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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第094話 そして今へ、迷宮探索再開?


 どの位の時間を走っただろうか?離れを一周した気がする。流石に疲れて近くの部屋に入った。其処にはもう何も置かれて居ない。でも記憶にはある。この部屋にはベッドが三つ並んでいた。私と『セポラ』『セリス』のだ。私達は何時も一緒だった。笑って遊んでいた。二人が体調を崩すと私が【月光】を掛けた。私が体調を悪くするとセリアーナ様が呼ばれた。ずっと一緒だった。もっともっとずっと一緒だと思って居た。それが終わりになる日が来るなど考えた事も無かった。『セポラ』『セリス』はもう居ない。あの二人との別れも唐突だった。何時、どうしてかは覚えて居ない。でも記憶にあるのは馬車の旅でアストラリオンでのお母さんとお手伝いさん、頻繁に様子を見に来てくれるセリアーナ様だ。私はセリアーナ様が居たから生きて居られた居なかったらきっと死んでる。そう考えた所でギィと音を立てて扉が開いた。振り返って見ると入って来たのはセリアーナ様だった。


「セリアーナ様…」

「セアラ…」


 もう逃げられない、その体力も無い、私はその場に座り込んだままだった。セリアーナ様は黙ったまま私の隣に腰を下ろした。無言のまま、時間だけが過ぎていく。そのまま時を過ごした。喋ってくれなくても良い、優しく頭を撫でてくれなくても良い、只、傍に近くに居てくれるだけで充分だ。それすらももう叶わないのだと思ってまた涙が溢れた。


「……セリアーナ様は私と離れても平気ですか?」


 私の問いにセリアーナ様は首を振った。でもその後でジッと私を見下ろしてきた。ああ、やっぱりどうしようもないんだなぁと私は理解した。能々、考えれば神殿にいる聖女候補の子達も両親の元を離れて来ている。フィナちゃんやキャルちゃんもだ。私だけが親離れが出来ていなかった。今だに幼い子供のままだった。


「セアラ、離れてもきっと私は変わらずに貴方を護るわ。セアラは私達の――皆の希望なのだから、だから絶対に《友》を見つけて?何があっても離れず傍に居てくれる只一人の《真の友》を」


 セリアーナ様はそう言う、でもセリアーナ様の代わりなど居ない。セリアーナ様はセリアーナ様、何時か出会う筈の《友》は《友》だ。全く別の存在だ。でもセリアーナ様は表向きは変わっても内側は変わらないと言う。成らばせめてそれが救いだろうと思った。私はセリアーナ様に抱き着いてその体に顔を埋めた。


「セリアーナ様……」

「……なあに?」

「全部納得します。でも今だけ『お義母さん』と呼んで良いですか?」


 その一言にセリアーナ様は少し驚いた様子を見せた後に「いいわよ」と微笑んで頭を撫でてくれた。私はずっと思って居た事をこの時に初めて言葉にした。


「お義母さん」

「……セアラ」


 一度、声に出してしまうともう止まらなかった。何度となくセリアーナ様をそう呼ぶ。万感の想いを込めて、感謝を願いを祈りを愛情を込めて呼び続ける。


「お義母さん、お義母さん、お義母さん、お義母さん、お義母さん、お義母さん、お義母さん、お義母さん、お義母さん、お義母さん、お義母さんっ!」


 離れたくない、手放したくない、この人を、私の唯一の温もりと優しさを、安らげる暖かな家族を、絶対にイヤだ。でもそれは無理なのだと分かった。それでも伝えたかった。私がどれほどセリアーナ様を想っているか、慕っているか、掛け替えなく信じているか、伝えたくて泣き疲れて眠る迄呼び続けた。


 ファイラル十一世陛下とエイリス様、スパイク様、リッテルト様には私が納得した事がセリアーナ様から伝えられてこの日の話は終わりとなった。私の辛い絶望の一日はこうして終わりを告げた。翌日に正式に謁見の間でファイラル十一世陛下とお目通りした。そして改めて10歳になると同時にシャリス公爵家の養子になる事が決められる。必要な書類も書かされた。これで私も貴族の一員かと思うと不思議な感じだった。聖女第一位になる事はまだ隠すらしい。言ってしまえば大騒ぎだろうからなと思う。そして一日の休みを挟んで三日の聖都テレスターレ滞在が終わりアストラリオンへの帰還の道へ着いた。


「………」

「………」


 【光輝】を受けた馬が馬車を引いていく。何時もと違うのはセリアーナ様の隣に私が座って居ない事、まったく喋らない事だ。セリアーナ様の左右にはリリさんとララさん、私はその正面に一人で座る。もう距離を置くと言うのは始まっているらしい。やはり寂しさに胸が痛む、だけどきっとセリアーナ様も辛いだろうと思う。だから私も耐える。我慢して見せる。私が《友》を見つけて真に聖女第一位に相応しくなった時には全てを取り戻せるように頑張る事を誓う。アストラリオンに帰って来た。フィナちゃんとキャルちゃんが出迎えてくれる。只、私とセリアーナ様との間に流れる空気の変化に僅かに首を傾げていた。年末に入って大神殿は物凄く忙しくなるがその前に一日だけ休みが貰える。私はフィナちゃん、キャルちゃんとアストラリオンの街へ出掛けた。色々と見て回った。私は今はお金を使えないけど二人は色々と買っていた。日が暮れてくる夕方が近い、そろそろ門限になる帰らないと行けない。でもその前にと二人に連れられて街を一望できる高台の公園に向かった。


「うわぁぁぁっ……」


 此処からの眺めは絶景だテレスターレ聖国最大の都市であるアストラリオンが見渡せる。街の中心にある大きな大神殿、市民図書館から各ギルドの建物など色んな物が見下ろせる。初めて此処に来た時はセリアーナ様に連れて来て貰った。お忍びだと言って普段の聖女のローブ姿では無い私服姿で街を一緒に歩いた。今も忘れられない思い出だ。フィナちゃんとキャルちゃんを此処に案内したのは私だ。二人ともとても気に入ってくれた。三人で良く此処に来た。思い出の場所だ。だけど二人の様子が少し変だ。どうしたんだろうと思って居るとフィナちゃんが泣きながら抱き着いてきた。


「ごめん、ごめんなさい、セアラ、私は全部知ってたの、お父さまから教えられて貴方の事を全部!だけど、今迄は絶対に言うなと言われてて…ごめんなさい、ごめんなさい、セアラ」


 そうか、フィナちゃんはエイリス様から全部、教えられていたのか…それでも私なんかと私みたいなヒトモドキと仲良く友達で居てくれたのかとじゃあ、キャルちゃんも?と思って見ると頷かれた。キャルちゃんはファイラル十一世陛下から直接、言われてやって来たようだ。二人とも私の正体を知っていた。でも、だけど――。


「私達は友達だよね?」

「うん!」

「ああ!」


 二人は躊躇なく頷いてくれた。しかし二人はもう直ぐ、大神殿を去る事になるらしい、一緒のお出かけはコレが最後だ。フィナちゃんとキャルちゃんから手紙でやり取り出来るように最後の贈り物としてレターセットを貰った。大切にする事を、必ず手紙を送る事を誓って私達は手を繋いで一緒に大神殿へと帰った。年末年始の大神殿は本当に忙しい、私見たいな成人前の聖女候補生は普段は余り仕事が無いがこの時ばかりは総力戦だ。神殿内を駆けずり回る。そしてそんな忙しさで殆んど私の誕生日も忘れられる。それでも去年まではセリアーナ様が細やかにお祝いしてくれていた。キャルちゃんとフィナちゃんも一緒だった。でも今年は違う、お祝いは無い、でも大騒動は起きた。私がシャリス公爵家の養子に入り聖女第一位になる事がセリアーナ様から発表された。


「も、元平民の聖女候補生を突然一位に?大聖女セリアーナ様、本当にそんな有り得ない真似をなさるおつもりですかっ!」


 現聖女第一位のシャーロット様の父親であるロズベルト神殿長様が叫ぶがセリアーナ様は聞く耳を持たない。「これは聖王さまもご承知の事です」と言い切り聖女任命の儀式が執り行われる。私に聖女の真っ白に金字の刺繍が入ったローブが手渡され着替えが行われる。〖魔導具〗でもあるローブは着ると私の背丈に合わせて自動調節がされる。そして着替えが終わると今度は〖神の杖〗〖アストラーデの聖杖〗が手渡される。私の身長よりずっと大きな杖だ。だけど不思議と手に馴染む。初代大聖女の《血》の関係だろうかと思う。苦々し気に私を睨むロズベルト神殿長に少し脅えながらもセリアーナ様の前に立ち膝を付き首を垂れる。


「では聖女セアラ、誓いの言葉を」

「は、はは、はい、わ、我が、我が―――」


 ダメだ、噛むな落ち着けと自分を必死に激励して言葉を綴り直す。セリアーナ様が目の前に居るのだ不安も心配も無いと考える。


「我が身は我が神たるアストラーデ神のモノ、我が魂は我が悪魔たるアストラーデ様の贄、我が心は我が邪神たるアストラーデ様の元に聖邪に揺れ定まらず、我は全てを神に捧げる神の神子なり、我は疑わず、迷わず、悩まず、示される道を信じ民の為、国の為、王の為にその偉大なるお力の一欠片を振るう事を此処に誓います」


 そして聖女任命の儀式は終わった。次は部屋の引っ越しだ今迄の相部屋から最上階にある聖女の個室へと、部屋はとても聖女の部屋とは思えない広いだけの寒々とした物だった。でもこれでも私の持てる全部を使って誂えた部屋だ。お金が沢山掛かった。今まで貰ったモノ、大事にして来たモノ、思い出の品々、全部を売ってどうにか形だけは整えた。服なんてもう貰った聖女の正装と普段着、訓練着の三着しかない。寂しいなと思う。今まであった心を暖めてくれていた色んな物が無くなってしまった。机の椅子に腰掛ける、コレだけはと売らずに置いたフィナちゃんとキャルちゃんに最後に貰ったレターセットを撫でる。二人ももう去ってしまった、今はまだ移動中だろうから手紙を送る事も出来ない。来月に入ったら送ろうと考える。明日には私の護衛騎士になる人との初めての顔合わせがあるそうだ。良い人だと嬉しいなと思う。私は寝巻き代わりに訓練着に着替えて粗末なベッドに入った。夢を見た。セリアーナ様がフィナちゃんとキャルちゃんが、シャーリー、レント、マリーそして何故か小さな小さな綿猫ファトラのあの子が居た。それはきっと幸せな夢だった。







「―――コレが私の真実です。ハクア…どうでしょう?こんな人では無い人の振りをしただけのヒトモドキな私をまだ《友》として見てくれますか?」

「ミィミ…」(セアラ…)


 私の前でセアラが話した多分【恩恵ギフト】【埋葬】による偽装を解く。左目が血の色に真っ赤に染まる。他に外見の変化は無いが何だかその目に見つめられると背筋がゾワゾワする。そして【鑑定】の結果も変わっていた。


【名前】セアラ・シャリス


【種族】帰還死人イーヴィルス・聖女


【年齢】12歳


【位階】肆


【LV】43 → 46


【気力】5248 → 5296


【理力】5248 → 5296


【霊力】10295 → 13187


【魔力】10296 → 13188


【SP】5933 → 6029


【技能】【大杖術LV4】【大杖技LV4】【物理攻撃完全無効】【魔導攻撃完全無効】【状態異常完全無効】【属性耐性LV1】【負傷回復速度大上昇LV1】【体力回復速度大上昇LV1】【予見LV5】【超記憶LV5】【気力超上昇LV5】【理力超上昇LV5】【気力超操作LV5】【理力超操作LV5】【気力超探知LV5】【理力超探知LV5】【限界大突破LV3】【五感大強化LV5】【舞空LV6】【思考超加速LV5】【並列思考LV5】【因果律補正】【四竜力LV3】【千里眼LV5】【獲得経験値倍化】【獲得SP倍化】【魔導秘奥本】(【無詠唱】【魔導力回復速度極限上昇】【霊力限界上昇】【魔力限界上昇】【霊吸神法】【魔発神法】【霊力操作極】【魔力操作極】【霊力探知極】【魔力探知極】【魔力究極集束】【魔導精密操作極】【聖光魔導威力最大上昇】【次元魔導威力最大上昇】【雷鳴魔導威力最大上昇】)【星魔】(【火魔導LV10】【火炎魔導LV8】【風魔導LV10】【暴風魔導LV8】【雷鳴魔導LV8】)【魔極】(【降臨】【快癒】【神威】【神域】)【絆】


【恩恵】【神哭眼】【光輝】【月光】【埋葬】


【装備】【アストラーデの聖杖】(不壊)【聖女のローブ】(【地獄毒蛾ヘルモス】の糸製)【魔導袋】(収納LV4)


 うん、流石に想像をぶっちぎる所にセアラは居た。何だろう、一体セアラが何をしたと言うのかな不幸具合だ。此処までだとは思わなかった。セアラは今もまだ震えている。恐いのだろう、私がどんな反応を示すのかが、だが私の答えは一つだ。さっき言った通りだ。私は尻尾を手の形に変形させるとポコンとセアラの頭を叩いた。


「アウチ?!ハ、ハクア?」


 叩かれたセアラは不思議そうな目で私を見る。私はハァと息を吐いてから一気に捲し立てた。


「ミィミ、ミィミミィミミミィミミミィミィ。ミィミィミィミィミミミィ。ミィミミィミミィミミィミィィミ?ミィミィ。ミィミィミィミミミィミミ。ミィミィミミィミミィミィ?ミィミ、ミィミィミィミィミミミィ?ミィ、ミィミミィミィミミィミミィミィミィミィミミィミィミ、ミィミィミミィミィミィミミミィミミィミィ。ミィミィミィミミミィミ、ミィミィミィミミィミミ。ミィミ、、ミィミミィミミィミィミミミ。ミィミィミミ?ミィミィ?ミィミィミミミィミミ。ミィミミィミィミィミ!ミィミィミィミミミミィミィ!ミィミィミィミィミィミィミミィミ、ミィミミィミィミィミィミィミィミィミミミィミィ、ミィミィミィミィミィミミィ。ミィミミィミミィミミミミィミ。ミィミィミミミィミミミ。ミィミィミィミミィミミミミィィミ。ミィミィミィミミィミィミミミィミミィミミミ!」(セアラ、貴方の境遇は良く分かったわ。凄く不幸で可哀相だと思う。私だったら耐えられなかったかも?と思うわ。でも私だって似た様な者よ。元人間が気付いたら魔物よ?魔物、父親は知らないし母狐猫は死んだし兄弟姉妹は行方不明、セアラやリーレンさんに出会わなければどうなっていたか知れたモノじゃないわ。その後だって怒涛の日々よ、何度死ぬかと思ったわ。それでもやって来られた。全部、セアラが居てくれたお陰よ。人じゃない?帰還死人イーヴィルス?それがどうしたって言うのよ。そんなの私は気にしない!私にとってセアラはセアラよ!無茶で頑固で絶対に逃げない意地っ張り、人が困ったり苦しんでると直ぐに飛び出す向こう見ず、私の自慢の一番の友人よ。それは何があっても変わらないわ。不安に思う事だって許さない。今の痛みと一緒にしっかり心に刻んでおいてよね!)


 一息で言い放った。セアラは暫くポカンとした後にポロポロと涙を流しながら私を抱きしめて言った。


「あ、あり、ありが、ありがとう、ハクア」


 泣きながら私にお礼を言うセアラ、ああ、もう、泣くなと私はセアラを慰める。リーレンさんが帰って来た時にセアラが泣いていたら私が泣かせたと怒られるじゃないかと私はセアラの頭を尻尾で撫でて目元を前脚で拭う。でもセアラの涙は中々止まらない、私は暫く必死にセアラを慰めた。ようやくセアラが落ち着いたころにはかなり時間が過ぎていた。セアラはまた【恩恵ギフト】【埋葬】を使って目と【技能】を隠した。


「ミィミィミミィ?」(もう大丈夫?)

「はい、ハクア、本当にありがとう」


 セアラは笑顔でお礼を言う。泣いた事で目がちょっと赤いけど大丈夫だろうと思う。でもコレで終わりにするのも何だ。一つハッキリさせてしまおう。セリアーナお婆ちゃん大聖女様やリフレイアさんの様に私も覚悟を決めようと未来を決めようと思った。まだ早い気もするけど今がその時だと言う感じもする。迷うくらいなら私は決断を優先する。


「ミィミ、ミィミィミミミィミミ」(セアラ、私は此処に誓うわ)

「ハクア?」

「ミィミィミミィミィミィミィミミミィミィミミィミミィミィ【ミミミ】ィミィミ」(この先に何があっても絶対にセアラを護る事を私達二人の【絆】に誓う)


 私の言葉に驚いた顔をするセアラ、でもそれも一瞬だった。頷いて私と同じように言葉を口にする。


「解りました。私も【絆】に誓います。ハクアを――いえ、聖女として護るべき人々をきっと護り切る事を誓います」


 揃って私達はふふ、へへと笑い合う。何だか変な感じだ。私はコレから先の生き方を、セアラはこれまで通りでこれからも変わらない事を口にしただけなのに妙に体の中が心が熱く、暖かい気がする。アレ?気の性じゃないな?ホントに何だか熱いぞ?と思ったらピコーンと音が鳴った。


『【技能】【絆】が特殊進化【誓ノ紲】に変化しました。互いの技能が一部、共有されます。【舞空LV6】【雷鳴魔導LV8】【魔力究極集束】【魔導精密操作極】【雷鳴魔導威力最大上昇】を習得しました』


 ブッ?!なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!私は心の中で絶叫した。セアラと技能を共有?セアラの技能の一部が私に貰えた?【鑑定】で確認すると確かに入ってる。セアラにも私の【技能】が大量に流れてた。セアラが大慌てしている。うん、何というか予想外の結果だ。でも兎も角はパワーアップだ。これは喜ぶべき事だろう。序でにステータスも増えている。これまでは半分だったのが同じ数値だけ流れる様になったみたいだ。兎も角、今度は慌てまくってるセアラを落ち着かせよう。


「本当にビックリしました」

「ミミィミミィ。ミィミィミミィミィミミミィミィミィ」(本当にね。何が起こるか分かったモノじゃないわ)


 揃って溜め息を吐く、嬉しい事態だが今までの頑張りがーと言う気もする。何とも複雑だ。でも【技能】を共有出来ると言うなら有り難い。互いに持っていない【技能】を覚えれば揃って覚えられる。【LV】上げの効率も上がる。半端ない技能だ。セリアーナお婆ちゃん大聖女様は此処まで知っていて私達に名付けによる【絆】という【技能】を取らせたのだろうか?と考える。有り得そうな気もするし違う気もする。判断に困る。でもコレで戦力はUPした。後はリーレンさんが戻るのを待つだけだ。そう思った所で眼前に光が満ちた。傷だらけでボロボロになったリーレンさんが帰って来た。


「せ、聖女…様、只今、戻りまし…た」

「リーレン!」

「ミィミィミミィ!」(リーレンさん!)


 私とセアラが慌てて駆け寄る。大神殿で護衛騎士に支給される防具はとても頑丈だから平気そうだが生身の部分は本当に傷を負ってない部分が無い程に血塗れだ。慌ててセアラが【月光】を掛ける。傷が癒えたら『洗浄ブレッシング』『乾燥ドライ』で血の汚れを落とす。それでも疲労や失った血は戻らない。急いでリーレンさんをテント――簡易住居に入れて休ませる。リーレンさんは大丈夫と言うが絶対に大丈夫じゃないから大人しく休んでくださいだ。明日からはまた強行軍なのだ。少しでも休んで体力を回復させて貰いたい。勿論、セアラもだ。二人を休ませてから【神智】で周囲の安全を確認しつつ私も我が狐猫をダメにする巣箱Mk-2で眠りに落ちる。明日は50階層までを突破予定だ。予想外のパワーアップはあったが目標はあくまで私の【LV70】到達だ。それを目標に私達は《迷宮ダンジョン》を進む。


 二日目、ダンジョン内は何時も明るいので昼夜が分かりにくい。だが大体、普段通りに目が覚めた。もうすっかり習慣づいてるなぁと思う。そしてセアラとリーレンさんが特訓している隣で朝食作りだ。お米を精米して炊いて味噌汁代わりにオニオンスープ、準備していたキュウリ――キュリーの塩漬けに大魚ラーギッシュの塩焼きだ。そう言えば気にせずに喰ってたけど狐猫にネギって毒じゃなかったっけ?まぁ、体に一切の害が無い見たいだから大丈夫かと料理を続ける。丁度、終わった所で二人が帰って来た。この世界じゃあ和食はスリオン聖国やウリティア連合国家の特産らしい、隣国なので多少は此方にも入って来ている様だ。流石にお箸は使えないのでセアラとリーレンさんはスプーン、ナイフ、フォークだ。私は気にせずお箸を使う。尻尾で器用に食べる。長い尻尾はすっかり手の代わりだ。これが無いと私は何も出来ない気がする。食べ終わって後片付けが済んだら〖迷宮ダンジョン〗侵攻再開だ。私達は31階層まで集団エリア長距離転移ロングジャンプを行った。


 31階層からは闇の階層だ。光源が一切、無くなる。光りが無くても私は【秘赤眼】で見えるし、セアラも今は私から共有された【真眼】【視覚領域覚醒】で見えるだろう。でも何も見えないリーレンさんの為に〘火灯(ライト〙を唱える。周囲に11個の微かに燃える光の球が産まれる。周りの壁も真っ暗だ。本当に闇一色だなと思う。また尻尾を椅子にしてセアラとリーレンさんを座らせる。〖迷宮ダンジョン〗はもう滅茶苦茶な広さになっている。多分、聖都テレスターレ、アストラリオンより広い、そんな広大な〖迷宮ダンジョン〗を私はリーレンさんのナビゲートで進んで行く。⦅影人シャドーマン⦆⦅戦闘影ウォーシャドウ⦆⦅影犬シャドードッグ⦆等と言った魔物が立ち塞がる。まぁ、今の私の敵では無いなと残らず蹴散らす。しかしどいつもこいつも真っ黒だ。闇に紛れて襲われれば一溜まりも無いだろうと思う。そんな中を駆け抜ける。40階層に到達、⦅門番ゲートキーパー⦆は⦅影巨兵シャドービッグナイト⦆私が【神武尻尾攻撃】で打ち倒した。コレでまた【LV】が上がった。早速、次の階層だ。


 41階層から50階層は瀑布の階層、巨大な滝が流れる水の階層、階層を突き抜けて流れ落ちる巨大な滝と辺りに生える美しい水晶に暫く目を奪われて景色に見ほれた。〖迷宮ダンジョン〗ってもっと暗くてジメッとした感じだったがこんな雄大な光景もあるのかと思った。此処に出る魔物は⦅魚人サハギン⦆や⦅人魚マーメード⦆等がそこら中を泳いで回り飛び出してくると聞いている。この階層からは私は攻撃をしない。魔物を倒すのはセアラとリーレンさんだ。私の尻尾から〘魔導〙を連打して魔物を倒して貰う。【LV】上げ込みだ。走っていると早速、最初の獲物が飛び出してきた⦅殺人魚キラーフィッシュ⦆だ。ステータスを見るにまだB級の災禍ルインの魔物だ。セアラやリーレンさんの敵では無い。でもちょっと数が多いな。〘火炎槍フレイムランス〙〘雷豪雨ライトニングダンパー〙二人の魔導が撃ち込まれる。リーレンさんの〘火炎魔導〙が数匹の⦅殺人魚キラーフィッシュ⦆を貫き、セアラが降り注がせた雷の雨が残りを一掃する。問題無いな、良い感じだ。私は先を急いだ。途中で初めての宝箱を発見した。〖迷宮ダンジョン〗にはこうして稀に宝箱が出現するらしい、後は【技能】を習得できる⦅魔導陣⦆何かもあるらしい。喜んで開けてみる。魔導銀ミスリルの鉱石が入っていた。うん、まぁ、当たりの方なんだろうけど特に必要としてないなー、残念だ。取り合えずしまっておいた。再び50階層を目指す、降りれば降りる程に魔物が強くなる。数もまた増える。48階層で⦅王魚人キングサハギン⦆や⦅人魚姫セイレーン⦆に襲われる。リーレンさんの〘魔導〙の効果が薄くなる。【LV40】から2つ上がって42になってるが流石に48階層の魔物には厳しいか、セアラの【光輝】は既に掛かっているがそれでもこれだ。マズイなと思う。⦅王魚人キングサハギン⦆を倒した所でセアラの【LV】が50になった。試練を受けられる。予定より少し早いが〖安全地帯セーフエリア〗に帰還する。35階層の〖安全地帯セーフエリア〗だ。此処は闇の階層の中で唯一、夜空の様な光が天井から降り注ぐ階層だ。どことなく幻想的な雰囲気がある。広場にテント――簡易住居を設置して私は御夕飯の準備だ。さて、何を作ろうかなと私は悩んだ。


 取り合えずスパゲッティを作った。ミートソースだ。トマト、この世界ではトートと言うらしいけどで作った。麺料理は珍しいモノなのか二人はちょっと食べにくそうにしていたが、美味しいと食べてくれた。それだけで私は満足だ。さて次はセアラの試練だ。五度目の試練は闇、己自身との戦いだ。「では行ってきます」と光に包まれるセアラを私は「ミィミ!ミィミミィミィミィミ!」(セアラ!闇何か消し飛ばせっ!)と見送った。

狐猫の小話

セアラの部屋が最初、凄く貧相だった理由です。

所有してた物を殆んど売って形だけ整えました。

聖女の収入は基本的には秘草採取→魔物討伐→特別任務→結界維持の順で高くなります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 同種族でも言葉も思いも何一つ通じない者も居ますから、大事なのは心ですよね。
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