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第27話 看板娘ウル

 翌日。家具屋で注文したテーブルと椅子のセットが届けられた。

 四人掛けのテーブルセットが二つ。

 もちろん家の中には入らないので、家の前に置いてある。


「トーマさん。じゃあ、昨日依頼された今日の野菜だよ」

「ありがとうございます」

「営業はお昼からなのかしら?」

「はい。最初はランチ営業だけでやっていこうかなと思っています」

「そうなの? 料理屋さんって、夜がメインってイメージだったんだけど……じゃあ、開店祝いって事で、今日のお昼に来させてもらうわね」


 フィリアさんが今日の野菜……という事で、箱に入った野菜を届けてくれた。

 ニンジンっぽい野菜とか、レタスっぽい野菜とか、フィリアさんの畑で、今朝採れたばかりの野菜だ。

 早速献立を決めたので、今日のメニューを紙に……って、紙が無いのか。

 とりあえず、木の板に日替わりランチの内容と価格を書いて、家の前の地面に挿しておいた。

 さて、店を持つ事は叶ったけど、どうなるだろうか。


「パパー! ウル、てつだう?」

「そうだなー。ウルには看板娘をして欲しいな」

「……かんばんむすめ?」

「そうそう。ウルは可愛いから、料理を運んでくれたら、お客さんが沢山来てくれると思うんだ」

「ウル、かわいい?」

「あぁ、とっても可愛いぞ」


 そう言うと、ウルが正面から抱きついて来て、俺の身体に顔を埋める。

 耳が赤くなっているあたり、照れているのだろうか。

 ウルが落ち着いたところで、昨日の夕方にモルガンさんから受け取った、一角ウサギの肉の下準備をして……とりあえず、十食分で良いか。

 オープンの宣伝をしている訳でも無いし、初日からそんなに来ないだろうと思いながら、お昼時を迎えると、


「やぁトーマさん。早速来させてもらったよ」

「フィリアさん、ありがとうございます。今はお任せランチしかないんですけど……皆さん宜しいですか?」

「えぇ、それでお願いします」


 フィリアさんが六人グループでやって来た。

 あー、来てくれるとは言っていたけど、一人で……とは言っていなかったか。

 ありがたいと思いつつ、急いで調理を始める事に。


「パパー! ウル、かんばんむすめ」

「そうだな。じゃあ、このお水をお客さんたちに運んで来てくれるかな? 外のテーブルに座っているお客さんに一つずつコップを置いて来て欲しいんだ」

「……がんばる!」


 ウルがトレイに水の入ったコップを……いや、一度に六つは止めておこうか。三つずつ行こう。

 コップが乗ったトレイをウルが慎重に運んで行くのだけど、このハラハラ感は何だろうか。


「……おみず」

「あら、頑張ったわねー。ありがとう」

「まだ……つぎ、もってくる」


 ウルが二回目の水も無事に運び終えると、嬉しそうにやって来た。


「ウル、凄いぞ。ありがとう」

「えへへ……うれしい」


 頭を撫でてあげると、嬉しそうに抱きついてきたのだが……すまない。調理中なんだよ。


「ウル。次はサラダがあるんだけど……どうする?」

「やるー! ウル、まかせて」


 小さなミニサラダも三つずつにして、あとフォークも一緒に……おぉ、大丈夫そうだな。

 じゃあ次はスープとパンも行けるかな?

 そう思いながら、ウルが運びたいと言うので任せたのだが、大きくバランスを崩し……


「……あっ!」


 こけるっ!

 料理は作り直せば良いし、お客さんには幾らでも謝るが……ウルが悲しむのは見たくないな。


「≪八百万:包丁装備時の敏捷性向上≫」


 ナギリのスキルを発動させ、手にしていた包丁を腰に差すと、キッチンからダッシュでウルに向かって走り、右手でその身体を抱きしめ、左手でトレイを掴む。


「……え? あれ? ……あ、パパー!」

「ウル、大丈夫か? ……こほん。すみません、失礼致しました」

「いえいえ、私たちは大丈夫だけど、トーマさんはウルちゃんを凄く大事にしているのねー。もの凄い速さでやって来たもの。あと、うちの野菜をこんなに美味しくしてくれて、ありがとうね。どうやったら、こんなに美味しくなるのかしら?」


 お客さんたちに謝り、フィリアさんと野菜談議に入りそうになり、


「トーマ。料理は大丈夫なの?」

「……フィリアさん、少しだけお待ちください」


 コズエに指摘されて、再び高速移動する事になってしまった。

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