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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第078話 小さな友達と冬の定番?


 当てもなく無くシルバーとズィルバーを走らせて居たらラトラー湖の側まで来ていた。

 何となく釣りをしたくなった。

 カンタコンペまで『集団エリア短距離転移ショートジャンプ』、街の釣具屋で湖の釣り道具一式を購入する。


 「綿猫ファトラが釣り?」と不思議な顔をされるが気にしない。

 さて、冬場も釣れるかなーと思う。

 だが、勘は問題なく釣れると言っている。


「ミィーミィミ」(スローイング)

 狙った場所に餌の付いた釣り針がポチャンと落ちる。

 後は待つだけだ、何となく忙しかった反動かのんびりしたい。


 それには釣りが最適だ。

 ゆったりできる。

 平和だなー、シルバーとズィルバーも満足いくまで走れてご機嫌に二頭で寄り添っている。


 夫婦仲が良くて大変に結構。

 其処で一匹目がヒット!おお、中々の手応え。

 釣り上げると魔魚ラーギッシュ、冬に入っても元気だね、この魚は、早速締めて血抜き、処理をして【魔導袋】に仕舞う。


「ミーィ」(とーう)

 二匹目を狙ってまた竿を振るう。

 今度は中々、釣れない。


 其処で此方に近付いてくる誰かの反応、うん?誰だ?と思う。

 直ぐにやって来た、5~6歳位の中々に可愛い女の子だ。

 誰だね?チミは?と思って見る。


「あたし?あたしはリリア、5歳だよ」

 何と!考えただけで返事が来たぞ?どうなっている?

「あたしは【恩恵ギフト】で【以心伝心】って言うのを持ってるんだ」


 それは凄い!しかし、考えてる事が筒抜けか、有り難い様な迷惑な様な【恩恵ギフト】だな。

「?」

 相手の思考を読めると言うのは色々と問題がある気がするがリリアはよく分かって無いらしい、首を傾げている。


「それより綿猫ファトラちゃんは何してるの?」

 見たままだ、釣りをしているのだ。

 それと私は綿猫ファトラでは無い、狐猫かハクアと呼びなさい。


「じゃあ、狐猫ちゃん」

 あれ?そっちを選ぶんだと何となく思った。

 其処でヒット、魚が掛かる。


「ミミィーーー!」(てりゃーーー!)

 釣り上げる、さっきより小さいが形は良い。

 おおーとリリアが拍手する。


 早速、素早く処理をして【魔導袋】に仕舞う。

「あたしもやって見たいっ!」

 リリアが言ったので良いぞと予備の竿を貸してあげる。


「えいっ!」

 と、竿を振るがすぐ傍にポチャンと落ちる。

「あれ?」


 はっは、フォームが成って無い。

 こうするのだと【真尻尾攻撃】で支えて体勢を整えさせて竿を振らせる。

 狙った位置に着水、ピッタリだ。


 リリアが「やったー!」と、喜ぶ。

 私もまた竿を振るう。

 暫くの間、何にもない時間が過ぎる、風と水の音と香りが心地よい。


「釣れないねー」

 釣りはのんびりやるモノよーと答える。

 そうしているとシルバーとズィルバーが近付いてきた。


 おお、シルバー、ズィルバー私は暫くの間は此処で釣りをしているから好きに遊んでくると良い。

 シルバーにニンジー、ズィルバーにアッポーを与えながら私が二頭に話しかける。

 二頭は「「ヒヒーン!」」と鳴いて去って行った。


「あのお馬さん達にも好かれてるね、狐猫ちゃん」

 そうなのかな?従魔にして自由を奪っちゃった身だから申し訳なく思ってたが好かれているならそれはとても嬉しい。

 そう思っていたら【魂魄憑依】が騒ぎ出した。


『本体ー、私等にも何か寄越せー』

『新年祝いだ、縁起物だ」

『―殺せ!―壊せ!―滅せよ!―粉砕せよ!―』

『三号も何時もより力を込めて言ってる、早く何かくれ本体』


 分かった、分かった、では正月にピッタリなもっちりもちもちの餅を進呈だ。

 喉に詰まらせない様にちゃんと小さくして食べる様に、残りの【魂魄憑依】も帰って来たら上げるから後でまた寄越せとか言わないようにな。

『『『『わーい!』』』』


 喜んで食べだす【魂魄憑依】、それも聞こえているのかリリアは楽しそうに笑う。

「狐猫ちゃんは面白いね」

 そう?あ、リリア引いてるよ。


「え?!わ、わわわ!」

 竿に引っ張られてラトラー湖に落ちそうになるリリア、大物見たいだ、手伝おうと尻尾で固定する。

 数分の格闘の後にリリアは人生で初の魚を釣り上げた。


 大物の魔魚ラーギッシュだ。

 今日で一番大きい。

「やったー!釣れたー!」


 おめでとうと称賛を送る。

「よーし、これはお父さんの、次はあたしの分!それっ!」

 そして振った竿の糸はまたすぐ傍に落ちた。


 「あれ?」と首を傾げるリリア、笑う私、何だか小さな友達が出来た。


 色々と話を聞いた。

 リリアは母親を亡くして今はそこそこに有名なソロのA級冒険者である父と旅をしながら生活しているらしい。

 今年の冬はカンタコンペで過ごす事にして来たそうだ。


 只、数日後に一度だけスイルに届け物の依頼があって一緒に出掛ける。

 それが終わったら春になるまでずっとカンタコンペで過ごす。

 冬の旅は寒いし危ないからね、正しい判断だと思う。


 日が暮れて来た、もうそろそろ帰らなければならない。

 釣果は私が5匹でリリアが3匹と中々だ、全部が魔魚ラーギッシュなのが気になるが…他の魚が居らんのだろうか?

 ララトイヤでは色んな魚や貝、海の幸が売られていたが川と湖では魔魚ラーギッシュしか見てない、どうしてだろう?


 まぁ、美味しいから良いかと結論してそろそろ終わろうとリリアに告げる。

「はーい」

 元気よく返事をして竿を上げる。


 今日の獲物のデッカイ魚三匹を持ち上げる。

 相変わらず私程度は一飲みに出来そうなラーギッシュだがそれを三匹軽々と…では、無いな流石にちょっと重そうだ。

 だけど持ち上げて見せる、やっぱりステータスのある世界だ、幼女でも力持ちだ。


 一応はF級の中位ミドルな魔物の魔魚ラーギッシュだから【LV】も上がったかも知れない。

 でもやっぱり、ちょっと重そう、大丈夫か聞く「平気」と答えるリリア、頑張れと応援しておく。

 釣り道具を返そうとするので『貸してあげる』事にする、これなら【強欲】様の反動も無いだろう。


 簡単に手入れの方法を教えて今度こそ、別れる。

 次に会う迄にもっと大物を釣って見せるそうだ。

 ズィルバーの背中に乗ってカンタコンペを後にする。


 ちょっと距離を開けたら『集団エリア短距離転移ショートジャンプ』の連続使用でアストラリオンに帰った。

 門を抜ける「帰って来たよ…」って顔で門番さんに見られるが気にしない。

 デーゲンさんは上がった様だ、もう居ない。


 シルバーとズィルバーが居るので大神殿には裏口から入る。

 二頭を馬小屋に戻して釣った魔魚ラーギッシュを料理人の人に預ける、夕飯には塩焼きが希望だ。

 そう言えば粉砕鮪クラッシャートゥナはどうなったんだっけ?まだリーレンさんの【魔導袋】の中かな?近い内に私の獲物は回収して置こう。


 夕飯は先日のセアラの誕生日に提供していた【危険デンジャラス猛牛ワイルドブル】の残りだった。

 希望と違ったが、【危険デリシャス猛牛ワンダーブル】は美味しいので文句はない、けれど其処で気付いてしまった。

 1月7日はセアラの誕生日だったのに、私はまだプレゼント所かお祝いを言ってないと、【悪魔蜘蛛デビルスパイダー】の糸のマフラーと前もって預けていた【危険デンジャラス猛牛ワイルドブル】は別口だ、プレゼントはプレゼントで贈りたい。


 何が良いかと考える。

 そうだ、アレにしようと思い至った、狐猫な私にも必須だ、多分、セアラも虜になってくれるだろう。

 夕飯後は図書室に行かずに材料集めと製作を頑張った。


 深夜まで掛かってやっと完成した。

 早速、セアラの部屋のスペースに設置、広いから置いても問題ない。

 其処で気配に気付く、【風切燕スライサースワロー】に宿らせた【魂魄憑依】、そうだった今日は報告日だった。


 プレゼントの製作に夢中で忘れていた。

 謝ってお餅を与えてご機嫌を取る。

 全員を今はダスド帝国に行かせているが【殺戮蜂デッドリーホーネット】の撃破以外は有用な情報は無い、


 【殺戮蜂デッドリーホーネット】の撃破も対策をされているのか数が減っている。

 これ以上の情報を得るのは難しいかもしれない。

 ギリギリまでは頑張ってみるが、どうなるだろう?


 翌朝、何時もの時間に目を覚ます。

 セアラも着替えて訓練に行く所だ。

「ハクア、コレ、何ですか?」


 まだヴェールに隠された物体を指差してセアラが言う。

「ミィミミィミミミィィィミミミィミミ、ミィ、ミィミィ」(訓練が終わってからのお楽しみよ、さ、行きましょ)

「はぁ?」


 取り合えず、何時も通りにリーレンさんと訓練してセアラの部屋に戻った。

「ミィミ、ミィミ、ミミィミィミミミィミィミミミィミミミィ!ミィミミィミミミ!」(じゃあ、セアラ、少し遅くなったけど誕生日おめでとう!コレがプレゼント!)

 言ってヴェールを取り払う、現れたのは炬燵だ。


 コタツである、おこただ。

 冬に猫が中で丸くなるモノだ。

 絶対に必須な品である。


 でもセアラは初めて見るようで戸惑っている。

 暖房の【魔導具】は既に別の品が有るからだろう。

「ミィ、ミィミィミミィ、ミィミィミミ。ミミミミィミィミィ、ミィミミィ」(さあ、入って見て、靴は脱いでね。ホカホカでヌクヌク、とろけるよ)


 困惑しながらもセアラは私に言われるがままにコタツに入る。

 秒で溶けた。

「なんですかー、これー、ホワホワで暖かくて幸せですぅー」


 ふふふ、おこたの魅力と魔力には敵うまい。

 私も中に入る、だらける、幸せじゃー。

「聖女様、朝食は?」


「此処で食べますー」

「お仕事は?」

「此処でしますー」


「面会の方が…」

「此処で会いますー」

「聖女様っ!」


 リーレンさんが怒るがセアラは堕落モードだ。

「リーレンも“こたつ”に入りましょう。幸せになります」

「い、いえ、しかし…」


「さぁ、どうぞー」

 リーレンさんもコタツに入った。

 堕ちた。


 ふっふっふ、このままコタツをこの国、世界に広めてくれるわと思っていたら何時の間にかセリアーナお婆ちゃん大聖女様までコタツに入っていた。

 アレ?何時の間に?

 そして本当に商業ギルドに『ハクアのコタツ』として特許登録されて販売が行われるようになった。


 爆発的な人気になり私の貯金がまた一気に増えた。

 アレレ?冗談が本当になったよ?何故?

 何にせよ、大神殿に三人と一匹のコタツムリが生まれた。


 一日を自堕落に過ごしてしまったが翌日は久々に狩りに出掛けた。

 【長距離転移ロングジャンプ】で目的のハサンの傍にあるS級の天災カタストロフな魔物が居ない森へ、でも狩りまくるが経験値は全然、増えない。

 A級の破滅ディザスターを狩っても僅かだ、これでは【LV】が上がらない。


 S級の天災カタストロフは狩るにはヤバイ、だがコレでは全然、【LV】上げにならない。

 困った、どうしよう?と思いながら日は暮れていった。

 手当たり次第に狩ったが次の【LV】への必要経験値の半分も貯まらなかった、コレは不味いなぁと思う。


 只、風竜が狩れた、【風竜力LV1】を獲得だ。

 セアラとリーレンさんにもおすそ分け、【強欲】様の影響でちょっとだけステータスが下がったがこの程度は気にしない。

 早速、【暴風竜力LV1】まで上げた。


 帰って夕飯後にまた図書室へ、本は迷宮ダンジョンについてとあった。

 この世界には迷宮ダンジョンがある、大体が王都や元王都、一部大都市などだ。

 1階層には【LV1】に適した魔物、二階層には【LV2】に適した魔物が出て10階層には門番ゲートキーパーと呼ばれる一度だけ倒せば必ず【LV】が1上がる魔物が出るとされてる。


 そして沸くのは床や壁、天井から、無限に出て来るらしい。

 お陰で迷宮ダンジョンの魔物を専門に狩る冒険者等も居る。

 奥深くには【魔石】と呼ばれる石を落とす魔物も居り、【アムディの聖石】の代わりになるのでは?と研究されているが成果は芳しくないようだ。


 序でに地上に居る魔物も全てが迷宮ダンジョンから溢れたモノとされている。

 その地方に出る魔物と迷宮の魔物を照らし合わせての考察らしいが、多分、合ってると思う。

 只、浅い階層に出る魔魚ラーギッシュが美味しいからと川や湖に放った性で大繁殖、生態系を破壊したらしい、ラトラー湖で魔魚ラーギッシュしか釣れんのはコレが原因かと頭を抱える。


 考え無しにするから後が困るのだと思う。

 まぁ、私も余り人の事を言えない気はするがそれはそれだ。

 一応、数は少ないが魔魚ラーギッシュ以外の魚も生きてはいるらしい、滅多に獲れないし、魔魚ラーギッシュの方が美味しいらしいけど、海は更に厄介、何処かの迷宮ダンジョンが海と繋がっているらしく大放流、着実に蝕まれている。


 地上も危険だが海も危険と、安息の地は無いのかと考える。

 因みにテレスターレ聖国の聖都にある迷宮ダンジョンは70階まで、隣のアトランティカ大国も70階、エイリーク共和国も70階、ダスド帝国は50階までだそうだ。

 ダスド帝国はちょっと弱いかもと希望を持つが今はハミルトンが居るのだ、楽観はいけないと思い直す。


 しかしこうなると一匹で聖都に進入して迷宮ダンジョンに潜るか?と思わなくもない。

 でも聖都の護りは厳重だ、迷宮ダンジョンに入るには許可がいる。

 一匹だけ先走って結界を抜けられるからと潜入して聖都や迷宮ダンジョンに出入り禁止とか喰らったら終わりだ。


 しょうがないから今は諦めて大人しく2月を待とうと考える。

 それまではコツコツだ、そう決めて私は頑張ることにした。

狐猫の小話

コタツは悪魔ですね。

今は夏だから不要ですが、冬には必須です。

無いと生きていけません。

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― 新着の感想 ―
[一言] こたつは出力の制御に気を使わないとですね。 私は300wにてゆっくり温める派です。
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