第087話 夜の結末と迷宮探索準備?
「ミィミィミィミィミィミィミィミィ」(大変申し訳ございませんでした)
セアラに睨まれながら回復したオッちゃん聖王様に狐猫座する。
「い、いや、此方もまた迂闊に『マタビーの木の枝』を与えてしまったからな、お互いさまとしよう」
おお、良い人だオッちゃん聖王様よと感謝の念を送る。
「その呼び方はどうにかならんか?」
ならんな、もうこの呼び方で固定されてしまった、オッちゃん聖王様はずっとオッちゃん聖王様だ。
「そうか…」
何か呼ばれ方の方にショック受けてるな、お兄ちゃん聖王様とかが良かったんだろうか?でもこの外見でそれは無いだろ、オッちゃん聖王様はオッちゃん聖王様だ。
「ハクア?」
掛けられた言葉に背筋がビシッと伸びる、はい、余計な事は考えていません!キチンと反省しています!と佇まいを正す。
後ろで見ているフォル王子とレイ王子は「「うわぁ」」って顔をしている、そうだ、セアラを怒らせると恐いのだ、心に刻んでおくと良い。
そして黙っているフィー王女様、恐がらせちゃったかな?と思っていたらキラキラした瞳で私を見ながら言った。
「あの強いお父様を倒してしまうなんてハクアは凄いですね!ますます好きになりました!」
あっれぇっー?!大人しいと物静かって聞いてた性格は何処に行ったんだろう?
何だかセアラのお転婆モードみたいな感じがする。
「ハクア?」
はいっ!ごめんなさい、何も考えてませんっ!
私はガクブルとその冷たい声に震えた。
しかし、『マタビーの木の枝』は良かった、大人たちが二日酔いとかに苦しみながらも酒を飲む理由が分かった気がする。
あの感覚は是非ともまた味わいたい、セアラに二度と触れない様にと言われてしまったが…無理だな、何とか入手の手段を考えよう等と思っていると三度「ハクア?」とセアラの声が響いた。
はいっ!約束を破る方法など考えていませんっ!と私はまた脅えた。
30分後位に聖王一家のお迎えが来た、流石は王族の馬車、超高級品の様だ。
「陛下、またですか…」
「が、がははははっ…」
おおう、ハインツさんがお怒りだ、普段は滅多に怒らないだろう人が怒ると迫力が違う。
オッちゃん聖王様の笑いも凄く乾いている、よっぽど怖いんだろう。
私も背後の冷気がコワイ、セアラちゃん、ハクアは反省してますからそろそろ怒りを鎮めましょう。
エリー王妃様の「さぁ、帰りましょう」という言葉でフィー王女様、フォル王子様、レイ王子様は馬車に乗っていく。
オッちゃん聖王様だけがハインツさんに襟首掴まれてズルズルと引き摺られていく。
聖王様の威厳ってもんはどうした?オッちゃん聖王様よ。
「では楽しい夜でした。また会いましょうね。セアラ、ハクアちゃん」
「次はお城でお泊りです。楽しみにしていますね」
「…バイバイ」
「またな、もう一人で突っ込むような危ない事はするなよ?セアラ」
「はい、ありがとうございました。エリー様、フィー、レイ、気、気を付けます、フォル、それではまた次の機会に」
「ミィミー、ミィー」(またねー、皆ー)
四人を乗せて馬車は出発して行った、王族でもお馬さんは普通だな、シルバーとズィルバーのがかっこかわいいぞ。
「あ、アレ?余は?」
一人、馬車に乗せて貰えずハインツさんに引き摺られて行くだけのオッちゃん聖王様が尋ねる。
「陛下はこのまま私の言葉をその身に刻みながら引き摺って城まで帰ります」
うわぁ、半端なくお怒りだよハインツさん、オッちゃん聖王様はご愁傷様だ、私も人の事を言えんけれど…。
「ハインツッ!ちょっと待てっ!それは流石にやり過ぎっ!俺――いや、余の威厳と言うモノがっ!」
「元から大してないので大丈夫ですっ!明日は一日椅子に縛り付けて仕事ですっ!」
半端ない処じゃなかった、ものすんごいお怒りだ、やはり日頃の行いは大事だね、オッちゃん聖王様よ。
「ハインツッ!頼むっ!頼むからそれは勘弁っ!」
「それでは聖女セアラ、御前を失礼します。私は“コレ”を説教しながら帰ります」
「ちょ、ハインツッ!“コレ”呼ばわりは流石に酷いぞっ!泣くぞっ!余はっ!泣いちゃうぞっ!」
泣くな、いい歳したおっさんが、しかしこんなのが国のトップって大丈夫か?テレスターレ聖国と思うが周りの平民の皆さんは「聖王様またかー」「何週間ぶりだっけ?」「いや、五日ぶり位だろ」と話してる。
大丈夫かこの国っ!と心配になる、そんな頻繁に起こってるのか?このオッちゃん聖王様の恥辱プレイは?
「はい、頑張って下さいっ!私もこれからまだハクアをお説教ですっ!」
「ミギャァァァァッ?!ミィミィミィ?!」(えええええっ?!私もまだぁっ?!)
私もまだまだお許しが出ないらしい、オカシイ?何故、セアラの身を心配してコッソリ着いて来た私がお説教を受ける羽目になったのだろう?
「ハインツッ!ハインツッ!余がっ!余が悪かったからっ!これ以上はっ!」「はい、はい、良いですか?陛下はそもそも――」
「ミィミィ!ミィミィ!ミミィ?、ミィミィミィミミ?ミィミィミィミミィィ!」(セアラッ!セアラッ!私はっ?私はもう良いよね?十分に反省したよっ!)「はい、はい、良いですか?ハクアはですね――」
私とオッちゃん聖王様の悲鳴とセアラとハインツさんのお説教が夜の聖都テレスターレに響いて消えて行った。
因みに私達が過ごしたお店にもかなり被害を与えてしまった、『マタビーの木の枝』で酔っ払った私が全力で店内を駆け巡った性で内装が殆んど壊滅状態らしい。
復旧に数日はお休みだそうだ、お詫びに私が店で出した危険猛牛、粉砕鮪、大鶏等々の食材は差し上げた、超高級食材や高級食材の山だ、売れば十分に改装は可能だろう。
お陰で【強欲】様の代償が発動、結構ステータスが下がってしまった、回復には一週間が必要だ。
【迷宮】行って見たかったけど回復までは我慢する事にする。
セアラとリーレンさんも行きたいらしい、どうにか時間を作って三人で潜ろうと計画を立てる、まぁ、最初の一週間はどう考えても無理だけどね。
何時かの地獄の再来だ、まったく何で聖女って全部で7人なんだろう?もっと増やせよと言う仕事量だ、必死で手伝った、頑張った、王城にも何度も行った。
オッちゃん聖王様はハインツさんに迷子紐みたいなのを付けられて仕事していた、絶対に抜け出させないという意地が見える。
私も此処までにはならないように気を付けようと思った、自由が無くなるのは絶対にイヤだ。
その時に聞かされたが例のお店は私がお詫びに渡した食材を全部売らずに残して調理して販売しているそうだ。
前までは名前の無い隠れた名店だったのがお陰で『マタビーの小枝』という店名迄着いた大人気店になってるらしい。
私のやらかしで店が大繁盛か、良かったのか悪かったのか微妙だ、お陰で行き辛くなったとオッちゃん聖王様がボヤいていた。
そこでふと気付いた、何でそんな話をオッちゃん聖王様が知ってる?と、言うか、行き辛くって何だと、オッちゃん聖王様はしまったと言う顔、ハインツさんも勿論、話を聞いてた、次に城に行ったら迷子紐が三本に増えていた、絶対の絶対にああはなるまいと誓った。
そして十日目が過ぎた所で私とセアラ、リーレンさんは【迷宮】へ潜る為の準備を始めた。
十一日目、十二日目、十三日目を【迷宮】で過ごして十四日目は遅くなったが約束だった王城へのお泊り会、そして翌日の十五日目が事が起こると予想されている円卓会議の日だ。
その日に何が起こるのか、私達はまだ知らない。
「終わりましたー」
「ミィミィミァー」(疲れたぁー)
「ご苦労様でした」
本当にこの十日間は疲れた、過去最高の詰め込みな聖女のお仕事だった。
ソレも、コレも、コレから四日間の自由を得る為である、修行の【迷宮】探索を三日間、そして約束のお城へのお泊り一日である。
どちらも非常に楽しみだ、特に【迷宮】探索は久々の【LV】上げだ、何とか70を目指したい所だ。
その為に必要なのがまずは――【迷宮】の管理を行っている冒険者ギルドへの登録だ。
本来は冒険者になるには13歳にならなければならない、だがそれを超えて登録が出来るのが王族と聖女、王族は聖王の許可があれば、聖女は自己判断で登録が可能だ。
去年はまだ激弱だったし、聖女の仕事に付いて行くのに必死で全然、【迷宮】に潜ろう等とは考えなかっただろうけど今のセアラは違う破格に強くなってる。
もう止める者は無い、私達は【迷宮】に潜る為に聖都テレスターレのテレスターレ冒険者ギルド支部の扉を潜った。
冒険者ギルドの中は人でごった返していた、きっと年中がこんな感じなんだろうと思った、足元は危ないので私はセアラに抱かれて移動だ。
ギルドの職員らしい制服の人以外は殆んどの人が武装している、剣だったり、槍だったり、斧だったり、手甲だったりと色々だ。
テレスターレ聖国で最大らしい冒険者ギルドのカウンターは十一つ、その一つに並ぶ、此方を見て何かを言ってる人が多い、聖女の服を着ているとはいえ、知らない人には何でこんなちっさい子が?と思うよね、しょうがない。
ザワザワと騒がしい中で順番を待つ、依頼受付のカウンターはその内の三つ私達が並ぶ此処は新規冒険者登録と依頼受注、依頼結果報告のカウンターだ。
目的は勿論、セアラと私の冒険者登録と【迷宮】探索の許可を得る事だ、リーレンさんは既に冒険者登録済みでC級冒険者の資格を持っているから大丈夫だ。
「いらっしゃいませ、ご用件はなんでしょうか?」
にこやかな笑みで応対する受付さん、流石と言うか凄い美人さんだ、容姿も雇用条件に入ってるんだろうなーと思う。
まぁ、リーレンさんの方が美人だけどね、セアラも将来有望だ、私はどうだろう?うーん、魔物の美醜はよく分からんし母狐猫と兄弟姉妹以外の同族に会った事が無いからなー、綺麗だと自信を持って置こう、そうしよう。
「はい、私とこの子の冒険者登録と【迷宮】探索の許可証をお願いします。聖女の証である『アストラーデの聖杖』は此処、この子の特別許可状は此方に」
そう言って私を受付テーブルの上に置いて首から下げた小容量の【魔導袋】から『アストラーデの聖杖』と私の特別許可状をセアラは取り出す。
「か、確認しますの少々、お待ちを」
言い残して特別許可状を手に受付嬢さんは走って行く、上司に確認かな?テーブルの上に座って待つこと数分、直ぐに帰って来た。
「確認が取れました。問題なくご両名の冒険者登録の許可が出ます。夫々、此方の書類にご記入下さい」
一枚の紙を手渡される「代筆は必要ですか?」と言われたが問題ないので首を振る、何々?先ずは名前ハクア…と、生まれ故郷アドラスティア大樹海、生年月日?多分、去年の三月頃としか分からんなー、年齢は零歳、現主要活動地アストラリオンだな、現在の【LV】は偽装してるセアラと同じ43と、ステータス値も同じ、所有【技能】と【恩恵】も同じく、得意武器?刀と書いておこう。
その後も色々と書かされた、趣味と特技?釣りと料理かな?何か履歴書でも書いてる気分だなー、何でこんなの書かされてんだろ?という項目まで書く。
書き終わったら注意書き、以後冒険者として活動するにあたって、特例以外はC級に上がれるのは15歳以上、C級からは特別任務への参加義務が発生、余程の事情が無い限り必ず参加するようにと、倒した魔物の素材の販売は評価に繋がるので可能な限りギルドでか、ギルドを通さない依頼の受理は基本、違反行為だけど事後に依頼として申請、終了が報告されれば違反にはならずね。
コレも結構、色々と書かれている、罰則は罰金、ランクの降格、最悪で除名や犯罪奴隷か、まぁ、ちゃんとしてれば問題の無い事だ、大丈夫、大丈夫と読み終わる。
「では最後にご両名の血を此方にお願いします」
言われるがままにセアラは指に私は肉球に針を刺して血を垂らす。
血と書いた紙を持って直ぐに何か作業を始める、あっと言う間に終わった、私とセアラの前に何か銅製のカードと言うか認識票みたいな物が置かれる。
「此方がご両名のギルドカードになります。ご確認ください」
うん、やっぱりカードと言うより認識票だね、コレは首から下げるのかな?書かれているのは名前、性別、階級、出身国、所属の五つみたいだね。
私の場合は名前ハクア、性別女、階級F級、出身国アトランティカ大国、所属テレスターレ聖国聖都テレスターレギルドになってる。
セアラも大体、同じだろう、揃って首にギルドカードをぶら下げる、おっ?!これも【魔導具】見たいだ、首にジャストフィットした。
因みにコレでギルドカードの持ち主の生死がギルド側には分かる様になるらしい、それが【迷宮】探索に登録が必須な理由だ。
死亡が確認された場合は遺品の回収任務が出される、死ぬつもりも死なせるつもりも欠片としてないけどね。
「そしてコレが【迷宮】探索の許可証になります。お持ちください」
今度のは紙だ、何日、何人で何階層迄潜る予定かを書いて【迷宮】入り口で預けなければいけないらしい。
予定では三日、二人と一匹で目指すのは60階層だ、本来ならば一週間か十日掛かる道をかなりの強行軍で突破予定だ、かなりの困難が予想されるけど地図も準備も終わっている、多分、何とか行けると思う。
初日に30階層まで降りて二日目に20階層、三日目に10階層を予定だ、【迷宮】は円錐形で下に行くほど広くなっているらしい。
各階層毎に特色かあるらしくまず最初の1階層から10階層までが愚者の階層、此処は練習【迷宮】みたいな物だ、死ぬような者はまず居ない。
11階層から20階層までは岩の階層、【泥人形】から【岩人形】と言った【人形】が多くいる、21階層から30階層は森の階層、植物系の魔物や虫系の魔物が多く潜む。
31階層から40階層までは闇の階層、光が全くない暗闇の階層で【影人】や【戦闘影】と言った影や闇の魔物が立ち塞がる。
41階層から50階層は瀑布の階層、巨大な滝が流れる水の階層、【魚人】や【人魚】など水系の魔物がそこらじゅうを泳いでいる。
51階層から60階層は闘の階層、高い魔導防御力を誇る物理攻撃主体の魔物が多くいる階層、今回は行かないけど61階層から70階層が最後の灼熱の階層、炎が溢れる猛烈な暑さの階層で耐熱装備が無いととてもいる事すら出来ないそうだ。
そんな聖都テレスターレの【迷宮】、舐めては掛からないけど十分に安全は考えていく、でもちょっとだけワクワクしながら私は翌日を楽しみに待った。
狐猫の小話
テレスターレ聖国最強のハインツさんはファイラル十一世に振り回されるかなりの苦労人です。
でも長年の付き合いがあるので放っては置けない、今日もお世話を頑張ります。
雰囲気は完全に飼い主と飼い犬(聖王)な二人です。




