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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第096話 迷宮探索終了と聖女六度目の試練?


「ミィィィミィ!」(このぉっ!)


 一体の⦅黒鉄影光鎧アダマスグロウメイル⦆と私は尻尾の刃で打ち合う。場所は〖聖王テレスキング墓所グレェィヴ〗の地下58階層だ。【LV58】が適正の場所で【LV69】の私と互角とはコイツやるな、変異種か特殊個体?強化種か?と考える。40階層を越えると魔物は⦅魔石⦆と言うモノを落とす様になる。大体が体の中心に有り砕いてやると弱体化する。⦅門番ゲートキーパー⦆だけは持ってないが他の魔物は全部が持っており倒すと必ず回収出来る。アムディの聖石の代わりになるモノとして最も有力に研究されている石だ。


 そして原因は不明だが魔物がコレを取り込むと強くなる。それを狙って同族狩りを行う魔物まで居る程だ。迷惑極まりない。この階層に入ってから戦うのは私だけになった。リーレンさんは【LV52】セアラは【LV60】になった。後は私一人なのだ。でも残り時間が少ない、もう60階層迄は辿り着けない。魔物を狩って【LV70】を目指すしかない。


 ザ……ザザ………ザ………ザザザ……


 またあの音が聞こえた。こっちももう少しの様だ。【夢幻】の進化、コレも何とかしたい。四本の尻尾を束ねて一本の刃にして振り下ろす。それを⦅黒鉄影光鎧アダマスグロウメイル⦆は両手に持った二本の剣で受け止める。だが残念、私の尻尾は四本では無い。【LVUP】の影響か成長した五本目の尻尾を横に薙ぐ。がら空きだった⦅黒鉄影光鎧アダマスグロウメイル⦆の胴体が両断され赤い光が灯っていたその兜から輝きが消えたがらんどうの鎧がガシャアンと音を立てて崩れ落ちた。【LV】は――残念、まだ上がらない様だ。


「ハクア、残念ですけどそろそろ時間です」

「ミィ、ミィミィミ。ミィミィミミィミ、ミィミィミィミィミィ」(うん、分かった。次で最後にするわ、それでダメなら諦める)


 それだけ言って私は歩き始める。二人も着いて来てくれる。【神智】で確認すると必要経験値は残り僅かだ。だけど、多分、次の一ヶ所程度では届かない。それでも可能性を信じて私は向かった。広間に居たのは11体の⦅骸骨戦士スパルトイ⦆さっき見たいな強い奴は居ない様だ。残念だけど兎も角、コレが最後、私は尻尾を刃に変えて駆け寄って行った。


 一体、二体、三体と片付ける。迎撃態勢がとられるが⦅骸骨戦士スパルトイ⦆はA級の破滅ディザスターの魔物だ。私の敵には成らない。四体目、五体目を切り捨てる。


「カ、カカカカカッ!」

 ⦅骸骨戦士スパルトイ⦆が声を上げて襲い掛かって来るが全然、遅い。スパンッと尻尾の刃で切り捨てる。これで六体目。



 ザザザ………ザ…………ザ………ザーーー…ピン!


『【技能】【夢幻】が特殊進化条件を満たしました【技能】【千変万化】へと進化します』


 お?!上がったか、助かった。【LV】は無理っぽいけど此方だけでも強化出来たのは有り難い。意識して見るとまだ成長途中な小さな尻尾も巨大化、成長させる事が可能になった様だ。よし、もう一気に終わらせると私は漆本全ての尻尾を巨大化させて残る五体の⦅骸骨戦士スパルトイ⦆に突撃していった。


「お疲れさまでした、リーレン、ハクア」

「聖女様こそ、本当にご苦労様でした」

「ミー、ミィミィミミィミミミィミミ…ミィミ」(あー、あと1つが上がらなかった…無念)


 嘆く私と労い合うセアラとリーレンさん、私達は既に〖迷宮ダンジョン〗の外だ。今はシャリス公爵家別邸に向かって暗くなった夜道を歩いている最中だ。夜になっても流石は聖都だ。人の姿は非常に多い、私は大丈夫だがまた安全の為にセアラの腕の中だ。ちょっぴり癒される。そしてゆっくり歩いて帰宅した。セリアーナお婆ちゃん大聖女様がお出迎えしてくれる。


「お帰りなさい、セアラ、リーレン、ハクアちゃん。たった三日で見違えるほどに強くなったわね」


 セリアーナお婆ちゃん大聖女様は嬉しそうに笑っている。その通り、リーレンさんは13も【LV】が上がってセアラは何と17も上がったのだ。リーレンさんはかなりのパワーレベリングだがセアラは【獲得経験値倍化】の効果だな、やっぱりこの【技能】はトンデモ無いと思う。明日は昼食を食べたらお城に行くので午前中に六度目の試練を受けるそうだ。セアラの恐怖か…何だろうな?と思う。


「はい、只今、戻りました。セリアーナ様」

「聖女様のお陰で何とか無事に戻ることが出来ました」

「ミィミィー、ミィミィミミィミィミミィミミィミー」(ただいまー、セリアーナお婆ちゃん大聖女様ー)


 私はピョンとセアラの胸から飛び出してセリアーナお婆ちゃん大聖女様に飛び移る。「あら、あら」と言いながらセリアーナお婆ちゃん大聖女様は私を受け止めてくれる。うん、ちょっと久々な感触だ。心地よい、満足気に私は撫でられて喉をゴロゴロと鳴らす。暫くの間、そのまま満足いくまでセリアーナお婆ちゃん大聖女様の胸の中で過ごした。ちょっと視線を感じた。振り返るとセアラが羨ましそうにこっちを見ている。しょうがないなぁと思いながら私はセリアーナお婆ちゃん大聖女様の腕の中から飛んでセアラに飛びつく。


「え?わわっ」


 セアラが私を抱き留めようと手を伸ばすがその手をスルリと潜り抜けて床に降りるとセアラの背中に軽く体当たりした。「わっ?!」と前のめりな体勢で押されたセアラは数歩進んでそのままセリアーナお婆ちゃん大聖女様の腕の中に納まった。


「セ、セリアーナ様!」


 慌てて離れようとするセアラだがセリアーナお婆ちゃん大聖女様に「大丈夫よ」と言われて大人しくなった。優しく頭を撫でられて幸せそうにしている。


「セアラをこうして抱き締めるのも久しぶりね。あの頃よりも少し大きくなったかしら?」

「わ、私だって成長してます。……多分」


 お互いに嬉しそうにしている二人の姿はまごう事なき母と娘の姿だった。私はそれを微笑ましく見守った。そして私とセアラ、リーレンさんはお風呂に入って眠りに付いた。2月14日、円卓会議の前日が始まる。







『…六度目の試練に挑む者よ。良くぞ来た』


 起きて朝食を食べ終えて準備が済んだら直ぐに試練に挑んだ。私が今、立って居る場所は初めてハクアと出会った場所だ。此処で私の恐怖と戦う?試練の神が何をさせようとしているか分からず私は首を傾げる。


『…この短い間にLVを上げ良くぞ。六度目の試練に挑む決断をした。汝の決意に改めて敬意を表する』


 私もたった一日で10も【LV】が上がるとは思わなかった。【獲得経験値倍化】は本当にトンデモ無いなと思う。兎も角これが明日の為に出来る最後の準備だ。全力で挑みそして超えて見せると誓う。


『第六の試練、汝には己が最も恐れるモノと戦ってもらう。これは汝が恐怖に立ち向かえる心の強靭さを示す試練、戦いだ。見事に打ち破って見せるが良い』


 とは言われても、恐いモノが思い浮かばない。この場所で恐怖と言えばハクアだか今の私達は一切の問題が無い仲良しだ。出会った当初なら兎も角、今更になって恐怖は感じない。


『その為にも汝の記憶を一時、封印する。では試練を乗り越えて見せよ。さすれば汝には更なる力と技能が授けられるであろう。汝に再び光と闇の導きが在らんことを―』


 え?記憶を封印?もしかしてまさか○○〇の事を?アレ?私は今何――誰の事を考えた?思い出せない???コレが試練の神が仰られた記憶の封印?今から何が起こって何が現れると言うのだろう?周囲を見回す私の【神眼】にソレが映った。大きい、有り得ない程に巨大で強い白く輝く何かだ。自分等ではとても敵わない何かが凄まじい速度で迫って来る。


(来るっ!)


 そう思った瞬間にそれは現れた。【神眼】に見える輝きと同じ純白、瞳だけが深紅に輝く小さな綿猫ファトラそれが私の目の前に出現した。体が震える。恐い、物凄く恐い。伝説のSSS級の終焉アポカリプスにも届くのでは?と思う程の力を感じる。それをこんな小さな綿猫ファトラの幼生が持っていると言うのが信じられない。でも私は約束した。○○〇とリーレンと必ず、試練を乗り越えて帰ると!


「ミィーーーーー!!!フシャーーーーー!!!!!」


 鳴き声を上げて綿猫ファトラが飛び掛かって来る。私は慌てて【神域】で結界を張って攻撃を防ぐ。すぐさま【光輝】【降臨】【神威】も発動、続けて【四聖神法】【四界竜力】【龍力】【龍結界】も使う。また白い綿猫ファトラが飛び掛かって来た。今度は本気の様だ。【神域】が爪の一振りで破壊される。私は急いで〘疾風ゲイル迅雷サンダークラップ〙を唱えて回避、同時に【魂魄分裂】で攻撃魔導を多重起動、弾幕の雨を綿猫ファトラに降り注がせる。


(ダメッ!)


「?」


 何か声が聞こえた気がした。だが気にしている暇はない。攻撃魔導の雨を綿猫ファトラは全て躱して見せた。やはりトンデモナイ、今度は【神域】を複数枚張って攻撃を防ぐ、数枚は破壊されるが全ては破壊されない。その隙に〘ライトニング豪雨ダンパー〙を連打、兎も角、数を撃つ。正に豪雨となった雷が綿猫ファトラに降り注ぐ。何発かが当たり衝撃に麻痺したのか動きを止める綿猫ファトラ、今だとばかりに〘神鳴カムイ〙を放つ。


(ヤメテッ!!)


「え?」


 また声が聞こえた。〘神鳴カムイ〙が外れた、いや、外してしまった。何故?どうして?この綿猫ファトラは私の恐怖の具現だ。本当に恐い、物凄く恐ろしい。立ち向かうだけでも全身が震える。それでも戦わなければならない。勝って試練を超えなければならない。○○〇と約束した必ず無事に帰ると、なのに何か、誰かが私の邪魔をする。倒しては討ってはならないと、何で?誰?と思うが答えは出ない。


「ミィィィィッーーー!!!」

「くっ!」


 綿猫ファトラはまた襲い掛かって来る。私は必死に迎撃した。何度、攻防を繰り返したか分からない。倒せる時、トドメと刺せる瞬間は何度かあった。でもその度に声が響いて私を止める。この声は何?この綿猫ファトラを私は倒してはいけない?それは一体、どんな理由で?解らない、全く理解できない。戦いは長引いて行った。


「はぁ、はぁ、はぁ…」

「フーーーーーーッ!!!シャーーーーーッ!!!!!」


 傷は無くとも〘魔導〙を連発し過ぎて息を切らせる私と細かな傷だらけになりながらもまだまだ戦意を失わない小さな真っ白い綿猫ファトラ、このままだとこっちが先に限界を迎えて戦えなくなると思い、今度こそと私は覚悟を決める。〘疾風ゲイル迅雷サンダークラップ綿猫ファトラの背後に回り込む、そして直ぐ様に〘聖光線ホーリーレイ〙を前方広範囲に発動。


「ミギャァァァァァァァァァッ!!!」


 光線に貫かれて悲鳴を上げる綿猫ファトラ、もう今度こそは何があっても外さないと決意して〘魔導〙を撃つ。


「〘次元ディメンション…〙


(イヤァァァァァァァァッ!!!)


「〘…スラッ


(○○〇ーーーーー!!!)


「〘シュ〙?!」


 全てを切り裂く刃が綿猫ファトラに撃ち込まれた。


 私はゆっくりと歩いて行く。歩いた先にその子は居た。傷だらけになった真っ白な小さな綿猫ファトラ、私は結局、最後の一撃も外してしまった。どうしても解らないけれどどうあっても私にはこの子を倒す事が出来なかった。でもそれが正しい答えの様な気がする。


「ミグ……ウゥゥゥゥゥゥッ!!!フシャァーーーーー!!!」


 ボロボロになっても綿猫ファトラはまだ諦めないと言う様に戦う意思を向けてくる。だが、私は不思議とこの子にもう恐怖を感じなかった。〖アストラーデの聖杖〗を掲げて最後の力を振り絞る。


「【月光】」


 綿猫ファトラの傷が全て癒される。これで私の力はすっからかんだ。もう火の玉一つも出せない。不思議そうな顔で綿猫ファトラは私を見て自分の体を確認した後、ゆっくり近寄って来て頭を私に擦り付けて来た。その頭を私は撫でる。その感触を私は知っている気がする。そうだ、この子は―――。


「ハクア」

「ミゥッ!」


 思い出したかと言う様にハクアが鳴いた。そして同時に試練の神の声が響いた。


『…見事』


 私の膝の上でハクアがご機嫌にコロコロと転がっている。とても嬉しそうだ。先程まで戦っていたとはとても思えない。


「少々、酷いです。試練の神よ」


 私はむくれてそう言う。《友》と戦わせられるなどあんまりだ。私がもしもハクアを倒して居たらきっと凄く傷ついただろうと思う。


『…だが忌み子よ。汝の最大の恐怖はこのモノであろう?』

「それは………そうですが…」


 確かに私の最大の恐怖の象徴と言えばハクアになってしまうだろう。最初は本当にどうしようもなく恐かったのだから、ソレは覆せない。でもソレはソレ、コレはコレだ。記憶を消して戦わせるなどやり過ぎだ。


『…だが汝は記憶を封印されて尚、《友》を忘れずに我が封を破った。偉業として認める』

「…ありがとうございます」


 ご褒美よりは謝罪が欲しいけど無理だろうなと思う。ハクアはまだ私の膝の上で転がっている。何というか毒気を抜かれる。もうしょうがないから良いかと考える。


『…忌み子よ』


 試練の神が重い声で呟いた。また何を言われるのだろうと身構えてから私は「はい」と返事を返した。


『…運命の日が近い、様々な者が悲しみに暮れる。『ファーレンハイの愛し子』に伝えよ。我が伝えた言葉を忘れるなと』

「?…分かりました。必ず伝えます」


 運命の日、それはやはり明日なのだろうか?と思う。だがたった一日で国が亡びるような大事が起こるだろうかと言う疑問も感じる。そして試練の神がハクアに伝えたと言う言葉、それが何なのか不思議と私は気になった。


『…では汝と次に会う日が来るか我には見えぬがせめて汝にも安らぎがある事を願う』


 その言葉を最後に試練の神は去って行かれた。私の安らぎか…それはセリアーナ様がリーレンがハクアが要る事だ。誰が欠けても私はきっと耐えられないと思う。だから絶対に全員で無事にアストラリオンに帰るのだと誓う。今回の試練の様に奇跡を、偉業を成して見せると私は強く願った。

狐猫の小話

リーレンさんをかなりパワーレベリングしましたが金持ちの貴族等は同じような真似をかなりやってます。

本来は邪道なのでステータスの上昇幅が落ちる等のペナルティがありますが、これまで必死に頑張って来た成果でペナルティを受けずにすみました。

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[一言] 魂の絆です。
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