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狐猫と旅する  作者: 風緑
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第007話 山脈突入、一方その頃?


 見上げながら山だーと叫んでみる。

 音としてはやはり「ミャ―」としか聞こえないが、しかしかなり高いのではないだろうか、登山口が見当たらない。

 岩壁に沿ってテクテクと歩いて行く。


 どこまで続くのかなーと進んでいると川に行き当たった。

 自分が水を飲むのに利用していた川だろう。

 この山から流れ出ていたのかと感慨にふける。


 そこから上流に向かえそうだったのでその道を登り始めてみる。


 と、【探知】に反応。

 バックステッポウと跳び下がると目の前に何時か見た巨大魚が飛び出してきた。


 何しに出てきたんだろうこのお魚と私は白い目で見る。

 魚は丘の上でビチビチしてる。

 自分から川に戻れないらしい。


 ちょっと可哀そうと言うかしょうもないと言うかだけど私を食べようとしたんだから良いよねと【猛爪攻撃】を放ち三枚におろした。


 そう言えば転生してお魚は初めて食べました。

 生の川魚って美味しいのかちょっと心配でしたけど美味しかったです〇


 と、心の日記帳に記録を付けて更に上流へと歩みを進める。

 坂の勾配がきつくなってきて川がかなり眼下になり始めた。


 そのまま歩き続けると私は滝にぶち当たった。


(ふわぁーーー)

 遥か上から落ちる滝を見上げる。

 滝壺も登ってきた勾配から見て遥か下でよく見えない。


(一体、何メートルあるんだろうこの山。もしかしたら富士山より高いかも)

 3776である。

 日本一である。


 流石にエベレスト程は無いと思うが、半分程はあるかも知れないと思いながら山を登り続ける。

 其処で【探知】が再び反応した。


 しかも速度が速い。


(え、この速さ…飛んでる?空っ!)

 上空を見上げる。


 赤い大きな影が見えた。

 それは私を見つけると上空に滞空した。


(ドラゴン?!いや…ワイバーンって奴?)

 驚きながら見上げる。


 此方の事などお構いなしにワイバーン(仮)は私を敵認識しているようだった。

 口元に火の粉が見える。


(何でこんな如何にも人畜無害な狐猫を狙って来るのかな!魔物って、腹の足しにもならないでしょうにっ!)

 心の中で叫びながら【空間機動】で駆け上がる。

 少し前まで居た地点にワイバーン(仮)が吐いた炎弾が叩き付けられる。


(少し…いや、かなり動きが遅い?)

 何となくそう感じられた。

 もしかしたらこれが【思考超加速】の効果なのかもしれない。

 これまではもう自分より大分、弱い相手だったから効果が実感できなかったのだろう。


(ならっ!)

 ワイバーン(仮)の前に私も【空間機動】で滞空し相手の出方を待つ。

 するとワイバーン(仮)はまた口元に火の粉を散らした。


 炎弾だ。

 吐き出される寸前、私は【疾駆】で駆け抜けワイバーン(仮)の開いた口に【猛爪攻撃】を叩きこんだ。


「グォォォォォォォーーーーン」

 ダメージは入ったようだが落ちる気配はない。

 流石はドラゴン擬きのワイバーン(仮)頑丈さは並じゃ無い様だ。

 続けざまに私はUターンしてワイバーン(仮)の翼に【猛爪攻撃】二連撃を放つ。


 翼は顔程に頑丈じゃなかったのか二連撃に片翼がちぎれ飛ぶ。

 だがまだ倒れてはいない。


 私はワイバーン(仮)を追いかけて空を走る。

 最後の悪あがきかもう落ちるしかないワイバーン(仮)は三度私に向けて炎弾を放とうとしてきた。


 でももう遅い。

 走り抜け狭間に口へ再びの【猛爪攻撃】トドメの一撃になった。


 ピコーンと音が鳴る。

 LVUPの合図だ。


 でも確認は後、何故かと言うと【探知】さんに反応がぎっしりあるからだ。

 この辺りにはワイバーン(仮)の巣でもあるらしい、食べられそうにも無いし、あんな数は相手にしてられない。

 私は急いで身を隠せる場所を探して【空間機動】と【疾駆】で走り去った。


 こんにちは私です。

 名前はまだ無い狐猫です。


 はい、アレから一日経ちました。

 まだワイバーン(仮)の群れが頭上を飛び交っています。


 いい加減にして欲しいです。

 まったく、こんな愛らしい狐猫ちゃんを群れで襲おうだなんて何て非道なんでしょうか、はぁ、お腹空きました。

 喉も乾きました。


 森に戻るべきか真剣に悩んでしまう状況です。

 おっと、【探知】さんの効果範囲で隙間が、今の内に前進しますか、行けるだけ行ってダメなら【空間機動】バンジーで森へ直帰する事にします。

 はてさて、何か食べ物と飲み物は無いかなーと【探知】さんに反応、あ、兎が居た。


 ちょっと待て、何で兎が此処に居るっ!

 私より明らかにデカくて、オマケに頭に角とか生やして私より絶対に凶悪なのにどうして悠々と草を食べてるんだ。

 上空のワイバーン(仮)共よ私よりあっちを狙えよと心の底からツッコむ。


 まぁ、そんな事を言っても現実は変わらない。

 私はコッソリと一噛みで兎を倒して美味しく頂きました。


 とりあえず兎が居るなら食事の問題はOKだ。

 飲み水の問題があるけど、血って代用になるかな?

 兎も角、山頂を目指して私はテクテク、コソコソと歩いて行くのだった。







「くそっ!どこ行きやがったんだっ!あのファトラはっ!!」

 叫びながら男は傍にあった空の樽を蹴り飛ばした。

 樽はコロコロと転がりながら、別の中身が詰まった樽に当たって止まった。


「リーダー、もう諦めましょうぜ。あの三匹のファトラを売った金だってあれほどの額になったんだ。当分は何もしなくても…」

 その男に対してリーダー、密漁犯の頭であるアレクは凄んで近寄る。


「当分だぁ、当分ってのはなぁその程度なんだよ。あのファトラを思い出せ。見た事無いほど純白で赤い目の希少種、しかも猛獣捕獲用の網を切り裂きバーボンとノックスを殺しちまうような強さの変異種だ!売れば此処に居る全員が一生喰うにも遊ぶにも困らねぇ金になるんだっ!!」

 ダンッと机を殴りつけながら叫ぶアレク。

 その鬼気迫る様子に脅えたように男の一人が声を上げる。


「で、でも、ノックスはリーダーが盾に…」

「何だ、何か文句があるのか」

 そう言って睨まれると男は「い、いえ…」と言ってすごすごと引き下がる。


「兎に角、探せっ!変異種だと言っても幼体のファトラだ。そんなに奥までは行けねえ筈だっ!少しでも痕跡を探して来いっ!」

「「「「へ、へいっ」」」

 一喝されて男達は慌てて装備を整えて再び森へと捜索に出る。

 男達が出て行ったのを見てアレクは自身の豪勢なテントの中に入り椅子に座る。

 そして「畜生がっ!」と言いながら手元にあったナイフを投げて傍に釣るしてあった毛皮に突き刺す。


 後、一歩だった。

 後ホンの一歩であのファトラを得られる筈だった。

 其処で毛皮にされ吊るされている大人のメスのファトラの邪魔さえ入らなければ―


 元々、最早傷だらけで売り物にならなかったメスのファトラの毛皮はアレクの憂さ晴らしの玩具にされていた。

 何度となくナイフが突き刺されて最早ズタボロの状態である。


 だと言うのに、まだその瞳が、空洞になった眼下が自分を睨んでいるようで苛立ちが募った。


(お前にはあの子を捕まえさせない)

 そう睨まれてる気がした。

 苛立ちに任せてもう一本、ナイフを突き立てる。

 其処で外から声が聞こえた。


「リーダー!、リーダー!」

「どうした?見つかったかっ!」

 声を掛けられテントから出ていく。

 見ると四日前に捜索に行った二人組が慌てた様子で帰って来たところだった。


「い、いえ、ですが、シギュンとヒノの遺体が見つかりました。見つけたのは樹海の中央付近で傍にはオークの死体も…切り傷から例のファトラの幼体と思われます。腐敗具合から死後一週間は過ぎてるかと…」

「ちっ、そんな所まで行ってやがったのか、おい手前等っ!キャンプの場所を移すぞっ!もっと奥だっ!残った全員を集めろっ!!」

 怒声を張り上げて全員に指示を出すアレクだが部下の一人が慌てて止めに入る。


「む、無茶です。この人数でこれ以上奥に向かうのは、オークやデーモンスパイダー、最悪タイラントグリズリーに対処出来ません。それに物資も不足しています。一度、街に補給に戻らないと…」

「ちぃっ!!!」

 男の言葉にアレクが怒りに任せて手近な物に蹴りを入れる。

 それはまた空の樽だったが今度は足が貫通して樽を完全に壊してしまう。


「三日だ、三日で準備を整えろ。それで中央にキャンプを張って捜索を開始する」

「三、三日は無理です。せめて一週間…」

「なら五日だ。それでやって見せろ。金は俺の組が出す。人員の手配と物資の運搬を急がせろ」

「は、はい」

 凄まれて男は素早く準備に取り掛かる為に一時撤収の準備に入る。

 先程、捜索に出された男達も呼び戻され残っていた十人が揃えられる。


「良いか手前等。五年だ」

 言いながら手にしたハルバードの石突を地面に叩き付けるアレクに皆が脅えながら話を聞く。


「ファトラの幼生期間は長い。五年の間はほぼ変化せずその後数年で急激に成長して成体になる。そうなったらもう人には懐かねえし売り物にもならねえ。だからその前に捕らえて躾ける。すると従順で人に良く懐き言うことを聞くペットになる」

 改めて言われなくとも分かっている。

 だからファトラは好事家たちの間に人気で破格の値段で取引されてる。

 幼体の期間が長く可愛い時期が長い。

 成長しても愛らしく何処か神秘的で美しい体毛と尻尾は愛でられるのだ。


 だがそんなファトラにも欠点がある。

 何故か人に飼育されたファトラは発情期が訪れず生殖しないという事だ。


 だから国によって、いや、今ではほぼ全ての国でファトラの販売は禁止という事に表向きなっている。

 しかし、それだからこそ欲しいと言う者達は後を絶たず密売として彼等が成り立っているのだ。


「アレの兄妹達の生育具合から見てアイツは生後今三ヶ月って所だろう。これから四年九か月―いや、三年以内にアイツを必ず見つけ出して俺達が売り捌くっ!分かったなっ!!」

「「「「「へ、へいっ!!!」」」」」

 その言葉を合図に男達は一時帰路に就く。

 そして五日後に人数を倍以上に増やしアドラスティア大樹海の中央付近に陣を張ってファトラ幼体の捜索を始めた。


 しかし男達はアレクは知らなかった。

 探している肝心要のファトラが既に森を抜けダアト山脈に入っている事を―

 テレスターレ聖国を目指して移動している事を知る筈は無かった。

狐猫の小話

狐猫が飛竜ワイバーンに勝てるのは【思考超加速】【空間機動】【猛爪攻撃】があるからです。

無ければ瞬殺されます。

なんとB級の災禍ルインの魔物ですから、只、魔導耐性は高いですが物理耐性がイマイチなのです。

皮を加工すれば頑丈な鎧になりますが

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