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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第086話 聖王一家と聖都の酒場?


「ハクアは初めてだからな紹介しよう。妻のエリー、長女のフィー、長男フォル、次男レイだ」

 ちょっと待ていっ!知っとるぞっ!テレスターレ・フォン・エリアーナ王妃にテレスターレ・フォン・フィーデル王女、テレスターレ・フォン・フォルテ五世第一王子にテレスターレ・フォン・レイザン八世第二王子だろっ!

 何で聖王一家がこんな平民の酒場に大集合してるんだっ!護衛の近衛騎士はどうなっているんだと思う。


「お忍びだ、気にするな」

 気にするわっ!第一、まったく忍べてない、今も入って来たお客さんの平民に「あれ?聖王様、今日は家族で来てるんですか?」「バカッ!此処に来られた時は聖王様じゃなくてフォンだよ」とか言われてる、バレバレである。

 ハインツさんとか苦労してそうだなーと思う、このオッちゃん聖王様って自由人過ぎる。


「フフフ、貴方がハクアちゃんね。主人が酷い事をしたと聞いたわ、ごめんなさいね?」

「ミィミィミミィ。ミィミィミミミィミィミィミィミィ。ミィミィミミィミミ、ミィミィミミィミミィミミィミィ」(そうですね。あんな羞恥は生まれて初めてでした。王妃様も大変ですね、こんなオッちゃん聖王様が旦那で)

「そんな事は無いわよ?毎日が刺激的で楽しいわ」


 あれ?【技能】の【念話】を持ってないのに私と会話が出来てる?何故?と思ったら「勘よ」と言われた。

 凄い【技能】や【恩恵ギフト】を超えている、因みに謁見の間じゃないから良いだろうと聖王様一家は【鑑定】した。

 オッちゃん聖王様は【LV】60で私に迫る高いステータスと豊富な【技能】を持ってた、【遠話】も所有してる、会話が可能だ、この強さなら一人でフラフラと出歩いても平気だろう。


 王妃様は32歳で【LV40】、王女様は14歳【LV38】、第一王子は12歳【LV34】、第二王子は9歳で【LV4】だったまだ【LV】上げを始めたばっかりって所かな?

 王妃様と話したら次は王女様と第二王子が寄って来た、王女様は「可愛い」と私を抱きしめ、第二王子は恐る恐ると言った感じで私を撫でる、うん、恐がらずともオッちゃん聖王様みたいな真似をしない限りは問題ないと断言しておく。

 仮にやったとしても一度はプニ打ちだ、殺さない、怪我させない、幸福一杯の夢の3K技だ、大丈夫。


「セアラ、私も一日、この子とハクアと過ごさせて下さい。一緒に寝たりしたいです」

「え、あ、は、はい、フィーデル様……い、いえ、フィー、ハクアは私の友人なので本人が良いと言えば問題無いです」

「そうなのですか?では、ハクア、美味しいお菓子を準備するので是非、泊まりに来てください」


 お、おう、何だか凄く物静かで大人しいと聞いてたが私を前に大興奮だな、フィー王女様、只、残念ながら私は自分で獲るか狩った物しか喰わない、お菓子には釣られない。

 だからお菓子は私が準備しよう、お泊りは通訳にセアラも一緒という条件で了承だ、これでどうだろうとセアラに言って見る。

 大喜びで了承された、其処迄喜ばれるとこちらも嬉しい、腕によりをかけてお菓子を準備しよう、『空間収納ストレージ』に仕舞ってある大鶏ゴーンコッコのデッカイ玉子を使ってプリンを作ろう、そう決めた。


 レイ王子は相変わらず怖々と言った感じで私を撫でている、そんなに恐いかなーと思うが微妙な所の様だ、可愛いと思うが魔物だから恐いと、今の所は特に目立つ部分も無い普通の子と言う評価を受けているらしいからこんなモノなのかも知れない。

 一方でセアラの前に立った同い年の少年、第一王子フォルテ五世――フォル王子は私には目もくれずセアラしか見ていない、何となく見下すような瞳だ、ちょっと苛つくな、話に聞いた通りの俺様系で我が強いって感じなのかな?

 「随分と強くなったようだな」セアラを前にそう言うフォル王子、そうだぞ、セアラは強くなった【LV】は既にお前より上だと言ってやるが【念話】が無いから伝わらない。


「は、はい、ハクアのお陰ですが私も頑張りました。昨年とは違います」

「そうか、だが俺も努力した。お前には負けない、いいか、忘れるなよ、お前みたいな弱い奴を護る為に俺は誰よりも強くなるんだからな!お前は俺よりも強くならなくていい、護ってやるんだからな!絶対だぞ!」

「わ、分かりました。せめてフォルを支えられるようになるまでは頑張ります」


 うん?うんん??何か違くない?フォル王子は「分かってるなら良い」と横を向くけど僅かに頬が赤い、コレは何というか…確かに俺様系で我が強いんだろうけどセアラには違うんじゃない?

「ミィィミィ、ミィミィミミィミミ」(ちょっと、オッちゃん聖王様)

 と念を送って見る、ガー爺ちゃんと同じならコレで伝わる筈だ、「ん?何だ?ハクアか?しかしオッちゃん聖王様とは何だもっとましな呼び方は無いのか?」よし伝わった、と言うか、呼び方なんぞどうでも良い、様を付けてるだけ有り難いと思って欲しい。


「ミィミミィミミィ、ミィミ?ミミ?ミィミィミミィミミィ…」(そんな事より、良いの?アレ?何と言うかどう見ても…)

 私が指し示す先では今はセアラとフォル王子、レイ王子、フィー王女が四人で仲良くテーブルを囲んで話している、最初は硬かったセアラも今は砕けて皆で笑い合って会話しているが偶にフォル王子に怒られる「そんな危ない事をしたのか」「無茶をするな」「お前は護られてれば良い」等々だ。

 その度にセアラは「は、はい、ごめんなさい」「気を付けます」「では次はフォルに護って貰いますね」と言う、フォル王子は心配で青くなったり興奮して赤くなったり、別の意味で赤くなったり色々だ。


「ああ、フォルがセアラに惚れてる事か」

「ミィミミミィミ」(やっぱりかい)

 男のツンデレってないわーと思う、しかも12歳の俺様王子がとか、何というか非常に困る、色々とダメだ、私的にそもそもツンは要らん、デレだけで良い、男でも女でもだ、素直になれないじゃなくて素直になれと、現実でやると絶対にまず間違いなく恋が成就しない、私はそう思う、現にセアラはフォル王子をそういう対象としてまったく意識して居ない。


「婚約させちまっても良いんだがセアラがなー、もうちょっとフォルに関心を抱いてくれりゃさせるんだが…」

 マジかい、セアラに大聖女の上に王妃なんてやらせたら間違いなくパンクするぞ、流石に無茶振りが過ぎる。

「ミィミミィミミィミィミィミィミミミィィミミィミィミィミミミィミミィミ」(言っとくけどセアラの負担になる様な結婚は私が絶対にさせないからね)


「は?!いや…だが――」

「ミィミィミミミィミ!」(させないからね!)

 断固として言ってやるとオッちゃん聖王様は「むう」と唸った、こっちの本気具合を悟ったらしい、セアラの今の夢は大聖女だ、それを優先して後押しする。


 結婚して幸せになるのもそれはそれで問題ないが本当に本人がそれを望んでいるかが難問だ。

 セアラは今の所、全くそれを考えていないだろう、誰かに恋するって事すら想像してない様に思う。

 まぁ、将来は女の幸せとして結婚して欲しくはあるけど、無理には求めない、セアラの歩み次第だ、心を通わせる相手を見つけて得て貰いたいそれが未来のフォル王子か誰なのかは分からないけど、今の時点で婚約とか王妃とかは無理だキャパオーバー過ぎる、私の目から見ても無茶がある。


「…なら負担にならなきゃ良いんだな」

 む、オッちゃん聖王様は父親としては息子の初恋だろうを実らせてあげたいか、気持ちは分からなくもない、でも負担無しに第一王子の妻とか無理でしょうよ。

「ミィミィミミィミミ?」(どうする気なの?)


「…フォルがどうしてもセアラをと言い出したらシャリス公爵家に出す」

 は?!それって詰り王位の継承権を放棄させるって事?確かにシャリス公爵家はスパイクさんが早くに奥さんへ先立たれてから後妻を迎えなかったから跡取りが居なくてセアラの子供が後を継ぐ予定になってる、そこまでやれば負担は無い処か逆に減る、しかし良いのかフォル王子は?次代の王を諦める程、セアラに惚れちゃってるの?実際、とても優秀だと聞いてるし12歳にしては【LV】も高い方だ。

「ミミミ?ミミィミ?」(良いの?それって?)


「…どちらかと言えば確かにフォルに後を継いでほしいがアイツの人生だ。フォルが納得する生き方をしてくれれば良い」

 うーん、そうなると此方ももう言い返せんなー、其処迄の覚悟があるならばとりあえず及第点を上げようではないか、後は私がビシバシと扱いてやろう。

 そう伝えると「程々にしてやってくれ」と言われた、S級の天災カタストロフな魔物に鍛えて貰えるなどまず有り得ない事だ、其処は泣いて喜べと思う。


「ミィミィミィミィミィミィミィミィミィミ、ミィミミィミィミィミィ?ミィミィミィミィミミィィ?」(でも何でこんな酒場でセアラと王女様、王子様方を会わせてるの?王城内で良かったじゃない?)

「察しろ、あそこは色々と目があるんだよ。此処は親父の頃の料理長がやってる酒場で店員も客も全部が安全な隠れた名店って感じな店だ。居心地が良いんだよ」

 成る程、私は口を付けないが漂って来る料理の香りは間違いなく一級品だ、お客さんや店員さんも皆が良い人ばかりの様だ、セアラも居心地が良さそうだ、楽しそうに話したり勧められた料理に口を付けたりしている。


 確かに城内とか堅苦しい場所ではこんな自然体で王族の相手とかしてられんわなーと思う。

 来るお客の中にはフォル王子の言動から察して「頑張れよ、フォル」と言われて「やかましいっ!」と怒鳴られセアラが「?」と首を傾げたりしているがご愛敬だろう、実際に酒場なのにオッちゃん聖王様は皆の護衛の積もりかお酒を全く飲んでいない。

 エリー王妃様はニコニコとセアラと子供達を見守っている、皆が楽しそうだ、実際に私も撫でられたり抱き上げられたり色々とされてる。


 何だかなー、杞憂だったなー、と今更ながら思う、オッちゃん聖王様がセアラに無茶を言うんじゃないかと思っていれば結果は子供達と会わせたかっただけという結末だ。

 やれやれ、余りにもな事をされたからセアラも何かされるかと心配したが取り越し苦労だったか、何はともあれ良かった、良かったと胸を撫でおろした。

「そうだ、ハクア」


 其処でオッちゃん聖王様が声を掛けて来た、私も「ミミ?ミィミィミィミミミ」(何だ?オッちゃん聖王様よ)と答える。

「だからもうちょっとマシな呼び方を考えろ、謁見の時は悪かったな、詫びにこれをやろう」

 何か木の棒が差し出された、何だコレ?あ、凄く良い匂い、嗅いでるとスーとしてフワフワ―って感じになる、何だか幸せな感覚だ、不思議だ、まぁ、食べ物でないなら貰っても良いかなと頂く。


 おおう、気持ち良い、フワーン、ポワーンって感じ、ホントにこの木の枝は何だ?【鑑定】何々、『マタビーの木の枝』?猫科の魔物を酩酊させる臭いを出す?

 成る程、マタタビみたいなモノか、それにしてもこれ程に心地が良いとは凄い、ガジガジと齧ってしまう、匂いが強くなった、おお、極楽じゃー。

 わっはっはっはっ!こんなモノをくれるとは見直したぞっ!オッちゃん聖王様よっ!コレは私も返礼をせねばなるまいっ!存分に食すが良いと『空間収納ストレージ』から熟成させた危険デンジャラス猛牛ワイルドブルを出してオッちゃん聖王様の上に落とす。


「ぐおぉぉぉぉぉぉぉっ?!な、何だ?!突然、何を出した?ハクア!」

 む?何で潰されてるのだ?オッちゃん聖王様よ、【LV60】の癖にだらしない、たかが1トンと数百キロの牛さんだぞ?持ち上げられなくてどうする?

 気合が足りんのだっ!もっと美味い物を喰って力を付けるが良いと更に粉砕鮪クラッシャートゥナ大鶏ゴーンコッコ等を取り出してオッちゃん聖王様の上に落とす。


「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ?!や、止め、止めろハク――」

 何かがプチィッ!と潰れた気がするが気にしない、店の中は突然に現れた超高級食材と高級食材にちょっとした騒ぎだ、店の厨房の奥で目をキラ―ンと輝かせる白髪のお爺ちゃんが一人。

 お?この食材に興味を示すとはやるな、お爺ちゃん!さぁ、料理するのだっ!この究極、至高な食材をっ!そして皆も飲めや歌えの大騒ぎだっ!今夜は私の奢りだぁぁぁぁぁっ!!!


 そして大宴会になった。


 三時間程が経過して正気に戻りました。

 はい、絶賛セアラにお説教を喰らっています。

 プチィッ!しちゃったオッちゃん聖王様は何とか無事でした、今はエリー王妃がお手当て中です、「あら、あら」と朗らかに笑いながら『治癒魔導』を使っています、セアラもあんな風に大らかになるのだと言って見る。


 ダメでした。

 二度と『マタビーの木の枝』には触れないことを誓わされました。

 セアラはちょっと酷いと思います。

狐猫の小話

オッちゃん聖王様をプチィッしちゃった狐猫です。

普通なら100%極刑です、でもまぁ、何とかお説教で許されます。

本来なら絶対に有り得ないですけどね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 仕方ないっす。イキナリ飲ませる法も悪いですよね。
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