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第5話 コズエの力

「……ふむ。なるほどな。トーマさんはハイランド家の長男なのか」

「えぇ。とはいえ、父に追放されてしまいましたか」

「何それ、酷い! スキルなんて、何を授かるかは神様次第なのにっ!」


 村長さんが母親からの手紙を読み終え、腕を組んで何かを考えている。

 ひとまず次の言葉を待っていると、続け様にアメリアが口を開く。


「ねぇ、お父さん! こんなの酷いよ! トーマさんをこの村に住まわせてあげて! 土地なら新たに開拓すれば良いし、家なら建てれば良いじゃない! それに何より、私たちの恩人なんだよ!?」

「ん? あぁ、村に住んでもらうのは勿論だ。俺が考えていたのは、トーマさんに住んでもらう家を、どんな造りにするかだよ。アメリアが一緒に住むだろ? で、二人くらい子供が生まれるだろ? 俺としては、孫の顔が見たいから近い方が良いだろ……」

「お父さんっ! 子供は気が早過ぎるわよっ! えっと、ほら村の南側に空き家があったじゃない。あの家って使っちゃダメなの?」

「なるほど。子供が居たら狭いが、二人で暮らす分には十分か」

「お父さぁぁぁんっ!」


 アメリアは大変そうだが、それでも父親が元気になったのが嬉しいのか、笑顔が浮かんでいる。

 コズエの力を借りて治癒魔法を使い、本当に良かったな。

 そんな事を考えていると、父娘の話がまとまったようで、今から家に案内してもらえるようだ。


「トーマさん。親バカと言われるかもしれないが、アメリアは顔は良いし胸もデカい。宜しく頼む」

「何を頼んでいるのよぉぉぉっ!」

「え? 何って孫を……」


 村長さんがまだ何か言い掛けていたが、アメリアに腕を引っ張られ、家の外へ。


「あ、あのね。お父さんの言葉は話半分くらいに聞いておいてくださいね」

「という事は、半分は信じて良いのか。何処の部分を信じるべきか……」

「それはもちろん……な、何でもないですっ! あっ! えっと、ほらあそこ! あの奥の家を使ってください!」


 茜色に染まる、のどかな村の中を歩き、青い屋根の小さな家の前へ。

 暫く空き家だったらしく、家の周りには雑草が生い茂り、壁や窓に穴が開いていたりするけど、家を追い出された俺には十分過ぎる程の家だ。

 アメリアがドアの鍵を開けると……うん。まぁ予想はしていたけど、ホコリが凄いな。


「えーっと、確か箒やバケツに、雑巾なんかがこの辺りに……あった! じゃあ、まずはお掃除ですね!」

「そうだな……って、ちょっと待った! 流石にこれは手伝わなくて良いよ。家を貸してくれるだけで十分過ぎるよ」

「えっ!? でも、私だって命を助けてもらっていますし、お父さんも治してもらっています。それだけでは……」


 そんな話をしていたら、俺の腹がぐーっと鳴る。

 考えてみたら、昼からずっと歩きっぱなしで、もう夕方なんだよな。

 そう思った直後、アメリアが顔を輝かせて見つめてくる。


「わかりましたっ! では、お掃除はトーマさんにお任せしますね! その代わり、私が夕食をごちそういたします! あの、食べられない物とかはありますか?」

「いや、特には無いけど……」

「了解ですっ! では、料理が出来たら呼びに来ますので、楽しみにしておいてくださいねっ!」


 そう言って、アメリアが凄い勢いで走って行った。

 まぁ料理を御馳走になれるというのなら、それは是非お願いしたいところだな。

 これから、この村で料理屋を開いて生計を立てていきたいと考えている訳だし、普段どんな料理を食べているのかが気になるしね。


「さて、それまでにこの家を掃除しないといけないんだが……風魔法でホコリを飛ばせるかな? ≪ハイ・ウインド≫」


 扉と窓を全開にして、強風を起こす魔法を普通に――コズエの力を借りずに使ってみると、家の中で強い風が渦巻き……ホコリが宙に舞っただけだった。

 やはり、地道に箒で穿くしかないか。


「トーマ。どうして私の力を使わないのー? 使ってくれたら、こんなホコリなんて一瞬で片付くのに」

「いや、だってコズエの力を借りたら、今の強風を起こす魔法がとんでもない威力になって、家ごと吹き飛びそうだしさ」

「ふっふっふ。甘い、甘いよっ! 私がトーマにあげたスキルは、小杖装備時の魔法効果向上……つまり、必ずしも威力が上がる訳ではないんだよ」

「というと?」

「効果の向上だからね。術者の――トーマの意図を汲み取った効果を発揮するの。という訳で、私の力を使った状態で、もう一度さっきの魔法を発動させてー!」


 本当に大丈夫なのか?

 せっかく家を貸してもらったのに、僅か数分で跡形も無くなるなんて事は勘弁してくれよ?

 とはいえコズエも神様なので、その力を信じ、コズエの力を借りた状態で風の魔法を使用する。


「≪ハイ・ウインド≫……おぉっ! 凄い! 窓の外から大きな掃除機を差し込んでいるみたいに、ホコリが窓の外へ吸い出されていく!」

「どぉ? これが私の――小杖の神の力よ」

「コズエ、凄い!」

「えへへ。もっと褒めてー! あと、ご褒美になでなでしてー!」


 ドヤ顔で胸を張るコズエの頭を撫でてあげた後、雑巾で机や床を拭き……あっという間に家が綺麗になった。

 コズエの力は、どうやら色々と応用が利きそうだ。

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