第088話 迷宮探索と豚さん?
朝になった、【迷宮】に入ったら天気何て関係ないだろうけど、絶好の――曇り空だった。
大分寒くなった、朝の訓練が辛い、コタツが私を呼んでいると思いながら何時も通りに早朝訓練をするセアラとリーレンさんの様子を見る私も【竜牙刀】を素振り、かなり器用に振れる様になって来た。
【神武尻尾攻撃】の刃モードの成長も良い感じ、リフレイアさんの指摘は流石だったなと思う、四本尻尾も心地好く振れる。
其処でまた何時か聞いたような、………ザ……ザザ……ザ…ザザザ………と、言う音が聞こえる。
コレはまたアレか?【疾風】が【閃駆】になったのと同じで【特殊進化】って奴か?と思う。
でも【刀術】【刀技】はまだまだ【LV】が低いから変化するのは【夢幻】かな?よし、頑張って使って行こうと決める。
今迄だって大変お世話になってるけどね、本当に色んな【技能】に助けられて今の自分があるなぁと考える。
唯一【魂魄憑依】だけは面倒になったなぁと思うが口に出すと喧しそうなので何も言わない、口にしたら連中は大騒ぎだ、間違いない。
『本体から邪念を感じたー』
『何だ?私達に文句があるのか?』
『―殺せ―壊せ―滅せよ―粉砕せよ―』
『本体ー、言いたい事が在るならはっきり言えー、言わんと三号を解き放つぞー』
『私を他の連中と同列にするなっ!』
『本体よ、心が荒んでいるのだ。平和を祈れ、武器を捨てるのだ。さすれば救われん』
『喧嘩なら買うゾ!コラーッ!』
『ミャ―はコタツでヌクヌクだニャー』
『駄狐猫っ!お前も一匹で平和してないで何か言い返せっ!』
『本体よ、名誉棄損で訴えるから賠償費用寄越せー』
ええいっ!口にせんでも姦しい奴等めっ!分かった、分かった、余計な事を考えた私が悪かった、お詫びに冬の暖かいお部屋の冷たい癒しな雪見だいふくをプレゼントだ。
『『『『『『『『『わーい』』』』』』』』』
『わーいだニャー』
本当に何でこんな技能になった?【最終進化】させるんじゃ無かったなぁとちょっとだけ後悔、いや、もしかしたら手前の【魂魄分裂】な時点で騒がしかったかもしれんけど…うん、気にしたらダメだなー。
『本体から邪念を――』
それはもうええわっ!お詫びはもうやっただろっ!それで我慢してろっ!
言って【魂魄憑依】の文句をカット、ホントに全くと思う、【鑑定】では『本人の中に眠る無意識を表面に出して思考を分割、他の物体に宿らせたりする事が可能な技能』と在ったけど、私の中の無意識と言う人格にあんなのがあるのかと疑問に感じる。
ソレよりそろそろ朝の訓練も終了だ、そしたら朝食、その後は【迷宮】で三日間だ、セアラとリーレンさんが手を止めた、終わった見たいだ、よし朝食だと私も【竜牙刀】を仕舞い、尻尾を【夢幻】で一本にした。
「気を付けていってらっしゃい」
「「お気を付けて」」
セリアーナお婆ちゃん大聖女様とリリさん、ララさんに見送られてシャリス公爵家別邸を後にする、これから向かうのはダンジョンだ、これもまたファンタジーの定番だ、一番奥底には【迷宮核】とかあるのかなと思う。
今回は目指さないが何時かは到達して見たいモノだ、そう思いながらセアラとリーレンさんに並んで歩く。
貴族街を抜けて平民街へ、向かうのはその中心にあるちょっとした砦のような建物、其処がこの聖都テレスターレを支えている【迷宮】だ。
近付くにつれて段々と武器や鎧を纏った人が増えていく、この人達も冒険者何だろうなと思う、首にギルドカードをぶら下げている、どれほどのモノかなと思って【鑑定】して見るがそれ程強い人は居ない。
そこそこの歳な人でも大体が30前半、後半位だ、私やセアラが改めて非常識な類なんだなーと実感する、【獲得経験値倍化】【獲得SP倍化】の効果はトンデモ無い。
恐らくだけど【LV60】代がS級、【LV50】代がA級、【LV40】代がB級、【LV30】代がC級なのだろうと思う、この基準で考えたら私はS級、セアラはB級、リーレンさんも後僅かでB級だ。
リーレンさんは過去に29階層まで潜った事があるそうだから其処迄の案内は期待だ、ちょっとハイスピードな道行きになるが其処は頑張って耐えて欲しい。
【迷宮】の入り口に辿り着く、いや、私達にとっては入り口だが中に住む魔物にとっては唯一の出口か、其処から魔物が溢れない様に護っているのは騎士さん達だ。
聖都テレスターレのど真ん中にある一風変わった要塞の様な砦、此処こそが【迷宮】【聖王の墓所】だ、初代聖王テレスターレ・フォン・テレストリア一世が発見、この地の魔物を討ち滅ぼし開拓したと伝わる。
そしてその後に【迷宮】を仲間と共に踏破、死後はその最下層に葬られた為に【聖王の墓所】の名が【迷宮】に付けられたとされる。
今はそんな事無いけど昔はこの【迷宮】を踏破しないと王位継承が認められなかったらしい。
かなり酷いと思う、正に名前通りに多くの王族の命を奪った【聖王の墓所】なのだ。
流石に王族が死に過ぎてヤバイと成ってその風習は無くなったらしいがやはり王にはある程度の強さが望まれる、だからオッちゃん聖王様も【LV60】もあるんだなぁと思う。
フィー王女様、フォル王子様も歳の割には強かったもんね、王族に伝わってる秘伝とかもありそうだ。
後は多分、先日に【鑑定】で見た王族としての【技能】【王道】『王族として正しい行いをしている限り獲得経験値と獲得SP増加』【国土】『自らが治める国の領土の広さと歴史に応じてステータスが上昇』【支持】『国民からの信頼が高い程にLV上昇時のステータスが増加』や【恩恵】【聖血】『技能の一部や恩恵を子に受け継がせる』【聖痕】『毒、睡眠、麻痺、呪、封印への完全耐性、一度受けた攻撃に対して耐性を獲得』の効果だろう。
正直に言って全部がかなり強い特に【聖血】とかで有望な【技能】を受け継げれば破格のスタートダッシュが出来ると思う。
最後にオッちゃん聖王様だけが持ってた【技能】【聖王】『自らを慕う者達に【王道】【国土】【支持】の効果を与える事が可能』だ。
ぶっ壊れだと思う、近衛の騎士とかはかなりの強さだった、冒険者で言うA級やB級がゴロゴロ、多分だけどオッちゃん聖王様に近い程に【聖王】の効果は高くなるんだろうと思う。
ハインツさんとかホントに凄かった、【位階】はまだ【陸】だったけど【LV71】でステータスと【技能】はリフレイアさんを超えてた、あんな人をどうやってどうにかするつもりなんだろう?ハミルトンはと思った。
でも多分、考え無しな奴じゃない、きっと何か対策をして来る、それだけは間違いない。
それを超える何かを私が得ないと次の戦いには勝てない、それこそもう一段階【位階】を引き上げる位の事をしないとと考える。
兎も角、目標はそれだ、その為の3日で60階層踏破計画だ、頑張ろうと思う、もちろん私だけじゃない、セアラとリーレンさんもだ、特にセアラの成長には期待だ、道中で魔物を狩れば私に追いつく可能性がある。
そうなれば多分、想定外の戦力が増えると思う、其処に期待する、無茶かも知れないけど二人にも話はしてある。
着いて来ると言ってくれた、今回も必ず全員が無事で乗り越えるのだと信じる、絶対に全員で無事にアストラリオンに帰るのだと誓う。
そして私とセアラ、リーレンさんのパーティーが【迷宮】【聖王の墓所】に入る順番がやって来る。
入り口で受付の騎士さんに行動予定の用紙を提出する、3日で60階層まで降りて帰りは私の転移で戻ると正直に書いてある。
えっ?!と驚いた顔をされるが正直に書いておかないと行方不明で後で捜索隊が組まれたりするからここは素直に書く。
実際に周りにバレない様にこそっと転移をして見せる、その上で秘密にねとサイン、頷いてくれたからきっと大丈夫。
そして私達は【迷宮】に潜った、暗い穴の中へと階段を降りて行く、数分掛けて降りて第1階層へと到着した。
早速、行動を開始だ、今回は兎に角先を急ぐ、時間が惜しい、その為にも「今回、今回だけですよ?!」とリーレンさんにも許可を取った。
尻尾を4本状態にして2本を大きな椅子状態に変形、其処にセアラとリーレンさんが座る、その前にまた支える様に尻尾を立てる、それにセアラはギュッと抱き着き、リーレンさんもギュッーと抱き着く。
「ミィミ、ミィミィミィミィミミィミィミィミィミィミミ?」(じゃあ、二人共予定通りに行くから頑張って耐えてね?)
「は、はい、お願いします。ハクア」
「く、くれぐれも安全に頼みます」
「ミィミミィミミィミミミィ?ミィミ、ミィミミィミィミィミミィ!」(安全だけは保障するよ?絶対に、2人共怪我一つさせないから!)
そしてトットッと走り出す、バランスに慣れるにに最初はゆっくり、徐々にペースを上げて行く、慎重にだけど、急いでさっきも言ったがちょっとハイスピードな道行きなのだ、二人には頑張って欲しい。
最初、私を見て何してるんだろう?と見ていた他の冒険者の目から一瞬で私は掻き消えた、【閃駆】を発動させた、それだけだ。
「ハ、ハクアッ?!ハクアァァァッ!!!」
「ミィミィミミミィミィミィミィミ?ミィミィミィミィミィミィ!」(黙って無いと舌を噛んじゃうよ?流石に其処迄は護れないっ!)
更にスピードを上げる、前方に小鬼発見!邪魔だから撃破っ!さらに前方には雑魚魔物と戦ってる冒険者さんの姿、壁走りで回避っ!さらにもう一組、此方も壁走りっ!
「ハクアッ!ハクアッ!」
「ミィミィミィミィミィミィミィミィ?ミィミィミミミィミィミミミミィミィミ、ミィミィミィミィミィミィ?ミィミミィミィミミ?」(セアラ本当に舌を噛んじゃうよ?リーレンさんを見習って静かにしようよ、それはそうとリーレンさん?道はコレで逢ってる?)
「……リーレンが気絶してます」
「ミミィ?!」(ええっ?!)
流石にその状態はマズイ、私は急停車してセアラとリーレンさんを介抱した、シルバーとズィルバーの爆走でも悲鳴を上げちゃうリーレンさんに私の【閃駆】と壁走りは衝撃過ぎた様だ。
リーレンさんは問題なく直ぐに気が着いた、ひとまず安心だ、良かった、でもどうにかスピードはもう少し抑えて欲しいと言われた、うーん、まぁ、ソレでも多分、大丈夫だと思うけどペースは落ちる。
でもしょうがない、気絶されるよりはマシだ、私は【光輝】を受けたシルバーとズィルバー位の速度に落とした、先程が衝撃過ぎたのか物凄くホッとされた。
うん、まぁ、ゆっくり、ゆっくりとバレない様に速度を上げて慣らしていこう、そうしようと考えた。
其処からは順調に進んだ、リーレンさんの道案内も問題ない、10階層到着まではあっという間だった、さぁ、初の門番との戦いだ。
門番との戦いは待ってる時間の方が長かった、倒されても30分程で次が沸く、そして沸いた先から倒される、何か哀れだ。
沸くのは大体が【突撃猪】だ、F級、中位の魔物だ、全く脅威にならない、鼻歌を歌いながらでも勝てる、手前に4パーティー並んでいたから2時間待った。
更に沸くまで30分待つ、お、沸いたと思ったら【突撃猪】じゃなかった、馬鹿でかい豚が沸いた、【踏付け豚】だ、こいつもF級、中位だがでかい、豚が象並みの大きさになってる。
しかし何か襲って来ようとしない、どうも脅えている、私とセアラ、リーレンさんにやっと出て来たのにいきなり絶望に会ったって感じだ。
何か申し訳ないが、此方も貴重な【LV】UPの機会だ見逃せん―――と、思うのだが、何だか狩ろうと踏み出そうとすると脅えに脅えてビクゥッ!とする豚さんが可哀想になって来る。
つぶらな瞳がラブリー、うーん、何故にこんなタイミングで豚さんが沸くのだろう?猪だったら問題なく狩れた気がするのに、コレも何かの試練かと思う。
「ハ、ハクア、何か私、初めて魔物を狩るのを躊躇う気分に…」
「ミィミミィミミィイミッミミィミミミミィミミィミィミィミィ」(私も初めてシルバーとズィルバーに会った時を思い出すわ)
豚さんは「プギィ…」と鳴きながら此方を見ている、何だか仲間になりたそうだ、ダメです、家には既にシルバーとズィルバーが居ます、こんな大食漢だろう豚さん飼う余裕はないと考える。
そして「ミミィィ!」(ええいっ!)と右手を振り上げるが振り下ろせない、(僕を)或いは(私を殺すの?)というキラキラお目目にどうしても手が振り下ろせ無い。
何という重い試練、狩るのをこれ程に躊躇わせるとはコレが【迷宮】最初の試練かと思う、何でこんなクソでっかいのに雨に濡れたチワワの様な悲しそうな瞳を私に向けて来るのか?
私達に訪れた予想外の苦難に彼女が立ち上がる、リーレンさんだ、「聖女さま、此処は私が」と言って剣を抜く、豚さんは見るからに「プギィッ!」と脅えた。
ダメだ、リーレンさん、リーレンさんは可愛いモノ大好き、そしてこの豚さんは私の目から見ても可愛い、リーレンさんには殺せないと思う、予想通りに彼女は豚さんの目前で止まってしまう。
凄い葛藤している、「プギィ、プギィッ!」と鳴く豚さんも必死だ、ダメだやはりリーレンさんに豚さんは殺せない、はぁ、しょうがないと私はリーレンさんと豚さんの間に割って入った。
「な、何を?」「プギィ?」ふっ、分かったどうやら私達には君を狩る事が出来ない様だ豚さんよ、諦めよう、代わりに君にも今後は人を襲う事は諦めて貰うぞ?
そうであれば君の今後は私が面倒を見よう、この魔物を倒すべからずと看板作って日に三度食事を運ぶだけだ、ちょっと【強欲】様の代償が発動するかもだが何とかなる、何とかなると笑って見る。
伝わったのか豚さんも「プギィッ、プギィッ」と嬉しそうだ、取り敢えず何とかなったか?と思う、しかし大事な【LV】UPの機会を逃してしまったどうしよう?と思う。
其処で音が響いた。
ピコーン
『【LV】が―――』
え?何、今ので倒した扱いで【LV】上げてくれるの?良かった凄い助かると思う、これで【LV70】を諦めずに済むと、でもそこで凄い音が響いた、私達が入って来た部屋の広間の扉からだった。
「おおっ?!って、お前等【突撃猪】程度に何時まで時間を掛けるんだよっ!俺達は今日こそ此処で門番を倒してF級からE級に…って【突撃猪】じゃなくて【踏付け豚】?!」
ああ、何で次の順番のパーティーが入って来れてるの?門番を倒すか全滅させられないと開かない筈の不壊の扉じゃなかったっけ?【迷宮】の扉って?そう考えていたらさっきの言葉の続きが響く。
『―――上がりませんでした』
私はズッコケた、セアラも滑った、既に10階層で門番を討伐済みなリーレンさんには今の『【LV】が上がりませんでした』が聞こえなかったのか首を傾げている。
上がらないのかよ!何なんだよ一体?!と思っていると【踏付け豚】が大喜びで次に入って来る予定だった冒険者に襲い掛かっていた。
流石はF級、中位でも上位の魔物、まだF級で【試練】も受けてない冒険者より強い、吹っ飛ばして名前通りに踏付けている、うん、分かり合えたと思ったのは私の錯覚だったようだ、尻尾が刃に変わった。
ピコーン
『【LV】が1上がりました』
豚さんを倒した、今度こそ【LV】は上がった、でも何だろう?虚しい。
セアラは傷付いた冒険者さんを癒してリーレンさんは踏みつけられて地面に埋まった冒険者さんを助けている。
折角、分かり合えたと思ったのにそれは一瞬の勘違いだった、終わってみれば何時も通りな悲しい結末だ、兎も角この豚さんは味わって食べることを誓い私とセアラとリーレンさんは先へと進んだ。
狐猫の小話
【迷宮】は基本的に天井、壁と床が淡く光っているので灯りは必要ないです。
30階層で広さが聖都テレスターレ並になります。
大体40階層までは一般冒険者の目があります。




