第15話 魔物の素材の買取
「ごちそうさまでした。アメリア、ありがとう」
「いえいえ、私も作り過ぎて困っていましたので」
「今まで、アメリアが料理を作り過ぎたなんて、一度も無かっ……待て! 鍋を投げようとするな! いや、包丁じゃないだけマシだが……」
村長が何かを言いかけ、怯えだしたのだが……アメリアに目を向けると、一瞬で何かを隠したような気がする。
まぁ何も見えなかったので、これ以上は何とも言えないが。
「……こほん。そうだ、トーマさんに言っておかないといけない事がある」
「何でしょうか」
「前にアメリアとトーマさんにちょっかいを出してきた、レオンという男が居たのは覚えているか?」
「えぇ、もちろん」
「村の中で話し合いがあり、十分反省しただろうという事で、明日戻って来る事になったんだ」
……そう言えば、あの件以来レオンの姿を見ていなかったが、一体どこで何をしていたのだろうか。
戻って来るという辺り、何処かに行っていたような感じだけど、聞いても良いのか?
「……ちなみに、レオンは何処から戻って来るんだ?」
「あぁ、一言で表すと牢屋だな。今回はトーマさんのおかげで、亡くなったりした者が居ないので村の中で話を収めているが、より悪質な事をすれば騎士団を呼び、連行してもらう事になるな」
いや、村長さんに毒を盛って、アメリアに言い寄り、更に家へファイアーボールを放つような奴なんだが。
本当に解放しても大丈夫なのか?
「あー、トーマさんが言いたい事は何となく察したが、いつまでも牢へ入れておくと、それだけ村の労働力が減るからな。もしも次に何かしでかしたら、今度は確実に騎士団を呼ぶと言い聞かせているのと、本人も反省したと言っているから、信じてやって欲しい」
小さな村だから、こういう対応なのか。
これが日本だったら……というか、この世界の実家がある街でも確実にアウトだと思うが、まぁ新参者の俺が口を出せる事ではないだろう。
「わかったが……俺よりも、アメリアが気を付けてくれ」
「し、心配してくれるんですね? そ、それなら、その……ぼ、ボディガードとして一緒に居てくれると嬉しいなー、なんて」
「よし! 村長として……そして父として認めよう! トーマさん。早速今日から、ウチへ泊まっていってくれ!」
いや、話が大きく逸れてないか!?
全力でズレた道へ向かっている気がするんだが。
「いや確か、俺がアメリアの近くに居るのが気にくわなくて、ファイアーボールを使って来たと思ったんだが。だったら逆効果じゃないか?」
「そ、それなら私がトーマさんの家に行くというのは?」
「うむ! それも認めよう! ただ、時々は顔を見せに来て欲しいけどな」
この二人は俺の話を聞いていたのだろうか。
とりあえず、レオンには気を付けるように……という話と、改めて昼食のお礼を言ってアメリアの家を出ると、そのまま鍛冶屋のモルガンさんの所へ。
「いらっしゃい……っと、トーマか。今日はどうしたんだ?」
「あの、昨日とは違う鍋が欲しいんですけど、フライパンって分かります? ……あ、それです。それを売って欲しいのと、それから……」
モルガンさんが大きめのフライパンを出してきてくれたので、早速購入する事にして、このフライパンの中に入るサイズの網を購入する。
この網をフライパンに収まるようにして欲しいと言うと、流石は鍛冶屋と言うべきか、あっという間に対応してくれた。
同じく、このフライパンにピッタリ合う、半球型の蓋も作ってもらい……準備完了だ。
「モルガンさん。これって、幾らですか?」
「これだと銀貨六枚ってところだが……今すぐでなくても良いぞ? この村での生活が安定してからでも構わんが」
「あ、いえいえ。大丈夫です。まぁ生活が安定というか、収入については、まだまだこれからですけどね。……あ、思い出したっ! えっと、ワイルド・ボアっていうイノシシを倒して、牙と肉を持ち帰ったんですけど、どこで素材を買い取って貰えるか知りませんか?」
「何っ!? ワイルド・ボアの牙だと!? 素材の買取はうちでやっているが……先ずは見せてくれ。あ、すまんが肉は少しだけにしてくれ」
「わかりました。すぐ戻るので、少し待っていてください」
ひとまず鍋の代金を支払って家へ持ち帰ると、早速牙と肉の塊を二つ程持ってモルガンさんの所へ。
「……確かに、ワイルド・ボアの牙だな。大きさも十分……そうだな。これなら銀貨一枚といったところか。肉と合わせて銀貨二枚でどうだ?」
「はい、お願いします」
「しかし、トーマよ。昨日渡した短剣で、ワイルド・ボアを倒したのか?」
「えーっと、一応魔法が使えるので」
「あぁ、なるほど。狩りの時だけスタッフを持って行くのか。スタッフはデカくて邪魔だからな」
やっぱり魔法で魔物を倒すっていうと、大きな杖を想像するよね。
実際は小杖しか使わないんだけど。
とりあえず、モルガンさんが素材を買い取ってくれるという事もわかったので、素材と肉集めに励もうか。




