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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第084話 相談と密談、そして聖都到着?


 聖都テレスターレに向かって6日目、明日には到着予定だ。

 今夜もリフレイアさん、リーレンさん、リリさん、ララさん、パティちゃんに私を加えた訓練が行われる。

 そして皆の練習試合が終わった最後の一騎打ち、今日が最後の試合だ、今日こそはと気合を入れる。


 ギャラリーの騎士も多い綿猫ファトラの幼体が剣聖リフレイア相手に頑張ってると噂が噂を呼んだ感じだ。

「ミィィミミミ!」(今日こそは!)

 走る私、一本の尻尾は既に刃だ、背中に背負っていた【竜牙刀】は其処にない、代わりに首から下げた【魔導袋】に念じる、【竜牙刀】と刀が飛び出して柄を咥えて引き抜き鞘を【魔導袋】に戻す。


 いや、背中に装備してるのもカッコ良かったのだが抜くのが大変だった、私はちっこいからね。

 其処で【魔導袋】に入れて必要時に取り出して装備、収納という形式に変えた。

 リフレイアさんはちょっと残念そうだった、折角、カッコ良く装備させてくれたのにごめんなさいだ。


 でも昨日までの私とは少し違う、頭クラクラの素振りに耐えて遂に【刀術】と【刀技】を獲得したのだ。

 早速【LV】を上げようかと思ったが【SP】がカツカツだったのを思い出して諦めた。

 コツコツ上げる、【LV1】でどれ程の差が出来るか分からないが期待だ。


 因みに賭け事まで行われている。

 倒すか倒されるかでなく私がリフレイアさんに一撃を入れられるか如何かだ、倍率はリフレイアさん1.1倍、私が122倍だ、己と思う。

 今日こそはと一本尻尾と加えた【竜牙刀】を振るう。


 キンキンと二刀と一剣が打ち合う、ここ数日の特訓と【刀術】【刀技】で確実に腕は上がってると思う。

 今の所はリフレイアさんからの指摘も無い。

 まだまだと速度を上げる、リフレイアさんは付いてくる、やっぱり半端ない、勝てる気は一切しない、でも一撃位は撃ち込むと気合を入れる。


「足元が御留守です」

 今日初めての指摘が入る、次の瞬間には足払いが決まって私は体勢を崩し同時に放たれた一撃で吹っ飛んだ。

 尻尾の刃を地面に突き刺して衝撃を殺す、くぅ、まだまだぁと吹っ飛んだ勢いを反動にさっきを上回る速度で肉薄する。


 再び打ち合う、「どうやら【刀術】【刀技】を獲得したようですね」と読まれる。

 コレが経験の差かと実感する。

 「少し勢いを上げます」とリフレイアさんの剣速が上がる、防戦一方になる。


 両手に尻尾、咥えた刀で必死に耐える。

 でもじり貧だ、このままじゃまた負ける。

 一か八かかだ、作戦実行、尻尾を拳にして地面を殴り飛ばして粉塵を巻き上げる。


 土煙に巻かれるのを嫌ってか下がるリフレイアさん、その背後に生まれる気配、私の姿、剣を振るうリフレイアさんでも当たった瞬間にボフンと煙を上げて一本の毛に変わる。

 流石に驚くリフレイアさん続けて襲い掛かる【隠身】を解いた9体の私、【夢幻】と【魂魄憑依】で産み出した分身だ、耐久力はゼロだが他は私と全く同じステータスた。

 次々と討たれるが私はその隙に刀を構える、今、この時しかないと1体の分身の影に隠れて走る、でもまだ絶対とは言えないから更に保険をかける。


 分身が全て消される、私が隠れていた一体もだ、また一対一、自棄になった様に突っ込む私、「無謀」とリフレイアさんの剣が振るわれる。

 私を打ったはずの剣が空を切る、「?!」驚くリフレイアさん『光魔導LV2』の『光幻ミラージュ』だ、上手く行くか不安だったが掛かってくれた。

 コレが最後のチャンスと僅かなリフレイアさんの隙に突撃、リフレイアさんは動揺を抑えたように剣を翻らせる、此処っ!と私は咥えた【竜牙刀】と尻尾刃を振り下ろす。


 ザンッ!とお互いに確かな浅い切り傷が刻まれた。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「俺の今月分の給料がぁぁぁっ!!!」

「よおっし!よくやったちっこいの!」


 阿鼻叫喚の声が聞こえる、賭け事等するからこうなるのだ。

 と、ゆーか、ガレスさんの嬉しそうな声が聞こえたあんたは私に賭けてたんかい、私がリフレイアさんに一撃を入れれるなんて奇跡も良い所だ。

 要らんところで勝負師だなーと思う。 


『本体ー、仕事したぞー、褒美を寄越せー』

『何か美味い物を食わせろー』

『―殺せ―壊せ―滅せよ―粉砕せよ―』

『本体、三号を余り表に出すな、コイツはヤバイんだから…』

『世界にはあれほどの強者が居るんだな』

『対話を求めたのに斬られた。あの女性に平和を求める心は無いのか?』

『チクショー!負けたー!次は勝つ!』

『コタツが恋しいだニャー』

『街に着くまで我慢してろ駄狐猫』

『本体、特別手当と傷害手当を希望するー』


 相変わらず騒がしいな【魂魄憑依】共め。

 しょうがないからご褒美だ、和風なパリッとお堅いお煎餅だ、緑茶も付けよう。

『『『『『『『『『わーい』』』』』』』』』

『わーいだニャー』


『おめでとうございます。マスター』

 うん、シルさんの考えてくれた作戦のお陰だ、ご褒美に酸っぱいけどスッキリさわやかレモンキャンディーだ。

『ありがとうございます』


 内輪で戦果をお祝いしてるとリフレイアさんが寄って来た。

 あ、頬に傷を付けちゃった、癒そう、『治癒ヒール』と直ぐに傷を消す。

「ありがとうございます。中々、見事でした。遂、手加減を誤った、傷は痛くないですか?」


 問題ないと自分の傷も『治癒ヒール』で治す、コレで解決だ。

 さて、何はともあれあのリフレイアさんから相打ちとは言え一本取ったのだ自慢しに行こうとセアラ達の元に向かった。

 リフレイアさんが呟いた「これで幼体、成体、進化前とは恐ろしい」という言葉は小さすぎて私の耳には届かなかった。


「ミィミミー」(ただいまー)

 セアラのちっぱいにダイビングだ、今日は誰にも止められずに受け止められる。

「今日は随分とご機嫌ですね。何か良い事がありましたか?ハクア」


 ふふん、それはリフレイアさんが言ってくれるだろうと私は黙る。

「お帰りなさい、今日も怪我人は居ない様ね」

「いえ、既に癒されましたが私とハクアが僅かですが傷を負いました。今日は以上です」


「「「え?!」」」

 とセリアーナお婆ちゃん大聖女様以外の3人が驚きの声を上げる。

「リフに傷を付ける何てとんでもないわね」


 シャルさん、リフレイアさんをリフと呼ぶのか、初めて知ったよ。

「聖女セアラは凄い子を連れてるね。本当に驚きだよ」

 プリアさんの言葉にどうだと胸を張る、まぁ、ちっこいから威厳も威圧もあったもんじゃないけれどね。


「ハクアは本当にドンドン凄くなりますね。私はまたハクアが恐くなりそうです」

 それは止めてと心底願う、セアラにまた避けられたり恐がられるようになると凄い傷付く。

「本当にリフレイアさんとハクアちゃんが試合を始めると訳が分かりません。物凄い速度で斬り合ったり、空を走ったり、【魔導】を斬ったり、分身したり滅茶苦茶で…」


 そんなに物凄いかなーと思うがリーレンさん、リリさん、ララさんも頷いてる、そうなんだと納得する。

 でもリフレイアさんの方がずっと凄いとは分かって欲しいなと思う。

 私などまだまだ全然なのだと、理解して欲しいモノだ、リフレイアさんはまったく動じてないしね。


「それはそうと明日には聖都テレスターレに着くのだけれどその前に言っておきたい事が在ると言っていたわね」

 横に座るリフレイアさんを見ながらシャルさんが言う。

 うん?リフレイアさんが皆に言いたい事?何だろう?


「今回の聖都テレスターレへの神事と行事、円卓会議ですが私の勘が何か良く無い事が起こると告げている。皆様にも十分に注意を促したい」

 あー、そういえば言ってたね、私と練習試合を始める時にイヤな予感がすると、確かに私は勘では無くハミルトンの行動と言動から何かを起こすと確信してるけど喋ってしまって良いモノだろうか?

「剣聖リフレイアの勘は無視できないね」


「はい、護衛騎士リフレイアの直感は良く当たると聞きます。注意するべきです」

「私も聞き及んでいます。確かに何かが起こるのかも知れませんね」

 おお、皆がリフレイアさんの勘を信じてるっぽい、ならば私も言ってしまおう、通訳はセアラとリーレンさんだ。


「ミミィミミミミィミミミィミミィミミミミィミミィミミミィ――ミィミミィミィミミィミミミミ、ミィミミィミミミィッミィミミミィ」(これは私が手に入れた情報からの考察だけどガマガエル――ロズベルト神殿長とハミルトン、ダスド帝国が係わって来ると思うわ)

「え?神殿長とハミルトン、ダスド帝国ですか?」

 セアラが声を上げて皆が此方を向く、そして私が言った事をそのままリーレンさんが話す。


「ハミルトン、確かロズベルト神殿長の元に居たと言う【鉄機兵】等を作った者の名前だった筈ね」

 シャルさんは流石、覚えていた様だ、話が速くて助かる、皆に情報が共有される。

「ミィミミミィミ、ミィミミミィミィィミミミ、ミミィミミィミィミミミィミミミィィミミミィミミィィミミッミィミミミィミィィミィミ。『ミィミミ』ミ、ミッィミミミィミミミィミミミィィミィミィミィミィミミミィミミィミミミィミミミィ」(そいつは今、ダスド帝国に居るっぽいの、そしてセアラの暗殺依頼者の事を明かそうとした暗殺者を操る虫の魔物で殺して言ってた。『まだ早い』と、その後に依頼主のロズベルト神殿長が発覚してから時間を考えると恐らくは円卓会議の頃に何かやってきそうな気がする)


 私の言葉を聞いて皆が思案顔だ、セリアーナお婆ちゃん大聖女様も笑みを消して考え込んでいる、国の中枢が集まる会議で何かが起こる可能性だもんな、そりゃ深刻だよなと思う。


「何か証拠の様な物は無いのですか?」

「ミィミミィミミィ、ミィミミ。ミィミミミミィミミィ【ミィミ】ミィミミィィミミィミミィミミィミィミィミィミィミミミ…ミィミィ」(ごめんなさい、何もない。虫の魔物を操っていた【魔導具】でも取っておけば証拠に出来たかもだけど放置しちゃって…失敗だった)

 本当に失敗だ、最初の【殺戮蟷螂キラーマンティス】の時も2度目の【殺戮蜂デッドリーホーネット】の時も、ダスド帝国で大量の【殺戮蜂デッドリーホーネット】を【風切燕スライサースワロー】に宿らせた【魂魄憑依】に駆除させた時も取り出して保管して置けば良かったと後悔する。

 少なくともそうして置けばガマガエル神殿長→ハミルトン→ダスド帝国の繋がりは証明が出来ていた筈だからだ。


「無い物はしょうがないわね。そうなると強制執行前にロズベルト神殿長を引っ張るのは無理そうね。各自で伝えられる者には情報を伝えて注意するように言いましょう」

 シャルさんがそう言って場をしめた、皆が頷く、兎も角、コレで分かって居る事は共有出来た、後は何とか対策をするだけだ、でもその前にもう一つだけセアラに伝える事が在る。

「ミィミ、ミミィミミミィミミィミィ『ミィミミミィミミィミミィミ』ミィミィミミ。ミィミミィミィミ、ミィミミミミミィミミミィ。ミミィミミィィミ、ミィミィィミィ」(セアラ、ハミルトンはセアラに『今はまだ死んで貰っては困る』と言っていた。だからきっと今回、着たらセアラを殺しに来る。だけど安心してね、絶対に護るから)


「はい、信じてます、ハクア、リーレンも大聖女様も皆も居ます。必ず皆で無事に帰りましょう」

 リーレンさんも頷く、私達は全員の無事を誓い合った。







『それでは証拠は何もないという事だな?』

「はい、状況証拠だけで確定させる物はなにも」

 私は手渡され隠し持っている【通信機】で通話相手に今夜の情報を話していた。


『それならば身を隠す必要も無いか、このまま時が過ぎるのを待てばよいな』

「はい、円卓会議迄に捕まえられたり強制執行が降される可能性は低いかと」

 私はこの男が何をするつもりかある程度は知らされている、全てでは無いが知っている、それを黙っている、酷い裏切り者だ。


『それにしても危ない所だったな、まさかあの綿猫ファトラがそこまで知って居ようとは、外見と内面は別という事か、お前と同じだな』

「私はっ!」

 ギリッと歯を噛む、夫と子供達が人質に取られて居なければこんな事をするモノかと言いたいがそれを言ってもどうにもならない、私はこの男に服従させられているのだ。


『だが、リフレイアの勘と綿猫ファトラの情報か、少し苦しくなるかもだが大勢は動かん。問題ない、聖王がこの情報を知ってまたどう動くか分かれば連絡を入れる様に、分かったな』

「……承知しました。ロズベルト神殿長」

 項垂れて返事をする、私は家族と皆を天秤にかけられて家族を選んだのだ、今更、どうしようもない、言われるがままに情報を流すだけである。


『全てが終わった時のお前と家族の安全と立場は保証しよう。また次の連絡を待つ。プリア・リスマ』

「…はい」

 通話は途絶えた、もうロズベルト神殿長の声は聞こえない。


 私は【通信機】を叩き付けたい衝動をこらえて【魔導袋】に仕舞った。

 本当にどうしてこんな事になってしまったのか、苦しくて悔しくてやるせない、こんな私は聖女失格だろうか?答えは出ない、アストラーデ様は応えてくれない。

 この先、どのようになってもせめて家族に害が及ばない様に、罪は全て自分にと願いながら私は夜の闇の中にフラリと消えて行った。







 夜が更けて皆が眠りに付いた、私はまた同じ夢を見た、殺される夢だ、逃げる夢だ、誰かを護ろうと足掻いてる夢だ。

 だけどルートはもう体に染みついている逃げ切る、でも逃げ切った所で力尽きて倒れる、其処に誰かの手が伸ばされた、コレは初めて見る。

 誰?と思うが顔は見えない、でも暖かくて優しい手だった、其処に私は何故か真紅の鳥を見た気がした。


 そして朝になり馬車が出発する、昼頃には到着予定だ、私達の目指すテレスターレ聖国の聖都テレスターレへと。

 街を囲む外壁は馬鹿でっかかった、この国で二番目の都市という事だが一番であるアストラリオンと殆んど差が無いんじゃなかろうかというデカさだ。

 一般の方々が並ぶ中を貴族専用の通路を通って門を悠々と通過、そしてそのまままずは聖王様に挨拶という事で城に向かう、やっぱり洋風な城だね、城壁とか凄い。


 城門を抜けて城内へ、流石に広いなー、大神殿も結構、大きな方だが優に倍はある。

 中に通されて先ずは昼食、私も食材を出して料理して貰う。

 流石は王様の料理人、今迄No.1だったダビートの人を超える腕だ、文句のない見事な昼食だった、是非ともレシピとか知りたいものだ。


 昼食が終わると謁見の準備、各自がお風呂に入れられ体を磨かれる。

 私も入れられた、アレ?何で私まで?聖王なんて別に会いたくなんかないよ私は、でも入れられた、泡でフワフワのモコモコにされた。

 まぁ、スッキリさっぱりするのは悪くない、それから綺麗になったセアラやリーレンさん、セリアーナお婆ちゃん大聖女様、リリさん、ララさん、シャルさん、リフレイアさん、プリアさん、パティちゃん、全員が揃って謁見の間に通される、さてどんな人かな?聖王様って?

狐猫の小話

この世界は賭博は結構、緩いです。

違法賭博とかの犯罪はありません、全財産を失って死ぬのも奴隷に落ちるのも自己責任です。

まぁ、騎士は衣食住は国が保証してくれるので給料を全部失っても死にはしませんが、あんまりにも騎士の品位を落とす行為をすれば罰則があります。

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[一言] 家族ほど大事なものはありませんよねぇ…
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