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狐猫と旅する  作者: 風緑
69/166

第069話 戦い終わってまた反動?


「ミギャ…」(うぐっ…)

「ハクア!」

 セアラの悲鳴が聞こえるが槍で貫かれた激痛に声が出せない。


「ふん…」

 詰まらなそうにギャバンが槍を振るう、抜けて大量の血が噴き出す。

 私の自慢の真っ白なお毛毛はもう血だらけだ。


 このままこの高さを落ちたら本当に死ぬ。

 そう思ってどうにか【真尻尾攻撃】で体を覆いクッションにして着地、何とか再び立ち上がろうとする。

 でも藻掻くだけだ、立てない、傷が深すぎる。


 ギャバンは目の前のセアラより私を先に討とうと決めた様だ。

 急降下してくる。

 セアラは慌てて私に【月光】を使おうとする。


 私も私で空間収納から『最高級回復薬』を取り出そうとするが傷が深すぎるか、血を流しすぎた為か上手く行かない。

 マズイ、ギャバンが一番早い。

 殺される、こんな所で、母狐猫の仇も討てないまま、兄弟姉妹のその後も知らないまま、セアラを護れずに死ぬ。


 嫌だ。

 諦めてなんかやるモノか、最後の最後まで足掻いてやる!

 私は決意と共に【空間機動】で駆け下りてくるギャバンを睨む。


 ピコーン


『【技能】【不屈LV1】を獲得しました』


 何か【技能】を獲得出来たがこの状況を打破できるモノでは無いだろう。

 でも何だかっちょっと体が動かせるようになった気がする。

 このまま限界まで引き付けてからこっちも【限界大突破】してカウンターを叩き込むと考えていたら、シルさんが『少々お待ちください』と言った。


 何をする気?シルさん。

『【恩恵ギフト】【神智】接続、特別権限で起動【技能】【因果律操作】発動します』

 物凄い力を吸われた感触があった、何が起きた?と思った。


 次の瞬間、ズドンッ!という音がすぐ傍に響いた。

 ギャバンが私への攻撃を外していた。

 私は驚く、ギャバンも何が起こったと驚いている。


 でもその間にセアラの【恩恵ギフト】【月光】が間に合った。

 私が全回復する。

 ギャバンが自分の作ったクレーターから飛び出す。


 其処で此方も【限界大突破】を使用。

 かなりの時間が過ぎている、残り効果時間は私と同じくらいだろう。

 再び派手なぶつかり合いが始まる。


 ギャバンと応酬を続けながらさっきの現象をシルさんに尋ねる。

 アレは何だったの?シルさん【因果律操作】を発動と言ってたけど?

『言葉通りです。マスターにとって都合の良い現象を起こします。代わりに大量の【魔導】の力を消費します』


 成る程、それでギャバンが攻撃を外したのか、力が吸われたのも納得だ。

 恐らくは後、二回いや三回使えば私は水の一滴、火の粉一つ起こせなくなるだろう。

『ですが、覚えておいて下さい。100%は覆せません。0.0000000000000001%でも可能性が在れば引っ繰り返す事が可能ですが100%は不可能です』


 了解だ、本当の本当に奇跡レベルでギャバンが攻撃を外す可能性が在ったから可能だった訳だ。

 過信は禁物ってことね。

『それよりマスターの【限界突破】は残り42秒、敵は64秒です』


 うわぁ、22秒差があるのか、どうする?【限界突破】は一度使うと24時間のクールタイムだ。

 もう一度は使えないし、それだけの時間が在れば私を殺すには十分だ、シルさん、何かいい手段は無いかと尋ねると同時に声が聞こえた。

『【忍耐】の開放を推奨』――いい加減に解き放て――


 言われて見るとうわはぁ?!【忍耐】様が臨界を迎えていらっしゃる!

 考えてみればセアラにも【魔導】でポンポンと飛ばされてたし、さっきなど死に掛けな一撃を貰った。

 迎えても当然だった、うう、また一週間のステータスと【技能】封印かぁと頭を抱えるがしょうがない。


 こうなった以上はやるっきゃない、【忍耐】発動!

 一瞬で激しい熱が体を駆け巡る、熱い、暑い、アツい、あつい、もうお終いだギャバン。

 まだまだ今よりずっと弱かった私があの水晶大亀アルケイロンを止められた程の力なのだ。


 今の自分が使えばどれほどのモノか想像も出来ない。

 放たれた高レベルの槍技を只の何でもない肉球パンチの一発で叩き落す。

 そしてユラリと持ち上がる五本の尻尾――うん?五本?………また増えた?!またもや増えたのか尻尾よ?!何で増えるんだ尻尾?私達狐猫を作った『ファーレンハイト』って神はそんなに尻尾が好きだったんか?


 つーか、今更になって気付いたけど間違いなく【試練】を越えると増えてるよね?

 今度、自称:神様(仮)に尋ねよう。

 このまま増え続けるのかどうか、まぁ、便利だし良いけどね、ホントーに便利だし、良いんだけどね。


 続けざまに放たれる槍の全てを叩き落す。

 私が纏う力と変化に気付いたギャバンは恐れる所か笑みを深めて襲ってきた。

 恐らくそれはギャバンの生涯で最速、最高、最強の一撃だったろう、それを私はペチンと弾く。


 そして五本の尻尾がギャバンに襲い掛かった。


「負けか…」

 最早、動けぬほどに叩きのめされて尚、その顔は笑っている。

 うん、マジで理解できない、何がこの男を人を殺す事への執念に搔き立てたんだろう?


「存分に殺りあった。悔いはない」

 いや、あんたに無くても殺された側にはあるでしょうよ。

 ちゃんと悔い改めなさい、説教するが聞こえないし、聞かないだろうと思った。


 セアラが私の横に降りてくる、もう大丈夫と判断したのだろう。

 その通り、ギャバンはもう動けない、でも私はこれからこの男を殺す。

 流石に生かして捕らえるには危険過ぎる、セアラも理解してるのか止めない、今は遺言を聞いてやってるだけだ。


「何か言い残す事はありますか?」

「………ない……が、一つ、疑問が出来た。尋ねよう」

 ちょっと意外に思いながらセアラの隣に立って聞く。


「答えられる事でしたら」

「………ならば尋ねよう。娘、お主は何者だ?」

 ギャバンの一言にセアラが固まる。


「その白い獣にすら俺は人間を見た。なのにお前には全く見えない」

 セアラが顔色を青くし僅かに震えだす。

 私はギシリと歯を噛んだ、黙れ。


「お前は人の皮を被ったナニカに見える。あれほどの強さがあるのに俺には何も響かなかった」

 セアラは何かを言おうとしたが言葉にならない、震えが、脅えが酷くなる。

 私の尻尾が持ち上がる、黙れ。


「問おう、娘。お前は人では無いのか?一体何だ?多くの人間を殺してきた俺だから解る。お前は――」

 黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!

 私の尻尾が叩き付けられる、ギャバンは死んだ、もう何も言わない、2人で得た記念すべき初勝利の筈なのに心に苦しさが残った。


「ミィミ…」(セアラ…)

 ギャバンにトドメを刺した後、座り込んでしまったセアラの頬に私は顔を擦り付ける。

 泣いてる様に見えたセアラが手を伸ばして私をギュッと抱き締める。


「ミィミ、ミィミミミィミィミミィミミィミミ?」(セアラ、私は血だらけだから汚れちゃうよ?)

「平気です。このまま…お願いします」

 私は暫くの間をセアラに抱かれて過ごした。


 暫くして【神智】様に反応があった、応援だ、もう終わってるけど、でもこれで安心だ。

「ミィミ、ミィミミミィミミィ」(セアラ、ちょっと聞いて)

「なんです?ハクア」


「ミィミミミィミミミィミミィミミミィミィ」(私は【忍耐】って【技能】を持ってるの)

「【忍耐】!アストラーデ様の?」

「ミミ、ミィミミミィミィミィミミィミィミィミミミ」(そう、効果は攻撃を受ける程にステータスが増加)


「それで最後にギャバンを圧倒してたんですね」

 納得したというようにセアラが頷くが大事なのは此処からだ。


「ミィミミィミミィミミ、ミィミィミミミィミミィミィミィミミィミミィミィ」(でも反動があってね、限界まで使うと一週間のステータスと【技能】の封印)

「えっ?!」

「ミミィミィミィ、ミィミミミィミミィミミィミミィミ」(それで現在、次々と封印状態になって行ってる最中)


「ええっ?!」

「ミィミ、ミィミィミミミィミミィミミィミミィミミミィミミミィミミ。ミィ…ミィミィ…ミィ…ミミ…ミィミミ、ミィ…ミミ…ミィミミィミ…ミィ……ミィ、ミィミ…ミィミミ」(だから、声を掛けられても何を言われてるのか分からなくなるわ。後…すっごく…寝む…くて……限界、もう…直ぐ…援軍が…来る……から、後は…お願い)


「ちょっと待って下さい!ハクア!ハクア!」

 もうセアラの声も聞こえない。

 幸せな夢の世界だ。


 そして私は眠りに落ちた。

 応援の騎士はその後に無事に直ぐ来たらしい、ギャバンが倒されてる事には大層驚かれてたそうだが、私は夢の中だったから知らない。

 因みに前回と同じで三日間寝た。


 序でに眠る前にシルさんは『マスター、一週間後にまた』と別れてくれたが【魂魄憑依】共は――


『よっしゃー!休みじゃー!』

『遊ぶぞ!遊ぶぞ!』

『―殺せ―壊せ―滅せよ―粉砕せよ―』

『よし三号、お前も偶には外に出ろ』

『程々になー、あんまりだらけるなよー』

『世界平和の為に今こそ大切な一歩を此処に!』

『おっしゃー、特攻じゃ、殴り込みだー!』

『日向ぼっこだニャー』

『ええい!ちょっとは真面目にせんか駄狐猫』

『本体よ、ちゃんと有給だろうな?』


 あいつ等はホントになんなんだ!

 封印解けたら扱き使ってやるっ!

 私はそう誓った。


「ミィァァァァァッ………ミィミミ、ミミミィミ」(くぁぁぁぁぁっ………寝すぎた、お腹減った)

 三日後に眠りから覚めた私、前の様に知らない景色ではない。

 レバノン伯爵邸の一室だ。


 血塗れになっていた、体は綺麗に拭かれている。

 でも何となく気になったグルーミングだ。

 念入りに舐める、気付いたが此処はセアラが借りてる部屋だ、部屋の端に私の狐猫をダメにする巣箱Mk-2がある。


 そうしたら部屋の掃除にかメイドさんが入って来る。

 起きてる私を見てビックリ、慌てて走って行った。

 何か恐がらせる事をしたかな?と、思ったが、そういう訳では無かったらしい。


 ドドドッ!と走る音がしてセアラが駆け込んでくる。

 うん、廊下を走っちゃいけません、ドンドンお転婆になっちゃうなセアラ、、やっぱり私の性?

「ハクア!目が覚めたんですね!」


 言って私を抱き上げ抱き締める。

 ちょっとセアラ、ギブ!ギブ!喉に決まって無くても今のセアラの【気力】はステータスと【技能】が封印された私には脅威だ。

 〇ぬ、〇んじゃうともがく。


 遅れて来たリーレンさんとノッ君がセアラを落ち着かせて解放される。

 危なくまたセアラに〇されるところだった。

 うん?またって何だ?記憶にない、そう言えば偶にあるな記憶が飛ぶ事、何でだろ?と思う。


 只、幸いな事に『遠話の円環』のお陰かセアラの言葉は分かるし会話出来る。

 助かった、セリアーナお婆ちゃん大聖女様、本当にありがとう。

 ノッ君が私に何か語りかける、多分、ご飯を準備してくれるというのだろう、私は頷いた。


 違った、「昼食迄、あと一時間程だが我慢できるかい?」だった。

 ちくせう、次からはセアラにちゃんと通訳を頼もう、しかし後一時間、私は餓死してしまうぞと思う。

 しかし、ハーメルに居た暗殺者は砦から来た応援もあってほぼ全滅したらしい、三分の一程お財布の回収が出来なかった無念だ。


 でも懐にはハサンと合わせて100枚近い金板がある。

 多分、お金には困らない。

 さて、この空腹を紛らわせる為にもこの三日間で起きた事をセアラに教えて貰おうかな?と私は尋ねた。


 三日の間は秘草採取にも行かずにレバノン伯爵邸で過ごしたらしい。

 暗殺者の脅威が完全に消えた訳じゃないしね。

 その暗殺者の依頼主も遂に判明したらしい、名前はまだ教えて貰え無かった。


 身分がある相手なので令状を送って自宅謹慎、裁判などして後々、罪を決めるそうだ。

 はい!先生!面倒なのでもう全部をすっ飛ばして死刑で良いと思います!と言ったがダメらしい。

 貴族社会は面倒だ、まぁ、前世の日本でも余程をやらない限り死刑は無かったし、そういう物か?


 でも今回は十分に余程をやってるから一族郎党に罪が及ぶだろうね。

 ざまあみろだ、明日には教えて貰えるらしい、楽しみだ。

 本当に一体、誰だったんだか?一番怪しいのはやっぱりガマガエル神殿長だが、此処まで後先を考えない真似をするか?とも思う。


 セアラは自由時間はずっと私に着いてくれていたらしい。

 嬉しい事だ、やっぱりセアラは優しい。

 ギャバンは最後に阿呆な事を言っていたがセアラはセアラだ、他の何でも無い、私の大事な友人だ、それで十分だ。


 そんなセアラだがギャバンを倒しただけで【LV】が10UP【試練】も既に終えたと言うか免除されたらしい、まぁ、私でも【試練】無しで突破だったからね、私よりダビートで水晶大亀アルケイロンから人々を護ったセアラなら納得だ。

 私も幾つ上がってるかワクワクだ。

 ギャバンは【LV64】と過去最高値だったからね、楽しみだ。


 因みに獲得した【技能】は秘密だそうだ。

 結構、凄いのを覚えたそうだ。

 【技能】が復活したら【鑑定】しようと思う。


 しかし、リーレンさんとノッ君は相変わらずラブラブだ。

 今日もドレスが違う、本当に何着準備したんだろ?

 兎も角、依頼主が抑えられるならもう安全だ、明日からは秘草採取、3日かけて1日休んで出発予定だ。


 丁度、私の反動も終わる日だ。

 助かる。

 そしてやっとお昼ご飯になった。


 ご飯は美味しかった。

 三日ぶりだから尚更だ。

 お腹が膨らむまで食べた。


 午後からはセアラとリーレンさんとノッ君、護衛の騎士でハーメルの街を散策。

 デートだね、セアラと護衛の騎士さん居るけど、私はお留守番、ちくせう。

 アトランティカ大国の者も多くいるこの街では私など格好の獲物だ、あちらでもちゃんと保護動物――保護魔物?だが、国がデカすぎて細部まで目が届かず闇ギルドが多い。


 母狐猫の仇などもそうだ。

 だからステータスと【技能】封印状態の私はお留守番だ。

 残念だが今年は諦める、来年に期待だ。


 だから今年は広いレバノン伯爵邸でトレーニングだ。

 久々のスパルタンだ。

 気合を入れて訓練する。


 肉球パンチ。

 肉球キック。

 狐猫シャドー。

 ランニングと頑張る。


 微笑ましい目で見られる。

 偶に紐とか降って遊んでくれる人も居る。

 楽しい、はっ?!ダメだ遊んでいては!私は最強を目指すのだ、此処で誘惑に負けては!


 だけど、本能には逆らえなかった。

 遊んでしまった。

 明日は負けないと気合を入れる。


 夜になって夕食も終わり就寝時間、セアラは既にベッドの中だ。

 私も愛する狐猫をダメにする巣箱Mk-2に入ろうとする。

 そこで――


「ハクア…」

「ミィ?」(何?)

 セアラの声がして振り返る。


「一緒に寝ませんか?」

「ミミミ」(いいよ)

 二つ返事でOK、我が狐猫をダメにする巣箱も捨てがたいがセアラの隣も貴重だ、ピョンと飛び乗る。


「ハクア…」

「ミ?」

 セアラの隣で丸くなった所でまた声が掛かる。


「…私はハクアにリーレンに一杯、秘密にしている事があります。悪いモノです…」

 知ってるとばかりにその頬に顔を擦り付ける。

 セアラは私を優しく抱き締めた。


「…でも、きっと、何時か全部を話します。それまで待ってて貰えますか?」

「ミィミミィミ」(大丈夫)

 そしてセアラに抱かれてその体に引っ付いたまま私達は仲良く寝た。


 何かとても楽しい夢を見た。

狐猫の小話

ちっこい狐猫が槍に貫かれたらまず即死ですがステータスの高さと槍が細くて鋭いモノだったのでギリで命を拾いました。

狐猫が落ちた所でセアラを殺して居ればギャバンの勝ちでしたがセアラに“人”を感じなかったギャバンは後回しにして狐猫を追撃しました不幸中の幸いです。

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[一言] ギャバン自身、心が壊れている。 その五感は研ぎ澄まされど、はたして何を視ていたのか。 今はもう知ることは出来ませんが…
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