そうか。じゃあ、乗ってくれ。もうすぐ出発だ」


 やった。最初はどうなる事かと思ったけど、何とか無事にお兄ちゃんが居る村まで行けそうね。

 カタカタと馬車に揺られていると、退屈なのか、隣に座るおばさんが話し掛けてきた。


「お嬢ちゃん、ちょっと聞いたかい?」

「えっと、何をでしょうか?」

「いやね、私もさっき偶然聞いただけなんだけどさぁ、お隣にラングトン公爵領があるでしょ?」

「そうですね」

「そこの三男……フランクリンさまが、この先のトオーク村の近くで殺されたらしいのよ」


 公爵家の三男が殺されたっ!?

 どこの誰だかは知らないけれど、それって大問題では?


「そ、そんな事があったんですか?」

「そうらしいのよぉ。何でも、伝説の殺し屋っていうの? 悪い貴族ばかり狙う殺し屋が犯人なんですって」

「へぇー。という事は、その人は影で悪い事をしていたんですか?」

「みたいよぉ。何でも、婚約者が居る女性を無理矢理攫おうとしたとか、幼い女の子を誘拐しようとしていたとか……調べたら、過去に何人か幼い女の子の獣人を攫っていたらしいわよぉ」

「えぇ……怖っ!」

「そうよねぇ。貴女、まだ若いのに一人旅? 気を付けてねぇ」


 何でも、このおばさんのお友達の旦那さんが兵士さんらしく、そう言った事件の話を聞けるのだとか。

 ……あの、そういう情報って、他人は勿論、身内にも話しちゃいけないんじゃないのかな? 詳しい事はわかんないけど。


「いくら公爵家の三男でも、幼女趣味の男は無理ね。しかも、確かフランクリン様はもう二十代半ばのはず……一回り以上年下の女の子に手を出すとか有り得ないわぁ」

「そうですね。かなり気持ち悪い……」


 ん? あれ? 何か聞いた事のある話だと思ったら、フランクリンって……私の婚約者だっけ?

 まぁ元よりお兄ちゃん以外の男性は眼中に無いから、どうでも良いけどね。

 それから、おばさんによるフランクリン殺害理由説を延々と聞かされる。

 曰く、娘を奪われた両親が伝説の殺し屋に依頼したとか、上級魔法の使い手として幾つか盗賊団を潰しているので、その報復として依頼されたとか、伝説の殺し屋の娘に手を出したとか……まぁこの辺は兵士さんからの話ではなくて、完全におばさんの想像らしいけど。


「じゃあ、気を付けてねー!」


 とりあえず、トオーク村までの話し相手になってくれて、私も良かったかな。

 思っていたより、馬車に乗っていた時間が短く感じたし。

 そんな事を考えながら、イーナカ村への行き方を色んな人に聞いていると、


「おーい! さっきのお嬢ちゃん。どうやらイーナカ村の街道を塞いでいた土砂が撤去されたらしい。乗合馬車でイーナカ村へ行けるが、乗っていくかね?」


 トオーク村まで乗って来た馬車の御者さんが私を探して声を掛けてくれた。

 二つ返事で馬車に乗せてもらうと、ほんの少しの時間を馬車に揺られ、


「着いたよ。ここがイーナカ村だ」

「ここが……ありがとうございます」


 遂に、お兄ちゃんが居る村へと辿り着いたわっ!

 お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん! 愛しの可愛い妹ソフィアが、もうすぐ会いに行きますからっ!

 とはいえ、お兄ちゃんが何処に居るか分からないので、村の人へ話を聞いてみる。


「あの、すみません。この村に、トーマという男性が居ると思うのですが、何処へ行けば会えますか?」

「トーマさんなら、このまま真っすぐ南に行ったところに、ご飯屋さんがあるんだけど、そこに行けば会えるよ」

「わかりました! ありがとうございます!」


 教えて貰った通りに進んで行くと、お店の前に並べられたテーブルで、お客さんがご飯を食べ終えた所らしく、小さな女の子にお金を渡して去って行った。

 なるほど。あんなに幼い女の子が働かないといけない程、大変なんだ。

 ……って、それよりお兄ちゃんは何処だろ? この店に行けば会えるって言われたんだけどな。

 あの子に聞いて分かるかな? とりあえず、聞いてみようと思って近付いて行くと、お店の中から可愛らしいお姉さんと、お兄ちゃんが出て来た!


「あっ! お兄ちゃ……」

「パパー! おしごとおわったー!」

「ウル、今日もありがとうな」


 えっ!? えぇっ!? ぱ、パパっ!?

 何かの……何かの間違いよねっ!?

 で、でも、幼い女の子がお兄ちゃんに抱きついて……両手で優しく抱き上げられて、ギューって抱きしめられたっ!

 ど、ど、ど、どういう事なのぉぉぉっ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ